江戸川区の肺がん治療

江戸川区の肺がん治療

検診率の低さと肺がんのリスク要因である
喫煙率の高さが課題
検診率の低さと肺がんのリスク要因である喫煙率の高さが課題

東京都の区東部に位置する江戸川区は、2024年3月時点の人口が約69万人と23区の中でも比較的人口の多い区部です。同区では、肺がんの代表的なリスク要因である喫煙率の高さが課題となっています。2018年の調査では、江戸川区の男性(40~74歳)の喫煙率は27.7%で、国全体の喫煙率(男性24.4%)を上回っています。また、2021年度における江戸川区全体の肺がん検診の受診率を見ると9.9%と、東京都平均の12.5%を下回っており、予防意識の低さが課題にあることが分かります。さらに同区では、がんを包括的に診療できる医療機関が充足しているとはいえず、がん検診受診率の向上に向けた対策から治療まで、地域においてがん診療を早期から提供できる体制を整えていくことが求められています。

江戸川区の医療を支える
東京臨海病院

江戸川区の医療を支える東京臨海病院

江戸川区唯一の総合病院として集学的治療から緩和ケアまで幅広くサポート
江戸川区唯一の総合病院として集学的治療から緩和ケアまで
幅広くサポート

当院は29の診療科を有する江戸川区唯一の総合病院です(2024年時点)。“地域に開かれた、温かく親しみあふれる医療を提供する”をモットーに、地域住民の方々へ高い技術による医療サービスを提供できるよう努めています。東京都がん診療連携協力病院の指定を受けており、がん診療は最も注力している分野の1つです。患者さんやご家族に常にに寄り添う治療を心がけており、3本柱である手術・放射線治療・薬物療法を、患者さんの状態や病期によって組み合わせて行っています。緩和ケアチームが治療の開始時から総合的にサポートしているのも強みです。また、 低侵襲治療ていしんしゅうちりょう ていしんしゅうりょうにもこだわり、患者さんの身体的な負担はもちろんのこと、時間的な負担の軽減にも取り組んでいます。さまざまな職種の病院スタッフが一丸となってサポートしていますので、安心して治療を受けていただきたいと思います。

院長プロフィール

東京臨海病院の
肺がん治療

肺がんの診断と薬物療法

各診療科がチームとなって速やかに診断から治療までを行う

肺がんの診断と薬物療法

肺がんの代表的なリスク要因は喫煙ですが、江戸川区では喫煙率の高さと検診率の低さが問題となっています。東京臨海病院では、地域の課題を解決するために、早期発見・早期治療につながる取り組みを進めています。当院の何よりの強みは、呼吸器内科、呼吸器外科、放射線科、緩和ケアチームなどが1つのチームとなって診療にあたっていることです。診療科の垣根が低く常に連携が取れているため、初診から確定診断、治療開始までを速やかに行うことができています。
肺がんの確定診断までには、問診以外に、画像検査や血液検査、気管支鏡検査、喀痰検査、細胞診検査などが行われ、何度も来院の必要がありますが、当院ではX線検査やCT検査、採血は初診時に完了します。そのほかの検査もできる限り患者さんをお待たせしない体制が整っています。治療方針に納得していただければ、早い方だと初診から2週間後には手術を行うことが可能です。

患者さん一人ひとりに寄り添った治療を行う

近年、肺がんの治療は大きく進歩しています。特に薬物療法では、がん細胞だけにピンポイントに作用する“分子標的薬”や、リンパ球などの免疫細胞のはたらきを高めてがん細胞を攻撃させるようにする“免疫チェックポイント阻害薬”などが登場し、生存期間も改善されています。当院では、患者さんの状態や病期に合わせ、こうした薬物療法を手術や放射線治療と組み合わせながら治療を行っています。
また、副作用の対策も進化していますので、通院で薬物療法を受けられる方も増えています。当院の外来化学療法室は、患者さんにできるだけ快適に過ごしていただきたいという思いから、リクライニングチェアやベッドを用意し、テレビを観ながら治療を受けられるように工夫されています。また、当院はスタッフ一同、患者さんがよりよい治療効果を得られるよう、一人ひとりの患者さんに寄り添う姿勢を大切にしています。副作用のことや、仕事や生活スタイルと治療スケジュールが合うかどうかなど、治療を行ううえでの不安や疑問はどのようなことでも相談いただければと思います。

解説医師プロフィール

肺がんの手術治療

患者さんの負担がより少ない外科治療で治癒を目指す
患者さんの負担がより少ない
外科治療で治癒を目指す

肺がんの手術治療

当院の呼吸器外科は、患者さんのためになる技術は積極的に取り入れる方針で、質の高い手術の提供を目指しています。また、呼吸器内科と非常に良好な関係性を築いており、密に情報を共有しています。外科だからといって手術のみに携わるのではなく、診断から治療、治療後に至るまで、ほかの科と力を合わせてエビデンスに基づいた診療に努めています。
近年、肺機能温存手術である縮小手術の中で“区域切除”が注目されています。先日、末梢小型非小細胞肺がんに対して、従来の標準手術である肺葉切除と遜色ない治療結果であることが日本の研究で証明され、肺がんの手術選択肢の1つとして診療ガイドラインにも掲載されました。呼吸機能を温存できるため、持病のある高齢の患者さんや早期のがん患者さんに積極的にご提案しています。

