JCHO久留米総合病院における
乳がん・大腸がん・
子宮筋腫/子宮内膜症・捻挫
の治療

乳がんの治療

小さながんも見逃さないように――きめ細やかな検査・診断を行う

乳がんは早期に発見できれば治る可能性が高い病気です。 40歳を超えたら定期的にがん検診を受けましょう。
乳がんの診断にあたってはマンモグラフィ検査を実施しますが、微細な異常を映し出すためには高度な撮影技術が要求されます。また、読影も訓練を受けた医師でなければ正しく診断するのは難しいとされています。当院で検査を担当する診療放射線技師は、日本乳がん検診精度管理中央機構によってその知識や技術を評価された「検診マンモグラフィ撮影認定診療放射線技師」です。読影についても同機構の「検診マンモグラフィ読影認定医師」が行います*。加えて、新しい検査機器も取り入れており、小さながんも決して見逃さないように尽力しています。また、検査時の痛みに不安がある方もいらっしゃると思いますので、検査時には丁寧な声かけをすることも心がけています。

2025年4月時点

形成外科と連携――整容性を保ちつつ後遺症を最小限にすることを目指す

形成外科と連携――整容性を保ちつつ後遺症を最小限にすることを目指す

当院では年平均370件ほど*の乳がん手術を行っており、経験に裏打ちされた手術手技を駆使し、根治性と整容性の両方を追求した治療を提供しています。手術は、乳房を部分的に切除する乳房温存術と、乳房切除術があります。当院は乳房再建用インプラント(人工乳房)とエキスパンダー(組織拡張器:皮膚を伸ばす医療器具)の実施施設認定**を受けているため、乳房切除術による手術が必要となった場合でも、見た目に配慮した手術(乳房再建術)が可能です。乳房再建術にはお腹や背中などの組織を移植する方法と、人工乳房を使用する方法があります。人工乳房再建の場合乳房を切除した後に組織拡張器を挿入して皮膚を拡張後、組織拡張器を取り出して人工乳房に入れ替えます。これらの手術は形成外科と連携して行います。いずれの手術も患者さんの希望を伺いながら、できる限り整容性を高く、かつ再発のないように努めています。

年度ごとの内訳:2018年4月~2019年3月……385件、2019年4月~2020年3月……430件、2020年4月~2021年3月……338件、2021年4月~2022年3月……355件、2022年4月~2023年3月……357件、2023年4月~2024年3月……377件、2024年4月~2025年3月……350件

日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会による認定

チーム一丸となり患者さんに合わせた治療をコーディネート

当院はアピアランスケアにも力を入れています。アピアランスケアとは、がんやその治療によって見た目が変わっても、自分らしく生活できるよう支援する取り組みのことです。具体的には、抗がん薬治療で抜けてしまった眉毛を目立たなくするメイクの仕方や、爪や手荒れ、口腔こうくう内ケアの方法などをお伝えしています。こういった取り組みが単なる情報共有だけでなく、結果として患者さん同士の交流の場づくりにもつながっています。

チーム一丸となり患者さんに合わせた治療をコーディネート

さらに、がん相談支援センターの認定看護師(乳がん看護分野)*にご相談いただける体制も整えています。治療について不安なことがあるときはもちろん、医師に伝えにくいお悩みがある場合なども、お気軽にご相談いただければと思います。
当院では診断から治療、術後のケアに至るまで、チーム医療で患者さんをバックアップしています。医師だけでなく看護師や理学療法士など、スタッフ一人ひとりがプロフェッショナルとしての自覚を持ち、患者さんのコーディネーターとなって支えていきますので、一緒に治療に取り組んでいきましょう。

日本看護学会認定

乳がんの総手術件数

  • 2022年度

    (2022年4月〜2023年3月)

    357

  • 2023年度

    (2023年4月〜2024年3月)

    377

  • 2024年度

    (2024年4月〜2025年3月)

    340

解説医師プロフィール

大腸がんの治療

検査から診断を迅速に――“待たせない”体制づくりを実践

大腸がんは早期発見が重要です。早期の段階で発見できれば、大腸内視鏡による治療のみで完結できる可能性があります。早期発見のためにも健康診断は定期的に受けていただきたいと思います。そして、便潜血検査で1回でも陽性となった場合は精密検査(大腸内視鏡検査)を受けましょう。なお、40歳代から罹患率が増加する傾向にありますので、40歳以上の方は便潜血検査の結果に関係なく、一度は大腸内視鏡検査を受けていただくことをおすすめします。検査の結果、進行した大腸がんであることが分かった場合には、手術などによる治療を行います。
当院では、症状のある患者さんの「早く治療をしたい」という思いにお応えすべく、小回りの利く体制を整備しています。術前検査をなるべく早く行えるよう予約を調整したり、手術スケジュールを柔軟に変更したりするなど細やかな対応を行っています。また治療方針を決定する際には、内科や外科以外の複数の診療科と共に、多職種でのチームカンファレンスを実施しています。さまざまな意見を交えながら治療方針を検討していくことで、患者さんにより適した治療を提供できるよう努めています。

