専門性を結集し
大学病院ならではの集学的がん治療を実践する
富山大学附属病院

複雑化するがん診療――センターを細分化し専門的で高度な医療を実現する

複雑化するがん診療
――センターを細分化し専門的で高度な医療を実現する

医療の進歩によって以前より治せるがんが増えてきているものの、そのぶん、がん診療は複雑化しています。たとえば、従来の抗がん薬に加え、免疫チェックポイント阻害薬や分子標的薬といった新しい治療薬が使えるようになったことで、これらに伴う特有の副作用への対応が求められるようになってきました。また、薬物療法だけでなく、ロボット支援下手術など高度な外科的技術にも対応する必要があります。このように複雑化するがん診療に対応すべく、当院では2020年に総合がんセンターが設立されました。分野ごとに分かれた29のセンター*を備え、専門的な医療が提供できる体制を整えています。

2024年7月時点

県内におけるがん診療の“最後の砦”となるべく尽力する

県内におけるがん診療の
“最後の砦”となるべく尽力する

富山大学附属病院は、富山県内唯一*の特定機能病院として、質の高い先進医療を提供しています。大学病院ならではの臨床研究や治験にも対応し、希少がんの診療も可能です。治療だけでなく副作用対策、設備などをしっかりと整え、全力でがん治療に取り組んでいくことをお約束します。がんの可能性があると言われた方や、実際にがんと診断されてお困りの方は、ぜひ当院にご相談ください。

2026年3月時点

総合がんセンター長プロフィール

富山大学附属病院の
総合がんセンターにおける
膵臓/胆道がん・
乳がん・肺がん・前立腺がん
の治療

膵臓がん・胆道がんの治療

富山県内唯一の専門性を結集し、妥協のない診断を追求

膵臓すいぞうがんや胆道がんは早期発見が非常に難しく、進行した状態で発見されることが多いです。当院ではまず“手術ができる状態で見つけること”を何より重要視し、精度の高い診断にこだわっています。検査の中心となるのは“超音波内視鏡(EUS)”ですが、お腹の奥深くにある膵臓を正確に捉えるには、非常に高い技術と熟練の経験が求められます。

富山県内唯一の専門性を結集し、妥協のない診断を追求

安田 一朗先生

当院では、日本膵臓学会認定指導医および日本胆道学会認定指導医*が中心となり、「疑わしい病変は、診断がはっきりするまで決してそのままにしない」という強いモットーのもと、精度の高い診断・早期発見に努めています。内視鏡診断治療において膵臓と胆道の双方の指導医資格を持つ医師が在籍しているのは富山県で当院のみ**です。
なお、膵臓がんの確定診断には、超音波内視鏡下穿刺吸引法ちょうおんぱないしきょうかせんしきゅういんほう(EUS-FNA)という方法で組織を採取する必要があり、私(安田 一朗)はこの検査が日本で普及する前から研究を行ってきました。それゆえ、検査精度には人一倍の自信があります。膵臓がん・胆道がんの疑いを指摘された方は、ぜひ当院へ精密検査にいらしてください。

日本膵臓学会認定指導医(内視鏡診断治療)、日本胆道学会認定指導医(内視鏡診断治療)

2026年3月時点

各科の垣根を越えた強固な連携で、遅延なく治療へつなげる

膵臓・胆道がんの治療においては、内科や外科、放射線科など、複数の診療科の力が必要不可欠です。当院の強みは、2018年に設立された“膵臓・胆道センター”のもと、各科の医師が非常に密に連携している点です。たとえば、内科の検査で迷うことがあれば、すぐに外科や放射線科の医師に電話1本で相談できるほど垣根が低く、迅速な意思疎通が可能です。さらに、ご紹介いただいた全ての患者さんについて、“キャンサーボード(症例検討会)”で各科の医師が集まり、適切な治療方針を徹底的に議論しています。

各科の垣根を越えた強固な連携で、遅延なく治療へつなげる

キャンサーボードの様子

このような強固な連携は、治療開始までのスピードにも直結しています。当院では、基本的に受診いただいた当日に血液検査や画像検査を実施し、特別な検査が必要な場合を除き、おおよそ1週間以内には検査を完了させます。そして診断がついたら、通常は翌週には治療方針を決定し、スムーズに治療へと移行できる体制を整えています。不安を抱える患者さんをお待たせしない迅速な対応は、当院の大きな特徴の1つです。