肺がんの手術治療

肺がん手術のアプローチ法においては、胸腔鏡を使用した完全鏡視下の手術(VATS:Video Assisted Thoracic Surgery)を拡大手術(肺以外の臓器も合併切除する手術)を除くほぼ全ての症例で行なっています。さらに“単孔式VATS”と呼ばれる方法を採用し、側胸部に3~4cm程度の1か所の穴を開けて胸腔鏡を挿入し、手術を完了しているのが特徴です。3~4か所の穴を開けて行う従来のVATSなどに比べると傷口が1つで済むため、患者さんへの負担が少ないことがメリットです。また、従来のVATSでは術後に肋間神経痛ろっかんしんけいつう ろっかんしんけいつうで悩まれる患者さんも少なくありませんでしたが、単孔式VATSはその軽減も期待できます。“単孔式VATS”は難易度の高い術式のため、行っている医療機関は多くはありませんが、私たちは日々技術を磨いて本格的な外科手術を提供しています。江戸川区で提供している医療機関は当院のみですので(2024年5月現在)、検討されている方はぜひご相談ください。手術後の生活についても共に考えながら、治療方針を決めていきましょう。

解説医師プロフィール
牧野 洋二郎 先生
牧野 洋二郎先生
プロフィール詳細を見る

肺がんの放射線治療

正常な肺へのダメージを減らして根治を目指す

肺がんの放射線治療

放射線治療は、放射線を照射することによってがん細胞にダメージを与え、根治や痛みの緩和を目指すものです。当院でも、がんの根治を目指す“根治照射”と肺がんによる痛みの緩和を目的とする“緩和照射”の2つの方法を提供しています。
“根治照射”では、強度変調放射線治療(Intensity Modulated Radiation Therapy:IMRT)という技術を用いています。以前の放射線治療では、がん細胞以外にもたくさんの線量が照射されてしまうという課題がありました。IMRTでは照射の強度を複雑な形状の腫瘍しゅようの形に合わせることができ、必要な部分のみに集中して照射することが可能です。そのため、正常な肺へのダメージを減らし、副作用を増加させることなく、放射線を照射することができます。
患者さんの初診時から呼吸器内科、呼吸器外科、放射線科が情報を共有し、IMRTでの治療が決定したらその日のうちにCT検査と治療に必要なセットアップまで行っています。多くの施設でIMRTの準備期間は1週間程度かかりますが、当院では最短で中3日となり、よりスピーディに治療をスタートできるのが強みです。
“緩和照射”については、医療機関専用ホットラインを設けており、緩和目的のための放射線治療のみの患者さんの受け入れも行っています。ホットラインとは、現在治療中の医療機関から直接当科へご連絡をいただけるシステムです。普段通っていらっしゃる病院が緩和照射に対応していないときや、痛みが強くなってきてかかりつけに通いづらくなってきたときは、主治医にご相談のうえ気軽に当院にお越しください。入院や通院、回数などのご希望も踏まえ、迅速に対応させていただきます。

解説医師プロフィール

患者さんへのサポート

がんそのもののつらさだけでなく、生活の不安もサポート

患者さんへのサポート

当院では、がん治療を受けられる患者さんのつらさを初期段階から把握して、適切な治療やケアにつなげています。ほぼ全員のがん患者さんに“苦痛のスクリーニング”を実施しており、治療を受ける前から困りごとをお伺いし、早期の解決に努めています。たとえば、身体的な痛みやだるさ、息苦しさといった症状がないか、精神的な不安はないか、などです。ほかにも「小さい子どもがいて入院生活が心配」「親の介護をしているが治療中はどうしたらよいか」「治療費がどのくらいになるのか」など、がんそのもののつらさや不安だけではなく、日常生活の困りごとや経済的な問題に対しても相談を受け付けています。
また、2024年7月には“がん相談支援センター”を新たにオープンしました。がんと診断された患者さんは必ずセンターに立ち寄っていただき、がん看護専門看護師や医療ソーシャルワーカーとお話しいただける時間を設けます。
治療中から治療後までの支援にも力を入れています。がん治療や症状とのつきあい方など、がんに関連した情報を専門スタッフが提供する“ミニレクチャー”、患者さんやご家族同士の交流を深めることのできる“キャンサーカフェ”などのプログラムを定期的に開催しています。また、治療中の患者さんと治療を終えた患者さんとが悩みを共有し合う“ピアサポート”も行っています。治療を終えた患者さんは「自分が治療中に助けてもらったから、治療が終わった今は自分が助ける側に回りたい」と、ピアサポーターとして治療中の方を支えてくださっています。これは、治療後も通うことのできる地域の医療機関だからこそできることです。これからも、当院を中心とした患者さん同士のつながりを作っていきたいと考えています。
一般の方へ向けては、毎年、区民公開講演会を区の施設で開催しています。毎回「勉強になった」「分かりやすかった」と好評の声をいただいています。肺がんの治療法やがん検診についてのほか、その他のがんについてなど、さまざまなテーマで開催していますので、興味のある方はぜひご参加ください。お待ちしています。

解説医師プロフィール
  • 公開日:2024年7月10日
病院ホームページを見る