
日本では、1年におよそ100万人の人が新たにがんと診断され、およそ37万人の人ががんで命を落とし、日本における死亡原因の第1位になっています。がんを早期発見するためには、がん検診を受けることが有用です。検診とは、特定の病気にかかっているかを調べる検査のことで、まだその病気にかかっているか分からない、症状のない人を対象に行われます。検診に似た言葉で“健診(健康診断)”がありますが、こちらは特定の病気ではなく、その人の健康状態を総合的に調べる検査です。
本記事では、がん検診の目的や種類、検診を受ける方法について詳しく解説します。
がん検診の目的は、がんを早期に発見し治療することでがんによる死亡率を減少させることです。
がんは早期に発見し治療することで、予後がよくなる確率が高い一方、初期段階では無症状で、症状が出た頃にはがんが進行していることも少なくありません。そのため、症状のないうちにがん検診を受けることが、がんの早期発見には大切です。
前述のとおり、がん検診は症状のない人を対象とした検査です。そのため、気になる症状がある場合は、検診ではなく早めに病院を受診するようにしましょう。
がん検診は、国が推奨し自治体が実施する“対策型検診”と、医療機関で提供される“任意型検診”の2つに大別されます。
対策型検診は、がんによる死亡率を下げる目的で行われる公的な医療サービスです。1例として、市区町村などで行われる住民検診が挙げられます。公的な予防対策であるため、検診にかかる費用は無料か自己負担額が少額で済むようになっています。
日本では、科学的に死亡率減少効果という有効性が立証されている5種類のがん検診の受診を推奨しています。対策型検診を受けることができるのは、その市区町村に住む人、検診を受けるべき年齢などの条件を満たしている人です。また、検診は市区町村・勤め先などで指定された医療機関で行われます。
任意型検診は、がんによる個人の死亡リスクを下げる目的で行われる医療サービスです。1例として、医療機関で提供される人間ドックが挙げられます。任意型検診は、医療機関が任意で提供している医療サービスであるため、検診でかかる費用は基本的には全て自己負担となります。また、任意型検診は、住まいや職業・年齢に関係なく受けることができます。検診を受ける場合は、医療機関や検診機関などに行くことになります。
対策型検診の場合、市区町村の住民検診であれば、市区町村からの郵送物でがん検診の案内が来たり、ホームページで日程などの詳細が記載されていたりすることが多いです。これらを確認し、電話、郵送、インターネットなどでがん検診を申し込めば受診可能です。
任意型検診の場合、人間ドックなどを行っている医療機関に申し込みを行うことで受診できます。各医療機関で行われる検査は内容などが異なるため、注意しましょう。
勤め先で年1回行われる健康診断と同時にがん検診を行っている場合には、個人で予約する必要はなく、自動的に受診することが一般的です。また、職場によっては、福利厚生として人間ドックなどの任意型検診が受けられることもあります。ただし、職場によっては、健康診断は行っていてもがん検診は実施していないというところもあるので、その場合は市区町村のがん検診を受診することを検討しましょう。
がん検診には大きく3つの注意点があります。
がん検診を受けても、がんが100%見つかるわけではありません。がんのできる部位や種類によっては、検診で見つけることができない可能性もあります。
がん検診の結果、異常ありなどとなった場合は、精密検査でさらに詳しく検査されます。ただし、実際には精密検査を受けても“がんではなかった”という結果になる人も多くみられます。そのため、考え方によっては、不要な検査を受けることになるともいえます。
命に影響のない小さながんまで発見され、治療が行われることがあります。がんといえば、命に関わる病気のイメージが強いですが、実はがんの中には進行せず消えてしまうがんやそのままとどまるがんなど、命に大きく関わらないがんもあります。しかし、現段階ではどんながんが命に関わり、どんながんが命に影響がないかを判断することはできません。そのため、検診で見つけたがんはどんながんでも多くは治療することになります。
がん検診は症状のない人が定期的に受けることにより、がんの早期発見につながり、がんで亡くなる人の数を減らすことができます。特に、国で推奨されている5種類のがん検診は、該当する年齢になったら必ず受診しましょう。
また、がん検診の結果、異常ありなどとなった場合、診断されるのを恐れて受診を先延ばしにする方もいます。しかし、その間にがんが進行して適切な治療を受けることができなくなる可能性もあるため、早めに受診し医師の指示にしたがって必ず精密検査を受けましょう。
一般財団法人 淳風会 理事、淳風会健康管理センター センター長
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