広島県尾道市にある尾道市立市民病院は、開院より90年以上にわたって地域医療を支える急性期病院です。市民の皆さんに対して、医療の安心と安全、健康の維持増進を図るため、質の高い医療を提供しています。
そんな同院の特長について、院長の廣岡 孝彦先生にお話を伺いました。
当院は1930年に尾道市立尾道診療所として開院し、1957年に尾道市立市民病院へと改称しました。その後、新病院の建設に伴って1983年に現在の所在地である尾道市新高山に移転。現在は建て替えを視野に入れながら医療体制を整備しています。病床数は、一般病床282床で、地域を支える病院として急性期医療に注力しています。
当院は広島県尾三地域の2次医療圏を中心に、広範なエリアをカバーしています。広島県南部の瀬戸内海に点在する島しょ部では夜間や休日に救急医療を行っている病院がないため、その役割を率先して担っているのが当院です。2024年には2年間閉鎖しておりました小児科診療を再開しました。また11月には病気の状態(回復期も含む)にあるお子さんで、集団保育やご家庭で育児を行うことが困難なお子さんを一時的にお預かりする病児病後児保育を開設しました。
今後は医師の働き方改革やひっ迫する地域の救急医療により、常勤医師の確保がますます困難になるでしょう。当院は安定した医療を提供できるよう、ともに尾三医療圏の救急医療を担うJA尾道総合病院や公立みつぎ総合病院と連携し、これからも強固な地域医療ネットワークで皆さんの暮らしを支えてまいります。
整形外科では上肢、下肢、脊椎、リウマチ、骨粗鬆症などそれぞれに専門性を備えた医師が診療に携わっております。患者さんの症状に対して専門的かつ包括的にアプローチすることで、効果的な治療をご提供できるよう努めています。私は手外科の専門医*と指導医**を取得しており、上肢特に肩腱板断裂など肩関節疾患の手術を多く行っておりますが、肩の症状を訴える患者さんの中には肩関節による痛みか頚椎由来の神経による痛みかを鑑別しなければいけない場合もあります。病態により治療法は全く異なりますので、脊椎脊髄外科の専門医*と指導医**の資格を取得しました。
*日本手外科学会認定 手外科専門医/日本脊椎脊髄外科学会認定 脊椎脊髄外科専門医
**日本手外科学会認定 手外科指導医/日本脊椎脊髄外科学会認定 脊椎脊髄外科指導医
消化器内科は、胃がん、大腸がんなどの消化管疾患をはじめ、肝胆膵領域の炎症性疾患や腫瘍性疾患などの治療を行っています。院内に併設されております消化器内視鏡センターでは消化管内視鏡や超音波検査などを年間約4,000例行っております。
泌尿器科では2025(令和7)年6月に新しく手術支援ロボット“ダビンチXi”を導入しました。これまでは、泌尿器科では腎癌、前立腺がん、膀胱癌に対して主に腹腔鏡下手術で、前立腺肥大症に対してはHoLEP(経尿道的ホルミニウムレーザー前立腺核出術)を用いた低侵襲な治療を行っておりました。“ダビンチXi”の導入により、より一層質の高い医療を提供していく方針です。
呼吸器外科と消化器外科では主に内視鏡を用いた低侵襲手術を行っておりますが、2022年に乳腺甲状腺外科を開設しました。女性の専門医が乳がんや甲状腺がんの治療を行っておりますので、胸のしこりや体調の異変など気になることがありましたらぜひご相談ください。
歯科口腔外科医が常勤していることも当院の特徴の1つです。歯科口腔外科では、顔面や口腔の外傷、腫瘍や嚢胞性疾患、歯性感染症に加え、インプラント治療にも対応しています。院内で医科と歯科の連携体制を推進し、診療科の枠を越えたチーム医療の体制を構築しています。たとえば口腔細菌による誤嚥性肺炎や人工呼吸器関連肺炎を防止するチームには、歯科口腔外科の医療スタッフが呼吸器ケア、糖尿病ケア、緩和ケアなどのチームに参加し、多方面から患者さんをサポートしています。さらに、高齢者の摂食嚥下障害や口腔ケアに対応するほか、顎骨壊死などのリスクを抱える骨粗鬆症患者さんに対しても整形外科医と連携して治療にあたっております。
院長就任時に当院を“心の通い合う病院”にしたいと考えました。患者さんと医療スタッフがお互いにアットホームな雰囲気で過ごせれば、より質の高い医療を提供できると信じています。そのためには職員同士のコミュニケーションを活性化し、診療科や職種の垣根を越えたチーム医療を実践するとともに、患者さんに寄り添い、お顔をあわせて対話することが必要です。さらに地域医療連携の強化にも努めてまいりました。
患者さんからの信頼、職員からの信頼、そして地域医療連携施設からの信頼を得ることで、 “患者さんに選ばれる病院”という未来があるのではないでしょうか。当院はこれからも地域医療を支える病院として、日々の医療活動に精一杯取り組んでまいります。
※本文中の数字は全て2024年10月現在のものです。
尾道市立市民病院 院長兼がん診療統括部長
様々な学会と連携し、日々の診療・研究に役立つ医師向けウェビナーを定期配信しています。
情報アップデートの場としてぜひご視聴ください。
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まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。