がんと診断されたら、病気のことや生活のこと、仕事のことなどさまざまな不安が生じることでしょう。なかでも今後の仕事については「治療を受けながら働くことはできるのか」「今までのように働くためにはどうすればよいのか」など、さまざまな不安や疑問が生じると思います。そこで本記事では、がんと診断されたときの仕事との向き合い方や生じてくる問題への考え方、治療と仕事を両立するための両立支援制度などについて説明します。
がんと診断されると、ときにがん治療によって今までの生活が一変し、治療を受けながら働き続けることが困難になることもあります。しかし、近年は医療の進歩や支援体制の整備などによって働きながらがん治療を受ける人も少なくありません。厚生労働省によれば、治療と仕事を両立している人の数は2010年時点で32.5万人もいると推定されています。そのため、まずは自身のがんの状態を理解し、これから受ける治療について主治医と話し合ったうえで、仕事と治療の両立をどうすればよいか相談するとよいでしょう。
以下では、治療を受けながら働く・辞めるなどの重大な決断の前に、まずやっておきたいことについて説明します。
がんにはさまざまな種類があります。また、同じ種類でも進行度合いやタイプの違い、患者自身の体の状態などによって治療方針や予後が異なり、人によっては治療をしながら働くことが可能な場合もあります。
そのため、まずは治療を開始する前に、自身の具体的な治療方針のほか、治療にかかる期間や費用、副作用のこと、今後の治療スケジュールなどについて担当医に質問をして十分に理解しましょう。このとき、知りたいことを箇条書きにしたメモなどを受診時に持っていくとよいでしょう。
がんと診断された後は気持ちが不安定になったり、この先のことについて悩みすぎてしまったりすることがあります。このような場合は1人で抱え込まずに、家族など周囲の人や専門の機関などに相談することも検討しましょう。
一番身近に相談できるのは、がんと診断された医療機関のがん相談支援センターです。治療法についての質問や、治療費などの金銭面について悩み事がある場合、どうしても中止できない仕事がある場合など、さまざまな相談に乗ってくれるはずです。ほかの病院で診断された患者の相談に乗ってくれるところもあるので一度検討してみるとよいでしょう。また、がんとどのように向き合っていくかを知るためには、がん患者が集まる患者会などに参加し、ほかの患者と関わることを検討してみるのもよいでしょう。特に治療費や治療以外に必要な費用のことについては、健康保険窓口、生命保険会社などに相談してみることも大切です。
【日本対がん協会】がん相談ホットライン※1
【グループ・ネクサス・ジャパン】オンライン支部
【日本対がん協会】サバイバーネット※2
【特定非営利活動法人5years】5years※2
※1新型コロナウイルス感染防止対策のため、当面の間、相談受付日時を縮小中
※2会員登録必要
がんにかかると高額の治療費がかかる可能性があるほか、もし治療などによってこれまでどおりに働けなくなった場合は、収入が減ってしまう可能性が懸念されます。そこで、今後の支出・収入について考えておくことも必要です。
金銭面で困ることがあった場合には、国の制度を利用することによって援助を受けられる可能性があります。自分が使える制度を調べて活用することも検討しましょう。
前述のとおり、がん治療と仕事を両立しながら働いている場合も多いです。しかしこの場合、これまでにない困難を抱えることもあります。近年は患者が治療と仕事を両立できるようさまざまな取り組みが行われており、その中の1つに両立支援というものがあります。そのため、まずは治療している医療機関の医師、医療ソーシャルワーカー(MSW)、がん相談支援センターなどへ確認してみることも重要です。
現在、厚生労働省では、がんの治療を続けながら仕事を両立できる社会を目指し“治療と仕事の両立支援”を推進しています。
具体的な活動内容としては、事業所やがん診療連携拠点病院などにはたらきかけ、がん患者が治療と仕事を両立できるような環境づくりや、就労について相談できる窓口の配備、がん治療によって離職した場合に再就職できるような支援などを行っています。事業所からの勤務情報提供書や医師からの主治医意見書などを用いて病院と事業所のコミュニケーションをとり、治療と仕事の両立を進めていく仕組みも作られています。これにより会社にも病状を説明しやすくなり、がんの治療もやりやすくなります。
がん治療では、一時的な休職が必要になったり、副作用などのためにこれまでどおり働けなくなる場合が出てきます。会社の理解や協力を得るためにも、今後の治療の見通しなどについて会社へ報告することを検討しましょう。
会社の人に病気のことを話す前に、会社の就業規則に目を通しておきましょう。治療休暇・病気休暇など休職の取り扱いや復帰後の試し出勤制度、短時間勤務制度、在宅勤務の可否などを確認し、必要に応じてこれらの制度を活用することも大切です。また、就業規則を見ても分からないことは会社に直接確認しましょう。
休職が必要な場合などには、どれくらいの期間が想定されるのかなどについて明確に伝えておくことが大切です。病名を公表するかどうか、会社の人にどこまで話すかなど、悩むこともあるため、事前に誰にいつ何を伝えるべきかを整理しておくようにしましょう。
また職場に報告する際は主治医とも相談し、仕事を両立できるのか、両立する場合どのような配慮が必要なのかについて、確認しましょう。これには、前述の両立支援の主治医意見書などを使用することにより正しく伝えることも可能となります。
がん治療を受けながら働く際は心身共に負担がかかることが想定されるため、これまでと同じように働くことは難しいかもしれません。しかし、周囲の人や専門の機関のサポートを受けることにより、負担の少ない働き方を実現できる可能性もあります。まずは1人で悩まず周囲に相談してみることを心がけましょう。
岡山ろうさい病院 腹部外科部長・消化器病センター長・治療就労両立支援部第二部長
岡山ろうさい病院 腹部外科部長・消化器病センター長・治療就労両立支援部第二部長
日本外科学会 外科専門医・指導医日本消化器外科学会 消化器外科専門医・消化器外科指導医日本胸部外科学会 認定医日本医師会 認定産業医日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
消化器外科医として自分が受けて納得できるような治療を目指して日々の診療に取り組む医師の一人。四国がんセンターでの診療をきっかけに上部消化管手術、膵臓手術などを中心に治療を行っている。岡山ろうさい病院に着任後は、消化器外科医として治療を行うなかで、治療後の就労困難な方々の存在を知り、労働者健康安全機構の研究、モデル事業などを担当している。また、鼠径ヘルニアや腹壁瘢痕ヘルニアの治療にも力を入れている。
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