専門的な医療から救急医療まで幅広く対応する
順天堂大学医学部附属順天堂医院

ロボット支援下手術に注力――がん・難病への多角的なアプローチも強み
当院は、1838年に佐藤泰然が開いた医学塾である“和田塾”がルーツになっている、順天堂大学の附属病院です。長きにわたり医学部を中心とした医療人育成とよりよい医療の実践に取り組んできました。“がん”“難病”“救急医療”の3領域を柱とし、いずれにおいても患者さんの生活を支える質の高い医療の提供を目指しています。
当院では、手術支援ロボットを計5台(da Vinci 3台、hinotori 2台)活用しており、10の診療科で年間900件を超えるロボット支援下手術を行っています(2024年度実績)。これだけの数のロボットを導入したことにより、幅広い領域で低侵襲な治療を提供できる点が当院の強みです。
また、当院では難病の診療にも力を入れています。脳神経内科や膠原病・リウマチ内科、消化器内科を中心に、現在は300以上の病気に対応しており、東京都難病相談・支援センターや難病医療ネットワークの東京都難病診療連携拠点病院として、医療機関同士の連携支援にも力を注いでいます。

AIやバーチャル技術を活用し
医療DXを推進
デジタル技術の活用も積極的に進めており、患者さんの疑問に対してリアルタイムで案内を行い、初診の流れをサポートするAIコンシェルジュを導入しています。加えて、順天堂バーチャルホスピタルという仮想空間も構築しています。ここは院内構造を再現した3D環境になっており、AIコンシェルジュと連携した案内機能を提供しています。
がんであっても、難病であっても、あるいは救急であっても、ご本人が望む生活に戻ることを前提に、医療者が支援していく環境づくりが必要です。そうした意味でも、患者さんが“あきらめずにいられる医療”を提供できる体制を今後も整えていきます。地域の患者さんや先生方にとって“相談できる病院”であり続けられるよう、今後も歩みを止めず、変革と信頼を積み重ねてまいります。

順天堂大学医学部附属順天堂医院における
子宮がん・網膜硝子体疾患・
頭頸部がん・慢性炎症性皮膚疾患の治療
子宮がんの治療
治療開始までを迅速に――幅広い選択肢からよりよい治療を選ぶ
子宮がんには、大きく分けて子宮頸がんと子宮体がんの2種類があります。
初期の子宮頸がんは、ほとんど自覚症状がなく特に注意が必要です。進行すると不正出血や性交時の出血、痛みなどが現れますが、症状が出てからでは病状が進んでしまっていることも少なくありません。子宮頸がん検診は、がんになる前の段階(異形成)や、ごく初期の段階で発見できる非常に有効な手段です。早期に見つけることができれば、妊娠する力(妊孕性)を残せる可能性が高まりますので、定期的な検診とワクチン接種をぜひ前向きに検討していただければと思います。

当院では、患者さんの不安を少しでも早く取り除くため、診断から治療開始までのスピードを重視しています。基本的には、初診から1か月以内には手術を行える体制を整えており、放射線治療の場合はさらに早く開始できることもあります。手術は、患者さんのご年齢や全身状態、ご希望に合わせてよりよいと思われるものを選択します。
早期の子宮体がんは腹部の穴から器具を挿入して行うロボット支援下手術の適応になります。お腹の傷は開腹手術よりも小さく、入院期間も4泊5日程度と、開腹手術(通常1週間程度)よりもやや短くなります。

子宮頸がんの手術に関しても慎重な判断を行っています。腫瘍の大きさや進行度によっては、開腹手術のほうが適している場合があるため、低侵襲にこだわりすぎることなく患者さんにとって、より安全性と根治性が高いと思われる方法を提案しています。また、手術以外の治療に関しても、放射線治療医や病理医、画像診断医とカンファレンスを行い、迅速に方針を決めています。
妊娠する機能を残す治療に尽力――産科とも密に連携
妊娠を望まれる患者さんに対しては、妊孕性温存治療に取り組んでいます。たとえば、若年の子宮体がんの方には、子宮内膜を削る治療とホルモン療法を組み合わせることで、子宮を残す治療を選択できる場合があります。また、子宮頸がんでは、子宮頸部の組織を円錐状に切除する円錐切除術においても、切り取る範囲が広いと早産のリスクが高まるため、病変の広がりを慎重に見極め、必要な部分だけを切除するなど細心の注意を払っています。

写真:PIXTA
“赤ちゃんを無事に出産していただくこと”が最終的な目標であるため、当院では産科チームや不妊治療の部門ともシームレスに連携しています。がん治療後の不妊治療から出産、周産期管理まで、1つの病院内で行っていることは当院の大きな特徴の1つですので、安心して任せていただければと思います。
がんと診断されると、誰もが大きなショックを受けられると思います。ですが、患者さんに合わせたさまざまな治療がありますので、決してあきらめずご相談ください。私たちは、標準治療を提示しますが、それを押し付けることはありません。「手術は怖い」「放射線治療は避けたい」といった、患者さんご自身の正直な気持ちやライフスタイルに耳を傾け、その中でよりよい選択肢を一緒に探していきます。

