納得できる治療を共に
大阪府済生会中津病院
循環器内科

見過ごされがちな“心臓病のサイン”と早期発見の重要性
当科を受診される方の中には、健康診断で異常を指摘された方のほか、胸の痛みや動悸といった症状をきっかけに来院される方が多くいらっしゃいます。しかし、循環器疾患において気をつけなければならないのは、息切れや動悸といった症状を「年のせい」や「運動不足」と思い込み、気づかないうちに病気が進行してしまうケースです。症状がゆっくり進行するなかで、「以前は階段を登っていたのにエスカレーターを使うようになった」「早く歩くとしんどいから、ゆっくり歩くようになった」というように、無意識のうちに行動を制限して、変化に気付きにくくなることがよくあります。
病気を軽症の段階で見つけ、適切な治療を行うためにも、40代・50代を超えたら心臓病のリスクを認識していただくことが大切です。ご自宅での血圧測定のほか、ご家族から見て「一緒に歩くペースが遅くなった」といった変化も重要なサインとなりますので、気になることがあればぜひ一度ご相談ください。

体に優しい“低侵襲治療”と
チームで支える医療体制
近年、当院に入院される患者さんは80代、90代とご高齢の方が増えており、心臓の病気だけでなく、糖尿病や腎臓病など複数の疾患を抱えていることが少なくありません。そのため、私たちは患者さんの体への負担が少ない“低侵襲治療”に力を入れています。
志手 淳也院長が専門とする狭心症や心筋梗塞に対するカテーテル治療をはじめ大動脈弁狭窄症に対するTAVI(経カテーテル的大動脈弁留置術)や、不整脈の1つである心房細動に対するパルスフィールドアブレーションなどにも対応しています。さらに、難治性高血圧に対する“腎デナベーション”や、リードレスペースメーカーなども導入し、ご高齢の方でも受けていただきやすい選択肢を広げています。
こうした専門的な治療を安全性高く提供するため、当科には15名*の医師が在籍し、2〜3人で1人の患者さんを担当する“チーム医療体制”をとっています。カンファレンスを通じて治療方針を科全体で共有しているため、夜間や休日などで担当医が不在の場合でも、途切れることなく質の高い治療を引き継ぐことが可能です。
2026年7月時点

患者さんの「納得」を第一に考える、
寄り添う診療
医療を提供するにあたり私が大切にしているのは、患者さん一人ひとりに適した選択を共に考えることです。医学的に推奨される治療があったとしても、たとえば50代の方と80代の方とでは適した治療が異なりますし、他にも選択肢がある場合は分かりやすくご説明するようにしています。複数の選択肢をお伝えし、ご自身のライフスタイルに合った、納得できる治療法を選んでいただけるよう心がけています。
医師だけでなく、看護師や臨床工学技士、事務スタッフなど、全員が親切で温かい対応を心がけておりますので、お困りの際にはどうぞ安心して当院を頼っていただければと思います。
病院紹介
大阪府済生会中津病院 循環器内科における
診療体制
不整脈・心房細動の診療
徐々に進行する病気――脈の乱れを感じたら放置せず受診を
心房細動とは、不整脈の一種で、心房(心臓の上の部屋)が細かくけいれんする病気をいいます。すぐに命に関わるわけではないものの、決して放置してはいけない病気です。
脈が乱れによる動悸や息切れ、胸の苦しさといった症状が現れる方がいる一方で、患者さんの約半数は自覚症状がなく、健康診断などの心電図検査で偶然見つかるケースも珍しくありません。
特に注意が必要なのが、心房細動が脳梗塞や心不全のリスクを高めるという点です。心房がけいれんすると心臓の中に血の塊(血栓)ができやすくなり、これが脳の血管に詰まると脳梗塞を引き起こします。手足の麻痺や言語障害などの後遺症につながるほか、命に関わる重篤なケースもあります。また、脈の乱れによって心臓に負担がかかり続けると、全身への血流が悪くなる“心不全”を招き、疲れやすさや足のむくみ、食欲低下などを引き起こすこともあります。

