札幌市の泌尿器科の治療

北海道全域から患者さんが集まる札幌市、多様な症例にいかに対応するか

北海道全域から患者さんが集まる札幌市、多様な症例にいかに対応するか

札幌市は道内人口の3分の1以上を占める大都市であり、多くの急性期病院が集中しているほか、入院病床を持つ泌尿器科の専門病院も複数あります。対して、道内の多くの地域は深刻な医療過疎に陥っており、二次医療圏(一般的な入院医療を提供する区域)別に見ると、札幌圏と旭川市を含む上川中部圏以外の医療圏では、人口10万人あたりの医師数が全国平均を下回っています。そのため、札幌市には難易度の高い症例を含め、さまざまな患者さんが道内全域から集まってきている状況です。

泌尿器科疾患では尿路結石症や前立腺がんが年々増加傾向にあります。前立腺がんは男性のがんの罹患率が第1位のがんですが、早期発見・早期治療で根治を目指すことができます。札幌市においても検診、診断から治療、再発への対応まで充実した泌尿器科医療を提供していく必要があるでしょう。

札幌市の医療を支える
坂泌尿器科病院

より高精度な技術を駆使し、できる限り負担の少ない治療を目指す

より高精度な技術を駆使し、できる限り負担の少ない治療を目指す

坂泌尿器科病院は1987年に開設した泌尿器科を専門とする病院です。前立腺がん、前立腺肥大症、尿路結石症、膀胱がんを中心とした診療に積極的に取り組んでいます。当院の基本方針は、“Speedy(迅速), Safety(安全), Sincerity(誠意), Smile(笑顔)”の4つです。迅速かつ安全な医療を提供するために、誠意を尽くして診断・治療技術の向上に努めてきました。また、できる限り体に負担の少ない治療を行うことを大切に考え、早期からさまざまな低侵襲治療に取り組んでまいりました。より新しい医療機器を導入し、それらを使いこなすためのトレーニングも日々積んでいます。最終的には同じように治る病気であっても、さまざまな技術を駆使することで治療の過程にある苦痛を少しでも和らげることができればというのが私たちの思いです。2020年には新病院として生まれ変わり、手術室や病床などが拡充したことでより充実した医療を提供できるようになりました。これからも4つの基本方針のもと、よりよい泌尿器科医療を提供してまいります。セカンドオピニオンも受け付けておりますので、不安なことがあればぜひお気軽にご相談ください。

院長プロフィール

坂泌尿器科病院の
前立腺がん、前立腺肥大症、尿路結石症、膀胱がんの治療

前立腺がんの治療

合併症の少ない放射線治療で根治を目指す

前立腺がんは、PSA(前立腺特異抗原)、病期(ステージ)、悪性度(グリソンスコア:がんの性質)によって低リスク、中間リスク、高リスクに分類され、リスクに応じて治療法を決定します。根治的な治療には手術と放射線治療があり、どちらもほぼ同等の効果が得られることが分かっています。近年はロボット支援下の手術が主流となってきていますが、術後の尿失禁が問題となることが多いことから、当院では合併症の少ない放射線治療を積極的に行っています。低リスクであれば、基本的に放射線治療単独で根治を目指します。中間リスク、高リスクではホルモン療法(男性ホルモンを抑える治療)と放射線治療を組み合わせて行い、転移リスクが高い場合には骨盤内リンパ節領域を予防的に照射する治療も実施しています。

合併症の少ない放射線治療で根治を目指す

“ハルシオン”の導入により短時間で精度の高い放射線治療を実現

前立腺がんの放射線治療について、当院では強度変調放射線治療(IMRT)を実施しています。IMRTとは放射線に強弱をつけることで、周辺の正常組織への照射を抑えながら、がんに対して集中的に照射できる方法です。2023年11月には、IMRTを回転させながら行う強度変調回転照射法(VMAT)に特化した放射線治療装置“ハルシオン”を導入しました。ハルシオンには、放射線を発生する装置と照射部位の断面画像を撮像するコーンビームCTが内蔵されています。これらの機械が高速回転することで、短時間でより精度の高い照射と撮像が可能となりました。通常、外来通院にて37回(1日1回2Gy*、合計74Gy)実施します。放射線治療では、治療後しばらくしてから下血や排便障害が問題となることがあるため、毎回の放射線治療の際にコーンビームCTの画像で腸管内の便やガスの状態を確認するようにしています。加えて、お腹の調子を整える食生活を送っていただくために、治療前〜治療後まで管理栄養士による栄養指導も実施しています。