安全性・根治性・低侵襲性の全ての両立を目指した手術を実践

膵臓・胆道がんの手術は、重要な血管が複雑に絡み合っているため、消化器外科の中でも飛び抜けて難度が高く、長時間に及ぶことが少なくありません。そこで当院では、手術の安全性を可能な限り高めるため、“手術担当医師交代制(リレー制)”を導入しています。常に集中力を保った医師がリレー形式で執刀することで、安全性に配慮した手術を最後まで維持することができます。これが実現できるのは、日本肝胆膵外科学会認定の高度技能専門医が複数在籍しているからこそです。

安全性・根治性・低侵襲性の全ての両立を目指した手術を実践

藤井 努先生

当院の膵臓手術の件数は年間100件*を超えます。がんが血管に浸潤しているような難度の高い手術の実施に加え、2020年よりロボットを用いた膵切除術も導入しました。ロボットを用いることで小さな傷あとで済むようになるうえ、ロボットの緻密な動きにより膵臓の切除範囲を最低限にとどめることが可能です。患者さんの状態を慎重に見極め、安全性・根治性と低侵襲性ていしんしゅうせい(体への優しさ)を両立した手術の提供に尽力しています。

2025年(1月~12月)実績:102件

決して諦めない――“切除不能”とされた症例も手術につなげるアプローチ

当院には、「進行しており手術はできない」と診断された患者さんが全国から来院されます。たしかに進行の早いがんではありますが、どのような状態であっても私たちは決して治療を諦めません。たとえ手術が困難な場合でも、抗がん薬や放射線治療を駆使してがんをコントロールし、その後に根治を目指す“コンバージョン手術”にも積極的に取り組んでいます。
内科による緻密な抗がん薬治療、放射線科による専門的な放射線治療、そして外科による高度な手術技術が一体となることで、一般的には切除不能と診断された膵臓がんであっても手術が可能となるよう尽力しています。
膵臓がんは難治がんとして知られており、ショックを受けられる方も多いと思います。しかし、当院では病院の総力を挙げて、少しでもよい治療を提供すべく日々闘っています。難しいと言われた状況でも、道が開ける可能性は十分にあります。「絶対に治すぞ」という強い気持ちで、私たちと一緒に病気と向き合っていきましょう。

解説医師プロフィール
安田 一朗 先生
消化器内科
安田 一朗先生
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林 伸彦 先生
消化器内科
林 伸彦先生
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藤井 努 先生
消化器外科
藤井 努先生
プロフィール詳細を見る
渡辺 徹 先生
消化器外科
渡辺 徹先生
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乳がんの治療/乳房再建

待機期間の不安を和らげる検査体制と、美しさに配慮した乳がん治療を提供

乳がんは、ご自身でしこりに気付かれたり、検診で異常を指摘されたりして受診される方がほとんどです。がんと診断するためには、しこりに針を刺して組織を採取する針生検が必要になりますが、その予約が数週間先になってしまうことも少なくありません。「がんかもしれない」と不安なまま過ごす時間を少しでも短くするため、当院では可能な限り受診いただいたその日のうちに針生検を実施し、スピーディーに診断をつける体制を整えています。
診断後は、患者さんのご希望やライフスタイルを丁寧にお伺いし、お一人おひとりに合った治療法をご提案します。当科では年間約150例*の乳がん手術を行っており、がんを確実に取り切ることはもちろん、整容性(見た目の美しさ)も重視しています。たとえば、乳房の全摘出が必要なケースであっても、適応が確認できれば内視鏡を用いた手術が可能です。わきの下を数cm切開するのみで済むため、胸に目立つ傷あとを残さずにがんを切除できるうえ、体への負担を抑えられるのが特徴です。

遺伝子検査による予防を実践――検査からケアまで一貫して対応できる環境を整備

(左)松井 恒志先生 (右)金谷 瑛美先生

なお、当院では乳房再建術にも注力しており、乳房の全摘出手術を受けられた患者さんの約半数が乳房再建術を受けられていることも大きな特徴です(乳房再建術について詳しい情報はこちら)。
加えて、2023年に保険適用となった“ラジオ波焼灼術”も導入しています。適応は早期乳がんの方に限られますが、乳房を切らないため、患者さんの心身の負担をさらに減らすことにつながります

