道東(釧路、根室、北網、
十勝地方)の医療

写真:PIXTA
生活習慣の改善が
健康寿命の延伸につながる
北海道内の平均寿命は男性が80.83歳、女性が87.16歳です。一方、健康寿命は、男性が71.60歳、女性75.03歳となっており、平均寿命と健康寿命の差は男性で9.23歳、女性で12.13歳となっています。要介護状態となった原因としてあげられるのが、認知症、脳血管疾患、高齢による衰弱です。特に脳血管疾患は、高血圧がリスク因子であることから食事、運動などの生活習慣の改善が期待されます。
よりよい医療を地域に届ける
釧路孝仁会記念病院

孝仁会グループの関連施設
急性期からリハビリテーション期まで住み慣れた地域で医療が受けられる体制を整備
当院は「釧路にあっても最先端の医療を」という理念から2007年12月に開院しました。開院から現在まで、脳疾患、心疾患、消化器疾患、整形外科疾患を中心とした急性期にも対応できる病院として地域の方々に医療を提供しております。2020年には、釧根地域(釧路・根室)で初となる外科と内科の治療を同時に行うことが可能なハイブリッド手術室を導入しました。この手術室は、脳疾患や心疾患といった血管の治療が必要な病気に対し、血管造影装置で血管の3次元画像を映し出しながら治療を行うことができます。たとえば、カテーテル治療を行っている途中に、開腹開胸手術が必要になった場合でも臨機応変に対応できるのが特徴です。当社会医療法人孝仁会は地域の皆さんに寄り添えるよう、釧路脳神経外科、中標津脳神経外科、留萌セントラルクリニック、新くしろクリニック、知床らうす国民健康保険診療所など、複数の病院・診療所を各地で展開しております。万が一のときには当院への転院や紹介も可能です。さらに治療後もケアが必要な場合には、早期社会復帰を目指して関連施設(釧路孝仁会リハビリテーション病院など)でリハビリできる体制も整えております。「患者さんが安心してかかれる、患者さんを安心して預けられる病院」を目指して、スタッフ一同、日々努めております。もしも今体調面で不安なことがあれば、お近くの孝仁会グループの病院へご相談にいらしてください。お待ちしております。

釧路孝仁会記念病院における
脳腫瘍・脳卒中の治療・再生医療
脳腫瘍の治療
長引く頭痛や見えづらさ、においを感じない症状は脳腫瘍のサインの可能性も
脳腫瘍とは脳にできる腫瘍の総称です。脳を包む膜や脳神経、血管など、脳組織以外から発生する腫瘍はほとんどが良性腫瘍です。良性の腫瘍の症状としては、持続的な頭痛が挙げられます。ほかにも見えづらい、においを感じないなどの症状がみられることもあります。これらの症状は、脳神経専門の医師でないと脳腫瘍と直接結びつかないことが多いため、当院を受診するときには腫瘍が大きくなってしまっているケースが多くみられます。

当院では初診でいらした患者さんであっても、脳疾患の疑いがある場合、その日のうちにMRI検査を実施し、ご本人とご家族に結果をお伝えしています。その後、できる限り早く検査入院をしていただき造影検査、PET検査などを行い疑わしい病気を確定します。初診から手術まで早い方では2週間という方もいます。手術の方法は腫瘍がある場所によって変わってきますが、当院では良性腫瘍の可能性が高いと判断した場合、1回の手術で腫瘍部分を完全に取りきることを目標に、可能な限り低侵襲で開頭手術を行っています。さらに当院では、切除した腫瘍の病理検査を遠隔で手術中に実施し、手術終了時には腫瘍が良性なのか悪性なのかをお伝えできる体制を整えています。このようなスピード感のある検査や治療が当院の特徴であり強みです。可能な限り迅速に結果をお伝えすることで、結果を待っている間の不安な気持ちを少しでも軽減できればと考えています。
脳ドックで脳腫瘍だけでなく脳の病気の早期発見を
手術を終え、経過が順調であれば、入院期間は1週間程度です。手術の傷あとを気にされる方もいますが、髪で隠せるよう配慮いたしますので、退院後は普段どおりの生活に戻ることができます。患者さんによっては手術後2週間程度でお仕事を再開される方もいらっしゃいます。脳腫瘍と聞くと驚かれる患者さんが多いですが、良性のものは早期に適切な検査と治療を行うことで根治することが可能です。なお、脳腫瘍はMRI検査を受けることで早期発見できる病気でもあります。当院では、脳血管の狭窄や腫瘍、脳動脈瘤なども早期に発見できる脳ドック(自由診療)*を高度健診センター**で行っています。予防に勝る薬はありません。気になることがある方はまずは当院へご相談ください。
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釧路孝仁会記念病院で受けられる脳ドックは以下のとおりです。
・脳精密ドック(約3時間):33,000円(税込)。脳血管の狭窄や脳動脈瘤、脳腫瘍などの早期発見につながります。
・脳脊髄精密ドック(約4時間):55,000円(税込)。脳精密ドックに加え頚椎・腰椎の検査を加えたコースです。
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高度健診センター:各種ドックは予約制となっております。0120-133527(フリーダイヤル・センター直通)(予約時間:9:00~12:00/13:00~16:00)

