院長インタビュー

札幌市南東部の「最後の砦」に!地域のがん診療と救急医療を担うKKR札幌医療センターの信念

札幌市南東部の「最後の砦」に!地域のがん診療と救急医療を担うKKR札幌医療センターの信念
磯部 宏 先生

国家公務員共済組合連合会 KKR札幌医療センター 病院長

磯部 宏 先生

この記事の最終更新は2017年06月22日です。

札幌市豊平区に位置するKKR札幌医療センターは、創設から65年間にわたり、地域住民の健康を守り続けてきました。昨年2016年に病院長に就任された磯部宏先生は、「受け入れから最後まで、責任を持って患者さんを診る」という先代の想いを引き継ぎ、人材育成や市民講演会の開講など、多角的な方面から信頼される病院作りに力を注いでいます。地域の医療ニーズに応え続けるKKR札幌医療センターの理念と特徴的な取り組み、今後目指していきたい病院像について、磯部先生にお話しいただきました。

KKR札幌医療センターの外観

画像提供:KKR札幌医療センター 磯部宏先生

KKR札幌医療センターは、今から半世紀以上前の1952年に、結核治療を専門とする医療機関「幌南病院」として設立された歴史深い病院です。当院が札幌の市街地からやや離れた地域(札幌市の南東部)に位置するのは、このように感染症対策という大役を担っていたためです。

地域の発展と共に診療科を拡充しながら歩んできた当院は、1988年に総合病院としての認可を受けました。

2006年には全面リニューアルを行い、450床のベッドを持つ「KKR札幌医療センター」へと改称し、現在も地域の声に応えるべく進化を遂げ続けています。

現在のKKR札幌医療センターの主軸は、がん診療救急医療の2つです。

2009年には地域がん診療連携拠点病院としての認定を受け、翌2010年には、救急患者さんや紹介患者さんに対して高度な医療を行う地域医療支援病院として認定されました。

そのため、当院の患者さんは、地域の診療所やクリニックから紹介で来られる方の比率が高くなっています。

地域住民の皆さんや診療所の先生方に安心してKKR札幌医療センターをご利用いただけるよう、2016年には新たに一般の方に向けた出前講演を開始しました。

KKR札幌医療センターの医療スタッフによる出前講演は、私が2016年に病院長の任に就き、初めて行った取り組みのひとつです。

講演を行う医療スタッフは、医師や看護師、検査技師など、いずれも専門知識を持つ者ばかりですが、内容は以下に記すように難しいものではありません。また、講演時間もほとんどが60分以下と長くはなく、気軽に聴きにきていただけるという特徴があります。

<KKR札幌医療センター 出前講演の一例>

テーマ発達障害の特徴と対応(30分〜60分程度)
講師 :小児科医師(専門:児童精神医学)

テーマ:体に優しい心臓手術(40分)
講師 :心臓血管外科医師

テーマ:肩こり体操(30分)
講師 :理学療法士

このほか、札幌市ならではの「凍結した路面での安全な歩き方指導」や、小学生から高校生の方を対象とした「病院での職業体験」も開催しました。

出前講演という名の通り、地域の集会場や小学校など、皆さんが足を運びやすい場所へと講師が出張する形をとっています。

各講演は、KKR札幌医療センターの医療スタッフのうち、自発的に手を上げた者がボランティアで行っており、テーマも内容も講師自身が考えています。

そのため、募集時には企画が成立するかどうか懸念していましたが、初めて市民向けに周知を行った2016年10月時点で78もの講演が企画されており、当院の医療スタッフの意欲と可能性に改めて驚いたものです。

講師は皆、地域住民の皆さんとのコミュニケーションや、医療者と一般の方の知識の溝を埋めたいと願っています。ご興味のある方は、ぜひお気軽にご連絡ください。

KKR札幌医療センターによる出前講演の様子

KKR札幌医療センターによる出前講演の様子 画像提供:磯部宏先生

北海道

私自身も30年以上肺がんの治療に携わってきた経験から、「北海道肺がん患者と家族の会」にアドバイザーとして関わり続け、病気に不安を抱える患者さんやそのご家族とのコミュニケーションを大切にしています。

2か月に1度のペースを開催される交流会には、札幌のみならず帯広など広い地域にお住まいの患者さんやご家族が参加されます。開催の折にはKKR札幌医療センターの会議室をお貸ししており、私自身も質問や相談事にお答えするセカンド・オピニオンのような役目を担っています。