乳がんの特性に合わせた集学的治療――再発例や手術困難例にも対応

近年、乳がんの薬物療法は目覚ましい進歩を遂げており、がんの悪性度やサブタイプに合わせて、抗がん薬や分子標的薬などを組み合わせた集学的治療が重要になっています。また、再発しやすい遺伝性のがん(遺伝性乳がん卵巣がん)に対しては、当院が“がんゲノム医療拠点病院”であることを生かし、自施設で遺伝子検査からエキスパートパネル会議までを実施し、効果の期待できる薬を迅速に検討して提供しています。

“乳がんの特性に合わせた集学的治療――再発例や手術困難例にも対応

新しいお薬の中には、高い効果が期待できる一方で、重篤な副作用を引き起こすリスクがあるものも存在します。当院では、呼吸器内科や消化器内科、腫瘍内科しゅようないか、救急科など他科の医師と密に連携を取り、万が一の事態にも速やかに対応できる体制が整っています。そのため、再発例や手術が困難なケースであってもお薬を使う順番や投与量を緻密にマネジメントしながら適切な治療を提供することが可能です。さらに既存の方法では治療が難しくなった場合には、臨床試験への参加をご案内するなど、常に次の治療の可能性を模索し、希望を見出せるよう尽力しています。

“ありたい自分”でいられるように――アピアランスケアチームが人生をサポート

乳がんは30代や40代など若い世代の患者さんも多く、治療が患者さんのその後の人生に与える影響は決して小さくありません。当院では、乳がん看護認定看護師*などの多職種が連携し、治療と仕事の両立を支える就労支援から経済的な相談まで、手厚く支援しています。また、妊娠・出産をご希望される方には妊孕性にんようせいを温存するための選択肢についてご説明をするなど、治療開始前から将来を見据えたサポートを行っています。

日本看護協会認定 乳がん看護認定看護師

““ありたい自分”でいられるように――アピアランスケアチームが人生をサポート

さらに、治療中のQOL(生活の質)を保つための“アピアランスケア”にも積極的に取り組んでおり、当院の強みの1つです。抗がん薬の副作用による脱毛や手足の爪の変形など、外見の変化は患者さんの心に大きなダメージを与え、外出や人との交流をためらう原因にもなってしまいます。そこで、医師・看護師・薬剤師・心理士などの専門スタッフによるアピアランスケアチームを結成し、医学的・心理的なサポートを行っています。脱毛対策としては、全額自己負担にはなりますが、頭皮冷却装置*も複数台導入しています。頭皮を冷やすことで血流を減らし、毛根への抗がん薬の作用を抑制する脱毛予防法です。
病気を治すことだけが人生のゴールではありません。患者さんが“ありたい自分”でいられるよう、そして元々描いていた人生へと戻っていけるよう、スタッフ一同、患者さんの心と体に寄り添い精いっぱいサポートさせていただきます。

頭皮冷却用キャップの購入費用(82,170円(税込)/1個)と、頭皮冷却の処置費(10,000円(税込)/1回)がかかります。

乳房再建術:幅広い選択肢を備え、患者さんの希望に寄り添う

当院では、“とことんキレイに美しく治す”をモットーに、患者さんお一人おひとりの思いに寄り添った乳房再建をご提案しています。胸を失ったことによって感じるつらさは、患者さんによってそれぞれ異なります。普段どのような生活を送り、どのような場面で不便さを感じているのか、あるいはどのような胸を作りたいのかをしっかりと理解し、適切なご提案ができるよう努めています。

