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虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)の種類と症状――みぞおちの上の痛みは受診を

虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)の種類と症状――みぞおちの上の痛みは受診を
井上 信幸 先生

国立国際医療研究センター病院 心臓血管外科 診療科長

井上 信幸 先生

目次
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虚血性心疾患(きょけつせいしんしっかん)とは、心臓の筋肉に十分な血液が行き渡らなくなり、胸部の痛みなどの症状が起こる病気の総称です。具体的な病気としては、狭心症心筋梗塞(しんきんこうそく)が当てはまります。60歳以上の方に多い病気ですが、40歳代で発症するケースもあります。進行すると突然死につながる恐れもあるため、早期発見・早期治療が重要です。今回は、国立国際医療研究センター病院 心臓血管外科診療科長の井上 信幸(いのうえ のぶゆき)先生に、虚血性心疾患の特徴やリスク因子、注意すべき症状などについてお話を伺いました。

虚血性心疾患とは、心臓の筋肉(心筋)に酸素を含んだ血液が十分に行き渡らず、胸部の痛みや息切れなどの症状が現れる病気です。心臓は周りを囲むように流れる“冠動脈(かんどうみゃく)”から血液を受け取って動いています。この冠動脈が何らかの原因で狭くなった場合、心臓は血流不足になり、結果、虚血性心疾患の発症につながります。なお、“虚血性心疾患”という名前は複数の病気の総称であり、その状態によって狭心症心筋梗塞に分けられます。ここでは、それぞれの違いについて説明します。

心臓の冠動脈のイメージ(赤い部分が冠動脈)

冠動脈が狭くなり、心筋に十分な血液が行き渡らなくなった状態を狭心症といいます。血液は酸素を運ぶ役割をしているため、血流が不足すると酸素の供給量も不足します。運動時など普段より多くの酸素が必要になった場合に症状が現れやすく、安静にすると症状は次第に治まるのが特徴です。この運動時に症状が現れる典型的な狭心症は、“労作性狭心症(ろうさせいきょうしんしょう)”と呼ばれます。ほかにも安静時狭心症や冠攣縮性(かんれんしゅくせい)狭心症などさまざまな病態がありますが、中でも不安定狭心症という狭心症には注意が必要です。詳しくは後述しますが、不安定狭心症は心筋梗塞の一歩手前の状態であり、すぐに治療をしなければ命に危険が及ぶ可能性もあります。

冠動脈の狭窄(きょうさく)(狭くなっている状態)が進行し、血管が完全に詰まった状態を心筋梗塞といいます。詰まった部分から先へは血液がまったく行き渡らなくなるため、酸素を受け取れなくなった心筋は壊死(えし)してしまいます。壊死とは細胞が強いダメージを受けて死んでしまうことです。壊死により心臓の一部が動かなくなるため、突然死につながる恐れもあります。

多くの場合、原因は動脈硬化によるものです。動脈硬化とは、血管が硬くなり弾力が失われた状態を指します。正常な血管はホースのような弾力があり、内部もつるつるしています。ところが、長年にわたって血管にさまざまな負担が加わると、徐々に血管は硬くなり、内部にコレステロールを溜め込むようになってしまうのです。蓄積したコレステロールによって血管は狭くなり、こうして狭心症の発症につながります。また、コレステロールが溜まった部分には血栓(血の塊)ができることもあり、血管が完全に詰まった場合は心筋梗塞を発症します。

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動脈硬化の進行 イラスト:PIXTA

虚血性心疾患の主なリスク因子としては、高血圧症糖尿病脂質異常症*などの基礎疾患のほか、喫煙や肥満などが挙げられます。

年齢もリスク因子の1つといわれており、男性は45歳以上、女性は55歳以上で虚血性心疾患のリスクが高まります。男性のほうが低年齢なのは、喫煙率の違いなどによるものと考えられるでしょう。また、家族の中に虚血性心疾患を発症した方がいる場合、本人も発症しやすいといわれています。

*悪玉(LDL)コレステロール値が高い、または善玉(HDL)コレステロール値が低い状態。

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心臓は胸の中央にある イラスト:PIXTA

虚血性心疾患の特徴的な症状として、運動に伴って現れる胸部の痛みが挙げられます。心臓=左胸をイメージする方が多いかもしれませんが、実際の心臓の位置は胸の中央です。運動により体に負荷がかかったときなどに、みぞおちの真上あたりに締め付けられるような痛み、ギューッと押されるような重い感じが持続するようであれば、虚血性心疾患の可能性があります。また、心臓の痛みが首や歯、背中など、さまざまな方向に広がっていく放散痛(ほうさんつう)という症状が起こることもあります。

