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がん性胸膜炎を発症した時のステージとは? 〜治療法や予防法について解説〜

がん性胸膜炎を発症した時のステージとは? 〜治療法や予防法について解説〜
櫻井 裕幸 先生

日本大学医学部附属板橋病院 呼吸器外科 部長、日本大学医学部外科学系呼吸器外科学分野 主任教授

櫻井 裕幸 先生

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がん性胸膜炎とは、がんを原因に肺を覆う胸膜と胸壁側を覆う胸膜の間(胸膜腔)に胸水が異常にたまる病気で、悪性胸水とも呼ばれます。胸水は健康な体にも少量存在し、肺の動きをなめらかにする潤滑油的な役割を持ちますが、がん性胸膜炎になると胸水の量が増え、肺や心臓が圧迫されることによって、主に胸の違和感や咳、痛みなどが現れます。がん性胸膜炎を引き起こしやすいがんの種類には、肺がん乳がん悪性リンパ腫悪性胸膜中皮腫(胸膜に発生する悪性腫瘍(あくせいしゅよう))などがあります。

このページでは、がん性胸膜炎と診断された場合のがんのステージや、がん性胸膜炎が発生する仕組みなどについて解説します。

胸膜炎とは、肺の表面を覆う胸膜に炎症が生じることによって胸水がたまる病気です。がん性胸膜炎の場合、がんの進行によって胸膜炎が発症します。がんでは、病気の進行度合いを0〜IVまでの“ステージ(病期)”で示すことが一般的です。胸膜の悪性腫瘍である悪性胸膜中皮腫を除いて、通常がん性胸膜炎を発症しているがんのステージはIV期です。

たとえば、肺がんの場合、肺に生じたがんが胸膜まで広がり、肺表面の胸膜を越えてがん細胞が胸腔内にこぼれ、胸腔内でがんが広がることによってがん性胸膜炎が発症します。がんが肺から離れた臓器に転移(遠隔転移)のある状態と同様、がん性胸膜炎はステージIVと診断されます。

胸膜は“臓側胸膜”と“壁側胸膜”からなっており、その間にある胸膜腔には、もともと少量の胸水があります。通常、胸水は壁側胸膜から産生され、臓側胸膜に吸収されることによりそのバランスを保っています。しかし、胸膜炎になると胸膜からの浸出液が過剰に胸膜腔に流れ出すようになり、胸水の産生・吸収のバランスが崩れ、その結果胸水が必要以上にたまるようになります。

胸水が大量にたまると肺や心臓を圧迫し、さまざまな症状が現れます。特に、がん性胸膜炎で生じやすい症状は呼吸困難といわれています。

がん性胸膜炎と診断された場合、肺がん悪性胸膜中皮腫(悪性胸膜中皮腫では手術治療を選択することもある)では、まず抗がん剤による薬物療法が検討されます。ただし、たまっている胸水の量が多い場合や症状が強く現れている場合には、入院して以下の治療を行うことで胸水を排出してから薬物療法を行います。

胸にドレーンと呼ばれる管を挿入し、胸膜腔内の胸水を外に排出する治療です。

ドレーンには、排出された胸水をためておくための“ドレーンバッグ”がつながれます。この治療は胸水を勢いよく排出すると肺水腫(急激な呼吸困難)の原因となるおそれがあるため、症状をみながら時間をかけてゆっくり胸水を排出することが大切です。

胸腔癒着術は、胸水が繰り返したまってしまう方に対し、胸腔ドレナージ後に行うことが一般的です。胸水を排出するために挿入したドレーンから専用の薬剤を注入することによって、臓側胸膜と壁側胸膜を癒着させ、再び胸水がたまることのないようにします。

この治療では薬剤を注入した後、一時的に胸の痛みや発熱が生じることもあります。

がん性胸膜炎は、ほかの胸膜炎と違い、がんの進行した病態であるので予後が悪いといわれています。そのため、すでにがんと診断されている方ががん性胸膜炎を予防するためには、もととなるがんの治療を速やかに行い、病気のコントロールを行うことが大切です。治療中、胸の違和感や咳、息苦しさ、痛みなどの症状が現れた場合には担当医師に相談するようにしましょう。

また、現段階でがんの診断を受けていない方でも、アスベストに関わる仕事をしていた方やアスベストを扱う工場の近隣に住んでいたことのある方は、がん性胸膜炎を引き起こしやすいがんである“悪性胸膜中皮腫”になることがあります。そのため、定期的に検査を受けるなどの健康管理を心がけましょう。

がんになると、病気の種類に応じてさまざまな症状が起こることがあります。症状を早期に発見して治療を行うためにも、増悪する症状や今までにない気になる症状が現れたときは担当医師に相談することを心がけましょう。

自身の病気の状態や治療の内容について分からないこと、不安なことがあれば担当医師に質問し、納得したうえで治療を受けることを心がけましょう。

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