腫瘍(しゅよう)マーカーとは、腫瘍(がん)の細胞が作り出すたんぱく質で、がんの種類に応じて特徴的に産生される物質です。腫瘍マーカーとなる物質は、正常の細胞ではほとんど作り出されることはないので、腫瘍マーカーが血液検査で検出されると、体内に腫瘍があることの目印となります。
ほとんどの腫瘍マーカーとなる物質は腫瘍が大きくなればそれに応じて多く作り出されます。一方、腫瘍が小さい段階ではあまり産生されないので、早期では異常値を示さないことが少なくありません。また、同じ種類のがんでも腫瘍マーカーとなる物質を作らないものもあり、逆に腫瘍細胞の量が少なくてもたくさん産生する場合もあります。したがって、腫瘍マーカーが正常範囲内であったり低値だとしても、「がんではない」とか「早期である」などの判断はできません。逆に、腫瘍マーカーがかなり高くても早期のこともあります。
このように、腫瘍マーカーはがんの早期診断にはあまり役に立ちません。むしろ腫瘍マーカーは治療の経過をみるモニタリング(効果の状況をみる指標)の一つとして使用されます。つまり、腫瘍マーカーの値は絶対的なものというより、変化をみることが大切なのです。治療を行った後に、検査値が正常範囲に戻ったり、明らかに低下したりすると、「治療効果あり」と判断することができます。また、検査値が再上昇するようなら再発や増悪を疑う指標となります。
どんな検査値でもその時々の状態によって波があり、変動します。したがって、腫瘍マーカーも検査値が一度上がったから、即、治療が効いていないとは言えません。値に一喜一憂することなく、少し経過をみたり、あるいはCTなどの画像検査をして確かめるなど、主治医と相談して、治療を進めていくことが重要です。
腫瘍内科医は、がん化学療法のプロフェッショナルであると同時に、がん診療全体のコーディネーターの役割を果たします。
がん診療は、複数の科(例えば、肝臓がんであれば、消化器内科、消化器外科、放射線診断および治療科、腫瘍内科、病理診断、緩和ケア科など)が絡む分野です。診断や治療の選択に迷う患者さん、あるいは治療の分岐点(治療の変更点)にいる患者さんがたくさんいます。
その時、患者さんに適切な診断をして、最も合った治療を受けていただくために、腫瘍内科医は総合的に患者さんの状態を把握し、他の診療科と連携して治療法を決定します。診断を詰めるために放射線診断医や病理医に相談することもあります。他の診療科と協力して治療に当たったり、ときには他の診療科に治療を依頼したりすることもあります。つまり、腫瘍内科はいわゆる「がん診療のコーディネーター」という重要な役割を果たしているのです。
記事1:肝臓がん(肝がん)とはどんな病気?わかりやすく説明します
記事2:膵臓がん(膵がん)とはどんな病気?わかりやすく説明します
記事3:腫瘍マーカーとは―腫瘍(がん)細胞が作り出す物質
記事4:転移性肝がんとは―症状、検査、治療方法
杏林大学医学部腫瘍内科学教室 教授
杏林大学医学部腫瘍内科学教室 教授
日本内科学会 認定医・内科指導医日本膵臓学会 評議員・認定指導医日本臨床腫瘍学会 協議員・暫定指導医日本消化器病学会 消化器病専門医・消化器病指導医日本癌治療学会 会員日本癌学会 会員日本胆道学会 会員JCOG(日本臨床腫瘍研究グループ) 肝胆膵グループ代表
千葉大学で門脈亢進症など肝疾患の臨床と研究に従事する。その後、国立がんセンター東病院にて15年半、肝胆膵がんの診療と研究に携わる。1990年代は超音波診断、IVR等の仕事を主体としていたが、1990年代後半から化学療法や化学放射線療法を積極的に取り組む。2008年3月より杏林大学医学部に移動し、腫瘍内科学教室を立ち上げ、現在に至る。新規治療開発や臨床試験の研究グループなどネットワークの組織作りなど、がん治療の進歩に貢献すべく取り組んでいる。
古瀬 純司 先生の所属医療機関
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