大阪市のがん医療
“病院銀座”とも呼ばれる医療の中心地。
増加するがんの診療ニーズに応える
大阪市中央区やその周辺は、大阪府庁をはじめとした官公庁やオフィスビルが集まるオフィス街です。地域住民には子育て世代のファミリー層は比較的少なく、単身者・2人世帯や高齢の方が多いのが特徴です。“病院銀座”とも呼ばれるほどさまざまな病院が密集しており、大阪国際がんセンターや大阪医療センターといった高度ながん医療を提供する施設があります。消化器外科専門医*や泌尿器科専門医**も多く、医療レベルが高い地域といえるでしょう。そのため在住している方はもちろん、中央区外・大阪市外からこの地域に診療を受けに来る方が多くみられます。
たとえば、現在中央区・中之島地区の会社に勤務している方や、以前勤務していて今はリタイアした方などが多くこの地域に通院しています。まさに大阪の医療を支える地域であり、これからも高齢化に伴い年々増加するがん診療のニーズに応えることが求められるでしょう。
* 日本消化器外科学会認定
**日本泌尿器学会認定
大阪市のがん医療を支える
大手前病院
周辺の専門施設と密に連携し、
充実した設備で地域医療に貢献
当院は1951年に国家公務員の共同職域病院として開院しました。“高度な医療と温かい人情の調和”をモットーとし、公務員の方だけでなく地域の皆さんに広くご利用いただいています。地域医療支援病院に認定されており、中規模の総合病院として幅広い診療科を設置し、24時間体制で救急の患者さんを受け入れるなど、地域の医療を支える役割を果たしています。
がん診療においては大阪府がん診療連携拠点病院として、近隣の大阪国際がんセンターと密に連携しています。共同で治療する症例も多くあり、高難度の手術が必要になる場合や、がんゲノム医療などの専門的な治療を希望される場合は大阪国際がんセンターへ紹介しています。一方で、特に高齢のがん患者さんでは循環器疾患や内分泌疾患などの合併症を持つ方も多くいらっしゃいます。その場合は総合病院である当院のほうが治療に適していることもあるほか、大阪国際がんセンターの患者さんに腸閉塞などの緊急合併症が生じた場合、当院で対処することもあります。大阪大学医学部附属病院とも連携しており、医療スタッフの応援を得ることで当院でも高難度の手術を行うことができるようになっています。
近年は手術支援ロボット(ダヴィンチ)を導入するなど、設備の拡充にも力を入れています。今後はハイブリット手術室やICU(集中治療室)/CCU(循環器疾患集中治療室)を新設する予定です。よりいっそう地域の医療に貢献できるよう努めてまいります。
大手前病院の
大腸がん、前立腺がんの治療
大腸がんの治療
手術支援ロボットを導入し、患者さんの負担が少ない手術を行う
大腸がんの治療法には、内視鏡治療、手術、薬物療法、放射線療法などがあります。中でも手術においては近年、腹部に開けた小さな穴から鉗子を入れて手術を行う“腹腔鏡下手術”や、腹部に開けた穴からロボットアームを入れて遠隔で操作する“ロボット支援下手術”などの低侵襲(体への負担が少ない)手術が広く普及しています。当初、腹腔鏡下手術の施行は早期がんの患者さんに限られていましたが、現在は進行がんも含めてほとんどの症例で腹腔鏡下手術が行われており、当院でも対応しています。また、当院では2023年12月に手術支援ロボット(ダヴィンチ)を導入し、ロボット支援下手術が行えるようになりました。当院の位置する大阪市中央区周辺は医療水準が高い地域ですので、この手術支援ロボットの導入により、その水準を満たす手術設備を備えた病院として認められることになったと考えています。
当院は総合病院ですので、大腸がんの治療を受けていらっしゃる方は、大阪国際がんセンターなどの専門施設と比べて進行がんの患者さん、合併症のある患者さんが多いのが特徴です。たとえば脳梗塞や心筋梗塞の既往があって抗血栓薬(血液をサラサラにする薬)を服用されている方、血液透析をされている方への手術も積極的に対応しています。緩和ケアなどの体制も整っていますので、ぜひ安心して治療を受けていただきたいと思います。
フレキシブルな診療体制で、手術待機時間の短縮を実現
