概要
ハチ刺傷とは、ハチに刺されることで引き起こされる健康被害を指します。ハチ刺傷による健康被害は、夏を中心に日本でも多く報告されており、亡くなる方もいます。
健康被害をもたらすハチとして、スズメバチやアシナガバチなどが挙げられます。これらのハチに刺された場合、ハチが有する毒そのものに対する症状に加えて、アナフィラキシーショックと呼ばれるアレルギー反応に関連した症状が出現することがあります。特にアナフィラキシーショックは、毒の量に関係なく生じる可能性があり、命にかかわることもあります。
原因
ハチ刺傷は、スズメバチやアシナガバチ、ミツバチなどに刺されることで発症します。これらハチに刺された際に、ハチが有する毒が人の体内に入り込むことで健康被害が生じます。
毒が有する直接的な作用に加えて、アレルギー反応の一環として症状が生じることもあります。アレルギー反応により呼吸困難や血圧低下などの重篤な状態に至ることを、アナフィラキシーショックと呼びます。
ハチによっては、ミツバチのように一回しか刺すことができないものもあれば、スズメバチのように何度も繰り返し刺すことができるものもあります。ミツバチは一度刺すと針を皮膚に残しますが、「返し」と呼ばれる構造を持っていることから簡単には抜けないようになっています。さらに毒が含まれる「毒嚢」と呼ばれる構造物が針に付着している関係から、無理に引き抜こうとすると毒がさらに体内に回るため、注意が必要です。
症状
ハチに刺されることにより痛みが生じます。刺された場所は赤く腫れ上がり、針が残ることもあります。数時間のうちに痛みは消失し、改善に向かうことが多いです。
しかし、注入された毒の量やアレルギー反応などの関係から、症状が重篤になることもあります。刺された皮膚を中心とした周囲の症状だけではなく、命の危険を伴うこともあるため注意が必要です。
具体的には、全身に広がるじんましんや、粘膜が腫れることに関連した呼吸困難を生じることがあります。吐き気や嘔吐、下痢といった消化器症状や、意識消失をおこすこともあります。血圧が著しく低下してしまい、最悪の場合は命にかかわることもあります。
こうした反応は刺されてから間もなく生じることもありますし、時間が少し空いてから生じることもあります。さらに、一度ハチ毒に対しての反応性を示すようになると、次に刺されたときにも重篤なアレルギー反応が生じる危険性が高まります。
検査・診断
ハチ刺傷は、蜂に刺された現場の状況から診断することが可能であり、急性期に関しては診断に関連した特別な検査は必要ありません。
一度ハチに刺されると、ハチの毒に対するアレルギー反応を起こす可能性が出てきます。毒に対するアレルギーがあるかどうかを判定するために、皮内テスト、スクラッチテスト、血液検査などの検査が検討されることもあります。
治療
ハチ刺傷では、急性期の対応が重要です。ハチに刺された際には、局所の毒を洗い流します。また、針が皮膚に残っていることもあるため、ピンセットなどを用いて抜き取ります。ただし、ミツバチの針には毒嚢が付着していることから、誤って体内に注入しないように注意することが必要です。現場での応急処置を行いつつ、必要に応じて医療機関への受診を検討します。
皮膚に対しては、抗ヒスタミン薬やステロイド軟膏などを使用します。血圧低下や呼吸障害などのアナフィラキシーショックの疑いがある場合には、アドレナリンの筋肉内注射、ステロイド、気管支拡張剤吸入、点滴などの処置を迅速に行うことが必要です。
ハチの毒に対してアレルギー反応を示す方は、次に刺されることで再度重篤なアレルギー反応が生じる可能性があります。そのため、ハチに刺されたときの緊急薬として注射薬を携帯することが望まれます。
予防
ハチは、基本的には敵と判断したものに対して攻撃を仕掛けてきます。巣が見えにくいところに隠れていることもあります。ハチを見かけた際には、近くに巣があるものと想定し、速やかに現場から離れることが大切です。
黒っぽい色はハチの標的になりやすいため、野外活動の際には黒い服を避けることも大切です。また、甘いジュースなどを放置するとハチが集まることもあるため、不用意に放置しないことも重要です。
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