網膜硝子体疾患の治療早期発見と適切な治療が大切――違和感は放置せず受診を


目はものを見るための非常に重要な臓器です。中でも目の奥にある網膜は、カメラで例えるとフィルムの役割を果たす大切な組織です。網膜は、一度傷ついてしまうと再生することはありません。そのため、網膜硝子体の病気にかかった場合、適切なタイミングで治療を受けなければ、失明に至る恐れもあります。

イラスト:PIXTA
網膜や硝子体の病気は、加齢に伴って発症するものが多くあります。眼球の中を満たしているゼリー状の組織“硝子体”は、加齢とともに変化し、網膜から離れていきます。その際に網膜が強く引っ張られ、裂け目(網膜裂孔)ができることがあります。網膜剥離は、この裂け目から目の水が入り込み、網膜が剥がれてしまう病気です。
黄斑円孔は網膜の中心にあり、文字を読んだり、細かい物を見たりするために重要な黄斑に穴が開いてしまう病気で、黄斑前膜は黄斑の表面に膜が張ってしまう病気です。
現在の網膜硝子体手術は技術の進歩により、局所麻酔を用い、短時間かつ小さな傷口で行えるようになっています。早期に発見し、適切な治療を行うことができれば、視機能を維持・改善できる可能性は十分にあります。違和感を覚えた際には放置せず、眼科専門医*へ相談することが何より大切です。
眼科専門医:日本専門医機構が認定。
年齢や症状に合わせて術式を選択する
網膜硝子体疾患の主な治療は手術となります。当院では患者さんの年齢や病状に合わせ、適切な術式を選択しています。年配の患者さんの網膜剥離や黄斑円孔、黄斑前膜に対しては硝子体手術を行うことが多いです。これは白目に0.4〜0.5mm程度の極めて小さな穴を3〜4か所開け、そこから細い器具を挿入して処置を行います。傷口が非常に小さいため、縫合を必要としないケースも多く、術後の回復が早いのが特徴です。若い患者さんの網膜剥離に対しては眼球の外側からスポンジのような当て物をし、剥離を治す網膜復位術も可能です。
緊急時は当日手術も対応――術後管理を丁寧に行う

当科では地域の開業医の先生方とホットラインで直接つながる体制を整えています。これにより、手術が必要な患者さんが紹介された際、速やかに当院での受け入れが可能です。特に網膜剥離は緊急性の高い病気ですので、早ければ受診当日、あるいは翌日には手術が行えるようなスピード感のある体制を維持しています。
当院では原則として入院での加療をおすすめしています。手術直後の目の状態は非常にデリケートです。入院していただくことで、医師が毎日診察を行い、万が一のトラブルや変化にも即座に対応することができます。“手術をして終わり”ではなく、しっかりと安定した状態を見届けたいという方針の下、管理体制を整えています。
目の手術は、多くの患者さんにとって一生に一度あるかないかの大きな出来事であり、不安を感じるのは当然のことです。だからこそ私たちは、患者さん一人ひとりの不安に寄り添い、じっくりと時間をかけて説明することを何より大切にしています。「見え方に違和感がある」「手術が怖い」など、分からないことがあれば何でもご相談ください。

頭頸部がんの治療
早期発見が難しいがん――長引く不調は早めの受診を

イラスト:PIXTA
頭頸部がんは、頭から鎖骨までの範囲で脳と眼球を除く臓器にできるがんの総称です。代表的なものには、舌がん、喉頭がん、咽頭がんなどがあります。これらのがんは進行すると生命に関わることはもちろんですが、食事をする、会話を楽しむなど、私たちが社会生活を送るうえで大切な機能に大きな影響を及ぼします。 “楽しく、人間らしく生きる”ために機能をいかに守るかが、治療の大切な部分です。
頭頸部がんは、通常の健康診断の項目に含まれていないことが多く、早期発見が難しいという特徴があります。初期症状としては、喉の痛みや声のかすれなどが挙げられます。こうした症状は単なるかぜと思ってしまいがちですが、もし症状が2週間以上治らないような場合は注意が必要です。長引く不調を感じたら、一度頭頸部がん専門医*の診察を受けることが早期発見の第一歩です。
頭頸部がん専門医:日本頭頸部外科学会が認定。
センター化により他科と連携した幅広い治療をそろえる
治療技術の進歩に伴い、頭頸部がんの治療は高度化・複雑化しています。耳鼻咽喉科医だけでなく、脳神経外科、消化器内科、形成外科、歯科口腔外科、放射線科など、多領域の専門家が連携できるよう、当院では「頭頸部がんセンター」として体制を整えています。それぞれの専門知識を結集し、患者さん一人ひとりを多角的にサポートしています。

