大阪府における
循環器疾患の医療

高齢化により増加する循環器疾患――予防的介入と医療体制の整備が急務

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高齢化により増加する循環器疾患
――予防的介入と医療体制の整備が急務

高齢化は日本全体で進んでおり、大阪市も同様です。これに伴い、糖尿病や高血圧、脂質異常症などの生活習慣病を抱える患者さんも増加傾向にあります。こうした生活習慣病は放置すると動脈硬化を進行させ、不整脈や狭心症、心臓弁膜症などさまざまな循環器疾患の発症リスクを高めます。さらに心臓へ負荷がかかることで心不全へと進行することも多く、近年では“心不全パンデミック”とも呼ばれるほど、その患者数は急増しています。
循環器疾患の中には急性心筋梗塞きゅうせいしんきんこうそくや大動脈解離など突然発症し、早急に治療を行わなければ命にかかわる病気もあるため、 24時間体制での緊急対応が可能な医療機関が担う役割は今後ますます大きくなっていくと言えます。また、循環器疾患の予防に努めることはもちろん、急性期治療から回復期までシームレスに対応できる体制の充実・強化も求められます。

大阪府の医療を支える
桜橋渡辺未来医療病院

専門的かつ包括的な医療を提供し、“安心して暮らせる地域”に貢献する

循環器のプロフェッショナルとして、
“未来医療”の創造と実践に取り組む

当院は1967年に桜橋渡辺病院として大阪市北区梅田にて開院し、循環器診療を通じて地域に貢献してまいりました。2024年4月には、よりよい医療の提供を見据えNakanoshima Qross(未来医療国際拠点)に移転しました。Nakanoshima Qross内には研究所などがあり、この移転によって、再生医療の実用化に向けた取り組みに注力できる環境が整いました。循環器領域での実用化はまだ時間を要しますが、新たな治療法をスムーズに取り入れられるように準備を進めていきたいと考えています。
もちろん、従来の診療でも質の高さを大切にしており、「患者様中心の医療を実践する」「医療の質の向上に努める」「医療人としての倫理を守る」という3つの理念を、開院以来徹底してまいりました。診療においては虚血性心疾患や不整脈、心不全など循環器疾患を幅広くカバーする“エキスパート集団”であると自負しています。各分野の専門家が連携することで、患者さん一人ひとりに合わせたテーラーメード医療を提供できることが当院の最大の強みです。
また、旧病院跡地には、「桜橋渡辺リハビリテーション病院 」を開院しました。急性期の治療は「桜橋渡辺未来病院」が、リハビリや在宅復帰支援は「桜橋渡辺リハビリテーション病院」が担うことで、安心して自宅へ戻れる仕組みを整えています。

治療後の未来も“チーム”で守る――心臓リハビリテーションに注力

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治療方針決定の要となる画像診断――複数の機器で包括的かつ高精度な検査を実施

循環器疾患の診療において、CTやMRIなどの画像検査は診断の起点であり、治療方針を決める際にも欠かせない重要な情報です。当院では多様化する病態に対応できるよう、高速撮影が可能な心臓CTや、高精度な3T MRI、血管造影装置などを備え、包括的な画像診断が行える環境を整えています。CT検査については冠動脈(心臓を栄養する血管)の狭窄きょうさくの診断に加えて、冠動脈の炎症やプラーク(血管の内側にできるコレステロールの塊)などの評価に活用しており、MRIについては虚血(血流が不十分な状態)の診断に加えて心筋(心臓の筋肉)の炎症評価に役立てています。そのほか、人工知能(AI)を活用した解析システムの開発にも積極的に取り組んでいます。
当院ではこうした画像診断の結果をもとに、循環器内科と心臓血管外科が連携する“ハートチーム”がそれぞれの知識と技術を結集し、患者さんにとってよりよい治療方針を短期間で決定できるよう体制を整えています。
循環器疾患は、ある日突然誰にでも起こり得る病気です。何かがあった際の駆け込み寺のような病院になれればと思っておりますので、お困りの際にはぜひお気軽にご来院いただければと思います。

