インタビュー

慢性腎臓病(CKD)とは—腎臓が悪くなると、脳卒中や心筋梗塞のリスクが高まる?

慢性腎臓病(CKD)とは—腎臓が悪くなると、脳卒中や心筋梗塞のリスクが高まる?
上條 由佳 先生

医療法人社団善仁会 中田駅前泉クリニック 院長、医療法人社団ときわ 理事、横浜市立大学腎臓高血...

上條 由佳 先生

石橋 由孝 先生

日本赤十字社医療センター 腎臓内科部長

石橋 由孝 先生

目次
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この記事の最終更新は2015年06月26日です。

腎臓の働きが徐々に低下していく病気である慢性腎臓病(まんせいじんぞうびょう)CKD)。慢性腎臓病を放っておくと、脳卒中心筋梗塞を起こすリスクがどんどん高くなってしまいます。
慢性腎臓病とはいったいどのような病気なのか、どのように治療するのかについて、以下にご説明します。

腎臓には、体内の不要な老廃物や余分な塩分・水分を尿として体の外に捨てる働き、ミネラルバランスの調整・pH(体の中の酸性・アルカリ性のバランス)の調整・血圧の調整をする働き、血液をつくるホルモン・骨に関わるホルモンを作る働きがあり、体全体のバランスを整えています。この腎臓の働きが徐々に落ちていく病気を慢性腎臓病CKD)といいます。

ちなみに、慢性腎臓病の定義は以下のようになっています。

定義:下記の1または2が3ヶ月以上持続する病態

  1. 血液・尿・画像・組織(腎生検)検査で腎障害がある場合
  2. 糸球体濾過量(eGFR)<60(ml/min/1.73m2)

以下に、もう少し噛み砕いてご説明します。

1は、「血液検査、尿検査、画像検査、組織検査などの検査で、腎臓の機能が落ちていることが確認された場合」という意味です。組織検査とは、腎臓に細い針をさして腎臓をほんの一部取ってきた後、その取ってきた腎臓を顕微鏡で詳しく見るという検査です。

2の糸球体濾過量(しきゅうたいろかりょう)とは、「からだの内の不要な老廃物をどれだけ体の外に捨てることができるか」を表しています。
この1または2が3ヶ月以上続いたら、腎不全と診断されます。

慢性腎臓病の原因には二つあります。

  1. 腎臓そのものの病気が原因となって引き起こされる場合です。遺伝性の病気や感染による病気などがあり、何歳からでも発症する可能性があります。
  2. 糖尿病高血圧などの生活習慣病が原因となって引き起こされる場合です。高血糖、高血圧などの状態は腎臓に大きな負担をかけてしまうのです。

近年、生活習慣病の増加により慢性腎臓病の患者さんも急激に増加しています。現在では、推定で成人の8人に1人が慢性腎臓病にかかっているといわれています。

慢性腎臓病は、初期の段階では自覚症状がほとんどありません。

病気が進行してくると、

  • 夜中に何度もトイレに行く
  • 体がむくむ
  • 貧血を起こす
  • 疲れやすく、だるい感じがする
  • 息切れしやすくなる

などの症状が現れます。

しかし、これらの症状が現れる段階では、病気はかなり進行していることが多いです。よって、早期発見のためには、健康診断を定期的に受け、血液検査や尿検査をすることがとても大切です(後に述べますが、慢性腎臓病では早期発見・早期治療がとても重要です)。

ちなみに、

  • 血液検査では、血液中のクレアチニンという成分を調べます。腎臓の機能が悪くなると、このクレアチニンが多くなるのです。
  • 尿検査では、尿中のタンパク質の量を調べます。なんらかの原因で尿中に正常以上のタンパク質が出てきた場合、腎臓の機能が悪くなります(タンパク尿といいます)。

慢性腎臓病は、その程度によってステージ1~5の5段階に分類されます(病期分類といいます)。
ステージ1が最も軽い状態、ステージ5が最も重い状態となっています。

CKDの病気分類
CKDの病気分類

この慢性腎臓病のステージが進むほど、脳卒中心筋梗塞などを起こすリスクが高くなっていくことが分かっています。よって、慢性腎臓病では、早い段階から治療を始めることがとても大切です。

慢性腎臓病では、腎臓の働きがあるレベルまで低下してしまうと、元に戻ることができなくなってしまいます。よって、早期発見・早期治療によって、腎臓の働きを低下させないようにすることがとても大切です(もちろん先に述べたように、脳卒中心筋梗塞を防ぐためにも早期治療は大切です)。

慢性腎臓病の治療では、

  1. 塩分摂取の制限
  2. タンパク尿(腎臓の機能が悪くなることで、尿中に正常以上のタンパク質が出てくること)の管理
  3. 血圧の管理
  4. 慢性腎臓病の原因となった病気の管理

が重要です。

具体的な治療法としては、

  • 生活習慣の改善:肥満の方は肥満の是正、喫煙している方は禁煙を行います。
  • 食事療法:減塩、タンパク制限などを行います。塩分やたんぱく質をとり過ぎると、腎臓に負担がかかり、腎臓の機能低下を早めてしまいます。
  • 薬物療法:血圧を下げる薬などを用います。

などを組み合わせて行います。
また、高血圧糖尿病などの生活習慣病をお持ちの方は、そちらの病気の治療も必要です。

腎不全・PD診療TRC

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  • 医療法人社団善仁会 中田駅前泉クリニック 院長、医療法人社団ときわ 理事、横浜市立大学腎臓高血圧内科 客員研究員

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