広島県尾道市の医療ニーズ

医師数は全国平均以下――高齢化で今後さらなる拡充が必要

医師数は全国平均以下
――高齢化で今後さらなる拡充が必要

尾道市は広島県の東南部に位置し、緑豊かな丘陵地域から独特の多島美を有する瀬戸内海地域に至るまで多彩な資源を持つ都市です。
2020年の国勢調査によると人口10万人あたりの医療機関数と病床数は全国平均を上回っている一方、人口10万人あたりの医師数は全国平均より少ないのが課題です。
高齢化をはじめとする医療ニーズの高まりに対応していくため、医師数の拡充が今後重要となっていくでしょう。

広島県尾道市の地域医療を支える
尾道市立市民病院

患者さんとの対話を大切に、“心の通い合う病院”でありたい

患者さんとの対話を大切に、“心の通い合う病院”でありたい

広島県尾道市に位置する尾道市立市民病院は、90年以上にわたり地域の急性期医療を支えてきました。また2022年には乳腺甲状腺外科を開設しました。女性医師をはじめとして乳がんや甲状腺がんの治療に尽力中です(2024年10月時点)。
整形外科では上肢、下肢、リウマチ、骨粗鬆症などそれぞれに専門性を備えた医師がそろっており、泌尿器科ではレーザーを活用した体への負担が少ない低侵襲ていしんしゅうの治療に力を入れています。
当院が目指している姿は“心の通い合う病院”です。患者さんと医療スタッフがお互いに信頼し合い、アットホームな雰囲気の中過ごせることでより質の高い医療を提供できると信じ、これからも地域医療を支える病院として精いっぱい努めてまいります。

院長プロフィール

尾道市立市民病院の
乳がん・肩腱板断裂・
前立腺がん・痔の治療

乳がんの治療

迅速な診断と、患者さん一人ひとりに応じた柔軟な治療方針

当院では、乳がんの迅速な診断と適切な治療選択のために、検査体制を充実させています。マンモグラフィーや超音波検査で悪性の可能性が示された場合には、速やかに細胞診や生検を行い、通常1週間ほどで診断を確定します。その後、PET-CTや乳房MRIを用いて患者さんの状態を詳細に把握したうえで、治療方針を慎重に決定しています。

迅速な診断と、患者さん一人ひとりに応じた柔軟な治療方針

乳がんは遺伝子の異常が関与しているケースがあり、ご家族の同病歴や発症した年齢などによっては“BRCA1/2遺伝子検査”を保険適用で行うなど、治療の選択肢を少しでも広げられるように努めています。
また乳がんの種類(サブタイプ)を調べる検査を必ず行うことにより、患者さん一人ひとりに合った薬物療法を決定しています。2023年9月から術後補助化学療法の要否判定のためにオンコタイプDX乳がん再発スコア検査が保険適応になりましたので積極的に検査を行なっています。薬物療法は大きな進歩を遂げており最新の学術情報のキャッチアップを欠かさぬよう努力しています。

日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会の“乳房再建用エキスパンダー/インプラント実施施設”に認定

乳がんの根治を目指すことはもちろん、“乳房再建”など整容面に配慮した手術にも力を入れているのが当院の特徴です。自分の体の一部(自家組織)を使って再建する方法に加え、 人工物(シリコン乳房インプラント)を用いた再建にも対応可能です。人工物による乳房再建には、一般社団法人日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会の認定が必要ですが、当院は“乳房再建エキスパンダー実施施設”と”乳房再建インプラント実施施設”の両方に認定されています。これにより、一次再建(同時再建)、二次再建(乳がん手術や化学療法などが一段落した後に行う再建)が実施可能です。

日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会の“乳房再建用エキスパンダー/インプラント実施施設”に認定

このため乳がん手術の際に再建手術を迷っている患者さんは乳房全摘後にしばらく考えてから再建を選ぶことも可能です。
ただ、乳房再建にはリスクもあるので、再建手術を行わない選択肢もあります。メリット・デメリットを正確に理解していただいたうえで、ご希望に沿う形で治療を進めるようにしています。

副作用の相談から“アピアランスケア”まで――多職種の連携で治療中も手厚くサポート

当院ではきめ細やかな薬物療法の管理にも力を入れています。日本病院薬剤師会認定の“がん薬物療法専門薬剤師”と“がん薬物療法認定薬剤師”が合わせて3名在籍しており(2024年10月時点)、医師の診察前に必ず薬剤師外来に通っていただくシステムを作っています。そうすることで、副作用の早期発見につながり安全に薬物療法を行うことができるように努めています。

