宮城県東部の医療
過疎化する地域でどのように医療課題を解決するか?
仙台医療圏に属する塩竃市・多賀城市・宮城郡の医師数は合わせても全国平均の6割ほど、塩竃市より北部ではさらに医師数が少なくなり、医療アクセス(必要な人に、必要な医療を届けられる体制)の改善が課題とされます。また、塩竃市周辺地域は高齢化が特に進んでいる地域でもあり、医療アクセスの課題と反して治療リスクが高いとされる患者さんは増加傾向にあるのが実情です。
加齢に伴い注意が必要な病気の1つにがんが挙げられますが、宮城県では特に大腸がんの罹患率が男女ともに高い割合となっています。早期がんの場合は自覚症状がないケースも多く、早期発見・早期治療介入のためには定期的な健康診断・検診が重要です。なお、国は健康診断の受診率目標を60%以上と定めていますが、塩竃市周辺地域では例年30~40%台を推移しており、市町村だけでなく医療機関もがん啓発および健診(検診)の受診率向上に向けた取り組みを実施しています。
宮城県東部の医療を支える
坂総合病院について
安心した生活のため医療者として地域に尽くす
坂総合病院は、塩竃市を中心とする2市3町(塩竃市・多賀城市・松島町・七ヶ浜町・利府町)を主な診療圏とした地域医療支援病院です。1912年に発足して以来、当院には100年以上の地域医療の歴史があります。地域医療支援病院としての急性期専門医療に加え回復期リハビリテーション病棟、在宅医療、緩和ケアチームを擁し急性期から在宅まで切れ目のないサポートが可能です。
当院は最寄り駅(下馬駅)の目の前に位置しており、高速道路も近くにありますので、宮城県北部からいらっしゃる方にとってアクセスが良好です。消化器領域で一般的とされる検査・治療は一通り取り組んでおりますので、「お腹の調子が悪い」あるいは「健康に不安がある」という方は、まずは身近な私たちのもとへご相談いただければと思います。
なお、当院では“無料低額診療事業”も実施しています。無料低額診療事業とは、国が定める制度に則って窓口での医療費負担を軽減する取り組みです。医療を受けるにあたって金銭的な不安を抱える方もいらっしゃるのではないでしょうか。当院では、医療を含む生活全般の相談をお受けできる体制を整えていますので、何か不安なことがあれば一度当院、もしくは当院直轄の坂総合クリニックの窓口にてお気軽にお声がけください。
宮城県東部の
大腸がん治療
大腸がんの早期発見と治療
患者さんファーストの診療を提供――“無症状”だからこそ検診を
大腸がんで現れる症状としては、一般的に血便や貧血、繰り返す腹痛、お腹の張り、体重減少などといわれています。月単位でお腹の不調が続いているような場合は、様子見はせず早めに消化器内科を受診いただくことをおすすめします。なお、大腸がんは直腸がん(肛門のすぐ内側にできるがん)を除き、基本的に早期の段階で自覚症状はほとんど現れません。そのため、大腸がんを早期発見するためには定期的に便潜血検査を受けることが大切です。また、過去に大腸のポリープを切除したことがある方は、3年に一度くらいの頻度*で結構ですので、大腸内視鏡検査を受けていただくことをおすすめします。
なお、当院で大腸がんの治療を受ける患者さんは70歳代後半~80歳代の方が多くを占めており、症状が現れてから運び込まれる方が圧倒的に多いです。進行状態で見つかる方が多い理由の1つとしては、塩竃市周辺地域では病気の早期発見への意識があまり高くないことが考えられます。大腸がんは“何かあってから”では、すでに進行がんになっている可能性が高いがんです。無症状だからこそ、定期的に検査を受けるようにしましょう。
当院では受診いただいたら、まずは便の異常やお尻の違和感などについてお話を伺ったうえで直腸指診を行うことがあります。お尻を検査することに抵抗感のある方も多いとは思いますが、直腸がんの有無を確かめるための重要な検査です。痔だと思っていたものが実は直腸がんだったということも度々ありますし、当院ではプライバシーにも配慮したうえで診察を行っていますので、早期発見のためにもご理解いただければと思います。
診察の結果、大腸がんの可能性がある方には大腸内視鏡検査を受けていただきます。予約をしたうえで別日に受けていただくことも可能ですが、緊急性が高い場合や患者さんご自身がご希望されるようであれば当日の検査も検討できます。また、大腸内視鏡検査の際にポリープの切除をした場合、入院を必須としている医療機関もありますが、当院ではできるだけ日帰りでの実施を目指しています。実際、入院になる方は治療総数の1~2割程度です。検査の結果がんであると分かった場合には即日入院の対応も行っており、検査から治療まで柔軟かつスピーディーに対応できる点が当院の強みの1つです。
