静岡県中部の医療

増加する大腸がん、志太榛原地域でどのように医療を完結するか

増加する大腸がん、志太榛原地域で
どのように医療を完結するか

大腸がんの患者数は年々増加傾向にあり、国や市区町村は大腸がん検診の受診率向上に取り組んでいます。焼津市の属する志太榛原しだはいばら医療圏では大腸がん検診の受診率は全国平均をやや上回っているものの、静岡県全体の受診率と比べると低い状況です。

また、治療については隣接する静岡医療圏の医療機関で受ける患者さんもおり、検診受診率の向上および地域の医療ニーズに応えるための対策が重要といえます。大腸がん治療では特に急性期医療を担う公立病院が大きな役割を担っていますが、治療実績などが患者さんや民間病院の医師に知れ渡っておらず、広い地域を視野に入れた連携体制の構築が推進されています。

地域に適切な医療を届けるため、各医療機関は引き続き病院同士の情報共有および連携体制の強化に取り組み続ける必要があるといえるでしょう。

静岡県中部の医療を支える
焼津市立総合病院

安心した生活のため医療者として地域に尽くす

市内唯一の総合病院として質の高い医療を実践する

当院は1958年の開設以来、時代や地域医療のニーズに対応すべく診療科の拡充や病院建物の増改築、医療機器の導入を行ってきました。地域に急性期医療を提供する公立病院としてスタッフ一同が研鑽を重ね、患者さんに安心・安全な医療を提供できるよう日々の業務にあたっています。自身の専門分野での診療はもちろん、ほかの専門分野のサポートも行い、各医師の診療の幅が広いことが特徴の1つです。

質の高い医療の提供を実践する病院として病院機能評価や卒後臨床研修評価などの外部認定も取得しています。理念でもある『より良い医療の提供を行うとともに、市民の健康増進に貢献することで、市民の信頼に応えます。』という思いに基づき、地域の皆さんに信頼され、その信頼に応えることができる病院を目指してスタッフ一同これまで以上に努力を重ねてまいります。

院長プロフィール

静岡県中部の
大腸がん治療

大腸がんの早期発見

あらゆる検査方法で検診受診率向上と早期発見に努める

大腸がんは近年増加傾向にあるがんで、当院でも治療を受けられる患者さんが増えています。発症の原因の1つとしては、欧米風の食生活が挙げられます。肉類や乳製品などに含まれる動物性脂肪はがんの発生に影響を与えるうえ、発がん予防効果が期待できる食物繊維の摂取量が少なくなりがちであることから、欧米風の食生活は大腸がんの発症リスクを高めるといわれているのです。

大腸がんは、早期の段階で自覚症状が現れることはほとんどありません。血便や腹痛など自覚症状が現れた頃にはすでに進行がんになっている可能性が高いがんですので、症状が現れる前に発見することが重要です。早期発見ができれば根治が目指せる病気ですが、部位別に見たがんの死亡数は男女共に毎年1~3位で、いかに早期発見がかなえられていないかが分かります。排便の異常(便秘や下痢)が度々起こったり、ガスや便が出る前にキューっとお腹が痛み、出たら楽になったりするような症状がある場合は、早めに消化器内科を受診いただくことをおすすめします。

大腸がんの早期発見

大腸がんを早期発見するためには定期的に健康診断で便潜血検査を受けていただくことが有用です。そして、異常を指摘された場合は、必ず精密検査(大腸内視鏡検査)を受けるようにしましょう。大腸がんの進行スピードはほかの消化器がんと比べて比較的遅いといわれているものの、腫瘍しゅようが大きくなればなるほど成長も早くなります。最初は月単位で進んでいても、やがて日単位で進行するようになりますので、「痔だから」「きっと大丈夫」などと済ませずにしっかりと精密検査を受けていただきたいと思います。どうしても大腸内視鏡検査がつらいという方は、大腸CT検査(CTコロノグラフィ)や小腸カプセル内視鏡検査という選択肢もありますので、ぜひ当院にご相談ください。
大腸がんにならないよう日頃の食生活に気を付けたいものですが、今の習慣を変え、さらに長続きさせるのはなかなか難しいものです。そうなると現実的なのは、定期的に健診(検診)を受け、少しでも人生の不安を取り除くことではないでしょうか。ご自身の健康状態を定期的にチェックする習慣をつけていただき、何か異常があった場合は早い段階で治療ができるようにしておきましょう。

解説医師プロフィール

大腸ポリープ・早期がんの検査と治療

“安全第一”をモットーとした内視鏡検査・治療に尽力

大腸内視鏡検査をした結果、大腸ポリープや大腸がんを疑う腫瘍が見つかることもあります。大腸ポリープは良性のものもあり必ずしも治療が必要なわけではありませんが、良性と判断できないポリープや10mmを超えるような腫瘍については切除し、病理検査を行います。ポリープや腫瘍の切除方法には、主に内視鏡的ポリープ切除術(ポリペクトミー)・内視鏡的粘膜切除術(EMR)・内視鏡的粘膜下層剥離術ないしきょうてきねんまくかそうはくりじゅつ(ESD)という方法があり、当院ではどの治療も可能です。

