インタビュー

教育を通して地域医療の再生を目指す

教育を通して地域医療の再生を目指す
中桶 了太 先生

長崎大学病院 へき地病院再生支援・教育機構 准教授

中桶 了太 先生

押淵 徹 先生

国民健康保険平戸市民病院 院長、(社)全国国民健康保険診療施設協議会 会長

押淵 徹 先生

この記事の最終更新は2015年05月10日です。

平戸市民病院は、2003年頃からの大学病院派遣医師の引き上げが始まり、再三にわたる「標欠病院」の憂き目にあってきました。離島へき地医療の歴史とは、医師確保の歴史と言っても過言ではありません。長崎方式(日本で一番離島を抱える長崎県で培われた、離島で活躍する医師の育成システム)からも取り残されてしまったへき地が平戸市でした。しかし、それはちょうど押淵院長を中心に長年かけて培われてきた平戸市における地域包括医療とケアが市議会や行政にも浸透していた時期と重なっていました。平戸市の三者(首長、議員、病院)による関係諸団体(長崎県知事、長崎大学、長崎県医師会)への働きかけが功を奏し、長崎大学へき地病院再生支援・教育機構が誕生しました。

長崎大学へき地病院再生支援・教育機構では「地域包括ケアの現場を総合医の育成の場に」という理念を掲げ、2005年度より文部科学省「地域医療人育成事業」を開始しました。教育拠点病院を平戸市民病院とし、常駐教員の配置を開始し、研修医の現場での臨床指導が始まりました。2007年度に事業終了が終了となりましたが、2008年度より平戸市・平戸市民病院よりの委託事業として引き継がれました。その後、平戸市民病院の地域医療教育は大きく発展を遂げ、現在では大学病院を含む全国各地の施設から多くの初期研修医を受け入れるまでに成長しました。
さらには、夏合宿などを通して地域医療の魅力を医学生にも発信してきました。地域包括医療・ケアの理念の教育、そして国診協(全国国民健康保険診療施設協議会)の行動目標に掲げている「全人的医療」の理解を深めさせ、臨床研修目標である「医師としての人格の涵養とプライマリケア」を研修する格好の現場でもあります。

地域の拠点病院である平戸市民病院では、保健、福祉、医療が連携した「地域包括医療」を展開しています。医療機関内での研修のみならず、予防活動や在宅医療の支援を行っています。中でも特徴的なものの一つは地域へ出向いての健康講座「出前講座」です。「元気老人の創出」を掲げ、予防活動を推進した押淵院長から始まり、現在では中桶らを中心に展開しています。その数は2015年3月現在、すでに165回にものぼります。糖尿病高血圧生活習慣病に始まり、寸劇を交えながら、どのようにしたら住民が興味を持つかという点について工夫を重ね、日々進化し続けています。

 平戸市民病院からさらに地域医療教育の和は広がっています。地域の多職種の指導力や教育力を整備し、地域医療や包括医療・ケアを学ぶお手伝いをするのが「ながさき県北地域医療教育コンソーシアム」、通称AGONETです。平戸市、松浦市の5つの病院からなるながさき県北地域医療教育コンソーシアムでは、各病院の得意分野を生かし、勉強会や、講演会も開催しています。

長崎県の北部は人口減少と高齢化の進行、医師の減少、高齢化など厳しい状況にあります。しかし、これは視点を変えると日本がこれから経験する高齢化社会を最も早く経験できる先進地域であり、モデルケースと考えることができます。高齢化コミュニティーを少ない医療スタッフで多職種連携をして知恵を絞りながら解決していくという実践を通した教育施設として地域医療の再生を目指していきます。

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