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肺がん検診「受診控え」なくそう―肺癌学会がウェブセミナー開催

公開日

2022年04月18日

更新日

2022年04月18日

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2022年04月18日

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の収束がみえない中、肺がん検診の受診控えを減らそうと、日本肺癌(がん)学会の肺がん医療向上委員会(委員長:大泉聡史・北海道がんセンター副院長)は4月27日にウェブセミナーを開催。参加者を募集している。

20年は受診者3割減

日本対がん協会が2021年3月に公表した2020年のがん検診受診者数調査の結果によると、同協会の32支部が実施した5つのがん検診(胃、肺、大腸、乳、子宮頸)受診者は、対前年比30.5%の大幅減となっていた。ほかのがん検診や、別の病気の治療中に偶然発見されるはずだったがんなども合わせると、少なくとも1万人以上のがんが未発見となっていることが懸念されるという。

実際に、日本肺癌学会が2021年4月に公表した「新型コロナ感染症が肺癌診療に及ぼす影響調査結果」によると、2020年(1~10月)の新規肺がん患者数は前年同期と比較して6.6%減少したことが確認されている。

2021年のがん検診受診者数調査では、対前年比23.5%増と持ち直しの兆しはあるものの、コロナ前の2019年と比べると依然10.3%減、肺がんだけの比較では11%減の低水準にとどまっている。対がん協会は、20、21年と続けて受診を控えた人も少なくないと推測している。

がん検診を受けず、新たにがんが見つかった患者数が減っても、実際にがんになる人が減るわけではない。受診控えによって、がんがより進行した状態になってから見つかるケースが増加する恐れが懸念されている。肺がんを含め、多くのがんは早期発見・早期治療によって治せる可能性も高く、治療も軽く済むことも多い。受診控えは、さまざまな面でがんが発見された後に患者の負担増につながる恐れがある。

チャットで質問も可能

セミナーは、COVID-19の感染状況が“高止まり”するなか、それでも受診控えをなくすことを目的に開催。医療関係者だけでなく、患者、“まだがんになっていない”一般の方などを対象に、講演と総合討論が行われる。ファシリテーターは、大泉委員長と津端由佳里・肺がん医療向上委員会委員。

杉尾賢二・大分大学医学部長/呼吸器・乳腺外科学講座教授)が「新型コロナ感染症が肺癌診療に及ぼした影響(日本肺癌学会調査報告を中心に)」、中山富雄・国立がん研究センターがん対策研究所検診研究部長が「アフターコロナに向けた肺がん検診の受け方」のテーマでそれぞれ講演。大泉委員長、津端委員、杉尾・中山両氏に「肺がん患者の会ワンステップ」の長谷川一男代表が加わり、新型コロナと肺がん診療、患者の減少などについて総合討論を行う。

セミナーは4月27日18時~19時半、動画で配信され、チャット機能を使って参加者からの質問も受け付ける(ライブ配信時のみ)。参加無料。申し込みは同委員会ウェブサイトのフォームから。

主催者は「より多くの一般の方に参加してもらい、肺がん検診の受診率向上につなげたい」としている。

“垣根”取り払い正確な情報共有目指す

同委員会は、患者と家族に安心してもらえる医療を提供できるような環境を作り、肺がんの予防推進、診断・治療成績の向上を目的に2013年11月、中西洋一理事長(当時)が音頭を取って設立した。肺癌学会という「医師の組織」から垣根を取り払い、対象を患者や一般の人、製薬企業・メディア関係者なども含めてがんについての正確な情報を分かち合うことも目指している。これまでに35回、時々のトピックを取り上げ、セミナーを開催してきた。COVID-19の拡大により、2020年からはオンライン開催に切り替えた。
 

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