胸部の痛みが10分程度で治まる場合は狭心症、20分も30分も続き、かつ我慢できないほどの痛みの場合は心筋梗塞が疑われます。いずれにせよ胸部に一定時間持続する痛みがあるのであれば、早めに病院を受診されたほうがよいでしょう。特に糖尿病を患っている方は、神経障害の影響で痛みを感じにくい傾向にあります。知らない間に虚血性心疾患が進行しているケースもあるため、わずかな体調の変化を見逃さないよう注意が必要です。

心臓の病気では、息切れや疲れやすさ、動悸などの症状も現れます。これらの症状は「年のせい」と思ってしまう方も多いかもしれませんが、加齢に伴ってまず起こりやすいのは、関節や筋肉の痛みなどの症状です。関節や筋肉などの痛みがないにもかかわらず、体力の低下を感じたり、息切れや動悸があって今までできていたことができなくなったと感じたりする場合は、心臓の病気が隠れている可能性があります。

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写真:PIXTA

病気のサインかどうか分からないという方は、同年代の方と比較してみるのも1つの方法です。同年代の方が階段をすたすた上っている状況で、自分だけ息切れしてしまい、途中で休まないと上り切れないといった場合は病気のサインかもしれません。年齢のせいだと決めつけず、一度検査を受けてみることをおすすめします。

ほとんどの虚血性心疾患は、心電図検査やホルター心電図検査、また血液検査で診断できます。ホルター心電図検査とは、専用のレコーダーを装着して24時間の心電図を記録する検査です。また血液検査では、心筋が壊死すると発生する逸脱酵素(AST、CK-MB、トロポニンT、H-FABPなど)を調べ、心筋梗塞の有無を見極めます。

上記の検査で虚血性心疾患が疑われる場合は、心臓超音波検査(心エコー)や心臓CT検査を行います。心臓超音波検査では、血流不足で心臓の動きが悪くなっている部分がないかを確認します。心臓CT検査では、冠動脈の狭窄や加齢に伴う石灰化がないかを調べます。さらに、心筋シンチグラフィー検査で、心臓の血流不足の有無を詳しく確認することもあります。

確定診断のためには、入院してカテーテル検査を受ける必要があります。カテーテル検査では、手首、肘、足のつけ根の血管から挿入したカテーテルで冠動脈に直接造影剤を入れてX線(レントゲン)で心臓の血管を多方面から持続撮影し、立体的に狭窄の状況を確認します。

こうした一連の検査により、虚血性心疾患の有無や程度を総合的に判断します。

虚血性心疾患の治療には、薬物治療・カテーテル治療・冠動脈バイパス手術があり、患者さんの血管の状態などを元に選択します。

冠動脈の狭窄が重度でなければ、内服薬による治療を行います。血液をさらさらにする抗血小板薬を服用することで、血管が詰まったり血栓ができたりすることを防ぎます。また、血管を拡張させる作用の薬を服用します。なお、手術を受けた場合であっても、再発の予防を目的として服薬をする必要があります。

検査のときと同様にカテーテルという細い管を冠動脈に挿入し、狭くなった部分を広げる治療法です。カテーテルの先端部分に付いたバルーン(風船)を膨らませたり、ステントと呼ばれる筒状の金属を置いてきたりすることによって血流の回復を図ります。

冠動脈バイパス手術とは、血液の迂回路を作る治療法です。冠動脈が狭くなっている箇所より先の部分に体の別の場所から採取した血管をつなぐことで、血流の回復を図ります。

カテーテル治療と冠動脈バイパス手術の違いについては、トンネル内で起こった土砂崩れの復旧作業に例えると分かりやすいでしょう。土砂を取り除き、トンネルが再度崩れてこないよう金属で補強して通行を回復させるのがカテーテル治療、トンネルの修復が難しそうな場合に新しい迂回路をつくり、通行を回復させるのが冠動脈バイパス手術というイメージです。

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カテーテル治療とバイパス手術のイメージ
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