脳卒中の治療/もの忘れ外来自覚症状がなく早期発見が困難な病気――定期的な検査受診を
当院は、日本脳卒中学会から一次脳卒中センター(PSC)コア施設に認定され、24時間365日、脳卒中の患者さんの受け入れを行っています。北海道内では12施設*が認定されていますが、釧根地域(釧路・根室)では唯一の認定施設**として、地域の核となる医療を提供しています。
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2025年2月時点
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2025年2月時点

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脳卒中では、ろれつが回らない、麻痺などの症状がみられることがあります。しかし患者さんは高齢の方が多いこともあり、「きっと年のせい」と初期症状を見逃しやすく、重症化してから救急車で運ばれるといったケースが多くみられます。当院では、脳卒中の患者さんは脳卒中集中治療室(SCU)で治療いたします。SCUとは、専門のスタッフが24時間体制で治療を行う専門病棟です。残念ながら、脳卒中は治療が成功しても片麻痺やしびれなど何らかの後遺症が残る傾向がみられます。そのため当院では患者さんが1日でも早くご自宅で生活できるよう、入院後すぐにリハビリテーションを開始しています。当院での治療が終わったあとも、リハビリが必要な患者さんには当法人の関連施設である釧路孝仁会リハビリテーション病院をご紹介できる体制が整っていますので、ご安心ください。脳卒中は生活習慣を見直すことで予防できる病気です。原因のほとんどが高血圧であるため、塩分を控えめにして高血圧を防ぎ、動脈硬化にならないことをまずは心がけましょう。また、脳卒中の初期症状がみられた場合は必ず病院を受診するようにしてください。早期発見こそが脳卒中の一番の治療になります。
初期のアルツハイマー型認知症であれば治療薬の処方も可能に
当院では2024年1月よりもの忘れ外来を開設いたしました。もの忘れ外来には「最近忘れっぽい」という患者さんご自身が受診される場合もあれば、「母の様子がおかしい」と言ってご家族が患者さんを連れて受診されることもあります。受診される方の年齢は、若ければ40歳代から、80歳代の方が最も多いです。この外来では、初診で血液検査、簡易的認知機能検査を行います。認知症の可能性が高い場合は、詳細な認知機能検査、脳の萎縮を測るMRI検査や脳血流SPECT検査*でどの型の認知症であるかを診断していきます。さらに軽度のアルツハイマー型認知症が疑われる場合には、原因であるアミロイドβ蛋白が脳にどれくらい蓄積しているかを確認する検査(当院では髄液検査)を施行していきます。結果が陽性であれば、原因を除去する抗アミロイドβ抗体薬**の適応となります。この薬は点滴薬で2週間〜4週間おきに通院をして投与いただきます。薬によって症状が軽快したことで、自信の回復や不安が軽減したりして、以前よりも明るい様子が見られる方もいます。
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脳血流SPECT検査:脳の血流の異常を調べる検査。
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抗アミロイドβ抗体薬:保険適用となります。

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認知症は初期に発見できるかどうかで、患者さんのその後の人生が大きく変わります。私が考えるもの忘れの基準は、人の名前ではなく、「はさみ」「ボールペン」など身の回りで使う道具の名前が出てこなくなり、「あれ」「これ」などで呼ぶようになるかどうかです。早期であればあるほど、対処法や治療法がみつかりやすいので、このような症状が現れた場合は、ぜひご相談にいらしてください。
脳卒中も認知症もアミロイド蛋白が脳に付着することで起きる
脳卒中と認知症に共通する原因の1つに挙げられるのが、脳にアミロイド蛋白が付着することです。このような状態を防ぐには、適度な運動とバランスのとれた食事を摂取することが重要となります。この釧路地域は自動車で移動するので歩く習慣がほとんどありません。時間があいているときには歩くことを心がけましょう。また海に近いという地域柄、塩分過多の食事の方が多い傾向にありますので、まずは塩分を控えることから始めることをおすすめします。

