概要
がん性胸膜炎とは、肺の表面を覆う胸膜にがん細胞が広がり(播種)、炎症を起こす状態です。
がん性胸膜炎により胸膜に炎症が生じると、胸膜の血管の透過性(通過しやすさ)が亢進し、胸腔内に漏れ出して胸水となります。胸水は胸腔内に溜まって肺を圧迫するため、最終的には呼吸困難を招きます。
胸膜炎の原因は他にも感染症や膠原病によるものなどがありますが、国内ではがん性胸膜炎と結核性胸膜炎が多く、全体の6~7割を占めるといわれています。
がん性胸膜炎の治療は、原因となるがんに対する根本的な治療のほか、胸水を体外に排出する“胸腔ドレナージ”や、胸水が再び溜まるのを予防する “胸膜癒着術”が行われます。しかし、一般的にがん性胸膜炎に至った症例の多くは予後不良であるといわれています。
症状
胸水が貯留すると肺が圧迫されるため、胸の痛みや呼吸困難などの症状が出現します。さらに胸水が大量に溜まると心臓を圧迫し、心不全を招く恐れがあります。
検査・診断
X線やCTなどの画像検査などで胸水の有無を確認したあとは、胸水を採取してがん細胞の有無を確認する“胸水細胞診”を行います。細胞診で悪性細胞が証明できれば確定診断に結びつくほか、胸水の腫瘍マーカーが高値であれば、がん性胸膜炎であることがある程度推定できます。
細胞診の結果が陰性であってもがん性胸膜炎の疑いが残る場合は、胸膜の一部を胸腔鏡や開胸外科手術などで採取し、顕微鏡でがん細胞の広がりなどを調べる“胸膜生検”を行うこともあります。
治療
症状やその程度に応じて抗がん剤治療や胸腔ドレナージ、胸膜癒着術が行われます。
抗がん剤治療
現在発症しているがんに対し、有効な抗がん剤を使用します。
胸腔ドレナージ
胸水の貯留によるや呼吸困難がみられる場合には、胸腔内にカテーテルを挿入し、胸水を排出する”胸腔ドレナージ”が行われます。ドレナージが成功すれば、潰れていた肺が再び膨らみ呼吸が楽になります。
胸膜癒着術
全身状態が比較的良好な患者の場合、肺と胸膜を癒着させることで再び胸水が溜まるのを予防する”胸膜癒着術”を行うこともあります。胸膜癒着術では、胸腔ドレナージにて可能な限り胸水を排出したのち胸腔内にタルクなどの薬剤を注入します。薬剤によって壁側胸膜と臓側胸膜に炎症が起きて双方の胸膜が癒着するため、胸水が貯留するスペースがなくなります。
予防
すでにがんを治療中の場合は、原疾患のコントロールが胸膜炎の予防につながるため、抗がん剤など適切な治療を続けることが重要といえるでしょう。また、早期発見や別の病気を見逃さないためにも、胸の痛みや咳、呼吸困難などの異常が現れたら速やかに医療機関を受診しましょう。
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