札幌市の肺がん治療

早期発見が重要な肺がん 高齢化による増加が予想される

早期発見が重要な肺がん
高齢化による増加が予想される

肺がんはがんの中でも比較的死亡率が高い病気であり、中でも北海道では肺がんによる死亡率が男女ともに全国1位と報告されています。肺がんの原因の1つである喫煙についても、北海道は全国平均よりも喫煙率が高く、女性の喫煙率は全国1位です。また、肺がんは50歳以上の発生率が急激に増加するといわれており、高齢化に伴い今後も患者さんの増加が予想されます。

特に肺がんは進行してからでないと目立った自覚症状が現れにくいため、定期的な検診受診、早期発見が非常に重要な病気です。しかし北海道における肺がんの検診受診率は47都道府県中最下位であることが実情です。札幌市においても、特定健診の受診率は政令指定都市20市のうち下から2番目であることから、肺がんをはじめとした病気に対する予防意識の低さが課題にあることが分かります。加えて、北海道では呼吸器科医、呼吸器専門医(日本呼吸器学会認定)不足が深刻となっています。

肺がん患者さんが増加していき、ますます呼吸器疾患に携わる医師の需要が高まることを考えると、がん検診受診率の向上に向けた対策や将来を見据えた肺がん予防の取り組みについても注力していく必要があるといえます。

札幌市の肺がん医療を支える
KKR札幌医療センター

安心した生活のため医療者として地域に尽くす

患者さんの安心を第一に
集学的治療から緩和ケアまで幅広くサポート

当院は地域がん診療連携拠点病院として、札幌市を中心に北海道の肺がん診療を支えてまいりました。呼吸器疾患診療に携わる医師が10人在籍しており(2024年1月現在)、幅広く疾患を診ることができます。肺がん診療に関しては検査に始まり、外科治療(手術)、薬物治療、放射線治療などを組み合わせた“集学的治療”を患者さんに寄り添って行っているのが強みです。さらに緩和ケア病棟で患者さんを総合的にサポートできる環境も備えています。
がんの治療を始めるにあたり、多くの不安を抱えられることと思います。当院では、患者さんの知る権利や自己決定権を尊重し、抗がん薬はどのようなものか、この先どのような治療を行うかなどを丁寧にお伝えしています。患者さんの安心を第一に考えてサポートしますので、一緒に治療を進めていきましょう。

私は「1人で悩みを抱えている肺がん患者さんを救いたい」という思いから、“北海道肺がん患者と家族の会”の顧問として活動しています。この会は肺がん患者さんとそのご家族による情報共有や交流を目的とした会で、定期的に肺がんについて何でも質問できる機会が設けられています。そこで私は患者さんやご家族の不安が解消できるよう、医師として情報提供に努めています。
また、未来の札幌市、北海道の健康に向けた取り組みも行っています。札幌市では小・中学校や高校で“がん教育”を行っており、その一環として肺がんのことを知ってもらえるよう、病気のことや禁煙の重要性などについてお話しています。喫煙率、肺がん罹患率が低い“健康な北海道”となることを目指し、その土壌づくりにおいても、地域に貢献し続けたいと思います。