大腸がんは、ほかの消化器がんと比べて治癒を目指せる可能性が高いがんです。大腸がんと診断された方の約半数は内視鏡治療で済んでいるという日本消化器がん検診学会のデータ(2022年度 全国集計調査)もありますので、まずは定期的な検査で健康状態を確認いただき、大腸がんが見つかった場合でも悲観しすぎず治療に取り組んでいただければと思います。
進行大腸がんの治療腹腔鏡下手術で患者さんの負担軽減に努める
大腸がんの手術にはお腹を開けて行う開腹手術もありますが、当院では大腸がん手術の約8割を腹腔鏡で行っています。腹腔鏡下手術とは、お腹にいくつか小さい穴を開け、そこから医療用カメラや手術器具を挿入して行う手術です。小さい傷口で済むため、お腹を開ける手術と比べて体への負担が軽減できるほか、早期の回復が望めるという利点もあります。内視鏡手術では取り除けない進行大腸がんの場合に、この腹腔鏡下手術を検討します。
“腹腔鏡下手術”という言葉を初めて耳にする方は「新しいものは怖い」と感じるかもしれませんが、日本では1990年から実施されている手術方法であり、現在では多くの医療機関で実施されています。当院でも2003年より大腸がんの腹腔鏡下手術を導入しており、約20年の歴史があります。腹腔鏡下手術はカメラを通して行う手術のため簡単な手術ではありませんが、当院には日本内視鏡外科学会認定の内視鏡技術認定医*が在籍しています。技術と経験のある医師が在籍していることで、複数の病気を患っている方や高齢の方など一般的に手術のリスクが高いとされる方へも積極的な治療が叶えられています。
なお、“がん”“手術”と聞くと、誰しも怖さや不安を感じるはずです。当院では患者さんの不安に少しでも寄り添いたいと考えており、手術を予定している方に外来で30分程度の枠を用意して、検査計画や手術計画、治療などの説明をじっくり行っています。分からないこと・不安なことがあれば、お気軽にお尋ねいただければと思います。
消化器の病気は内科医と外科医の連携が必須であり、看護師をはじめとする多くのスタッフが関わります。専門領域問わず当院のスタッフに共通しているのは“どんな状況でも諦めない”という気持ちです。もちろん無理な治療をしたり、何かを強制したりするようなことはありませんが「これ以上できることがない」とこちらからお話することはまずありません。たとえ完治は難しい状態であっても、抗がん薬治療により、がんの縮小や病変の切除を目指したり、緩和ケアチームと協力して体や心さまざまな“つらさ”を改善したりすることは可能です。また、患者さんがご自宅で安心して生活が続けられるように、入院早期からリハビリテーション科のスタッフも積極的に介入します。 “病気だけ”を診るのではなく“目の前にいる1人の患者さん”に対して責任を全うするのが我々の信念です。
大腸がん患者さん・ご家族へのサポート
患者会とがんサロンで前向きに治療に取り組めるようサポート
当院には、消化器の手術を受けた方を対象とする“坂 いちょうの会”という患者会があります。患者会とは同じ病気を経験した方々が、情報交換をしたり交流をしたりする会です。坂 いちょうの会は1977年に設立され、今もなお多くの会員の方が支え合い、前向きに病気と向き合っています。
患者さんだけでなく、当院の医師や看護師なども定期的に参加しています。昼食を取りながらお話をし「じゃあ、次もまた元気で!」というやりとりがあったり、時には『糖尿病にならないコツ』『正しい薬の飲み方』などと題して医療従事者が講座を行ったりすることもあります。また、消化器に限らず、がんの診断を受けたすべての方とその家族、友人、がんに関わる方を対象にした“がんサロン”も開設しています。同じ立場の方同士でさまざまなことを語り合い、安心や希望を得られる場としてご活用いただければと思います。
患者会もがんサロンもそれぞれ交流をメインとした集まりですので、ぜひお気軽にご参加ください。エリアやかかりつけ病院の制限もありません。参加されたい方は当院の受付に「患者会に入会したい」「がんサロンに参加したい」とお声がけいただければ、すぐにご案内可能です。
患者さんの希望を優先し、訪問診療にも対応
当院では、併設のクリニックで2市2町(塩竃市・多賀城市・七ヶ浜町・利府町)を中心に訪問診療も実施しています。機能強化型在宅支援診療所の登録をしており、24時間体制で患者さんの療養を支援しています。2022年度は75名のがん終末期の患者さんの訪問診療を行い、そのうち大腸がんの患者さんは14名と最多数を占めていました。当院では、主治医が訪問診療に同行し、患者さん・ご家族にお会いする機会を作る取り組みも実施しています。主治医との関係性を維持しつつ、ご自宅で必要なケアが受けられる体制は当院ならではの強みです。
- 公開日:2023年12月28日