症状~見逃されやすい症状や間違いやすい病気~

甲状腺機能低下症の症状

甲状腺ホルモンの分泌量が低下すると新陳代謝が落ちて、全身にさまざまな症状が現れます。甲状腺機能低下症は軽度の場合、自覚症状があまりないことに加え、その症状は多忙や加齢による不調と似ているために、仕方ないと我慢している方も多いと考えられます。しかし、長期間治療せずにいると病状が悪化することもあるため 、早期に気付いて甲状腺機能の検査を受けることが大切です。
甲状腺機能低下症の主な症状は以下になります。

体調不良と間違いやすい症状

便秘、かすれ声(嗄声させい)、冷え症、貧血、甲状腺(首や喉元)の腫れ

ストレスや疲れのせいと考えやすい症状

無気力、疲労感、うつ症状、意識の混濁(嗜眠しみん)、顔やまぶたのむくみ、乾燥肌、体重増加

月経に関する症状

無月経(月経が90日以上ない状態)、希発月経(月経周期が39日以上、90日未満の状態)、過多月経(月経中の出血量が多い状態)

年齢を理由に見過ごしてしまいがちな症状

動作が遅くなる、記憶力の低下、徐脈(脈が遅くなること)、脱毛、眉毛の外側が抜ける

悪化すると現れる症状

低体温、息切れ、呼吸困難感

甲状腺機能低下症の症状の特徴~見過ごさずに検査を受けることが重要~

甲状腺の腫れが分かりにくいケースも

甲状腺機能低下症の代表的な症状として、甲状腺腫、つまり首や喉元の腫れが挙げられます。ただし、甲状腺の腫れが分かりにくいケースもあるため、腫れがみられなかったとしても上記に当てはまる症状が複数あった方は「仕事が忙しいから」「年齢のせい」と見逃さないことが重要です。

月経異常がある方は注意

甲状腺機能低下症と診断されている女性の多くに無月経や希発月経がみられることが明らかになっています。これらの月経異常がある方は産婦人科を受診いただき、月経異常の原因をきちんと検査するのがよいでしょう。

重症化するとさまざまな合併症をきたす可能性

上記に思い当たる症状があったとしても、日常生活に大きな影響が出ない限りは、体調不良やストレス、年齢のせいにしてしまっている方も多いのではないでしょうか。しかし、重症化すると心嚢液しんのうえき(心臓の周りを覆う心嚢内の液体)の貯留による心不全や、非常にまれですが粘液水腫性昏睡ねんえきすいしゅせいこんすいによる意識障害といった重篤な合併症をきたす恐れがあるため注意が必要です。当てはまる症状がある方はそのままにせずに検査を受けましょう。

甲状腺機能低下症と間違いやすい病気

疲労感や無気力、気持ちが沈むといった症状はうつ病、認知機能や記憶力の低下は認知症と間違われてしまうことがあります。特に高齢の方の場合はその傾向が強いことに加え、ご本人が更年期障害だと思い込んでそのままにしてしまっているケースも多いと考えられます。
また、貧血や肝機能障害、心不全の患者さんの中には、甲状腺機能低下症によってそれらの病気が引き起こされている方もいます。貧血や倦怠感、疲労感といった症状をきっかけに病気が見つかることもありますから、上記の症状が当てはまる方は「ささいな不調」と見過ごさずに、まずはかかりつけの病院でご相談ください。

治療せずにいると、不妊症や流産・早産などのリスクに

甲状腺機能低下症は不妊症の一因になり得る病気です。なぜなら、甲状腺機能低下症は妊娠の過程に大切な甲状腺ホルモンが不足する病気だからです。そのため、甲状腺機能低下症の治療で甲状腺ホルモンを正常にすることは、不妊治療を行ううえで重要といえます。
また、甲状腺機能低下症は不妊症の原因だけでなく、流産や早産のリスク、胎児の発達障害につながることが明らかになっています。したがって、甲状腺機能低下症の方が妊娠を希望される場合は、妊娠前から治療を行います。
不妊症への影響の可能性、流産や早産といったリスクを取り除くという観点からも、妊娠を希望される方、特に不妊治療を予定されている場合にはあらかじめ甲状腺機能の検査を受け、適切な治療を行うことがよいでしょう。

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