ひしょうさいぼうはいがん

非小細胞肺がん

最終更新日:
2021年02月26日
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2021/02/26
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2021/01/29
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概要

肺がんは肺に発生する悪性腫瘍(あくせいしゅよう)の総称で、組織型(顕微鏡によるがんの分類)によって非小細胞がんと小細胞がんに分類されます。非小細胞肺がんとは、肺がんの種類のうち小細胞がん以外のものを指します。主な組織型として、腺がん、扁平上皮(へんぺいじょうひ)がん、大細胞がん、小細胞がんの4つがあり、小細胞がん以外の組織型を一括して非小細胞肺がんと呼びます。

非小細胞肺がんは小細胞肺がんと比べて増殖速度が遅く、転移や再発をしにくいという特徴があります。しかし、非小細胞がんの中でも大細胞がんは増殖が速く、腺がんでは症状が出にくい、扁平上皮がんでは症状が現れやすいなど、それぞれで特徴が異なります。

日本において1年間に約125,000人が肺がんと診断され、男性に多く、60歳頃から急激に増加して年齢が高くなるほど多くなります。肺がんのうち約80~85%が非小細胞肺がんで、中でも腺がんがもっとも多く、男性では肺がん全体の約40%、女性では全体の約70%を占めています。次いで扁平上皮がんが多く、男性では全体の約40%、女性では全体の約15%を占めるといわれています。

原因

肺がんの大きな危険因子が喫煙です。非喫煙者に対して、喫煙者のリスクは男性で4.4倍、女性で2.8倍といわれ、たばこを吸い始めた年齢が若く、喫煙量が多いほどリスクが高まります。また、受動喫煙も肺がんのリスクを2~3割ほど高くすると推計されています。

喫煙との関連は組織型によって異なり、扁平上皮がんは喫煙との関連が大きく、腺がんは喫煙との関連が比較的小さいといわれています。

喫煙以外では、有害化学物質(アスベスト、ヒ素、ベリリウム、ラドンなど)にさらされることや、大気汚染(PM2.5など)、家族歴、高年齢なども肺がんのリスクを高めると考えられています。

症状

がんが小さい初期には無症状で経過することがほとんどです。がんがある程度にまで大きくなってくると、全身症状(体のだるさ、食欲不振、体重減少など)や、呼吸器・胸の症状(長引く咳、痰、血痰(けったん)、胸痛、息苦しさ、動悸、声枯れなど)が見られます。ただし、進行しても症状が出ない場合や乏しい場合もあり、非小細胞がんのうち腺がんは症状が出にくいという特徴があります。

検査・診断

肺がんが疑われる場合、まず胸部X線検査や胸部CT検査などの画像検査を行い、肺がんの有無や場所を調べるのが一般的です。これらの検査で異常が見られた場合、痰に含まれる細胞や気管支鏡などによって肺の組織を採取して顕微鏡で見る病理検査を行います。肺がんの組織型が小細胞肺がんなのか、非小細胞肺がんなのかはこの病理検査で分かります。

画像検査

画像検査では、肺の中でのがんの大きさ・周囲の臓器への広がりの程度および遠隔臓器(肺以外の臓器)への転移があるかどうかを調べます。肺がんを調べるために有用な画像検査には胸部X線検査、胸部CT検査、PET-CT検査、MRI検査などがあります。

これらの中で胸部X線検査が簡便であるため、通常はまず胸部X線検査を行い、肺に異常な影がないかを確認します。異常な影が存在した場合には胸部CT検査を行い、がんの存在、大きさ、周囲の臓器への広がりなどを調べます。胸部CT検査もX線を使用しますが、X線検査よりも肺内部を詳細に調べることができ、肺がんの有無を調べる検査としてはもっとも有用です。この検査でがんかどうか判断が難しい場合、造影剤を用いた造影CT検査や、高精度な高分解能CT検査を行うこともあります。

PET-CT検査やMRI検査は、主にがんの転移を調べるために行います。PET-CT検査は、がん細胞が多くのブドウ糖を取り込む性質を利用したPET検査と、組織の形状からがんを見つけるCT検査を同時に行うもので、一度に多臓器を調べることが可能です。MRI検査では主に頭部(脳)を調べ、頭部(脳)に転移があるかを確認します。また、骨への転移を確認するために、かつては骨シンチグラフィを行っていましたが、最近はPET検査で代用されることが多くなっています。