腹腔鏡下手術で体の負担を軽減、早期の社会復帰をサポート

腹腔鏡下手術で体の負担を軽減、早期の社会復帰をサポート

現在、大腸がんの手術の多くは腹腔鏡下手術で行われています。お腹に小さな穴を数か所開け、その穴からカメラや医療器具を挿入して手術する治療法で、最大の利点は低侵襲ていしんしゅうであることです。通常の開腹手術と比較して傷が小さく済むため、術後の痛みが少なく、早期の社会復帰が望めます。腹腔鏡下手術に使用するカメラは、高画質の拡大視野で観察できたり、患部を立体的に表示できる機能が備わっていたりと、術者が繊細で丁寧な手術を施行しやすい機能が備わっています。そのため、安全性に配慮した手術が可能になります。
近年は心疾患や肺疾患、糖尿病などの基礎疾患がある患者さんが増えています。当院には総合診療科がありますので横のつながりを生かして院内紹介を行い、併診して基礎疾患の治療を進めるなど、連携した円滑な治療が可能です。

集学的治療やチーム医療を生かした臨機応変な対応

当院では、がんの進行状況を見極めたうえで肛門こうもん機能の温存にも力を入れています。従来は人工肛門が必要とされていた下部直腸がんに対して、肛門括約筋の一部だけを切除することで機能を温存する括約筋間切除を実施しています。もし人工肛門が必要となっても、当院の認定看護師(皮膚・排泄ケア分野)*が術前から介入し、管理の方法や術後の合併症の対応までアドバイスを行い、丁寧かつ専門的なサポートを行っています。
このほか、腹腔鏡での対応が難しい再発症例や、子宮や膀胱などの多臓器に浸潤している症例についても、当院では泌尿器科、婦人科、形成外科の医師と連携したチーム医療で対応していきます。さまざまな症例に対応できるのは、複数の診療科を備える当院ならではの特徴です。

集学的治療やチーム医療を生かした臨機応変な対応

なお、がんの悪性度が高かったり遠隔転移があったりと、手術での切除が難しい場合には、密な院内連携のもと抗がん薬治療などを用いた集学的治療**を行い、可能な限り根治を目指します。こちらもがん薬物療法認定薬剤師***などを含む多職種カンファレンスで治療方針を決定しており、放射線治療が必要な場合には近隣の病院とも連携しながらがん治療にあたっています。
最後に、大腸がんの罹患率は年々増加の傾向にあります。健診などで要精密検査と指摘されたら、まずは大腸内視鏡検査を受けていただきたいです。お伝えしたとおり大腸がんは早期治療が非常に大切です。しかし、当院では進行した症例に対しても、患者さん一人ひとりの状況や基礎疾患の有無などに合わせて、さまざまな治療法のご提案・よりよい治療の提供に努めております。お困りの際はいつでも私たちにご相談ください。

日本看護学会認定

手術や薬物療法、放射線治療など、複数の治療法を組み合わせてより高い効果を得るための治療。

日本病院薬剤師会認定

大腸がんの総手術件数

  • 2022年度

    (2022年4月〜2023年3月)

    29

  • 2023年度

    (2023年4月〜2024年3月)

    32

  • 2024年度

    (2024年4月〜2025年3月)

    45

解説医師プロフィール

子宮筋腫・子宮内膜症の治療

“困っている”と感じたら――若い方でも我慢せずに受診して

子宮筋腫は子宮にできる良性の腫瘍です。婦人科腫瘍の中で最も頻度が高く、30歳以上の女性のうち3割程度にあるといわれています。主な症状は月経の出血量が多くなる過多月経や月経痛です。とはいえ、症状の程度は筋腫の場所によってさまざまで、中には症状があまりみられないものもあるため、超音波(エコー)検査などを積極的に受けることが大切です。
子宮内膜症は、子宮の内膜組織が子宮の内側以外の場所に入り込み、増殖したり出血したりする病気です。20~40歳代の方が発症しやすい傾向にありますが、10歳代後半で発症することもあります。月経困難症が主な症状ですが、月経時以外にも下腹部の痛みがみられる場合や排便痛・性交痛がある場合もあります。また不妊症の原因になることもあるため、早期発見が重要です。