KKR札幌医療センターの
肺がん治療

肺がんの診断

ナビゲーションと超音波ガイドを併用した気管支鏡検査を行う

当院の呼吸器センターは肺腫瘍外来を2022年に開設し、診断の段階から専門的な検査を行い、地域における肺がんの早期発見の一翼を担っています。

肺がんの確定診断には、がんのある部分(病巣)から組織を採取する必要があり、その中心的な役割を果たすのが気管支鏡検査です。気管支鏡は文字どおり気管支の中を進む内視鏡(細い管状のカメラ)ですが、肺の中は複雑に気管支が張り巡らされており、その中から的確に病巣にたどり着くのは容易ではありません。そのため当院では、患者さんの負担が少なく済むよう、バーチャル気管支鏡ナビゲーションと超音波によるガイドを併用した検査に努めています。バーチャル気管支鏡ナビゲーションとは、CT画像をもとに病巣までのルートを作成する技術のことです。これにより、正確かつ短い時間で病変に到達することができます。また、がんであった場合は効果的な治療薬を選択していくために、がん組織の遺伝子変化を調べることになります。採取する組織が少ないと遺伝子検査を行うことができないため、一度の気管支鏡検査で十分な量の組織を採取することが必要となりますが、超音波によるガイドを使うことで、血管を避けながら一度に十分な量を採取することができます。当院では、積極的に複数の器材を用いることで、多くの組織を気管支鏡検査で採取し、遺伝子検査ができるだけ一度で成功するように努めています。

肺がんの診断

当院では患者さんが安心して検査を受けられる体制を整えており、気管支鏡検査を行う際は基本的に入院していただいています。入院することで検査時の痛みを軽減するための薬が幅広く使用でき、より痛みに配慮した検査を受けていただくことができます。また検査で万が一出血や気胸(肺に穴が開き、肺がしぼんでしまうこと)がみられた場合でも、即座に対応することができます。
肺がんは初期段階では症状が現れないことが多く、症状に気付いた時点ではすでにがんが進行している場合もあります。しかし早い段階で治療を開始すれば約8割が治るといわれています。当院には日本呼吸器内視鏡学会 気管支鏡専門医が4名在籍し、気管支鏡検査を得意とする医師が多数いるため、スムーズに診断率の高い検査を行えることが強みです。また専門的な検査を提供している一方で、地域に根差した、気楽にかかれる病院でもあります。検査に対してハードルが高いと感じられている方や不安がある方も、ぜひ気兼ねなくお越しください。

解説医師プロフィール

肺がんの薬物治療

緩和ケアまで切れ目なく、一人ひとりに合わせた薬物治療を提供

肺がんの薬物治療は日進月歩の勢いで進歩しています。当院は科学的根拠に即しながら、呼吸器内科・呼吸器外科・放射線科が合同で患者さん一人ひとりの病状についての議論を行い、患者さんによりよい治療を提供できるよう日々努めています。
また、近年新たな治療法の開発が進んでいる“周術期治療”を導入し、肺がんを根治(完全にがんが治ること)できる割合の向上を目指しています。“周術期治療”とは、手術の効果を高めたり再発リスクを下げたりすることを目的として、手術の前後に抗がん薬などを使用した薬物治療を行う治療のことです。近年、進行した肺がんに対する薬物治療の開発が進み、高い有効性を示すデータがあり、それらを周術期治療に用いる研究が積極的に行われているのです。当院では手術後の抗がん薬治療に加えて免疫に作用する薬を使用し、再発率が一層低くなることを目指しています。ほかにも、EGFR遺伝子変異がある肺がんに対して効果が期待できる薬物治療を行うなど、患者さんの病状に合わせた治療法をご提案いたします。

肺がんの薬物治療

また、私たちは日本肺癌学会をはじめ多くの研究会に参加して肺がん治療に関する情報の収集を欠かさず行っており、薬物治療に関して院内で情報を共有しています。そして、週2回のカンファレンスで丁寧に議論を重ねたうえで、患者さんへ治療法を提案しています。主治医1人の視点だけではなく、診療科の垣根を超え、複数の医師で病状を把握する環境を整えることで、よりよい治療を提案できると考えています。
当院には緩和ケア内科もあり、肺がんの検査、治療から緩和ケアまで切れ目なく対応できるのも特徴です。例えば、当院で治療を続けてこられた患者さんの体調が優れないときには、すぐに緩和ケア内科と連携し、体調を整える治療と並行して診療を行っています。このように肺がん治療に対してできる限りのことを続けていけるのが当院の魅力ですので、治療にお悩みの方はぜひご相談ください。