病理検査

がんの診断を確定させるためや、がんの組織型を確認するために、がんが疑われる部位から細胞や組織を採取し、それを顕微鏡で詳しく調べます。

細胞や組織を採取する方法として、喀痰細胞診や気管支鏡下検査、CTガイド下生検などがあります。これらの中で喀痰細胞診がもっとも体への負担が少ないですが、検出感度が低いという欠点もあります。そのため、痰や血痰がある場合にはまず喀痰細胞診を行い、それでも診断が難しい場合に気管支鏡下検査、CTガイド下生検の順で行うのが一般的です。

バイオマーカー検査

バイオマーカーとは、病状の変化や治療効果などの指標となる生体内のたんぱく質や遺伝子などの物質のことです。バイオマーカーを調べることで、肺がんの補助診断や、効果的な治療薬の選択、治療効果の判定に役立ちます。バイオマーカーを調べる検査には、腫瘍マーカー、がん遺伝子検査、PD-L1検査などがあります。

治療

非小細胞肺がんの治療は、がんのステージ(病期)や患者さんの状態(体力)、合併症、本人の希望などを考慮して決定します。ステージは大きくI、II、III、IV期の4段階に分類され、一般的にはI、II期(肺の中にがんがとどまっている状態)が早期がん、III、IV期(主に肺外にがんが進展している状態)が進行がんとなります。

I、II期の早期がんの場合、手術による治療が中心です。手術前・手術後に薬物療法や放射線治療を行うこともあります。III、IV期の進行がんの場合、手術でがんを完全に取りきることできません。そのため、薬物療法や放射線治療が中心となります。

手術

手術はI、II期の早期がんが対象で、手術によるがんの完全切除が可能な場合に行います。手術では開胸または胸腔鏡(きょうくうきょう)を用いてがんを切除しますが、がんの存在する部位や広がりによって切除方法が異なります。通常、がんのある1つの肺葉(肺の構成単位で、右肺は上葉・中葉・下葉の3つ、左肺は上葉・下葉の2つから成っている)を切除しますが、がんが広がりによっては片側の肺の全摘出が必要になることがあります。

放射線治療

放射線を病変部に照射し、がんを縮小・消滅させる治療です。放射線治療は、がんの治療を目的として用いられる場合と症状を緩和する(和らげる)目的で用いられる場合があります。治療目的としては、I~III期の肺がんに対して行います。体力的に手術が難しいI期やII期の患者さんや手術が可能な場合でも手術を希望しない患者さんには放射線治療を行います。また、III期においては薬物療法と組み合わせて行います。症状を緩和する目的としては、骨転移などに伴うがん性疼痛や脳転移に対する症状(頭痛、吐き気、めまいなど)などを軽減するために行います。

薬物治療

薬を全身に行き渡らせてがん細胞の増殖を抑えたり、症状を軽減させたりする治療です。非小細胞肺がんの主な治療薬として、抗がん薬、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬があり、ステージや患者さんの状態に応じて選択します。

薬物療法は、がんの広がりを小さくするために手術前に行う場合や、再発・転移を防ぐ目的として手術後に行う場合があります。また、II期やIII期で放射線治療と併用することもあります(化学放射線療法)。IV期では、がんが全身に広がっている状態であるため、薬物療法で薬を全身に行き渡らせる必要があります。IV期では手術や放射線治療などの限局的な治療では効果が期待できません。

予防

肺がんの大きな危険因子が喫煙であるため、たばこを吸っている人は減煙・禁煙に取り組むことが大切です。禁煙から10年経過すると、禁煙しなかった場合と比較して肺がんのリスクが約半分になることが分かっています。また、受動喫煙も肺がんのリスクを高めるため、吸わない人もたばこの煙に近づかないようにしましょう。

そのほか、ほかのがんと同じように、バランスの取れた食事、節度のある飲酒、適度な運動、感染予防なども肺がん予防に効果があるといわれています。

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