札幌市手稲区の医療を支える
手稲渓仁会病院

地域の病院と連携し高齢化社会で増加するニーズに応える

写真:PIXTA

地域の病院と連携し高齢化社会で
増加するニーズに応える

手稲区では2020年頃から人口の減少が続く一方で、65歳以上の高齢者人口は2045年頃まで増加すると予測されています。高齢化の進行に伴い、誤嚥性肺炎や心不全、大腿骨骨折などの疾患が増加傾向にあり、その対応が必要です。当院は札幌西地区の高度急性期医療を担う病院として、この高齢化社会を支えることを使命と捉え、他病院との連携に注力しています。その一環として、高齢者の救急搬送では夜間や休日も受け入れ、状態が安定次第、早期に地域の病院へ転院していただく、いわゆる“下り搬送”を導入しています。これにより、急性期機能を維持しながら増加するニーズに対応しています。急性期病院として手術などの医療を提供すると同時に、地域に根ざした病院と連携することで、国の方針である“ときどき入院、ほぼ在宅(施設)”を実践し、地域全体の医療・介護力を高める役割を担っています。

グループとしての連携力で医療・介護を幅広く展開

グループとしての連携力で
医療・介護を幅広く展開

渓仁会グループは札幌市を中心に、急性期から在宅医療・介護まで幅広く展開し、機能分担と連携により切れ目のないサービスを提供しています。医療・介護の垣根を越えた連携力と、地域に根ざしたきめ細やかな支援体制が強みです。救急医療から手術、集中治療、がん治療まで幅広い分野に対応し、地域の皆さんに安心を届けられるよう努めています。また、ロボット支援下手術や経カテーテル的大動脈弁植え込み術(TAVI)などの新しい治療の導入、ドクターヘリの運用など、さまざまな取り組みに挑戦してきました。近年では、多様な病気を抱える高齢者に対応するため、大学と協力し病院総合医(ホスピタリスト)の養成にも力を入れています。これからも地域住民の皆さんから頼りにされる病院を目指し、日々研鑽を続けてまいります。

院長プロフィール

手稲渓仁会病院における
脳卒中・不整脈(心房細動)/
心不全・膵臓がん/
胆道がん・側弯症の治療

脳卒中の治療

一刻を争う治療を24時間365日体制で迅速に提供

当院の脳卒中センターは、脳梗塞のうこうそくやくも膜下出血などの脳卒中患者さんを24時間365日受け入れ、速やかに診療可能な“一次脳卒中センター(PSC)”に認定*されています。さらに、脳卒中治療の中でも高度な技術が求められる“機械的血栓回収療法”が常時提供可能であることなどの条件を満たし、“PSCコア施設”としての認定**も受けています。
脳梗塞の治療は時間との勝負です。発症から4.5時間以内であれば“t-PA 静注療法”による血栓溶解を行います。太い血管閉塞やt-PA 非適応例では“機械的血栓回収療法”が推奨されます。こうした迅速な治療を実現するためには、医師だけでなく救急科スタッフ、看護師、放射線技師、カテーテル室スタッフまで、病院全体が“早く治療する”という共通目標に向かって連携することが不可欠です。当院では、一丸となって治療開始までの時間短縮に取り組んでいます。

日本脳卒中学会が認定

日本脳卒中学会が認定

複数の科が連携し、再発を防ぐため“根本の原因”を突き止める

複数の科が連携し、再発を防ぐため“根本の原因”を突き止める

脳卒中は再発しやすい疾患です。再発を防ぐためには、なぜ脳卒中になったのか、その“根本の原因”を突き止める必要があります。たとえば脳梗塞といっても、高血圧や糖尿病といった生活習慣病による動脈硬化が原因の場合や、心房細動という不整脈が原因の場合、あるいは、がんが隠れている場合もあります。私たちは表面的な脳梗塞だけを治療するのではなく、そこに隠れている病気をしっかり検査で見つけられるよう努めています。もし心臓に原因が見つかれば、すぐに循環器内科の医師に相談するなど、他科との連携も非常に迅速です。入院から数日以内に他科と協力して治療方針を立てることも珍しくありません。