“とことんキレイに美しく治す”をモットーに――患者さんに合った乳房再建を提案

写真:PIXTA

再建のタイミングは、がんの切除と同時に行う“一次再建”と、術後落ち着いてから行う“二次再建”があり、当院ではどちらにも対応しています。さらに、遺伝性乳がん卵巣がんの患者さんに対しては、乳腺外科医だけでなく産婦人科の医師と連携し、卵管と卵巣の予防的切除から乳房の再建までを一度の手術で行うことも可能です。
術式については、シリコンなどの人工物を用いた再建のほか、ご自身の脂肪組織と皮膚を移植する“自家組織再建(穿通枝皮弁法せんつうしひべんほう)”、そして全額自己負担(費用は後述)にはなりますがご自身の腹部や大腿部・腰部から吸引した脂肪を注入する方法など、幅広い選択肢をご用意しています。人工物は長期的にカプセル拘縮や破損などのリスクがあるため、当院ではご自身の組織を用いた再建に特に力を入れています。

“とことんキレイに美しく治す”をモットーに――患者さんに合った乳房再建を提案

佐武 利彦先生

また、過去に再建手術が上手くいかなかった方や、過去の乳がん手術や放射線治療により胸の筋肉や皮膚を広範囲に失ったり、ダメージを受けたりした方の受け入れも積極的に行っています。複数の組織を組み合わせたり、腕のむくみ(リンパ浮腫)を改善するためにリンパ節を一緒に移植したりするなど、患者さんの生活の質を高められるよう、持てる技術を尽くして治療にあたっています。

再生医療を応用した乳房再建の費用など詳細はこちら

当院では、お腹や太ももから採取した少量の脂肪から“脂肪由来幹細胞”を取り出し、専門施設で培養・増殖させてから脂肪と一緒に注入する、再生医療を応用した乳房再建を行っています。
この方法のメリットは、“体への負担を抑えつつ、定着率を高められる”点にあります。細胞の力を借りて生着を促すため、従来の脂肪注入よりも少ない脂肪採取量で、ふっくらとした自然な再建が可能です。

費用皮下脂肪の採取時:7,832円
脂肪(脂肪組織由来幹細胞)注入手術時:
1回目 およそ 880,473円
2回目以降 およそ 552,310円
そのほか、診察費用853円、検査費用13,948円がかかります。
※価格はすべて税込
治療期間治療開始(事前手術日)~ 6か月後のフォローアップまで
*脂肪注入を行う回数や副作用の有無などによって異なります
治療回数おおよそ1回~3回
起こり得る
有害事象
痛み、皮下出血、腫れ・むくみ、しびれ、脂肪組織壊死、
傷跡、脂肪の取りむらによる凹凸など

“感覚を取り戻す”乳房再建に注力――3Dプリンターを活用し、より美しい仕上がりへ

美しい胸を作る整容性と、がんの根治性を両立させるためには、形成再建外科と乳腺科の連携が欠かせません。当院では両科の医師が同じ日に隣同士の診察室で外来を行っており、必要に応じて患者さんが来院されたその日のうちに、双方の意見をすり合わせて治療方針を共有することができます。また、毎週合同でキャンサーボード(症例検討会)を開催し、綿密な連携を図っています。
手術の精度を高めるための独自の工夫も当院の特徴です。たとえば、術前に患者さんの健康な側の乳房から3Dデータを取得し、3Dプリンターを用いて専用の鋳型(モールド)を作成します。これは歯科技工士との共同研究で実施しているもので、手術中にガイドとして用いることで、切除する体積や形を把握し、より美しい仕上がりを目指すことができます。

“とことんキレイに美しく治す”をモットーに――患者さんに合った乳房再建を提案

そして、当院の乳房再建において特に主眼を置いているのが「胸の感覚を取り戻す」ことです。がんの手術によって神経がダメージを受けると、胸の感覚が失われてしまうだけでなく、触れただけで痛みが走る“乳房切除後疼痛症候群にゅうぼうせつじょごとうつうしょうこうぐん”を引き起こすことがあります。痛みが強いと日常生活に大きな支障をきたし、感覚が失われてしまうと下着の擦れなどに気付かず、湿疹を繰り返して色素沈着となるケースもあります。そのため当科では、ただ胸の形を作るだけでなく、微小な神経をつなぎ合わせて修復することで、温かくて柔らかい、ご自身の胸としての感覚を取り戻し、乳房切除後の神経腫による痛みを改善させることにも注力しています。
乳房再建をしないという選択肢も含め、どのような道を選ぶかは患者さんご自身の意思が第一です。セカンドオピニオン*も行っておりますので、おひとりで悩まずに、ぜひ一度ご相談にいらしてください。