桜橋渡辺未来医療病院における
心臓弁膜症・狭心症・
不整脈(心房細動)・
大動脈瘤/大動脈解離の治療

心臓弁膜症の治療

心不全につながる心臓弁膜症――未来を見据えた包括的な診療を提供

心臓弁膜症とは、心臓内を区切っている弁に異常が生じる病気です。いくつか種類がありますが加齢とともに増加するのが“大動脈弁狭窄症”と“僧帽弁閉鎖不全症”という2つの弁膜症です。これらの弁膜症は、発症すると心臓に負担がかかり、心不全を引き起こすため、特に注意が必要です。

心不全につながる心臓弁膜症――未来を見据えた包括的な診療を提供
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当院では心臓弁膜症の患者さんに対して、心不全を起こさないよう生活習慣指導も含めた予防的な治療までを一貫して提供します。一方で、心不全の患者さんに心臓弁膜症が見つかることもあり、その場合には心臓弁膜症に対する治療も同時に行っていきます。包括的な診療が提供できることは、心臓の診療を専門とする当院ならではの強みです。個々の患者さんの心臓および体の状態をしっかりと評価し、それぞれの患者さんに応じた適切な治療を提供しておりますので、不安がある方はまず一度受診をしていただければと思います。治療の要否だけでなく、今後どのように病気と付き合っていくのがよいか、適切にフィードバックをいたします。

患者さんの体への負担を減らした治療を提供すべく、TAVIとMICSを実践

心臓弁膜症の治療は外科手術による弁形成術や弁置換術のほか、経カテーテル的な治療があります。高齢の患者さんや基礎疾患がある患者さんには特に、当院ではなるべく体への負担が少ない治療法をご提案しています。

患者さんの体への負担を減らした治療を提供すべく、TAVIとMICSを実践_画像1

大動脈弁狭窄症の治療は、75歳以上であればTAVIの選択が可能です。この治療は、足の付け根などからカテーテル(医療用の細い管)を挿入し、異常のある弁を人工弁に置き換える治療です。開胸する必要がないため、体への負担が少なく、経過に問題がなければ翌日から歩行いただけます。なお、75歳以下の方でも基礎疾患や体力によってはTAVIの選択も行います。患者さんの全体状態や希望に沿って適切な選択を提供します。

患者さんの体への負担を減らした治療を提供すべく、TAVIとMICSを実践_画像2

当院では心臓外科手術の負担も軽減すべく、低侵襲心臓手術ていしんしゅうしんぞうしゅじゅつ(MICS)を積極的に行っています。これは肋骨の間を5~8cmほど切開して行う手術で、胸骨を切らないため開胸手術に比べて傷が小さく、また出血量が少なく済み、ひいては早期の社会復帰を目指せることがメリットです。特に、大動脈弁狭窄症に次いで多いとされる僧帽弁閉鎖不全に対して、このアプローチを用いて低侵襲治療に取り組んでいます。

今後の人生を少しでも楽に過ごすために――年齢を理由に諦めず、一度相談してほしい

心臓の手術=大がかりな治療というイメージがある方も多いのではないでしょうか。中には、「この年になって心臓の手術をするのは……」と躊躇ためらっている方もいらっしゃるかもしれません。先述したとおり、近年では医療の進歩に伴って、体への負担を減らした治療が可能になっていますので、まずは一度治療の内容を聞きにいらしていただけたらと思います。

今後の人生を少しでも楽に過ごすために――年齢を理由に諦めず、一度相談してほしい

当院では手術に伴う体力の低下を防ぐ取り組みにも力を入れています。心臓の手術や治療に精通した理学療法士が手術前後の早い段階からリハビリテーションを行っていますので、「体力が心配」という方もどうぞご安心ください。
心臓弁膜症の症状は患者さんご自身が気付きにくかったり、我慢したりしてしまうことも少なくありません。ご家族や周囲の方が症状に気付いたときには、ぜひ一緒に病院へ足を運んでいただければと思います。病気の治療はもちろん、日常生活への復帰、また将来のリスクの予防まで包括的な診療を提供いたします。

解説医師プロフィール
安田 昌和 先生
循環器内科
安田 昌和先生
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仲村 輝也 先生
心臓血管外科
仲村 輝也先生
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岩永 善高 先生
循環器内科
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狭心症の治療

