概要
真菌性髄膜炎とは、真菌によって引き起こされる髄膜炎です。原因となる真菌としては、クリプトコッカスやカンジダが代表的であり、ステロイド使用中やエイズ発症者など免疫機能が低下している、あるいは血管内カテーテルや脳室内シャントカテーテルなど医療機器を使用している状態において発症リスクが高まります。なかにはコクシディオイデス、ブラストミセスなどといった真菌を原因として健常者にも髄膜炎が起きることがありますが、北米の特定地域での発症がほとんどです。
真菌性髄膜炎では、通常の髄膜炎同様に、発熱、頭痛、吐き気などを呈します。診断がつき次第、抗真菌薬による治療がなされますが、数週間に渡る治療期間を要します。クリプトコッカス、ヒストプラズマなどは、鳩などの糞の中に排泄されていることも知られています。そのため免疫不全者は、感染リスクを下げるために鳩などの糞が多いところを避けるなどの対策も必要です。
原因
真菌性髄膜炎は、真菌によって引き起こされる髄膜炎です。原因となる真菌として最も多いのはクリプトコッカスであり、鳩の糞などに含まれていることが知られています。その他、人体の消化管などに正常フローラとして住み着いているカンジダが原因となることもあります。免疫不全者では、アスペルギルス、ムコールなども原因になります。北米の特定地域においては、コクシディオイデスやブラストミセスなどを原因として髄膜炎をみることもあります。
髄膜炎が生じる中枢神経系は、健康な状態では無菌です。しかし、何らかの理由で血液に真菌が入り込むことがあります。その後、真菌が血液の流れに乗じて中枢神経系へと運ばれてしまい、髄膜炎を発症することになります。またカテーテルなどの医療機器が中枢神経系に留置されていると、そこを経由して感染を起こすこともあります。
コクシディオイデスやブラストミセスによる真菌性髄膜炎は、免疫力が正常な方でも発症するリスクがありますが、日本においてみることの多いクリプトコックスやカンジダによる髄膜炎は、一般的にはリスクとなる基礎疾患のある方に発症することが多いです。すなわち、糖尿病患者さんやステロイド使用中の方、悪性腫瘍に罹患している方、化学療法で治療中の方、エイズ発症者、早産児などは免疫力が正常と比べて低下しており、普段であれば問題とならないクリプトコックスやカンジダによる髄膜炎を発症する危険性が高まります。また、脳室ドレナージ、血管内カテーテル挿入なども発症リスクになります。ただし、クリプトコックスは、曝露量が多いと免疫が正常な方でも罹患することがあります。
症状
真菌性髄膜炎では、通常の髄膜炎のような症状を呈し、発熱、頭痛、吐き気、嘔吐などがあります。意識レベルの変化をみることもありますし、性格が変わったようにみえることもあります。早産児が真菌性髄膜炎を発症することもありますが、その場合には活気不良や呼吸障害、皮膚色不良、バイタルサインの変動、栄養がうまく吸収されないなどの症状をみることになります。しかし、免疫不全があると症状が典型的でなく、わかりにくいこともまれではありません。
真菌性髄膜炎は、中枢神経以外の部位から真菌が髄膜へと運ばれることにより発症することが多いです。クリプトコックスは、肺に感染症状を引き起こすことから、咳や痰などの呼吸器症状をみることもあります。
検査・診断
真菌性髄膜炎の診断に際しては、髄膜検査を行うことが重要です。髄膜炎を発症していることを反映して、髄液圧の上昇、髄液中の細胞数増加、糖の低下、タンパク質増加などの変化をみます。こうした変化は必ずしも真菌性髄膜炎だけに特徴的でないため、真菌が原因であることを証明するためには追加の検査を行うことが必要です。
真菌性髄膜炎の原因としてクリプトコックスが多いですが、その存在を証明するためには髄液を墨汁法と呼ばれる方法で顕微鏡的に観察することになります。またクリプトコックスの抗原検査も重要です。髄液への真菌の混入を証明するために、真菌培養検査も行います。また血液培養検査も行われます。これは、血液を介して中枢神経へと真菌が運ばれるためです。
治療
真菌性髄膜炎の治療では、抗真菌薬(アムホテリシンB、フルシトシン、フルコナゾール、ボリコナゾールなど)の投与が重要ですが、原因となっている真菌や患者さんの抱える合併症などに応じてどの薬剤を用いるかを決定することになります。中枢神経への移行が悪い抗真菌薬は、選択すべきではありません。真菌性髄膜炎の治療は長期に渡ることもあり、経過中に副作用が出現することもあります。
真菌性髄膜炎では、発症の原因へのアプローチも大切です。血管内カテーテルや脳室内シャントカテーテルが感染源となっている場合には、可能な限り抜去します。
真菌性髄膜炎のなかでもクリプトコッカスは頻度が高く、鳩の糞などに含まれることがあります。特に免疫機能が低下している方は汚染された土壌をいじるなどの行為を避けることも、発症予防の観点からは重要です。
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