
近年の医療の進歩により、がんを早期発見・治療できるようになってきました。がんの種類やステージによってばらつきはありますが、今ではおよそ6割のがん患者さんは診断から5年経過しても元気に日常生活を送っているといわれています。しかし、治療を受けて一度は治ったように見えても、再発することも少なくありません。なぜ治療を受けても再発という心配は残るのでしょうか。
本記事では、がん治療後の再発のしくみや再発しやすいがんの種類、再発後の治療方法などについてお伝えします。
がんの治療では、主にがんを取り除いたり、小さくしたりして治療します。たとえば手術でがんを取り除く場合、目に見えるがんを手術で全て取り除けたとしても、目に見えない微細ながんが残ったり、目に見えないところで転移があったりして体の中にがんが残り、それが大きくなることで再発が生じます。
また、抗がん剤治療(化学療法)や放射線治療には、がんを小さくしたり、場合によっては消したりする効果が期待できます。しかし、抗がん剤治療や放射線治療をしても、再びがんが大きくなることで再発してしまうことがあります。再発が懸念されるときは、がんを取り除く・小さくする治療のほか、再発予防のための治療が行われますが、それでも再発してしまうときもあります。
再発しやすいがんの特徴として、がんが進行し大きくなってから治療をした場合が挙げられます。また、がん発見時にすでにほかの臓器などにがんが広がっている場合、一度は治療でがんを取り除くことができたとしても再発しやすいです。病初期から中期までに治療ができれば、再発の確率も低くなります。
また、がんの種類によっては、あらかじめ再発のリスクが分かっているものもあります。たとえば、肝臓がんの一種である“肝細胞がん”は、手術から5年以内に再発する確率が70〜80%と高確率で、再発のほとんどは同じ肝臓内で生じます。肝細胞がんの多くは肝炎ウイルスによる慢性肝炎・肝硬変などが影響しており、これが治らない限り再発のリスクがなくならないといわれています。
がんが再発する確率の高い期間は、多くのがんで診断から5年以内といわれています。ただし、5年再発がなければ今後も絶対に再発しないというわけではなく、あくまで5年経過すると再発の確率が下がるということです。また、がんの種類によっては、5年以上経過しても再発のリスクが高いものもあります。たとえば、乳がんでは手術から10年間におよそ30%の患者さんで再発するといわれています。
5年生存率とは、がんと診断された人のうち5年後に生存している人の割合のことです。がんでは5年生存率を用いて、そのがんにかかった場合の平均的な余命を表します。国立がん研究センターが出している2010〜2011年の5 年生存率集計の報告書によれば、全てのがんを合わせた5年生存率は58.8%です。がん患者さんの多くが診断から5年以内に命を落とし、5年後以降はそのがんで亡くなる確率が減るため、この数値が使用されています。この5年という数字は、再発の確率が高い期間とも合致します。
一部のがんでは、手術前後に抗がん剤による化学療法や放射線療法を行うことによって再発のリスクが下がることが分かっています。このように、再発を予防するために行われる治療のことを“補助療法”といいます。
今のところ、がんの再発予防に効果があると認められた生活習慣はありません。しかし、米国対がん協会が2012年に公表した『がんサバイバーのための栄養と運動のガイドライン』*では、がん治療後の生活指針として以下のようなことが推奨されています。
*CA. Cancer. J. Clin. 2012; 62: 30-67
再発したがんは根治を目指した治療が可能な場合もあれば、残念ながら根治が難しい場合もあります。根治が難しい場合、がんによる症状を和らげ、がんの進行を抑えるための治療が行われます。
再発後の治療は、患者さんの希望をもとに医師と相談しながら決めていくことが一般的です。そのため、症状や副作用について、自分の気持ちや生活についてなど、悩みや希望があった場合はできる限り担当医に打ち明ける姿勢が大切です。
順天堂大学医学部附属順天堂医院 がん治療センターセンター長・化学療法室室長、順天堂大学医学部附属順天堂医院 腫瘍内科 科長、順天堂大学大学院医学研究科 臨床腫瘍学 教授
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