複数の科が連携し、再発を防ぐため“根本の原因”を突き止める

治療の際には、脳神経外科と脳血管内科が互いの専門性を生かしながら連携し、カテーテル治療は内科医と外科医が協力して行っています。このように、単一の視点ではなく多角的なアプローチで脳卒中を診療することが、当院のチーム医療の最大の特徴です。さらに、治療と並行して重要になるのがリハビリテーションです。当院では、基本的に入院当日または翌日からリハビリを開始しています。理学療法士や作業療法士、言語聴覚士といった専門スタッフが早期に介入し、社会復帰を促進しています。
脳卒中の症状で最も見極めやすいのは“麻痺”です。顔の片側が歪む、片側の手足に力が入らない(脱力する)といった症状があります。呂律が回らない、言葉が喋れないといった症状も脳卒中の兆候です。ご自身やご家族にこのような変化が起きたら、我慢せず、すぐに救急車を呼んでください。
私たちの目標は、治療を終えた患者さんに、元気に歩いてご自宅へ帰ってもらうことです。そのためにスタッフ一同、全力でサポートします。不安なことがある際には、ためらわずに当院を頼りにしていただければと思います。

解説医師プロフィール

不整脈(心房細動)/心不全の治療

放置するとリスクが高まる不整脈――脈の不安は早めの受診を

不整脈は動悸を感じて受診される患者さんが多いです。このほか健康診断で心電図異常を指摘されるケースや、最近ではスマートウォッチなどのウェアラブル端末で心房細動(心臓の部屋の一部の心房が小刻みに震える不整脈)を検出して来院される方も増えています。動悸の感じ方は人それぞれですが、脈が飛ぶ、胸がどきどきする、鼓動が速くなるといった違和感があれば、我慢せず早めに相談してください。

放置するとリスクが高まる不整脈――脈の不安は早めの受診を

心房細動を放置すると“脳梗塞”のリスクが高まります。心房細動では心臓内に血の塊(血栓)ができやすく、その血栓が脳血管に詰まることで脳梗塞を発症します。脳梗塞で病院に搬送され、そこで初めて心房細動が見つかるケースも少なくありません。
もう1つのリスクは“心不全”です。心房細動は少しずつ進行していく病気で、気付かないうちに心臓に負担がかかり、心臓のポンプ機能が低下して心不全に至ることがあります。
症状がない段階でいち早く気付くためには、ご自身で脈拍をチェックする“自己検脈”の習慣がとても大切です。正常な脈拍は1分間に60~100回程度で規則正しいリズムです。極端に遅かったり、極端に速かったり、脈が途中で飛ぶような場合は要注意です。普段と違うと感じたら、ぜひ一度、受診を検討ください。

新しいアブレーション治療を提供――治療の選択は時間を取って寄り添う

心房細動などの不整脈に対しては、“カテーテルアブレーション”という治療法が中心です。足の付け根などからカテーテルという細い管を心臓まで挿入し、不整脈の原因となっている異常な電気信号を出す部分を、高周波で焼灼(しょうしゃく)する治療です。当院では、“パルスフィールドアブレーション(PFA)”という新しい治療法を導入しています。