写真:PIXTA
心房細動は徐々に進行する病気であり、最初は一時的に脈の乱れが現れては自然に治まる状態を繰り返しますが、だんだんと頻度が増え、やがて常に不整脈が続く状態(慢性化)へと移行してしまいます。そのため、症状が一時的な早期の段階で治療を開始し、進行を食い止めることが、脳梗塞や心不全を予防するうえで非常に大切です。
しかし、初期段階では症状が発作的であるため、いざ受診された時には治まり、通常の心電図検査では異常が見つからないことも少なくありません。そこで当院では、1〜2週間ほど連続して記録できる長時間の心電図検査を駆使し、治療が必要な方を適切に拾い上げられるよう努めています。あわせて、日頃からご自身で脈をとる習慣をつけていただくこともおすすめしています。普段の正常なリズムを知っておくことで、“乱れ”が生じたときに、いち早く異変に気づくことができます。
新たな医療技術を積極的に導入――身体への負担を抑えた不整脈診療
不整脈の治療において、当院では患者さんの身体への負担を減らす新たな治療を積極的に取り入れています。その1つが、カテーテルを用いて心臓内の不整脈の原因部分を治療する“パルスフィールドアブレーション”です。従来の高周波を用いた治療では、熱が周囲に伝わることで、心臓の膜や神経、近くにある食道などを傷つけてしまう合併症のリスクがありました。一方で、パルスフィールドアブレーションは心臓の筋肉細胞にのみ作用する特殊なエネルギーを使用するため、周囲の組織を傷つけるリスクが低く、従来よりも安全かつ短時間で治療できるようになりました。一般的な治療効果は従来と同等とされていますが、実際に治療を行う中で私個人としては従来よりも再発リスクの低減が期待できると実感しており、患者さんにとってより安心できる治療選択肢だと考えています。

また、そのほか、脈が遅くなるタイプの不整脈(徐脈)には“リードレスペースメーカー”を導入しています。徐脈の場合、現時点では飲み薬で脈を整えることが難しいため、基本的にはペースメーカーが必要になります。従来のペースメーカーは胸部に本体を埋め込み、心臓まで導線(リード)をつなぐ必要がありましたが、リードレスペースメーカーは小型で、足の付け根の血管からカテーテルを使って直接心臓に植え込みます。胸に傷が残らず数ミリの傷で済むため、数日で退院できるほか、将来的な感染症のリスクも低いという大きなメリットがあります。ただし、電池交換の観点から若い患者さんには向かない場合もあるため、患者さんの年齢や状態を考慮しながら検討します。
不整脈外来を実施――年齢やライフスタイルに応じたよりよい治療を見出す
当院の大きな強みは、不整脈を専門とする医師が4人在籍している点です(2026年7月時点)。“不整脈外来”を設置しており、平日はどの曜日にご来院いただいても専門的な診察を受けていただける体制を整えています。さらに、循環器内科の中でもチームとして症例検討や情報共有を密に行い、科全体の診療レベルの底上げを図っています。

新しい治療法を含め、患者さんのご年齢やライフスタイルによって適した治療は異なります。だからこそ私たちは、患者さんご自身の状態を分かりやすく丁寧にお伝えし、しっかりとご納得いただいたうえで一緒に治療を進めていくことを何よりも大切にしています。ご自身の状態を正しく把握し、納得できる治療法を見つけられるよう、チーム一丸となってサポートいたしますので、不整脈を指摘された場合にはどうぞ遠慮なくご相談いただければと思います。

狭心症・心筋梗塞の診療
動いた際の胸の違和感は一度受診を
狭心症は、心臓に血液を送る冠動脈が動脈硬化などによって狭くなり、心筋(心臓の筋肉)への血流が一時的に滞る病気です。高血圧や糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病や喫煙、加齢などが主なリスク因子となります。一方、血管内のプラーク(脂質の塊)が破れて血管が完全に詰まると、心筋細胞が壊死し“心筋梗塞”を引き起こします。一度壊死した細胞は回復しないため、心機能が低下し、心不全などの重大な合併症につながるため、血管が詰まる前の狭心症の段階で早期に治療を開始することが極めて重要です。