“困っている”と感じたら――若い方でも我慢せずに受診して

写真:PIXTA

いずれも、早期発見できれば手術をせずに済む場合もあります。過多月経の程度は自分ではなかなか判断しにくいこともあるかと思いますが、経血の量が多いことでご自身が“困っているかどうか”という基準で受診を決めていただいてかまいません。また、月経時に鎮痛薬を3回以上服用している、貧血の症状があるなどの際には、10~20歳代の若い方でも我慢せずお早めに婦人科へ相談いただくのがよいでしょう。

ライフプランも考慮しながら幅広い治療法の提案に努める

初診時に超音波検査を行い、MRI、CTによる画像検査の結果を踏まえて治療方針を決定します。患者さんによっては複数の治療方法を提案できる場合がありますが、「どの治療がよいか分からない」と悩まれている患者さんには治療選択肢とメリット・デメリットを提示したうえで、じっくりと考えていただく時間を確保しています。手術日程についてもお仕事や生活の状況を踏まえて決めていくようにしています。
当院は幅広い治療選択肢をご用意できることが強みです。手術では子宮筋腫・子宮内膜症ともに、開腹手術に比べて傷が小さく低侵襲な腹腔鏡下手術を積極的に行っています。妊娠を希望しない患者さんへは、過多月経に対する治療として「マイクロ波子宮内膜アブレーション」もご提案できます。マイクロ波で子宮内膜を焼灼することで、過多月経の症状を抑える治療です。さらに、子宮筋腫の患者さんで外科的な手術を希望しない場合には、子宮動脈塞栓術が適応となるかも検討します。これは子宮動脈にカテーテルを挿入し塞栓物質そくせんぶっしつで塞ぐことで腫瘍への血流を遮断する治療です。必要に応じて連携する近隣病院へのご紹介も行っており、可能な限り患者さんが納得のいく治療法を選択できるよう体制を整えています。

ライフプランも考慮しながら幅広い治療法の提案に努める

私たちは、同じ病名だからと画一的な治療を行うことはありません。妊娠をご希望される患者さんの場合は、必ずしもすぐに手術で治療したほうがよいとは限らない場合もあります。治療方針は、病状をきちんと把握することはもちろん、根治治療を優先するのか、あるいは症状の緩和を行っていくのかといった患者さんのご希望や年齢なども踏まえたうえで一緒に決めていきます。患者さんに寄り添いながら、なるべく幅広い選択肢をご提案させていただきますので、ぜひ気軽に相談いただければと思います。

子宮筋腫、子宮内膜症(子宮腺筋症含む)の総手術件数

  • 2022年度

    (2022年4月〜2023年3月)

    208

    子宮筋腫
    112件
    子宮内膜症
    67件
    (子宮腺筋症含む)
  • 2023年度

    (2023年4月〜2024年3月)

    152

    子宮筋腫
    112件
    子宮内膜症
    40件
    (子宮腺筋症含む)
  • 2024年度

    (2024年4月〜2025年3月)

    173

    子宮筋腫
    135件
    子宮内膜症
    38件
    (子宮腺筋症含む)
解説医師プロフィール

捻挫の治療

捻挫=靱帯・軟骨などの損傷――損傷箇所を見極め、正しい治療に導く

捻挫=靱帯・軟骨などの損傷――損傷箇所を見極め、正しい治療に導く

写真:PIXTA

捻挫と聞くと、多くの方は足首をひねって傷めた状態をイメージされると思います。しかし、捻挫とはいずれかの靱帯や腱、軟骨が損傷することを指し、きちんとした検査をしなければ傷んでいる組織を正確に診断することはできません。特に、靱帯を損傷した場合には注意が必要です。捻挫した足首を放置して日常生活を過ごしたり、すぐスポーツに復帰したりすると、損傷した靱帯が伸びた状態でくっついてしまうことがあります。これにより関節がグラグラと安定感を失い、捻挫しやすい足になってしまいます。そして再び捻挫するとまた靱帯が伸びてしまい、靱帯の厚みが徐々に薄くなって本来の強度がなくなってしまうのです。捻挫が“癖”になってしまうと年を重ねてから変形性足関節症を発症することもあります。これらを防ぐには、早期に正確な診断・治療をすることが大切です。足首をひねってしまった際は、「軽い捻挫だから大丈夫」と自己判断せず、ぜひ当院を受診していただければと思います。