新しいアブレーション治療を提供――治療の選択は時間を取って寄り添う

従来のアブレーションは熱で焼灼するため、隣接する食道や肺、神経などに影響が及ぶ懸念がありました。一方、PFAは高電圧の電気ショックを利用します。この電気は心臓の筋肉(心筋)を標的にして作用することで、周辺臓器への影響を抑え、心臓の悪い部分だけを治療することができます。これにより、治療の安全性が高まっただけではなく、手技自体も簡便になり、治療時間の短縮にもつながっています。
受診されたときに治療について話を聞くと、「今ここで決めなくては」と焦ってしまう方もいらっしゃると思います。ですが、私たちは“ゆっくり考えてもらうこと”をとても大切にしています。外来で一度ご説明し、パンフレットをお渡ししたら、「ご家族ともよく相談して、方針が決まったらお電話ください」とお伝えしています。入院の予定も、初診後はお電話で調整できるようにしています。ご自身の大切な体のことですから、ご自宅に持ち帰って、焦らずゆっくり考えていただきたいと思っています。私たちは、患者さん一人ひとりに寄り添い、よりよい選択ができるようお手伝いします。安心してご相談ください。

解説医師プロフィール

膵臓がん/胆道がんの治療

検査は体の負担が少ないものから必要性を見極めて実施

膵臓すいぞうがんや胆道がんは、治療が難しいがんといわれています。一方、診断技術や治療法の進歩により、早い段階で発見・手術することも可能となり、治療後再発なく元気に過ごされている患者さんも増えています。治療が難しいがんだからこそ、「いかに早く見つけ、早く治療につなげるか」が大切です。そのためには、定期的に検診を受けることが何よりも重要になります。

検査は体の負担が少ないものから必要性を見極めて実施供

がんの疑いで受診された場合、当院では腹部エコー(超音波検査)やCT、MRIといったお体にできるだけ負担の少ない検査から進めていきます。そのうえで、膵臓や胆道を詳しく調べるための超音波内視鏡(EUS)という検査を行います。EUSは胃カメラの先端に超音波装置を搭載した特殊な内視鏡で、胃や十二指腸から膵臓や胆道を詳細に観察することができます。EUSは専門性が高くどの病院でもできる検査というわけではありませんが、膵臓や胆道を調べる検査としては精度が非常に高く、小さながんや早期がんでも発見することが可能です。さらには、EUSで病変を観察しながら針を刺して細胞を採取するEUSガイド下針生検(EUS-FNA)も併せて行うことが可能であり、がんの確定診断をつける際には必要な検査の1つです。
さらに、胆道・膵臓に対する内視鏡検査・治療として内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)があります。これは、内視鏡を用いて胆管や膵管に細い管を通して造影剤を注入してX線で異常の有無を確認する検査です。さらに、がんが原因で胆管や膵管が一部細くなっている場合に、狭い部分の細胞を採取したり、あるいはチューブを通して胆汁や膵液の流れを改善する治療も併せて行います。当院では、以前から胆道・膵臓に関する内視鏡治療・検査に積極的に取り組んでおり、年間で762件のEUSおよび1470件のERCPを実施しており、胆道・膵臓疾患において経験と見識を有しています(2024年4月~2025年3月)。

“肝胆膵チーム”が多角的な視点から治療計画を立案

“肝胆膵チーム”が多角的な視点から治療計画を立案

当院の消化器病センターは、開設当初より各医師の専門性に応じて“消化管”“肝臓”“胆道・膵臓”の3部門に分かれています。特に胆道・膵臓の分野は内科医だけでなく、外科医や放射線科医との密な連携が不可欠です。“胆道・膵臓チーム”は、20年以上にわたる診療経験を内科・外科医などと共有しており、ノウハウを蓄積しています。
当院では、患者さん毎に診療の中心となる主治医を設けており、病気の診断から治療方針の立案、内視鏡や抗がん剤(化学療法)などの内科治療を担っております。「内視鏡治療はA先生、抗がん薬治療はB先生」と細かく分かれるのではなく、1人の医師がトータルで診ることで、内視鏡治療後の化学療法開始時期など、全体の流れを考慮した治療計画を立てることで、より適切なタイミングで治療を進めることが可能になります。
膵臓がんや胆道がんの疑いを告げられると、治療が難しいというイメージもあり、不安を感じる方も少なくありません。しかし、診断に必要な検査をきちんと受けることで、その不安が解消されることもあります。
「大きな病院にかかっていいのだろうか」と、受診をためらってしまう方もいらっしゃるかもしれませんが、まずは、かかりつけの先生にご相談ください。当院は、近隣の医療施設から精密検査の依頼を受けた場合、2週間以内で受診対応できる体制を整えています。また、受診に関する相談などについても、「患者サポートセンター」という部署で対応しています。何か心配なことがあれば、どうか1人で抱え込まず、気軽に当院にご相談ください。