当院の最大の強みは、手術、放射線治療、薬物療法など、幅広い治療に対応できることです。たとえば、近年普及している手術支援ロボットを用いた手術や、新しい治療法である光免疫療法(アルミノックス治療)を導入しています。しかし、私たちはロボット支援下手術ができるからといって、全ての患者さんにロボット支援下手術をすすめるわけではありません。大切なのは、複数の選択肢の中からその患者さんに合わせた治療法を選べることです。病状や生活背景に合わせて、ロボット支援下手術が適しているのか、従来の手術がよいのか、あるいは光免疫療法がよいのかを冷静に見極めてご提案します。
根治性と生活の質のバランスを考慮し治療法を案内

治療方針を決める際、最も重視しているのは“がんを治すこと(根治性)”と“治療後の生活の質”のバランスです。がんを確実に取り除くことは大前提ですが、それによって会話や食事ができなくなってしまっては、患者さんのその後の人生が大きく変わってしまいます。ですので、医師たちがカンファレンスを行い、「この治療法ならどれくらい治る見込みがあり、どのような後遺症が予測されるか」を徹底的に話し合います。
人生を左右する治療選択の決断を、患者さんがおひとりで行うのは非常に難しいことだと思います。当院では、複数の選択肢を提示したうえで、患者さんに合わせた“おすすめの治療法”を理由と共に明確にお伝えしています。最終決定は患者さんと相談して行いますが、医師が責任を持って道を指し示すことこそが、患者さんの安心と信頼につながると信じているからです。
私たちは、患者さんの不安な気持ちに寄り添いながら、希望を持って治療に臨んでいただけるよう努めています。リスクについての説明ももちろん行いますが、「一緒に治していきましょう」という前向きな姿勢でサポートします。「がんかどうか分からないけれど、なんとなく喉の調子が悪い」という段階でのご相談も歓迎しています。1人で悩まず、まずは私たちにご相談ください。

慢性炎症性皮膚疾患の治療
人生に関わる病気――将来を見据え早めの治療介入が大切
当科では、皮膚腫瘍、感染症、自己免疫疾患、慢性炎症性皮膚疾患、遺伝性疾患など、皮膚に関わる疾患を広く診療しています。その中でも、乾癬やアトピー性皮膚炎、円形脱毛症、尋常性白斑といった慢性炎症性皮膚疾患の診療は、当科の強みと考えています。これらは、一度発症すると長期にわたって付き合っていく必要がある病気であり、患者さんの生活に大きな影響を与えます。

これらの病気は、直接命に関わることはほとんどありません。しかし、外見に症状が現れるため、学校生活での友人関係や就職、結婚といった人生の重要な局面に深く関わり、患者さんのQOL(生活の質)を著しく低下させる可能性があります。Life-ruining disease(人生を駄目にする病気)と呼ばれる所以です。また、皮膚は内臓の鏡、とも言われ、皮膚疾患は皮膚だけの疾患ではなく、全身の炎症の現れでもあります。
だからこそ、私たちは「様子を見ましょう」と先延ばしにするのではなく、症状に応じて、患者さんの背景を見据えた治療介入が重要だと考えています。皮膚疾患による負担を軽減して社会生活を送れるようにすることで、患者さんが本来得るはずである大切な人生の機会を意識せずとも得られるようにする手助けができればと思っています。
入院から外来通院へ――治療選択肢に広がり
かつて乾癬や重症のアトピー性皮膚炎の治療では、入院をして外用治療や生活指導により皮膚の状態を整えるという方法がしばしば行われていました。しかし現在では、治療の選択肢が広がり、患者さんの負担を軽減しながら外来通院でも高い効果が見込めるようになっています。
乾癬・アトピー性皮膚炎に対しては、特定の免疫物質のはたらきを抑える生物学的製剤(注射製剤)や、新しい内服薬、外用薬が登場しています。従来の治療で改善が難しかった方でも、劇的な改善がみられる場合があります。
円形脱毛症はこれまでは治療の選択肢が限られていましたが、近年、免疫細胞のはたらきを制御する内服薬(JAK阻害薬など)が適応となりました。長期内服の効果や安全性についての情報も蓄積されつつあります。
皮膚の病気は、症状の幅が非常に広いのが特徴です。軽症の方もいれば、全身に症状が出る重症の方もいます。まずは、お近くのクリニックにご相談いただくことが第一歩です。そこで専門的な判断が必要だと診断された場合や、生物学的製剤などの新しい治療が必要な場合には、当院のような大学病院が連携して治療にあたっていきます。
「皮膚の病気だから命には別状ない」と我慢するのではなく、ご自身の、あるいはご家族の人生をよりよくするために、治療の選択肢が増えていることを知っていただきたいと思います。私たちは地域の医療機関と協力しながら、患者さんが社会の中で自分らしく過ごせるよう、全力でサポートいたします。

- 公開日:2026年2月20日