また、新たな抗がん剤や副作用、在宅医療等について、私や当院の看護師、ソーシャルワーカーがミニ講座を開いています。

肺がん治療の現場から離れた今もこのような活動を続けている理由は、長きにわたるがん専門医としての人生のなかで、何よりも患者さんへの説明を重視してきたからです。

磯部先生

日本においてがんの告知が一般的に行われるようになったのは、ごく最近のことです。私が医師となってしばらくは、がんの患者さんに対し、本当の病名をお伝えしないという方針がとられていました。

当時、がんが進行して治療不能となった患者さんに対して明確な説明をできず、何度も悩んだ経験があります。

このような経緯から、1996年に国立札幌病院(現・北海道がんセンター)呼吸器科医長に就任した際、私は自分の受け持つ患者さんには告知を行いたいと願い出ました。

看護師の方々とも協力し、丁寧な説明や不安へのケアを徹底しながら告知を行ったところ、多くの患者さんが現状を受け入れ、前向きに治療に臨む姿勢になられたことが印象に残っています。

このように、がんの告知インフォームド・コンセント(説明と同意)は、切っても切り離せません。

もしも積極的な治療方法がない場合には、治療中止の同意を得て、ご自身の時間を有効に使っていただくよう、時間をかけてお話することも大切です。

特に治療の中止に関しては、告げる医師にも一種の覚悟と精神力が必要になります。自分たちが受け持った患者さんには、最初から最後まで責任を持つこと。勇気を持って適切な選択肢を提示すること。この信条は、KKR札幌医療センターの理念とも合致しています。

最期の時まで責任を持つ

KKR札幌医療センター緩和ケア病棟の病室 画像提供:磯部宏先生

KKR札幌医療センターは、日本でも比較的早い時期に緩和ケア病棟を設置した病院です。

これは、「最初から最後まで患者さんを診る」という当院の基本姿勢と、そのために緩和ケア病棟は必要不可欠であると考えた先代の院長や看護部長、事務部長らの意志の表れでもあります。

緩和ケア病棟には病室が22床あり、患者さんのプライバシーを尊重するため完全個室制をとっています。

ご家族のための控え室やキッチン、デイルームも設けており、親しい方々に囲まれながら穏やかな時間を過ごしていただくことができます。

ただし、緩和ケア病棟に入院していただくことができるのは、激しい痛みがある場合など、専門的な緩和ケア治療が必要と診断された末期がんの患者さんに限られます。

最期の瞬間まで責任を持って治療することも当院の役割であり、他方、症状や病状によっては責任を持って次の病院を探し、納得してご退院いただくことも当院の役割といえます。このときにも、患者さん目線に立った説明が極めて重要になります。

病院には、急性期病院や慢性期病院など、それぞれに機能があります。同じ救急医療を行う病院でも、受け入れられる患者さんはその重症度により異なります。

現在、多くの患者さんやご家族が、転院に際し不安や疑問を感じ、医師の説明を求めています。当院の緩和ケア病棟の例に限らず、病院の持つ機能について広く一般の方に理解していただけるよう努力することが、今後の医療界全体の課題であると考えます。

KKR札幌医療センターの外観

画像提供:磯部宏先生

札幌市にある各病院がカバーする医療圏は、市を流れる豊平川により分けられます。KKR札幌医療センターは、約30万人の人口を抱える豊平川以南の地域(豊平区や南区を中心とした札幌南部地域)において、「最後の砦」となることを目指しています。

ここでいう最後の砦とは、患者さんや救急隊の方、診療所の先生や中規模病院が本当に困ったときに、患者さんをスムーズに受け入れられる基幹病院のことです。

目標の実現のためには、地域との連携強化はもちろんのこと、当院の救急部の強化や人材育成も欠かせません。

KKR札幌医療センターの救急受け入れ件数は、札幌市内でもトップレベルです。特に循環器センター(循環器内科・心臓血管外科)は、救急車のお断りゼロを強みとしています。

当院は小児科や呼吸器科など、全ての市内二次救急当番に画する札幌市唯一の病院です。今後はこの長所を更に強化すべく、人員を補充し、あらゆる診療科がいつでも救急患者に対応できる体制を作り上げたいと構想しています。

チーム医療

医療の在り方が変容していくなかで、医師の在り方や姿勢にも変化が求められています。過去には、世間にも医療者間にも「医師=偉い人」というイメージが浸透していた時代がありました。しかし現在は、いわゆる神の手を持つ医師が、1人で何もかもを行っていける時代ではありません。

今後の医師には、看護師や薬剤師など、多職種と連携してチーム医療を行える、豊かな協調性が求められます。

当院も人材育成や外部からの人材採用に力を入れ、医療スタッフ全員が一致団結して患者さんと向き合える環境を整えることで、地域に貢献していきたいと考えています。

KKR

画像提供:磯部宏先生

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  • 国家公務員共済組合連合会 KKR札幌医療センター 病院長

    磯部 宏 先生

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