セカンドオピニオンは全額自己負担です。1回(1時間まで)につき、44,000円(税込)。1時間を超える場合、30分増すごとに11,000円(税込)が加算されます。

解説医師プロフィール
松井 恒志 先生
乳腺科・内分泌外科
松井 恒志先生
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金谷 瑛美 先生
乳腺科・内分泌外科
金谷 瑛美先生
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佐武 利彦 先生
形成再建外科・美容外科
佐武 利彦先生
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肺がんの治療

手術が困難な症例も積極的に受け入れ――決して諦めずに根治を目指す

肺がんは一般的に治りにくいがんといわれますが、がんの中でも特に研究が進んでいる分野であり、複数の治療選択肢をうまく組み合わせることで根治が目指せる可能性は十分にあります。肺がんの治療法には主に手術・薬物療法・放射線治療があり、切除が可能な場合は手術を行いますが、“切除ができないと言われた症例”あるいは“切除ができるか/できないかの境界にある症例”をいかに根治に導くかが、特定機能病院である当院の使命だと考えます。
呼吸器内科では超音波気管支鏡ガイド下針生検(EBUS-TBNA)による正確性の高い診断を実践し、放射線科では高精度放射線治療を実践。そして呼吸器外科においては、手術支援ロボットによる低侵襲(体への負担が少ない)手術やエネルギーデバイスの改良に取り組んでおり、各科が高度な医療を駆使することによって、まずは可能な限り“手術”につなげられるよう尽力しています。

手術が困難な症例であってもチーム医療で根治を目指す

土谷 智史先生

切除ができないと判断した場合でも、免疫チェックポイント阻害薬や分子標的治療薬といった新しいタイプの薬を使ったり、放射線治療を行ったりして腫瘍の縮小を目指します。腫瘍が小さくなって手術ができるようになる例もありますので、「手術ができない」と言われた患者さんであっても決して諦めることなく治療戦略を立てるのが私たちの基本方針です。
なお、先述した“境界にある症例”においては、呼吸器内科や呼吸器外科をはじめとする各科の医師の連携が非常に重要になります。それぞれの専門的な視点を生かしてよりよい治療を叶えるべく、2024年1月には新たに“呼吸器・胸郭センター”を立ち上げました。院内で呼吸器に携わる医師が結集し、新しい治療法や知見を共有し合いながらチームで“1人の患者さん”を多角的に診られる体制を整えています。胸壁に生じた悪性腫瘍などで胸壁再建術が必要な場合でも、形成外科と合同手術を実践しています。診療科の垣根を越えた強固な連携体制こそが当院の強みであり、脳出血などの既往歴や、合併症がある患者さんの受け入れも積極的に行っています。

患者さんの負担軽減を徹底的に追求――2孔式ロボット手術を導入

肺がんの手術方法には、開胸手術・胸腔鏡下手術・ロボット支援下手術があり、当院では、可能な限り体への負担が少ない方法を選択しています。低侵襲手術の考え方には2つあり、1つは胸に開ける穴をできるだけ少なく、小さくすることです。
通常、ロボット支援下手術では胸に5つほどの穴を開けるのが一般的ですが、当科では2つの穴(2cm程度)のみで行う“2孔式ロボット手術”を導入しています。

傷を縮小した手術や3Dモデルを用いた区域切除で低侵襲な手術を提供する

傷を少なく、そして小さく抑えることは、患者さんの体への負担を大きく軽減できるというメリットがあります。従来の開胸手術に比べて術後の回復も早く、おおむね1週間程度で退院が可能です。ご本人やご家族のご希望があり、全身状態をしっかりと見極めたうえで問題がなければ、ご高齢の患者さんであっても手術が検討可能です。実際、当院では80代や90代前半で手術を受けられた方もいらっしゃいますので、年齢を理由に諦めることなく、ぜひ一度ご相談にいらしてください。

