腎臓の働きが徐々に低下していく病気である慢性腎臓病(CKD)。慢性腎臓病を放っておくと、脳卒中や心筋梗塞を起こすリスクがどんどん高くなってしまいます。
慢性腎臓病とはいったいどのような病気なのか、どのように治療するのかについて、以下にご説明します。
腎臓には、体内の不要な老廃物や余分な塩分・水分を尿として体の外に捨てる働き、ミネラルバランスの調整・pH(体の中の酸性・アルカリ性のバランス)の調整・血圧の調整をする働き、血液をつくるホルモン・骨に関わるホルモンを作る働きがあり、体全体のバランスを整えています。この腎臓の働きが徐々に落ちていく病気を慢性腎臓病(CKD)といいます。
ちなみに、慢性腎臓病の定義は以下のようになっています。
定義:下記の1または2が3ヶ月以上持続する病態
以下に、もう少し噛み砕いてご説明します。
1は、「血液検査、尿検査、画像検査、組織検査などの検査で、腎臓の機能が落ちていることが確認された場合」という意味です。組織検査とは、腎臓に細い針をさして腎臓をほんの一部取ってきた後、その取ってきた腎臓を顕微鏡で詳しく見るという検査です。
2の糸球体濾過量とは、「からだの内の不要な老廃物をどれだけ体の外に捨てることができるか」を表しています。
この1または2が3ヶ月以上続いたら、腎不全と診断されます。
慢性腎臓病の原因には二つあります。
近年、生活習慣病の増加により慢性腎臓病の患者さんも急激に増加しています。現在では、推定で成人の8人に1人が慢性腎臓病にかかっているといわれています。
慢性腎臓病は、初期の段階では自覚症状がほとんどありません。
病気が進行してくると、
などの症状が現れます。
しかし、これらの症状が現れる段階では、病気はかなり進行していることが多いです。よって、早期発見のためには、健康診断を定期的に受け、血液検査や尿検査をすることがとても大切です(後に述べますが、慢性腎臓病では早期発見・早期治療がとても重要です)。
ちなみに、
慢性腎臓病は、その程度によってステージ1~5の5段階に分類されます(病期分類といいます)。
ステージ1が最も軽い状態、ステージ5が最も重い状態となっています。
慢性腎臓病では、腎臓の働きがあるレベルまで低下してしまうと、元に戻ることができなくなってしまいます。よって、早期発見・早期治療によって、腎臓の働きを低下させないようにすることがとても大切です(もちろん先に述べたように、脳卒中・心筋梗塞を防ぐためにも早期治療は大切です)。
慢性腎臓病の治療では、
が重要です。
具体的な治療法としては、
などを組み合わせて行います。
また、高血圧や糖尿病などの生活習慣病をお持ちの方は、そちらの病気の治療も必要です。
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医療法人社団善仁会 中田駅前泉クリニック 院長、医療法人社団ときわ 理事、横浜市立大学腎臓高血圧内科 客員研究員
日本内科学会 総合内科専門医・内科指導医日本透析医学会 透析専門医・透析指導医日本腎臓学会 腎臓専門医・腎臓指導医日本高血圧学会 会員
全人的総合的腎不全医療(Total Renal Care:TRC)を推進・普及させるためにアウトリーチ活動を行っている。一人ひとりの腎不全患者が自己管理や行動変容を実現するための教育というミクロなアプローチから、腎不全患者自身がさまざまな治療の選択肢を持てるようにするための社会システム全体の構築というマクロなアプローチも積極的に行っている。
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