胸の痛みや息切れは早めに受診を――“本当に必要な治療”を見極める検査体制を整備

狭心症は、心筋(心臓の筋肉)に栄養を送る冠動脈という血管が動脈硬化によって狭くなることで十分な血液を送れず、心筋が酸素不足になる病気です。主な症状は、ぐっと締め付けられるような胸の痛みで、特に歩いたり階段を上ったりしたときなど心臓のはたらきがより必要になる場面で生じやすくなります。
血管が完全に詰まった場合は心筋梗塞に移行する恐れがあるため、狭心症の時点で早期に発見し、適切な治療をすることが重要です。今までに感じなかった胸の痛みが生じた場合には、早めに循環器内科を受診ください。なお、糖尿病を患っている方やご高齢の方は、痛みの症状に気付きにくい傾向にあります。その場合には息切れも1つの手がかりになりますので、ご本人でもご家族でも、体調の違和感に気付いた際には、様子を見ずに一度受診いただきたいと思います。

胸の痛みや息切れは早めに受診を――“本当に必要な治療”を見極める検査体制を整備
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症状などから狭心症が疑われる場合、まずは冠動脈CT検査を実施し、血管の狭窄(狭くなること)の有無を確認します。ただし、狭窄があるからといって、全ての箇所に治療適応があるとは限りません。治療の必要性を正しく判断するには、虚血の程度や範囲、また、それらが心筋に与えている影響も評価することが重要です。当院では、“本当に治療の必要がある場所”を見極めるべく心臓MRIや運動負荷心電図などさまざまな虚血評価の検査を組み合わせて、適切な治療ができるよう努めています。

長年にわたって培った専門性を生かし、難易度の高い病態にも対応できる体制を整備

狭心症の治療には、PCI(経皮的冠動脈形成術)と、冠動脈バイパス術という2つの方法があります。PCIはカテーテル(細い管状の医療器具)を挿入して狭くなった血管を風船やステント(金属の網目状の筒)で広げる治療で、冠動脈バイパス術は狭窄のある部分に新しい血管をつないで血液の迂回路を作る手術です。近年はPCIの技術が進歩し、これまでバイパス術が選択されていたような複雑な病変にもカテーテルによる治療が積極的に行われるようになってきました。こうした変化の中で、よりよい狭心症治療を提供するためには、多様な冠動脈病変に対して“適切なPCIを実施できる技術力”と、“適切にバイパス術を選択できる専門的な判断力”が欠かせません。

長年にわたって培った専門性を生かし、難易度の高い病態にも対応できる体制を整備_画像1

当院では1984年から40年以上にわたってPCIを行っており、特に複雑病変の治療に注力しています。複雑病変には、石灰化病変・左主幹部病変・慢性完全閉塞病変まんせいかんぜんへいそくびょうへん(CTO)などがあり、このような一般的にPCIが難しいとされる病変に対しても十分な治療の体制を整えているのが当院の強みの1つです。具体的には、石灰化(石のように硬くなった状態)した部分を削る種々のデバイスを駆使した治療が可能なほか、プラークを直接削り取る特殊なデバイスを使用した治療(DCA)も可能です。また、複雑病変の中でも特にPCIの難易度が高いとされるCTOに対しては、治療成功率の上昇が期待できる血管内超音波カテーテルの開発に始まり、閉塞部に正確性高くワイヤーを通過させる“tip detection法”という新たな手技の考案も行ってきました。

長年にわたって培った専門性を生かし、難易度の高い病態にも対応できる体制を整備_画像2

なお、PCI治療が可能であったとしても長期的な予後の改善を考慮すると冠動脈バイパス術のほうが望ましいこともあります。難しい症例については循環器内科・心臓血管外科を含む“ハートチームカンファレンス”で議論し、適切な判断ができるようにしています。
当院には、近畿地方のみならず四国や中国地方などの医療機関からも「治療が困難」とされた患者さんをご紹介いただいております。長年にわたって培った技術と連携力を生かし、引き続きよりよい狭心症診療の追求に努めてまいります。治療についてお困りのことがありましたら、ぜひ一度当院へご相談にいらしてください。

解説医師プロフィール
岡村 篤徳 先生
循環器内科
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田中 康太 先生
循環器内科
田中 康太先生
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山﨑 智弘 先生
循環器内科
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不整脈(心房細動)の治療