*Gy(グレイ):放射線の単位

ハルシオンの導入により短時間で精度の高い放射線治療を実現

新技術を使った病変を正確に狙う前立腺針生検

当院では、前立腺がんの診断において新技術を搭載したMRI融合前立腺針生検システム“トリニティ”を使用し、精度の高い診断を目指しています。
前立腺がんの診断では、PSA検査で高値を認め、MRI検査で疑わしい病変があった場合に前立腺針生検で組織を採取してがん細胞の有無を確認します。しかし、前立腺がんは病変の場所を特定するのが難しく、MRI検査で病変が認められたにもかかわらず前立腺針生検ではがん細胞が検出されないこともあり、確定診断に難渋するケースが多々ありました。トリニティでは、事前に外来で撮影したMRI画像と生検時の超音波画像を融合させて、超音波画像上に前立腺がんが疑われる病変部を表示することができます。病変を狙って標的組織を的確に採取することができるため、正確性の高い診断が導き出せるようになりました。不必要な再生検の回避にもつながるので、患者さんの身体的負担も軽減されます。

新技術を使った病変を正確に狙う前立腺針生検

前立腺がんは早期発見・早期治療ができれば根治を目指すことが可能です。50歳を過ぎたら年に1回は健康診断や人間ドックでPSA検査を受けることをおすすめします。また、前立腺がんは家族歴がリスク因子であることから、血縁者に前立腺がんの方がいる場合には、50歳を待たずに早めにPSA検査を受けるのがよいでしょう。

解説医師プロフィール
原田 慶一 先生
原田 慶一先生

前立腺肥大症の低侵襲手術

手術不適応だった大きな前立腺肥大症にも対応――レーザーで前立腺を丸ごと摘出

前立腺肥大症の手術にはいくつかの方法がありますが、当院では経尿道的前立腺レーザー核出術(HoLEP)を中心に行っています。前立腺をみかんに例えると、HoLEPはみかんの実と皮の間をレーザーで剥離はくりし、実の部分(前立腺)だけをくり抜き出す治療法とイメージしていただくと分かりやすいかもしれません。従来から盛んに行われてきた経尿道的前立腺切除術(TUR-P)は、実の部分を少しずつ電気メスで削っていく治療法なので、出血量が多くなる問題点がありました。HoLEPでは出血量を抑えることができるほか、丸ごと取り出すので取り残しが少なく、再発しづらい利点もあります。また、TUR-Pでは取り除くことが難しかった大きな前立腺肥大症であってもHoLEPはよい適応となります。手術ができない患者さんには薬物療法が選択されますが、薬は飲み続けない限り症状を抑えることができません。前立腺肥大症が大きく手術ができなかった方に対してもHoLEPで前立腺を取り除くことができれば、薬を服用する必要がなくなります。
当院には、他施設で治療困難とされた超巨大前立腺肥大症でも道内各地から紹介を受け手術を行っています。また、道外から手術を受けに来られる患者さんもいらっしゃいます。

手術不適応だった大きな前立腺肥大症にも対応――レーザーで前立腺を丸ごと摘出

水蒸気で前立腺を縮小させる、より負担の少ない治療も

当院ではHoLEPを手術の第一選択として推奨していますが、心臓の状態が悪く麻酔を使用することができない、抗血栓薬(血液をサラサラにする薬)を服用しているなどの理由でHoLEPが難しい場合には、経尿道的水蒸気治療(WAVE)を検討します。前立腺に針を刺し、そこから高温の水蒸気を注入することで肥大した前立腺を壊死・縮小させる治療法です。前立腺が数か月かけて徐々に小さくなっていくにつれて尿道が広がっていき、排尿障害の改善が期待できます。治療は15分ほどで終了し、体への負担が非常に少なくて済むのが特徴です。治療後5年程度は安定した経過が得られることが報告されています。ただし、治療により前立腺が一時的にむくんでしまうため一時的に尿の出方が悪くなることがあり、尿道を確保するためにカテーテルを留置しなければならないケースもあります。こうした治療後の負担を考慮して、問題なく手術ができる方であれば当院ではHoLEPをおすすめしています。

頻尿、尿の勢いが弱い、残尿感など前立腺肥大症を疑う症状があれば、ぜひお気軽にご相談ください。「どの程度の症状であれば受診してよいのか?」と悩む方も多いかもしれませんが、ご自身が苦痛に感じる程度であれば受診していただいて問題ありません。診察させていただいたうえで、一人ひとりの患者さんにとってよい治療法を提案させていただきます。