大腸ポリープ・早期がんの検査と治療

大腸の壁は5mmほどの厚さしかなく、ポリープや腫瘍を切除する際はどのような手法で取り除くのかが重要です。中には大腸内に平たく広がっているものなど、簡単に切除ができない腫瘍が発生しているケースもあり、その場合は大腸の壁に穴を開けないよう慎重に削り取らなくてはなりません。当院では日本消化器内視鏡学会認定の消化器内視鏡専門医*が治療をするうえ、判断が難しいポリープについては医師が複数人で確認を行うことで、安全第一の治療が提供できるよう努めています。

*消化器内視鏡診療に関する豊富な学識と経験を有する者。

病理専門医との連携により迅速かつ確実な診断を目指す

ポリープを切除した後は、そのポリープが良性か悪性(大腸がん)か、また大腸がんの場合は追加で手術が必要なのかどうかを判断するために病理検査を行います。病理検査とは採取した組織を顕微鏡で観察し、細胞の性質を詳しく調べる検査のことです。中には診断が難しい組織の場合もあり、確実に診断するためには病理医の知識と経験、そして各科の医師の連携が欠かせません。当院では日本病理学会認定病理専門医が診断を担当しているため、常に消化器内科および外科との連携が取りやすい体制が構築できています。病理医が在籍している医療機関は多々ありますが、当院には大腸がんの診断を得意とする常勤の病理専門医がおり、より確実な診断を目指せる体制が構築できています。診療に関わる全員の強固な連携によって、必要な治療へと素早くつなぐことができる体制は当院ならではの強みです。

解説医師プロフィール

進行大腸がんの手術

ロボットの導入で低侵襲かつ根治性の高い治療提供に努める

当院では2023年より大腸がん(直腸がん・結腸がん)に対するロボット支援下手術(以下、ロボット手術)を導入しました。大腸がんの手術はこれまで開腹手術や腹腔鏡下ふくくうきょうか手術で対応をしてきましたが、ロボットの導入によって3つの手法の中からより適切な治療方法をご提案できるようになりました。

大腸がん患者さん・ご家族へのサポート

ロボット手術はお腹に小さな穴を開けて、その穴にカメラや医療器具を挿入して手術を行う治療方法です。腹腔鏡下手術も小さい傷口で手術ができる低侵襲ていしんしゅう(体への負担が少ない)な治療方法ではありますが、ロボット手術ではより精密な治療が可能です。ロボット手術の場合、術部はモニタ上に3Dで映し出されるうえ、ロボットにはモーションスケーリング機能が備わっています。モーションスケーリング機能とは、医師の手の動きを縮小して伝える機能のことで、たとえば医師が手を3cm動かしたとしてもお腹の中の医療器具は1cmだけ動くようになっています。

さらに、手ぶれ防止機能も備わっているため、従来の手術よりさらに繊細で正確な手術が可能です。大腸がんの手術は腫瘍や周囲の臓器を傷つけることなく病変をきれいに取り切ることが大原則であり、直腸がんの場合はそれらを狭い骨盤の中で完結させなくてはなりません。その点、細かな動きができるロボット手術は、まさに大腸がんの手術に適した手術方法だといえます。

大腸がん患者さん・ご家族へのサポート

“ロボット手術”という言葉自体は徐々に知られてきている印象ですが、実際の治療方法についてご存じの患者さんは少なく、そのような状態で治療選択をするのは不安が伴うはずです。当院では、ロボット手術について解説する1分ほどの動画を作成し、患者さんやご家族に観ていただいています。動画では手術室に患者さんが入る様子や実際にロボットが動く様子を観ることができます。治療方法について理解を深めていただくことで、少しでも患者さんが不安なく治療に臨むことができればという思いで作成しました。不安なことや気になることがあればじっくりお話を伺いますので、ぜひ我々にご相談いただければと思います。

強固な他科連携で治療困難な症例にも対応

直腸の周囲(骨盤の中)には子宮や卵巣、前立腺などの臓器があり、がんの進行度合いによってはそれらの臓器にも影響が及びます。そのような場合、婦人科や泌尿器科との合同手術が必要になりますが、当院では他科との連携がスムーズであり、各科の医師がこれまで培った知識や技術を生かして治療にあたります。また、静岡県難病医療協力病院に指定されており、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎かいようせいだいちょうえん・クローン病)の診療にも注力しています。炎症性腸疾患の治療は基本的に消化器内科が担当しますが、長い経過をたどると大腸がんを発症する可能性があり、その場合は外科も治療に加わります。難病を機に発症した大腸がんについては、通常の手術と異なった知識や技術が必要とされますが、当院では内科・外科含め包括的にフォローができる体制を整えています。

解説医師プロフィール
  • 公開日:2024年6月17日
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