がん性胸膜炎とは、がんを原因に肺を覆う胸膜と胸壁側を覆う胸膜の間(胸膜腔)に胸水が異常にたまる病気で、悪性胸水とも呼ばれます。胸水は健康な体にも少量存在し、肺の動きをなめらかにする潤滑油的な役割を持ちますが、がん性胸膜炎になると胸水の量が増え、肺や心臓が圧迫されることによって、主に胸の違和感や咳、痛みなどが現れます。がん性胸膜炎を引き起こしやすいがんの種類には、肺がん、乳がん、悪性リンパ腫、悪性胸膜中皮腫(胸膜に発生する悪性腫瘍)などがあります。
このページでは、がん性胸膜炎と診断された場合のがんのステージや、がん性胸膜炎が発生する仕組みなどについて解説します。
胸膜炎とは、肺の表面を覆う胸膜に炎症が生じることによって胸水がたまる病気です。がん性胸膜炎の場合、がんの進行によって胸膜炎が発症します。がんでは、病気の進行度合いを0〜IVまでの“ステージ(病期)”で示すことが一般的です。胸膜の悪性腫瘍である悪性胸膜中皮腫を除いて、通常がん性胸膜炎を発症しているがんのステージはIV期です。
たとえば、肺がんの場合、肺に生じたがんが胸膜まで広がり、肺表面の胸膜を越えてがん細胞が胸腔内にこぼれ、胸腔内でがんが広がることによってがん性胸膜炎が発症します。がんが肺から離れた臓器に転移(遠隔転移)のある状態と同様、がん性胸膜炎はステージIVと診断されます。
胸膜は“臓側胸膜”と“壁側胸膜”からなっており、その間にある胸膜腔には、もともと少量の胸水があります。通常、胸水は壁側胸膜から産生され、臓側胸膜に吸収されることによりそのバランスを保っています。しかし、胸膜炎になると胸膜からの浸出液が過剰に胸膜腔に流れ出すようになり、胸水の産生・吸収のバランスが崩れ、その結果胸水が必要以上にたまるようになります。
胸水が大量にたまると肺や心臓を圧迫し、さまざまな症状が現れます。特に、がん性胸膜炎で生じやすい症状は呼吸困難といわれています。
がん性胸膜炎と診断された場合、肺がんや悪性胸膜中皮腫(悪性胸膜中皮腫では手術治療を選択することもある)では、まず抗がん剤による薬物療法が検討されます。ただし、たまっている胸水の量が多い場合や症状が強く現れている場合には、入院して以下の治療を行うことで胸水を排出してから薬物療法を行います。
胸にドレーンと呼ばれる管を挿入し、胸膜腔内の胸水を外に排出する治療です。
ドレーンには、排出された胸水をためておくための“ドレーンバッグ”がつながれます。この治療は胸水を勢いよく排出すると肺水腫(急激な呼吸困難)の原因となるおそれがあるため、症状をみながら時間をかけてゆっくり胸水を排出することが大切です。
胸腔癒着術は、胸水が繰り返したまってしまう方に対し、胸腔ドレナージ後に行うことが一般的です。胸水を排出するために挿入したドレーンから専用の薬剤を注入することによって、臓側胸膜と壁側胸膜を癒着させ、再び胸水がたまることのないようにします。
この治療では薬剤を注入した後、一時的に胸の痛みや発熱が生じることもあります。
がん性胸膜炎は、ほかの胸膜炎と違い、がんの進行した病態であるので予後が悪いといわれています。そのため、すでにがんと診断されている方ががん性胸膜炎を予防するためには、もととなるがんの治療を速やかに行い、病気のコントロールを行うことが大切です。治療中、胸の違和感や咳、息苦しさ、痛みなどの症状が現れた場合には担当医師に相談するようにしましょう。
また、現段階でがんの診断を受けていない方でも、アスベストに関わる仕事をしていた方やアスベストを扱う工場の近隣に住んでいたことのある方は、がん性胸膜炎を引き起こしやすいがんである“悪性胸膜中皮腫”になることがあります。そのため、定期的に検査を受けるなどの健康管理を心がけましょう。
がんになると、病気の種類に応じてさまざまな症状が起こることがあります。症状を早期に発見して治療を行うためにも、増悪する症状や今までにない気になる症状が現れたときは担当医師に相談することを心がけましょう。
自身の病気の状態や治療の内容について分からないこと、不安なことがあれば担当医師に質問し、納得したうえで治療を受けることを心がけましょう。
日本大学医学部附属板橋病院 呼吸器外科 部長、日本大学医学部外科学系呼吸器外科学分野 主任教授
日本大学医学部附属板橋病院 呼吸器外科 部長、日本大学医学部外科学系呼吸器外科学分野 主任教授
日本呼吸器外科学会 呼吸器外科専門医日本胸部外科学会 会員日本外科学会 指導医・外科専門医日本呼吸器内視鏡学会 気管支鏡指導医・気管支鏡専門医
肺がん患者さんの根治を目指して
山梨医科大学(現山梨大学)を卒業後、国立がんセンター(現国立がん研究センター)でのレジデント時代に627例の手術を経験。現在までに通算2,000例以上の手術を経験し、2016年より日本大学医学部外科学系呼吸器外科学分野 主任教授に赴任し、後進の育成に力を注ぐ。国立がんセンター時代に描いた手術記録は全国的に高く評価されており、その絵は静岡がんセンターの電子カルテや肺癌取扱い規約などにも使用されている。
日本大学医学部呼吸器外科HPはこちら
http://nichidai-kokyukigeka.com/
櫻井 裕幸 先生の所属医療機関
関連の医療相談が10件あります
騒音性難聴と耳鳴り
1年くらい前から耳鳴りがきになり耳鼻科を受診したら騒音性難聴とのことでした。その後テレビがついていたり雑音があると会話が聞き取りにくく、仕事中どうしてもなんかしら雑音があるため聞き取りにくく聞き返すことが増えてこまっています。時々耳抜きができないような詰まった感じがすることも増えました… 加味帰脾湯という薬を処方されましたが改善しません… ほかの病院を受診してみるべきですか? あと、耳の感じはとても説明しにくいです。症状を伝えるのになにかアドバイスあったらおしえてほしいです…
腺癌の専門の病院
今日 結果を聞いて抗がん剤治療をします。と言われたが、ほかにどんな治療があるか知りたい
前立腺がんの治療
58才psaが5でしたが家系から検査を進められ生検の結果、MRIの怪しい所がガンであると診断されました。1/21にctに行きますが選択肢とデメリットを整理したいです。
潰瘍性大腸炎20年経過、異形性疑い
こんばんは、初めまして 潰瘍性大腸炎を20年患い、ここ5年は落ちついていましたが、今年の夏前後に血便がでたりしました。 先月からは、またよくなりましたが、 内視鏡検査で、新しい病変がみつかり細胞診になりました。結果は3週間かかるそうです。昨年はコロナで検査はなしで、一昨年はそこには何もありませんでした。 異形性かしらべるようです。 とて不安です。今後どうなるか気になっています。
※医療相談は、月額432円(消費税込)で提供しております。有料会員登録で月に何度でも相談可能です。
「がん性胸膜炎」を登録すると、新着の情報をお知らせします
「受診について相談する」とは?
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。