解説医師プロフィール
松谷 亮 先生
松谷 亮先生
河津 隆文 先生
河津 隆文先生

尿路結石症の治療

治療の可能性を諦めない――あらゆる尿路結石症治療に対応

当院では新病院となった2020年に尿路結石治療センターを立ち上げました。手術室の拡充とともに新たな治療機器が追加導入され、尿路結石症のあらゆる治療に対応できる体制が整いました。尿路結石治療センターには、他院では治療ができないと言われた尿路結石症の患者さんが北海道の各地域から来院されるため、諦めずに治療の可能性を追求していきたいと考えています。麻酔に耐え得るだけの体力がなく手術が難しいと判断された患者さんに対しても、全身状態の評価を行ったうえで麻酔科医による厳密な麻酔管理のもと手術を実施しているケースも多くあります。また、泌尿器科のみの病院ですので、他診療科を扱う総合病院と比較して手術室の空き状況にも比較的余裕があり、「できるだけ早く治療をしたい」という患者さんの希望に応えやすいことも当院の特徴だと考えています。

治療の可能性を諦めない――あらゆる尿路結石症治療に対応

難治性腎結石も2つの同時手術で効率よく治療

尿路結石症の治療は、結石の位置や大きさ、患者さんの状態などから、体外衝撃波結石破砕術(ESWL)、経尿道的腎尿管砕石術(TUL)、経皮的腎砕石術(PNL)、経皮的経尿道的同時砕石術(ECIRS)のいずれかから選択しています。このうち、難治性腎結石に対して行うのがECIRSです。ECIRSは、TULとPNLを融合させた内視鏡治療のことで、同時に2人の執刀医によって手術が進められます。腎臓内では、腎臓の形状からサンゴのような複雑な形をした結石(サンゴ状結石)ができることがあり、通常のアプローチ方法では取り出すことが困難です。ECIRS では、TULとPNLそれぞれのメリットを生かし弱点を補い合うことができるので、効率的に難治性腎結石が治療できるようになりました。

また、尿路結石症は再発しやすいことから、当院では管理栄養士や看護師と協力しながら再発防止のための食事指導にも力を入れています。1日2Lを目標に水分を摂取する、バランスのよい食生活を心がけるなどして尿路結石症の予防に努めましょう。

解説医師プロフィール
加藤 祐司 先生
加藤 祐司先生

膀胱がんの治療

見落としやすいがんを光らせて取り残しと再発を防ぐ

膀胱がんの中には、通常の膀胱鏡では観察困難な小さながんや平坦ながんが存在しており、これらを取り残すと再発の大きな要因となります。こうしたがんの取り残しを防ぐために、当院ではがんを赤く光らせる診断技術“光力学診断(PDD)”を用いた経尿道的膀胱腫瘍切除術けいにょうどうてきぼうこうしゅようせつじょじゅつ(TURBT)を実施しています。治療ではまず、手術前に5-アミノレブリン酸(5-ALA)という薬剤を患者さんに服用していただきます。体内に取り込まれた5-ALAは、がん細胞内で光感受性物質として蓄積されます。これを青色光で照射すると赤く発光することから、通常では見えづらいがんの見落としを防ぐことができます。赤く発光している箇所を、膀胱鏡を通して電気メスで切除していきます(TURBT)。がんの大きさにもよりますが、当院の場合、治療は1時間ほどで終了します。術後に排尿時痛などが生じることがありますが内服薬でコントロールすることが可能であり、体への負担も少ない治療です。

見落としやすいがんを光らせて取り残しと再発を防ぐ見落としやすいがんを光らせて取り残しと再発を防ぐ

早期発見、再発防止のための工夫も行う

膀胱がんは再発率が高いがんのため、治療後も再発予防のための対応が非常に重要です。悪性度が高かったり、がんが多発していたりするケースでは、術後も細胞レベルでがんが残存している恐れがあるため、当院では術後6週間後を目安に2回目の手術を行う場合があります。術後は3か月ごとに膀胱鏡検査を実施し、その際再発予防のために膀胱内へ抗がん薬を投与しています。最初の2年間は3か月ごと、3年目以降は半年ごとに経過観察を行い、最低でも5年間は外来通院をお願いしています。

膀胱がんは50歳代以降の男性に好発し、喫煙が大きなリスク因子となります。主な症状として、肉眼的血尿や頻尿、排尿時痛などが挙げられます。腫瘍マーカーはあるものの感度は高くなく、がんがあっても上昇しないことがあるため、膀胱がんの診断には自覚症状が大切な手がかりとなります。自覚症状に気付くことができない限り早期発見が難しいがんであることから、当院では膀胱炎や前立腺肥大症など違う泌尿器科疾患で受診された方に対しても、超音波検査で一度尿路全体をチェックするようにしています。気になる泌尿器の症状があれば決して放置せずに、早めに泌尿器科を受診しましょう。

解説医師プロフィール
笹尾 拓己 先生
笹尾 拓己先生
  • 公開日:2024年3月29日
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