エコーを使った診断と病態に合わせた治療を提供

当院の捻挫診療の強みは、超音波(エコー)装置を使用し、靱帯の損傷を正確に確認できることです。骨折の場合はX線で診断が可能ですが、靱帯の損傷はそもそもX線には写りません。当院ではX線で骨の異常を確認した後に超音波検査を行うことで損傷している靱帯とその程度(部分的に切れているのか、完全に断裂しているのか)を判断し、患者さんの重症度に応じた治療を進めていきます。

エコーを使った診断と病態に合わせた治療を提供

捻挫で一番多いのは、前距腓靱帯ぜんきょひじんたい(足関節の外側、外くるぶし下にある3本の靱帯のうちの1本)が損傷するケースで、軽傷の場合は固定とリハビリテーションのみで治ります。しかし、前距腓靭帯が完全に断裂した重傷のケースや、踵腓靱帯しょうひじんたい(前距腓靱帯と同じく外くるぶし下にある靱帯)という部分まで損傷しているケースは比較的治りが悪く、適切な治療をしないと捻挫癖にもなりやすいので、とにもかくにも損傷の程度を正確に判断することが重要になります。
急性期の治療では損傷した組織を治すために、サポーターやギプスで1~2週間程度固定を行います。その後、靱帯の切れた部分に負担をかけないように少しずつ動かしながらリハビリテーションをしていきます。何度も捻挫を繰り返し、関節がグラグラしているような患者さんで痛みがあるときには、関節鏡を使用して靱帯を縫合する低侵襲手術も当院では行っています。
捻挫はどの年代でも起こり得ますが、多くは問題なく治っていきます。それゆえに、スポーツをされる方や指導者の中には、捻挫を軽く見てしまう方もいらっしゃる現状があります。捻挫といっても靱帯に少しだけ傷が入った軽傷から完全に断裂した重傷まで、さまざまな病態が混在しています。
早期に適切な診断・治療を受けていただくことで復帰も早くなりますし、のちの捻挫癖や後遺症を防ぐことにもつながります。特にスポーツをされている若い方たちには、きちんと治療を受け、スポーツを生涯楽しんでいただきたいと思っています。捻挫をしたときには、紹介状をお持ちのうえで受診いただくか、お電話にて当科にお問い合わせください。

解説医師プロフィール

福岡県久留米市の医療情勢

医療機能の分化の先進地域――増加するニーズへの対応が必要

医療機能の分化の先進地域――増加するニーズへの対応が必要

久留米市は病院ごとの医療機能の分化が進んでいる地域です。病院、一般診療所は人口10万人あたりの施設数が福岡県全体や全国を上回っており、人口10万人あたりの医師数も全国でトップクラスとなっています。また、かかりつけとなる診療所や専門性の高い医療を提供する病院がそろい、地域で医療を完結できる環境が整っています。一方で、ほかの地域と同様に少子高齢化が進んでおり、多様な医療ニーズが高まっているのも事実です。これからも地域の方が安心して医療を受けられるよう、医療機関は“機能特化”をいっそう推進していくことが求められます。

福岡県久留米市の医療を支える
JCHO久留米総合病院

地域医療の要として、体にやさしく質の高い医療を届ける

地域医療の要として、体にやさしく質の高い医療を届ける

当院は、全国に57施設*ある独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)の病院の1つです。“安心な地域医療を支えるJCHO”というキャッチフレーズの下、前身時代も含め70年以上にわたり、地域医療の要となるべく歩んでまいりました。21の診療科、健康管理センター、介護老人保健施設を備え、“保健・医療・福祉”が一体となった包括的な医療サービスを提供しています。
当院の強みの1つとして、女性特有の健康問題に対して包括的なアプローチを行う女性総合診療科「なでしこ」があります(週1回予約制)。女性医師が診察や検査を行い、こちらを入口として必要に応じて専門科へ紹介をしています。腹腔鏡下手術ふくくうきょうかしゅじゅつなど患者さんの体への負担に配慮した技術も取り入れ、“単に治すだけではない治療”を心がけています。
100施設以上の開業医の先生と連携することで地域医療連携の強化にも力を入れています。これからも地域の皆さまの健康のために、安全でやさしく質の高い医療を提供できるよう、職員一同努めてまいります。

2025年4月時点

  • 公開日:2025年6月1日
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