副作用の相談から“アピアランスケア”まで――多職種の連携で治療中も手厚くサポート

写真:メディカルノート

治療中は公益社団法人日本看護協会認定の”緩和ケア認定看護師”や臨床心理士が関わり、医療チームで患者さんを支えるだけでなく、乳がん治療による外見の変化に対処し患者さんの自信を取り戻すための“アピアランスケア”の相談会を定期的に開催しています。各種メーカーやボランティアの方々と協力し、下着やウィッグ、ネイルケアに関する相談を受け付けております。
患者さんの中には喪失感が強く治療に前向きになれない方もいらっしゃいますが、精神的なダメージに配慮しつつ、ご本人が納得できる形で治療を進めていくことを大切にしています。分からないことや不安なことは何でもご相談ください。

解説医師プロフィール

肩腱板断裂の外科治療

五十肩と間違われやすい“肩腱板断裂”――肩の痛みを感じたら受診を

腱板(肩の周りにある筋肉と腱の集合体)が部分的または完全に断裂する“肩腱板断裂”は野球選手に多いと思われがちですが、実際は野球選手に限らず発症する可能性があり、40歳以降の患者さんに多い疾患です。また、加齢に伴い腱の変性が進むために、高齢の方は日常のささいな動作でも腱板が断裂する可能性があります。
似たような症状の病気に肩の痛みと肩関節の可動域制限を伴う五十肩があります。腱板断裂と五十肩とを臨床的に鑑別するのは困難なことが多く、肩関節エコーや肩関節MRIで腱板が断裂している所見を確認する必要があります。

五十肩と間違われやすい“肩腱板断裂”――肩の痛みを感じたら受診を

腱板断裂の肩関節エコーと肩関節MRI 
(矢印:断裂部)

患者さんの生活スタイルに合わせて、保存療法か手術かを選択

肩腱板断裂のうち約7割は、薬物療法や運動療法といった保存的治療で症状は改善します。しかし、保存的治療で改善が得られない場合に加え、年齢の若い方や肩に負荷がかかる職業の方は手術で腱板を修復し、今後の生活や仕事に支障がでないよう配慮する必要があります。特に尾道市は造船業や農業、漁業が盛んなため、患者さんの職業や生活スタイルを踏まえて最適な治療法を提案するように努めています。
手術では、小さな切開からカメラを挿入して行う“関節鏡視下手術”を主に採用しておりますが、断裂の大きさや断裂の形態、生活環境や労働環境によっては従来の関節鏡を使用せずに腱板を修復する直視下手術を選択する場合もあります。どちらの手術も肩周囲の筋肉である三角筋にほとんど侵襲を加えない低侵襲な手術を行っております。

患者さんの生活スタイルに合わせて、保存療法か手術かを選択

左:腱板修復前と 右:修復後

一般社団法人日本手外科学会認定”手外科専門医”かつ脊椎脊髄外科専門医”

肩腱板断裂の疑いがある患者さんの中には、実は頚椎けいついの病気が隠れているケースも少なくありません。当院には、海外でトレーニングを受けた肩を含む手外科を専門としている医師の中に日本脊椎脊髄せきずい外科の専門医がいます(2024年10月時点)。両方の専門知識を持つ医師が総合的に診療できる点は当院の強みです。実際に、腱板断裂で紹介された患者さんに頚椎の疾患が判明し、頚椎の手術を行うことで肩の症状が自然軽快したという事例もありました。

日本手外科学会認定“手外科専門医”かつ“脊椎脊髄外科専門医”

腱板断裂のMRI画像

左 腱板修復が可能 
中 自家大腿筋膜移植術が必要 
右 人工肩関節置換術が必要

肩腱板断裂に対する手術の選択肢は幅広く、断裂が大きくなりますと“自家大腿筋膜移植術じかだいたいきんまくいしょくじゅつ”や“人工肩関節置換術”が必要になることもありますが、筋膜の移植や人工関節に抵抗を感じる方も多いでしょう。肩の痛みを放置し断裂が拡大しますと、このような大がかりな手術が必要となる可能性があります。自分の腱板のみで修復できる段階で治療に臨めるよう、少しでも気になる症状があれば早めにご相談ください。