イラスト:PIXTA
狭心症の代表例である“労作性狭心症”は、坂道や階段を上るなど、心臓が多くの血流を必要とする動作時に「胸が締め付けられるような圧迫感」や息切れが生じ、休むと症状が自然に落ち着くのが特徴です。その一方で、血管が一時的にけいれんを起こす“冠攣縮性(異型)狭心症”というタイプもあり、こちらは夜間や早朝の安静時に胸の痛みが現れることがあります。特に労作性狭心症は、休むと症状が軽快することから「年のせい」や「一時的なもの」と見過ごされがちですが、放置すると心筋梗塞へと進行するリスクを伴います。
なお、一般的な心電図検査は安静時に測定するため、動いたときだけ症状が現れる労作性狭心症は、健康診断などでは異常なしと判定されることも少なくありません。そのため、健診の結果に関わらず、動いた時の胸の圧迫感や違和感がある場合は、一度循環器を専門とする医師へご相談いただきたいと思います。
客観的な数値評価と精密な画像解析により、精度の高い診断・治療に尽力
当院では、新たな機器を積極的に導入し、患者さんの身体的な負担を抑えながらも、適切な診断と治療が行えるよう努めています。狭心症が疑われる場合、必要に応じて冠動脈CT検査を行いますが、ここで重要なのは血管が狭くなっていること自体よりも、それによって心臓への血流が不足する“虚血”という状態が起こっているかどうかです。血管の狭窄に加え、この虚血が生じている場合には治療の対象となります。当院ではCT画像から血流障害(虚血)の程度を数値化する“FFR-CT”解析を併用し、治療の必要性を判断しています。客観的な数値が得られることで医師による判断のばらつき防止に役立つほか、FFR-CT解析で虚血がないと分かれば、それ以上の身体的負担を伴う検査を受けていただかずに済みます。

検査の結果、実際にカテーテル治療が必要と判断した場合には、“OCT(光干渉断層計)”という高精細な血管内イメージング技術を活用します。血管内部の状態を詳細に観察できるため、血管が硬くなる“石灰化病変”や血管の枝分かれ部分にある“分岐部病変”といった治療難易度の高い複雑な病変に対しても、精密な画像解析に基づいて適切な治療計画を立てることが可能です。当院では導入当初からOCTに精通した医師を中心にこの技術を活用しており、一般的な病変から治療が難しい複雑な病変まで、患者さん一人ひとりに合った適切なカテーテル治療が提供できる体制を整えています。
治療後も見据えた包括的な体制で、よりよい診療を追求
狭心症や心筋梗塞といった虚血性心疾患は、カテーテル治療を行って終わりではありません。一度血管に動脈硬化が生じた方は再発のリスクもあるため、治療後のお薬の服用や生活習慣の改善といった二次予防が非常に重要です。当院ではカテーテル治療と内服治療を一体のものとして捉え、退院後も定期的なフォローアップを実施するとともに、地域の「かかりつけ医」の先生方と密に連携をとる「病診連携」を強化しています。必要に応じてOCTを用いて血管内の脂質状態などを観察し、一貫して包括的な管理を行っています。

「心臓の病気」と聞くと、手術や検査に対して強い不安を抱かれる方もいらっしゃるかもしれません。ですが、受診いただいてすぐに負担の大きな検査や治療を進めることは基本的にありませんので、ご安心ください。まずは専門の医師が必要性を見極め、丁寧にお話させていただいたうえで治療を進めます。あまり心配しすぎずに、少しでも気になる胸の違和感があれば、お気軽にご相談いただければと思います。

末梢動脈疾患・高血圧の診療
進行すると足の切断が必要になるケースも――小さなサインを見逃さずに受診を
末梢動脈疾患(PAD)は、主に足の血管に動脈硬化が起こり、血管が狭くなったり詰まったりすることで血流が悪くなる病気です。近年は「足梗塞」とも言われている病気です。歩くと腰、太もも、ふくらはぎが「だるくなる」「重たくなる」「痛む」といった症状が現れ、歩きづらさを感じるのが大きな特徴です。しかし、患者さんご本人は「歳のせい」と見過ごしてしまったり、もともとある腰痛のせいだと考えて我慢されたりすることも少なくありません。