脳梗塞や心不全につながる病気――胸の違和感は軽視せず早めに受診を

不整脈は、脈が飛んだり、急に速くなったり、あるいは遅くなったりして乱れる状態をいいます。不整脈にはいくつか種類がありますが、特に“心房細動”は早期発見・適切な治療介入が重要です。
心房細動とは、心房(心臓の上側の部屋)がけいれんし、心室(下側の部屋)が不規則に動くことで心臓が正常に機能しなくなる不整脈で、脳梗塞や心不全を引き起こす可能性のある病気です。通常、心房と心室は規則正しく連動することで、血液を全身に送り出しています。しかし、心房細動が起こると心房が正常に動かなくなり、心房内で血液の流れが滞り、血栓(血の塊)ができやすくなります。血栓が血流に乗って脳の血管に流れ込んで詰まると、脳梗塞の発症につながります。また、心房細動により心臓の血液を送り出す役割が低下することで、心不全を引き起こす可能性があります。

脳梗塞や心不全につながる病気――胸の違和感は軽視せず早めに受診を

主な症状としては、動悸や息切れ、疲れやすさなどが挙げられる一方で、約4割の方が明確な自覚症状を認めません。特に、肥満や生活習慣病(高血圧や糖尿病、脂質異常症など)、睡眠時無呼吸症候群は心房細動のリスクを高めるといわれています。
心房細動は放っておくと進行する病気です。時々起こっていた発作がやがて持続的に生じるようになり、発作が長いほど心不全や脳梗塞のリスクが高まります。また、無治療の状態が長いほど治療効果も得にくくなりますので、胸の症状がある方、あるいは健康診断で心房細動を指摘された方は、放置せず早めに医療機関を受診していただきたいと思います。

合併症の少ない新たなアブレーションを導入し、よりよい不整脈治療を追求する

心房細動の治療には薬物療法もありますが、根治(病気を根本から治すこと)を目指すには、主にカテーテルアブレーションという治療を検討します。カテーテルアブレーションとは、心房細動の原因である肺静脈からの異常な電気信号を遮断する治療法です。足の付け根などからカテーテル(医療用の細い管)を挿入して治療を行うため、体への負担は少なく、かつ根治を目指せるのがメリットです。

合併症の少ない新たなアブレーションを導入し、よりよい不整脈治療を追求する

医療の進歩は目覚ましく、2024年には“パルスフィールドアブレーション(PFA)”という新たなアブレーションが登場しました。当院でも、同年PFAによる治療を導入し、適応のある患者さんには積極的に実施しています。
従来のアブレーションでは熱や冷気を使用して心筋を壊死えしさせていましたが、心筋周囲の組織(食道や横隔膜の神経など)にも熱や冷気が伝わり合併症を引き起こすことがありました。対して、PFAでは心筋のみに作用しやすい電気を用いて治療するため、周辺の臓器に影響を及ぼすリスクが大きく低減され、より安全性の高い治療が可能です。

“不整脈になる以前より健康になれる医療の実現”を目指す

不整脈を治すことはもちろんのこと、そのリスクにも積極的に介入し、“健康”な生活を送っていただけるようにするのが、私たちの役割だと考えています。先にお伝えしたとおり、不整脈のある方は、高血圧や糖尿病など基礎疾患を患っていることも珍しくありません。当院では、これらのリスクに対しても、不整脈医が中心となって管理・サポートしています。

“不整脈になる以前より健康になれる医療の実現”を目指す
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特に、睡眠時無呼吸症候群があると心房細動が再発しやすいとされています。中には病気に気付いていない方もいらっしゃるため、当院においてはアブレーション治療を予定している全ての方に検査を行い、よりよい治療ができるよう努めています。また、心筋症(心臓の筋肉の病気)が心房細動の発症・進行に関与しているケースもあるため、心臓CT検査やMRI検査を駆使し、包括的な心臓診療が可能な体制を敷いています。
日々進歩する医療の中で、私たちが目指すのは“よりよい不整脈医療を確立すること”です。そのためには、私たち自身も日々進歩・成長していくことが大事だと考えております。“未来医療”の名のとおり、先駆的でよりよい医療を地域の皆さんに提供できるよう努めておりますので、お困りの際にはぜひ私たちのもとへいらしていただければと思います。