当院ではがん診療において、確定診断後から手術までの待機時間ができるだけ短くなるように日々心がけています。特に“がんの緊急症(Oncologic Emergency)”に関しては優先的に対処しています。がんの緊急症とは、がんに関連して発生する緊急対応が必要な症状のことで、大腸がんにおいては腸閉塞や穿孔(臓器の壁に穴が開くこと)が起こった場合の症状などが挙げられます。このような場合は患者さんごとに適した治療プランを立案し、可能な限り速やかに対処しています。
また消化器外科だけではなく、病院全体で連携が取れているのも強みです。たとえば、緊急性の高い患者さんがいる場合、ほかの診療科の手術枠が空いていれば使用できないか相談して速やかに手術を行えるようにするなど、フレキシブルに対応しています。進行がんの治療の場合は、よりスピーディーな対応が求められることも多くありますので、常に消化器内科などの他科と連携が取れるようにしています。
固定メンバーで診療に当たり、治療方針を統一
当院の消化器外科では、医師2人を中心とした固定メンバーで大腸がん診療にあたっています(2024年4月時点)。そのため術式や手技、機器の統一が図りやすく、担当医によって治療方針が大きく異なるということは起こりません。また技術の維持・向上を図るため、学会や研究会、手術ビデオなどでの学習も積極的に行い、日々研鑽に励んでいます。若手医師の育成にも力を入れており、まずは虫垂炎や胆嚢炎などの良性の病気から手術経験を積んでもらっています。手技だけではなく、緊急手術の対応や患者さんのケア、薬剤の使い方など、日々の診療から学べることは多くあると考えています。
前立腺がんの治療前立腺がんの治療は“ロボット支援下手術”が一般的に
前立腺がんには、手術、放射線療法、薬物療法、監視療法などの治療法があり、近年ますます進化しています。手術においては、2006年には腹部に開けた小さな穴から鉗子を入れて手術を行う“腹腔鏡下手術”が、2012年には腹部に開けた穴からロボットアームを入れて遠隔で操作する“ロボット支援下手術”が保険適用となりました。これらの低侵襲手術の普及によって、手術後の痛みなどの患者さんの負担が以前より軽くなり、入院期間も短く済むようになっています。
“ロボット支援下手術”のメリットは、手ブレ補正機能や3Dの鮮明な画像などにより、緻密な手術ができることです。細かい作業をしやすいため、手術に伴う出血が少なく済み、機能温存に優れています。またほかの臓器を損傷する可能性も低減されるため、合併症が起こるリスクが低くなり、手術後の患者さんの早期回復が期待できます。
より多くの手術をお任せいただける病院に
泌尿器科においては、前立腺がんや腎臓がんなどロボット支援下手術が適応となる病気が多いため、施設にその設備が整っているかどうかは非常に重要です。当院では2023年12月に手術支援ロボット(ダヴィンチ)を導入しましたので、これまでであればほかの施設に紹介することになっていた患者さんもどんどん受け入れができるようになりました。可能な限り安心できる医療を地域の方々に提供していきたいと思います。
また、手術支援ロボットは若手医師のトレーニングにも役立ちます。モニターを複数人で見て共有しながら手術を行えるため、まずは目で見てもらって勉強し、できるところから実践してもらうというような形で経験を積んでいける体制です。導入によりさらに若手医師が集まり、今後、当科がますます発展していくことを期待しています。
検査と診断をスピーディーに行い、“がんの根治”を目指す
当科では、何らかの病気を疑う場合はできるだけ早く診断を出せるように心がけています。たとえば膀胱鏡検査やCT検査などは、可能な限りその日のうちに行います。少しでも診断を早め、そして早期に治療を開始できるようにするためです。またがん治療では、“再発がない手術”を目指しています。がんの再発は患者さんにとって非常にショックな出来事になりますし、根治が難しくなることもあります。そのため、私たちはできる限り再発を防ぐためにも、最初の治療で完治させることを目標として日々の診療に努めています。
今回手術支援ロボットを導入したことで、当院で行うことができる手術の幅が広がりました。今までは手術支援ロボット手術が導入されている病院などへの紹介になっていた症例でも、今後は当院での手術が可能となっています。そのような点も含めて患者さんに丁寧に説明し、納得いただいたうえで治療を受けていただけるよう力を尽くしてまいります。
- 公開日:2024年3月19日