解説医師プロフィール

側弯症の治療

思春期に多い病気――成長段階を見極めた治療選択が大切

側弯症は、脊椎(背骨)が正面から見たときに横に曲がってしまい、その角度が10度以上になる状態です。側弯症にはいくつか種類がありますが、全体の約8割を占めるのが“特発性側弯症”です。これはほかに病気がないにもかかわらず背骨が曲がってくるもので、特に10歳以降の思春期に発見されることが多く“思春期特発性側弯症”と呼ばれます。

思春期に多い病気――成長段階を見極めた治療選択が大切

写真:PIXTA

治療方針を決めるうえで非常に大切なのが、骨の成長段階(骨成熟度)を見極めることです。これからまだ身長が伸びるのか、もうすぐ成長が止まるのか、その段階によって治療方法や手術のタイミングが大きく変わります。

装具治療は幅広い選択肢から患者さんと一緒に選択

装具治療は幅広い選択肢から患者さんと一緒に選択

側弯角度が25度前後で、これから悪化する可能性が高いと判断される場合、装具治療を検討します。装具治療で効果を得るためには“できるだけ長い時間、装着を続けること”が大切です。ですが、大きな装具を一日中つける必要があり、特に学齢期の患者さんにとっては負担が大きく、学校での装着をためらうケースもあります。当院では、患者さんやご家族の希望を尊重し、夜間のみ装着するタイプやコンパクトな装具など、複数の選択肢を提示するようにしています。実際に見本を見てもらいながら「これなら頑張れそう」という装具を一緒に選んでいます。

負担の少ない手術に注力――脳性麻痺が原因の治療にも対応

側弯角度が45度以上になると手術を検討します。手術を受けるかどうかは、患者さんのこれからの人生に大きく影響するため、当院では手術をすることのメリットと、しない場合の数十年先の経過まで丁寧に説明し、最終的にご本人とご家族の方が納得したうえで決めていただくようにしています。

負担の少ない手術に注力――脳性麻痺が原因の治療にも対応

側弯症の手術は、金属(インプラント)を使って背骨をまっすぐにして固定し、動かなくする手術です。側弯症では主に後方からの手術を行いますが、腰椎の側弯症に対しては患者さんの体の負担を軽減するため、体の横(脇腹)からアプローチする“前方矯正固定術”という方法も行っています。前方からの手術は、後方からの手術よりも固定範囲が短く済むので、少ない負担で良好な矯正を目指すことが可能になります。

負担の少ない手術に注力――脳性麻痺が原因の治療にも対応

また、当院は脳性麻痺など神経や筋肉の病気に伴う側弯症の治療にも対応しています。こうした患者さんの治療は、元の病気への配慮が必要で手術前後の全身管理が非常に大切です。当院では小児科チームの医師らと密に連携し、安全性を高めた手術体制を構築しています。
検診で「側弯症の疑いがある」と言われた場合や、「ちょっと姿勢が気になる」といった症状が軽いと思われる段階でも、早めの相談が重要です。現在の状態を正確に把握し、今すぐに治療が必要なのか、経過観察でよいのか、あるいは将来どんな治療が必要になる可能性があるのか、そうした見通しをしっかりお話ししたうえで、よりよい治療方針をご提案させていただきます。

解説医師プロフィール
  • 公開日:2025年12月15日
紹介状がない方紹介状がある方