イラスト:PIXTA
そこで重要になるのが、周囲の方の気付きです。たとえば、ご家族が「最近あまり出歩かなくなった」、「買い物に行くと途中で休憩するようになった」など、普段の行動量が減ったと感じる変化があれば、病気のサインの可能性がありますので、ぜひ声をかけてあげてほしいと思います。
なお、末梢動脈疾患は放っておくと、症状が進行し足の痛みが強くなるだけでなく、組織が壊死して足の切断に至ったり、全身の健康状態に悪影響を及ぼしたりする恐れがあります。「病院に行くと痛い治療をされるのではないか」と不安を抱かれる方もいらっしゃると思いますが、早い段階で受診していただければ、負担の少ない検査や治療で改善を図ることができます。少しでも気になる症状があれば、放っておかずに早めにご相談ください。
血管内超音波(IVUS)を駆使し、長期的な治療効果を見据えた治療を目指す
末梢動脈疾患の治療では、足の血流を確保する“カテーテル治療(血管内治療)”と、再発や他の心血管疾患を防ぐための“薬物療法”を組み合わせて進めていきます。
当院のカテーテル治療では、質の高い治療を目指すことはもちろん、患者さんの心身の負担を極力和らげるための工夫を重ねています。検査・治療の際には“足専用の血管造影装置”を使用し、高精細な画像を確認しながら処置を行います。

さらに、“血管内超音波(IVUS)”を用いたカテーテル治療も当院の強みの1つです。これは血管の内側から超音波で観察する機器で、当院では早い時期から治療に取り入れてきました。長年にわたり使いこなす中で培った技術やノウハウを学会や他施設の医師へ共有・指導してきた実績があり、当科の大きな強みとなっています。
このIVUSを熟知し使いこなすことで、詰まった血管を安全性高くかつスピーディーに開通させることが可能となります。また、血管の太さや動脈硬化の状態を正確に評価できるため、石灰化を削る器具、ステント(金属の筒)、お薬を塗布した風船など、多様なデバイスの中から患者さん一人ひとりの状態に適したものを選択し、治療効果の長期的な維持を目指した手技を実践しています。
加えて、治療中の痛みに対する配慮も徹底しています。カテーテルで風船を広げる際などに生じる独特な痛みに対して、麻酔科医*の協力を得て神経ブロック麻酔を取り入れています。「痛い処置が怖くて受診をためらっていた」という患者さんにも、安心して治療を受けていただける環境作りに努めています。
麻酔科標榜医:麻酔科部長 岩倉 健夫先生
高血圧専門外来や、腎デナベーションを実施――健やかな未来を包括的に支える
足の血管に動脈硬化が生じている患者さんは、足だけでなく心臓など全身の動脈硬化も進行している可能性が高いことが分かっています。そのため当院では、足の治療のみならず、隠れた狭心症などがないか全身の精密検査を行い、患者さんが将来にわたって健やかに生活できるよう包括的な診療を行っています。
その一環として、動脈硬化の根本的な原因となる高血圧に対して“高血圧専門外来”を開設しています。医師の診察に加え、管理栄養士・看護師・薬剤師による多職種チームを編成し、生活習慣の指導や適切な服薬管理を実施しています。

さらに、複数のお薬を服用しても血圧が下がりきらない“難治性高血圧”の患者さんに対しては、カテーテルを用いた新しい治療法“腎デナベーション”も導入しています。
これは、高血圧を引き起こす原因となる腎動脈の周りの交感神経を焼灼し、血圧を下げる治療法です。お薬と違って飲み忘れによる血圧上昇の心配がなく、夜間の高血圧の改善効果や、不整脈や心不全を抑える効果も期待されています。3~4日程度の入院で受けることができる治療です。腎デナベーションが2026年3月に保険適用されたことを受けて、当院でも4月から導入しています。
当院は引き続き、地域の病院・クリニックと緊密に連携をとりながら、高血圧やその先にある末梢動脈疾患の早期診断・治療に取り組んでまいります。特に足の症状に関しては初めに整形外科などを受診することも多いかと思いますが、末梢動脈疾患に関しては循環器内科が専門に診療を行っていますので、腰や足の違和感、なかなか下がらない血圧などでお困りの際はお気軽にご相談ください。

大動脈弁狭窄症の診療
健やかな日常を長く保つために――年齢に関係なく一度ご相談を
大動脈弁狭窄症は、心臓の出口にある“大動脈弁”が硬くなって狭くなり、全身に十分な血液が送り出されなくなる病気です。重症かつ有症状となっても未治療のまま放置してしまうと、一般的な進行がんよりも予後が悪いことが知られています。主な症状には息切れ、胸の痛み、ふらつきや失神などがありますが、高齢の患者さんの場合、「歳のせいだから」と見過ごしてしまったり、日常の動きを無意識に制限してしまったりすることで、症状を自覚していないケースも少なくありません。