解説医師プロフィール

前立腺がんの治療

症状がなくても積極的な受診を

早期の前立腺がんは症状が特にみられないため、人間ドックや健康診断などで受けた“PSA(前立腺特異抗原)検査”の結果をきっかけに受診し、発覚するケースがほとんどです。「症状がないから大丈夫」と思わずに積極的に検査を受けていただくことで早期発見につながります。

症状がなくても積極的な受診を

写真:メディカルノート

当院では、前立腺がんの治療のガイドラインに則った標準治療を一とおり提供できる体制を整えており、手術を含めて院内で完結できるように努めています。もし特殊な放射線治療が必要な場合は、近隣の大学病院と連携して治療を進めています。
患者さんにとっては、身体的負担だけでなく、時間や経済的な観点からもメリットやデメリットは人それぞれ異なるでしょう。ご本人がより好ましいと思った治療を選択していただくことを大切にしています。

術式の標準化やロボット支援手術の導入で、手術の質を担保

当院における前立腺がんの手術は、主に“腹腔鏡下手術ふくくうきょうかしゅじゅつ”を採用しています。これは腹部に小さな切開を行い、カメラと特殊な器具を使って行う手術です。痛みや出血が少なくて済むことや入院期間が短いことから、患者さんの術後の早期回復が期待できます。
また、当院では腹腔鏡下手術の術式を標準化して、どの医師でも同等の手術を提供できるよう体制化することで、手術の質を担保しています。さらには、2025年度に新しい手術用機械である手術支援ロボット“ダヴィンチ”を導入し、よりいっそう質の高い手術を実現してまいります。

こまめなカンファレンスにより、チーム全体で患者さんを支える

随時カンファレンスを行い、患者さんの病態や治療方針について情報共有や意思統一を図ることは欠かせません。チーム全体で患者さんのことを理解しサポートにあたっていますので、患者さんには安心して治療に専念していただきたいです。

こまめなカンファレンスにより、チーム全体で患者さんを支える

当院では検査・治療のどちらにおいても適切なものが提供できるよう体制構築に取り組んでいますので、少しでも気になる症状や不安がある方は遠慮なくご相談ください。

解説医師プロフィール
杉本 盛人 先生
杉本 盛人先生

痔の治療

痔の症状には別の病気が隠れている可能性も

一般的に痔といわれるお尻の病気には、いぼ痔(痔核じかく)、切れ痔(裂肛)、あな痔(痔瘻)の3種類があります。これらによる症状としては、肛門からの出血、肛門そのものや周囲の痛み、肛門からの脱出などがあり、その他かゆみや、下着の汚れ、匂いなどが出ることもあります。
もし、お尻からの出血や排便時の強い痛み、さらに日常生活に支障が出るような症状がある場合は、早めに受診することをおすすめします。また、出血はもちろんのこと、便秘や過度な下痢が続く場合も、大腸がんや炎症性腸疾患など、別の病気が隠れている可能性がありますので、適切な診断を受けることが重要です。

痔の症状には別の病気が隠れている可能性も

当院では、外科、内科、消化器科など、他科と連携を図りながら診療にあたっています。
また、診察室は二重のカーテンで仕切り、プライバシーに配慮しながら診療を行っていますので、安心して受診いただけたらと思います。

専門的な技術を持つ医師が適した治療法を提案

痔の治療は、必ずしも手術が必要になるわけではありません。まず症状を把握し、適切な治療法を提案します。排便習慣や生活習慣が関連することが多いため、排便のコントロールや排便の仕方、食生活の見直しを含め、患者さんと一緒に改善を進めていくことが大切と考えています。場合によっては漢方薬なども併用しながら治療を行うこともあります。 

専門的な技術を持つ医師が適した治療法を提案

写真:メディカルノート

日常生活に支障が出るほど症状が進行し手術が必要となった場合も、できるだけ効果的で負担の少ない治療を提案しています。手術に対する抵抗感がある方もいらっしゃるかもしれませんが、外来での処置で症状が軽くなることもあります。当院では大腸肛門病専門医を中心に外科スタッフ一同で、安心して手術を受けられる環境をサポートします。
痔の受診や治療は、勇気が出ずにためらってしまう方も多いでしょう。当院では、デリケートな場所の診療だからこそ、そのような方々が少しでも気軽に受診できるような環境づくりに努めていますので、どんな小さな疑問や不安でもお気軽にご相談ください。

解説医師プロフィール
  • 公開日:2024年12月26日
病院ホームページを見る