札幌市のがん医療
少子高齢化が進む札幌市
高まるがん医療のニーズにいかに対応していくか
札幌市は約196万人が暮らす大都市であり、人口の約3分の1を65歳以上の高齢者が占めています(2023年時点)。これまで増加が続いてきた札幌市の人口は減少局面に入り、今後はさらに少子高齢化が加速することが予想されます。高齢者の増加に伴い、がんの罹患率も高まることが予想される中、札幌市はがんの診断や治療、サポート体制を強化していくことが求められます。2024年現在、札幌市内には、都道府県がん診療連携拠点病院、7つの地域がん診療拠点病院、11の北海道がん診療連携指定病院が設置されています。高まり続けるがん医療のニーズに応えるべく、札幌市は引き続きがん医療体制を充実させていく必要があるでしょう。
札幌市のがん医療を支える
恵佑会札幌病院
自分の家族含めて全員が安心して受診できる医療機関を目指して
当院は1981年の開院以来、“がんの診断・治療・再発・終末期までを一貫として診療する”医療機関を目指し、がん診療を柱として発展を遂げてきました。2009年に地域がん診療連携拠点病院に指定されています。同じがんであっても、患者さんによって病態は異なります。当院では一人ひとりの患者さんの病態に合わせて、手術、薬物療法、放射線療法を組み合わせて行う“集学的治療”を行う体制を整えています。加えて、高レベルの医療技術を必要とする患者さんのニーズに応えるべく、手術支援ロボットなどの新たな医療機器も導入しています。また、当院には各分野の専門医の資格を持つ医師をはじめ、がん医療に関する専門知識・技術を身につけた看護師や薬剤師などが在籍しており、緊密な連携体制の下でがん診療にあたっています。緩和ケアやがん相談、地域との医療機関の連携にも力を入れています。当院の理念の1つである“自分の身内を含め、患者さん全員が安心して受診できる医療環境を目指す”を実現するべく、これからも日々研鑽に励んでまいります。
恵佑会札幌病院で行う
胃がん・食道がんの
ロボット支援下手術
胃がん・食道がんのロボット支援下手術3D映像を見ながら精密な操作が実現可能に
胃がん・食道がんの治療では、がんの進行具合や患者さんの年齢、全身状態、希望などから総合的に治療方針を決定します。がんが早期であれば内視鏡治療を行う場合がありますが、内視鏡治療が適応とならない胃がん・食道がんで切除可能な場合には、外科手術で根治を目指します。外科手術には開胸・開腹手術、内視鏡外科手術、ロボット支援下手術の選択肢があります。当院では、基本的に全ての手術方法のメリット・デメリットをご説明した上で、選択肢としてご提示するようにしています。
ロボット支援下手術の様子
当院で特に積極的に行っているのがロボット支援下手術で、胃がん・大腸がん・食道がんに対して、年間258件実施しています(2023年実績)。ロボット支援下手術とは、手術用の医療ロボットを医師が操作して行う手術方法のことです。体に数か所小さく切開し、そこからカメラとロボットアームを挿入して手術を行います。ロボットアームに装着する鉗子と呼ばれる部分には人間の手と同じ関節機能があるため、自然な操作が実現できます。また、人間が手術を行う際はどうしても細かな手ぶれが起こってしまいますが、ロボットアームには手ぶれ防止機能がついており、精密な操作が可能です。さらに、映像は自然で鮮明な3Dで画像が得られ、まるで患者さんの体の中に入っているような感覚で手術をすることができます。手術支援ロボットの導入により、外科医が手術をより効率的かつ正確に行えるようになり、結果的に手術による合併症リスクを低減し、より安全な手術提供につながると考えています。切除すべき病変をきちんと取り切ることができれば、がんの治癒率や生存率の向上にもつながってくるでしょう。患者さんがロボット支援下手術のメリットを十分に享受できるよう、手術にあたっては手順を工夫するなどして、短時間で無駄なく、安全性の高い手術を行うことを心がけています。
少しでも気になることがあればロボットセンター外来で相談を
当院では、毎週火曜日の午前8時半〜11時半に胃がん・食道がん・大腸がんのロボット支援下手術について相談いただける“ロボットセンター外来”を設けています(2024年11月時点)。「他院で手術が必要と言われたが、ロボット支援下手術とはどのような手術なのか」など些細なことでも結構ですので、お気軽に聞いていただきたいと思います。ロボットを使った手術と聞いて、患者さんの中には「何をされるのか分からなくて怖い……」と感じる方も多いかと思います。そのような方でも、まずは話を聞くだけでもよいのでぜひ一度お越しください。当科を受診したからといって、当院でロボット支援下手術を受けなければならないわけではありません。少しでも多くの人にロボット支援下手術のことを知っていただき、選択肢の1つとして検討してほしいと思い、当科を開設しています。ただ患者さんの中には、ロボット支援下手術という選択肢があることを他院で提示されておらず、なかなか当科までたどりつかない方が多いのも現状です。当院では職員向けにロボット支援下手術の体験会を開催しているのですが、いずれは診療所やクリニックの先生方にも体験していただける機会をつくれれば、認知度の向上にもつながるのではないかと考えています。
現在、胃がん・食道がんにはさまざまな治療の選択肢があるので、一人ひとりに適した治療方針を組み立てるべきだと考えています。胃がん・食道がんと診断された方は1人で悩まず、私たち専門家のところまで気軽に足を運んでもらいたいと思います。そして、十分に納得できる治療法を一緒に選んでいきましょう。
- 公開日:2024年11月27日