再生医療について
幹細胞なら失った組織や機能にアプローチの可能性がある
当院では、患者さんご自身の幹細胞を培養し、それを用いて病気やけがで欠損した組織や機能の修復にアプローチする再生医療を行っています。幹細胞とは脂肪組織、骨髄など体のさまざまな部位に存在していますが、当院では脂肪組織由来の間葉系幹細胞*を用いています。この間葉系幹細胞は、自ら分裂して同じ細胞を作る能力と、別の細胞に変化する能力の2つを持ち合わせています。この別の細胞に変化する能力を生かし、点滴で患者さんに戻した幹細胞が軟骨や脳の血管などに変化して、組織修復することが期待されているのが再生医療です**。当院は再生医療等の安全性の確保等に関する法律に基づき、正式に厚生労働大臣の認定を受けた釧路孝仁会記念病院特定認定再生医療等委員会を置いています。
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間葉系幹細胞:脂肪組織、骨髄、臍帯血などに存在する幹細胞で、骨細胞・軟骨細胞、神経細胞などさまざまな細胞に分化できるといわれています。
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厚生労働省等によって確認された効果ではありません。

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当院では、厚生労働省に届出た細胞培養加工施設(施設番号:FC1150019)で、患者さんから採取した間葉系幹細胞を培養しています。施設内は24時間、室温、湿度、室圧などがモニタリングされ、間葉系幹細胞を管理しやすい環境を整えています。培養は専門の知識を持つ培養士3名*によって行われ、約6週間かけて間葉系幹細胞を培養します。患者さんに投与が可能となった間葉系幹細胞は、すぐに治療に用いることもできますが、凍結してストックすることもできます。そのため、万が一のときに備えて当院で凍結管理をさせていただいている患者さんもいらっしゃいます。
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2025年2月時点

さまざまな病気の治癒に活用できる可能性がある間葉系幹細胞
現在、当院では脊髄損傷の後遺症、脳梗塞の後遺症、変形性膝関節症の患者さんを中心に治療*を行っており**、年齢層も20~70歳代までと幅広いことが特徴です。この幹細胞による治療は、患者さんから脂肪組織由来の幹細胞を採取し培養しているため、幹細胞に個体差があり治療効果が上がらない可能性があります。また間葉系幹細胞を用いた再生医療は自由診療(全額自己負担)***のため、治療費が高額になることが現在の課題です。私たちは再生医療によって、病気やけがをする前の生活ができるようになることを日々願いながら治療にあたっております。もしもお役に立てることがございましたらぜひ相談にいらしてください。
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治療期間は患者さんによってことなります。治療回数は基本的に単回投与となります。幹細胞の投与に伴う副作用は以下となります。脂肪採取時の皮下血腫、創部からの出血、創部の疼痛、腫脹、アナフィラキシー反応(急性アレルギー反応による冷汗、吐気、嘔吐、腹痛、呼吸困難、血圧低下、ショック状態など)。細胞投与時のアナフィラキシー反応(急性アレルギー反応による冷汗、吐気、嘔吐、腹痛、呼吸困難、血圧低下、ショック状態など)、肺塞栓(注入した細胞による肺血管の閉塞、症状が重いと呼吸困難症状)、穿刺部の痛み、内出血、神経障害、嘔気、嘔吐。投与に伴い肺塞栓を併発するリスクがあるので、抗血小板薬剤を予防のために服用していただきます。また、がんに罹患していた場合、幹細胞投与によって腫瘍が増殖する危険を指摘している論文があり、がんの患者さんは適応外とさせていただいております。そのほかに考えられる合併症、副作用としては、免疫系の過剰反応によるアトピー性皮膚炎やじんましんがあります。
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厚生労働省等によって確認された効果ではありません。
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釧路孝仁会記念病院における再生医療の費用:初診料5,500円、適格性検査費用(血液検査、PET検査ほか)220,000円、初回治療(脂肪採取、幹細胞培養および幹細胞投与)2,524,500円、合計2,750,000円。
2回目以降の治療は1,375,000円となります(価格は全て税込表示です)。


- 公開日:2025年4月25日