解説医師プロフィール

肺がんの手術治療

根治性を担保しつつ、呼吸機能やQOLを落とさない治療を行う

肺がんの手術では根治を目指すだけではなく、呼吸機能やQOL(生活の質)を落とさない術式を検討することが大事だと考えています。
患者さんの中には、肺がんを治すには肺を大きく切除する必要があると思われている方もいらっしゃるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。当院では患者さんのご希望を伺いながら、可能な限り切除範囲を少なくできるよう努めています。
手術の選択肢には開胸手術、胸腔鏡手術、ロボット支援下手術がありますが、当院では特に、胸腔鏡手術、ロボット支援下手術による手術を積極的に行っています。肋骨ろっこつのあたりに2~5cmほどの小さな孔を開け、細長い管状の医療用カメラを肋骨の間から挿入して内部を確認しながら、鉗子という細長い器具を用いて腫瘍を切除する方法です。切開する範囲が小さく済むため、術後の患者さんの回復が開胸手術よりも早く、患者さんの体への負担が小さいのです。
胸腔鏡手術においては、当院は“単孔式胸腔鏡手術”という術式を採用しています。この手術は文字どおり、体に1つだけ孔を開けて行うもので、傷が目立ちにくく、傷が少ない分、術後の痛みの軽減が期待できます。この単孔式胸腔鏡手術はどの病院でも対応できる術式ではありません。手術を検討されている方は、ぜひご相談ください。

肺がんの手術治療

ロボット支援下手術は体内の様子を立体画像として投影したモニターを見ながら、ロボットアームで鉗子を操作します。立体画像を拡大すれば気管支の縫合などの細かな操作が正確にできますし、ロボットアームなら胸腔鏡手術では難しい角度での腫瘍の剥離や繊細な手技を行うことが可能です。当院で今後ますます幅広く活用していく術式だと考えています。

患者さんのご体調はもちろん考慮しますが、年齢を理由に行える手術の制限などは設けていません。手術後の生活についても一緒に考えながら、治療方針を決めていきましょう。

解説医師プロフィール

肺がんの放射線治療

強度変調放射線治療を活用し、複雑な形の腫瘍でも根治を目指す

手術による腫瘍の摘出が難しい場合や、糖尿病をはじめとする基礎疾患をお持ちのため手術や薬物治療が難しい方には、放射線治療を提案しています。幅広く患者さんを受け入れておりますので、治療法にお悩みの方は一度当院にご相談いただければと思います。
放射線治療とは、放射線を照射することによってがん細胞にダメージを与え、根治やがんによる痛みの緩和を目指すものです。当院でも、肺がんの根治を目指す“根治的放射線治療”と肺がんによる痛みの緩和を目的とする“緩和的放射線治療”の2通りを行っており、目的に応じてサポートしています。
“根治的放射線治療”は、強度変調放射線治療(Intensity Modulated Radiation Therapy:IMRT)という照射法を用いて行います。IMRTが登場する以前の放射線治療では、四角形に近い単純な形での照射しか行えず、がん細胞以外にも放射線が照射されてしまうという課題がありました。IMRTでは照射強度を調節して複雑な形状の腫瘍に合わせることができ、必要な部分にのみ照射できるようになったのです。そのため、従来の治療法よりも比較的少ない副作用で治療することができます。当院では2週間ほどの準備期間をいただき、入院中の患者さんに限らず外来の患者さんにもこの治療法を提供しています。

肺がんの放射線治療

“対話、診察、人間味”をモットーにした温かみのある放射線治療を行う

当院は緩和ケア病棟を持ち、“緩和的放射線治療”も積極的に行っています。患者さんに寄り添うことを大切にしており、照射件数では先述の“根治的放射線治療”よりも“緩和的放射線治療”が圧倒的に多い状況です。
放射線科では“対話、診察、人間味”をモットーとして患者さんとの対話と診察を大切に、温かみのある懇切丁寧な診療を心がけています。さらに、合併症を抱える患者さんや、がんが多発していたり転移していたりする患者さんも積極的に受け入れていますので、治療法に悩んでいる方やお困りの方がいらっしゃれば、ぜひ一度相談に来ていただければと思います。当院は札幌市南東部の最後の砦として、これからも地域の皆さんの健康を支えてまいります。

解説医師プロフィール