独自の3Dモデルと技術力で、より確実で安全な区域切除を目指す

体への負担を軽減するためのもう1つの方法は、切除する肺の範囲を必要最小限にとどめることです。肺は右肺が3つ・左肺が2つの“肺葉”に分けられ、さらに細かい“区域”に分かれています。がんがある区域だけを切り取ることで、肺葉切除に比べて肺を多く残すことができ、術後の肺機能を温存することができます。
ただし、区域切除は複雑な血管や気管支を緻密により分けて処置する必要があり、難易度が高い手技です。肺の血管の走行は患者さんごとに異なるため、当院では手術前に患者さんのCT画像から独自の“3Dモデル”を作成し、入念なシミュレーションを行っています。これにより、どの血管を切るべきかを立体的かつ正確性高く把握でき、より精度の高い手術がかなえられています。

独自の3Dモデルと技術力で、より確実で安全な区域切除を目指す

3Dプリンターを用いて腫瘍のある肺から作成した3D肺血管・気管支のモデル

当科では、充実したマンパワーのもとで日々の診療にあたっています。患者さんファーストの精神を大切に、体への負担が少ない低侵襲な手術から、治療が難しいとされる高難度な手術まで、1人でも多くの方のお役に立てるよう全力を尽くしてまいりますので、不安なことがあれば一度ご相談にいらしてください。

解説医師プロフィール
土谷 智史 先生
呼吸器外科
土谷 智史先生
プロフィール詳細を見る
土谷 智史 先生
呼吸器外科
尾嶋 紀洋先生
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前立腺がんの治療

幅広い治療が可能な体制を整え、集学的治療を提供する

前立腺がんに治療には、手術・放射線治療・薬物療法、監視療法*などがあります。当院の強みは幅広い治療選択肢をご提案でき、かつ複数の治療法を効率的に組み合わせた“集学的治療”をご提供できることです。前立腺がんは「限局がん(前立腺の中にとどまっている初期のがん)にはこの治療」「進行がんにはこの治療」というようにがんの性状ごとに選択肢が決まっているわけではありません。治療方針については、がんの進行の程度や悪性度、そしてご本人やご家族の希望なども丁寧に伺いながら決定していきます。転移のある前立腺がんに対しては抗がん薬などによる薬物療法を行いますが、当院では現在**、保険診療で使える薬は全て使用できる環境を整えています。複数の薬がありますので、副作用・コスト・効果などを丁寧にご説明しながら、患者さんとよく相談して決めています。

治療を行わずに経過を観察していく選択肢

2024年8月時点

幅広い治療が可能な体制を整え、集学的治療を提供する

北村 寛先生

当院はがんゲノム医療拠点病院として、がんゲノム医療にも注力しています。前立腺がんの患者さんの中には特定の遺伝子変異があるケースもあり、その場合は新しいタイプの薬が効果を発揮するといわれています。BRCA変異の前立腺がん、高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する前立腺がんなど、高い専門性を必要とする前立腺がんにも対応可能ですので、治療でお困りのことがあればぜひ当院へご相談ください。

資格取得者の複数在籍×ダ・ヴィンチ2台体制により素早く手術につなげる

近年では手術支援ロボットによるロボット支援下手術が普及しており、当院でも積極的に活用しています。泌尿器科にはロボット支援下手術に対応できる医師が6名*在籍しています。6名のうち誰かは基本的に院内にいますので、「対応できる医師の不在により〇日は手術不可」ということが起こらない体制が構築できています。また、手術支援ロボット(ダ・ヴィンチ)を2台*導入しており、より多くの患者さんにロボット支援下手術を受けていただけるようにしています。当院ではロボット支援下手術に対応している全ての科で手術のスケジュールをタイムリーに共有しており、効率的に活用できるシステムとなっています。このような体制の整備により手術までの待機期間が短縮でき、泌尿器科では診断からおおむね2か月以内には手術が実施できています。

医師の在籍数や医療機器数、医療体制については2024年8月時点の情報です。

資格取得者の複数在籍×ダ・ヴィンチ2台体制により素早く手術につなげる

がんの疑いを指摘された方、あるいはがんと診断された方は、さまざまな不安を抱えておられることと思います。当科では前立腺がんに限らず泌尿器科がんの疑いがある患者さんを広く受け入れておりますので、お一人で悩まずに、ぜひご相談に来ていただければと思います。

解説医師プロフィール
北村 寛 先生
呼吸器外科
北村 寛先生
プロフィール詳細を見る
  • 公開日:2024/10/01
  • 最終更新日:2026/05/29
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