胃がん
開腹ではなく腹腔鏡下で手術に臨んだお子さんをもつ女性
日本赤十字社和歌山医療センターで院長補佐と第一消化管外科部長を務める山下 好人先生に、胃がんの症例について伺いました。
開腹ではなく腹腔鏡下で手術に臨んだお子さんをもつ女性
こちらの患者さんは2人のお子さんを持つ30歳代のお母さんで、発見時すでにステージ4の可能性がある進行したスキルス胃がんでした。手術で切除することが困難な可能性もありましたが、「手術時に腹膜播種が見つかれば切除しきれない可能性もある」ということをご理解いただいたうえで、手術を行うことになりました。
このような進行した胃がんでは開腹手術を行う医療機関も多いのですが、私たちは開腹手術と腹腔鏡下手術の治療成績がほとんど変わらないという実績を持っていますので、患者さんの希望もあって腹腔鏡下で手術に臨むことになりました。
手術と化学療法後5年間再発なし
手術で実際に腹腔内を観察したところ、幸い腹膜播種は認められなかったため、胃全摘術と脾臓合併切除術を行い、がんを可能な限り切除することができました。また手術後の病理検査で多くのリンパ節転移を認めたため、術後1年間は強力な抗がん剤を行うなど、つらい治療の期間が続きました。
これらの治療により、一時は体重が15kg以上減るなど苦しいこともありましたが、現在は体重も戻り5年近く再発もありません。今では2人のお子さんも大きくなり、その姿を見ると私たちも嬉しく思います。
関連の症例
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ほかの病院では全摘をすすめられていた60歳代男性
がん研有明病院で胃外科部長を務める布部創也(ぬのべそうや)先生に、胃がんの症例について伺いました。 ほかの病院では全摘をすすめられていた60歳代男性 こちらの患者さんは胃の上部にがんが生じていたのですが、比較的がんの範囲が不鮮明で、切除範囲を決めるのが難しい状態でした。ほかの医療機関では胃の全摘をすすめられたそうですが、当院ではなんとか少しでも胃を残すことができないだろうかと頭を悩ませました。幸い、内科の医師がかなり詳しく検査をしてくれたおかげで、病変の位置や広がりが分かり、これなら胃亜全摘術で胃の一部を残せると判断されたため、胃亜全摘術を行うことになりました。 術後の後遺症も少なく退院 こちらの患者さんの胃亜全摘術は腹腔鏡下手術(ふくくうきょうかしゅじゅつ)によって行われました。無事にがんを取りきることができたほか、胃の一部を残すことができたため、術後の後遺症も少なく元気に過ごされています。現在手術からおよそ2年が経過しますが、今のところ再発はありません。このように胃がんでは内科の正確な診断力、外科の技術が伴ってこそ、根治性があり術後の生活の質を保てる治療が行えるのだと思っています。
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進行した状態で発見されたが胃を残す手術を行った患者さん
日本赤十字社和歌山医療センターで院長補佐と第一消化管外科部長を務める山下 好人(やました よしと)先生に、胃がんの症例について伺いました。 進行した状態で発見されたが胃を残す手術を行った患者さん こちらの患者さんは胃の上部にがんが見つかり、発見時すでに進行している状態でした。このような進行した胃がんで手術を行う場合、胃全摘術を行うことが一般的です。しかし、胃の全摘を行うと術後の食事に不具合が生じるなど、患者さんの術後のQOL(生活の質)に悪影響が及ぶことが懸念されます。 そこで当院ではロボット支援下手術で胃の上部のみを切除し、私が考案したmSOFY法と呼ばれる吻合方法で胃の下部と食道をつなぎ合わせることにより、胃を残す手術を行うことにしました。 mSOFY法による吻合で食事も十分取れる状態になった 胃の上部を切除することによりがんを完全に切除できました。また、mSOFY法によって胃の下部と食道をつなぎ合わせたため、胃全摘術を行うよりも術後の食事をスムーズに行うことができ、逆流性食道炎や食べ物のつかえ感もなく、食事を取れるようになりました。 食事によって栄養状態も良好になり、続く再発防止のための抗がん剤治療も問題なく行えました。今のところ再発の心配もなく、旅行に行かれるなど元気に過ごされています。
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