解説医師プロフィール
田中 宣暁 先生
循環器内科
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田中 耕史 先生
循環器内科
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岡田 真人 先生
循環器内科
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大動脈瘤・大動脈解離の治療

早期発見が困難な大動脈瘤――40~50歳代で血圧の高い方は一度検査を

大動脈瘤だいどうみゃくりゅうは、大動脈(心臓から出る太い血管)が、こぶ状に膨らんだ状態を指します。一般的に、直径が4cmを超えると大動脈瘤と診断されます。大動脈瘤が生じた時点ではほとんどが無症状ですが、大きくなり破裂した場合は命に関わるため、早期発見と適切な治療が重要です。高血圧の方、特に40~50歳代で血圧が高い方は、定期的検査(心臓超音波検査や心臓CT検査)を受けていただきたいと思います。治療の要否は、大動脈瘤の大きさや、形、こぶが大きくなる早さなどから総合的に判断します。治療のタイミングを見極めるためにも、もし大動脈瘤が見つかった場合には、専門医*によるフォローを必ず受けるようにしましょう。

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日本専門医機構認定 循環器内科専門医、3学会構成心臓血管外科専門医認定機構 心臓血管外科専門医など

早期発見が困難な大動脈瘤――40~50歳代で血圧の高い方は一度検査を

当院では心臓超音波検査を受ける方全員に対して胸部大動脈の観察も行い、大動脈瘤を早期に発見できるよう努めています。
また、当院は循環器疾患の診療を専門とする病院として、迅速なフォロー体制を構築していることも強みです。基本的にCT検査を行った当日に診察まで行いますので、検査の結果を待ってから再度来院いただく必要はありません。この体制は初診時でも同様です。体調が心配などという方はどうぞ遠慮なくご相談いただければと思います。

体への負担の少ない手術を積極的に実施――緊急手術にも24時間365日迅速に対応

破裂の危険性がある大動脈瘤は、手術を検討します。手術は、人工血管置換術(胸を切開し、大動脈瘤を切除して人工血管に置き換える手術)と、ステントグラフト内挿術の2通りがあります。ステントグラフト内挿術は、カテーテルを使って金属のバネがついた人工血管を血管内に固定する方法です。胸を切開する必要がないため、人工血管置換術と比べて傷が小さく、手術時間の短縮や出血の軽減といったメリットがあります。患者さんの体への負担をできる限り抑えるため、適応がある場合には積極的にこの治療を行っています。

体への負担の少ない手術を積極的に実施――緊急手術にも24時間365日迅速に対応

なお、大動脈の病気には、大動脈解離という一刻を争う病気もあります。ほとんどの場合で何の前触れもなく起こり、ひとたび発症すると突然胸や背中に激痛が走ります。当院は、二次救急(入院や手術を要する重症患者への救急医療)指定医療機関であり、急性大動脈解離の緊急手術の受け入れも随時行っています。急性大動脈解離の手術は、何よりもスピードが肝心です。当院ではこうした治療を速やかに提供できるようシミュレーションを行っており、また常に同じ手順で同じクオリティの手術ができるよう努めています。医師のみならず、人工心肺を担当する臨床工学技士や看護師など、全てのスタッフが緊密に連携し、24時間365日の緊急対応を実現しています。
なお、大動脈解離は腰痛や足の痛み、意識障害など他の病気と見誤りやすい症状が出ることがあり、診断が難しい病気です。当院では、救急隊への勉強会も実施し、地域全体で命を守る体制の強化に努めています。

これまでも、そしてこれからも、垣根のない循環器診療で命を守る

当院は循環器内科も心臓血管外科も50年以上の長い歴史を築いてきました。開院当初から“受診のしやすさ”をポリシーとしており、紹介状をお持ちでなくても問題ありません。循環器疾患を専門とする病院として内科・外科で総力をあげて診療いたしますので、何かご不安なことがあれば、いつでもお気軽に私たちへご相談いただければと思います。

解説医師プロフィール
仲村 輝也 先生
心臓血管外科
仲村 輝也先生
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  • 公開日:2025年8月1日
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