イラスト:PIXTA
従来は息切れや胸痛などの症状が出てから治療を行うのが一般的でしたが、近年では、たとえ症状がなくても重症の場合は治療を行ったほうが治療成績がよいことが分かってきました。デバイス(機器)の進歩によって治療の安全性も向上しており、大動脈弁狭窄症は進行性かつ突然死する疾患であることから、適切なタイミングで早期に治療を行う重要性がより一層高まっています。
患者さんの中には「歳だし、ぽっくりいければそれでよい」と治療を希望されない方もいらっしゃいますが、実際のデータとして突然死は10%程度との報告もあり、何度も心不全増悪での救急搬送を繰り返して最終的に薬物治療での改善が困難になるという経過を辿ることが多いとされています。TAVIは後述のとおり侵襲の少ない治療で、術翌日には歩行可能であり、年齢での治療制限はないと考えています。長く元気に生きる、いわゆる健康寿命を保つための手術であり、年齢に関係なく希望があれば当院では治療を考慮させていただきます。寿命を決めるかもしれない重大な疾患であり、一度話を聞いてみたいでも構いませんので、当院にご相談いただければ専門医*が詳しく説明させて頂きます。
日本循環器学会認定 循環器専門医
負担の少ない“TAVI”――ハートチームが一体となり、よりよい治療選択をサポート
大動脈弁狭窄症の治療法には、主に「薬物療法」「外科的大動脈弁置換術」「経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)」の3つがあります。薬物療法は症状を和らげる保存的治療であり、根本的な治療ではありません。物理的に心臓の出口の扉が開きにくくなる疾患であり、治療としては弁そのものを人工弁に置き換える手術が必要となります。胸を切開する外科手術に対し、TAVIは足の付け根などの血管からカテーテルを挿入し、新しい弁を留置する治療法です。身体への負担が少なく、術後の経過が順調であれば翌日には歩行が可能となり、早期の日常生活への復帰が期待できます。

日本のガイドラインでは、75歳未満の方は外科手術、80歳以上の方はTAVIが推奨される傾向にありますが、当院では単に年齢のみで治療法を当てはめることはせず、医師、看護師、理学療法士など多職種で構成される“ハートチーム”で、内科と外科の垣根を越えて患者さん一人ひとりの全身状態、持病、ご家族の意向などを詳細に共有・議論したうえで適切な治療方針を決定しています。
手術にはそれぞれメリットと一定のリスクが存在します。TAVIも例外ではありません。だからこそ私たちは、病状や選択肢について丁寧にご説明し、患者さんやご家族とコミュニケーションを重ねて「納得できる治療」を一緒に検討することを何よりも大切にしています。
経験と知見を結集し、より安全で確実な治療の提供を目指す
TAVI治療において当院が強みとしているのは、指導医*をはじめとする経験を積んだ専門スタッフが揃った診療体制です。当院では事前の検査情報に基づき、アプローチ方法や弁の留置位置などの詳細な治療戦略を組み立て、想定される個々のリスクを事前に評価・見極めたうえで手技に臨んでいます。さらに当院では、カテーテル室の近くに、高精度な血管撮影装置と外科手術用の設備を兼ね備えた“ハイブリッド手術室”を配置しています。これにより、カテーテル治療中に、万が一の事態が起きた際にも、迅速に外科的な処置へ移行できる診療環境を整えています。
日本経カテーテル心臓弁治療学会 TAVR指導医

TAVIでは足の血管からカテーテルを挿入するのが一般的ですが、高齢の患者さんでは動脈硬化の進行により別の部位からのカテーテル挿入が必要となるケースがあります。当院は足の血管に対するカテーテル治療も積極的に行っている病院であり、通常であれば足の血管からのTAVIが困難なほど動脈硬化が進行した症例であっても、当院では足の血管を治療したうえでTAVIを行うことで低侵襲な治療が可能となるケースも多く経験しております。
さらに、高齢の患者さんは心臓以外にも肺疾患や糖尿病などの併存疾患を抱えていることがあり、そのことが心臓の手術の妨げになることも少なくありませんが、当院では総合病院の機能を活かし、他科の医師と密に連携を取り合うことで、全身の健康状態を考慮した包括的な診療を提供できると考えています。「こんな年齢になってまで」「大した症状もないのに」「手術は嫌だけど話聞きに行ってもよいのかな」などと思わず、治療に悩まれている方はぜひ一度気軽にご来院いただければと思います。

- 公開日:2024年12月27日
- 最終更新日:2026年9月15日
