気管支内視鏡は気管から肺を検査・診察するための細長い管状の器械です。大人の気管支内視鏡は一般的に4~6mmのものが使われますが、子どもの気管支内視鏡はその半分以下の小ささであり、ほとんどが観察の目的で用いられます。今回は、気管支内視鏡を用いた検査や治療をご紹介する前段階として、気管支内視鏡とはどのような器具なのか、また2種類ある気管支内視鏡にはどのような違いがあるのかについて、東京都立小児総合医療センター 呼吸器科の石立誠人先生にお話しいただきました。
ファイバースコープはファイバー(線維)で作られている内視鏡です。一本一本のファイバーを束にしてつくっており、非常に柔らかいため内視鏡の先端が曲がりやすく、操作もしやすいのが特徴です。
一方、硬性気管支鏡は、カメラが先端についている一方寸胴状で、中が空洞になっています。この棒から検査補助器具を通して操作することができます。しかし、硬性気管支鏡はファイバースコープと比べて太く子どもの喉には入れにくいうえ、使用の際は、全身麻酔をかける必要があります。ですから、喉や気管に対する侵襲性(体の負担)が高くなってしまいます。
硬性気管支鏡は全身麻酔下で行うため、毎回麻酔をかけて硬性気管支鏡を入れるわけにもいきません。そのため頻度としてはファイバースコープが圧倒的に多くなります。大人用のファイバースコープは直径4~6mmですが、子どもにはさらに細いもの(直径が2.2mmや2.8mmのもの)を用いています。新生児に内視鏡検査を行う場合は2.2mmのものを用います。
直径2.2mmのファイバースコープはチャンネル(ファイバースコープについている穴のこと。その穴を通じて鉗子(検査補助器具の一つ、先端でものをつまむことができる)を入れることができる)が開いてないため、目的はあくまで観察がメインになります。チャンネルの穴が、2.2mmのファイバースコープにはついていません。2.8mmのものには穴が開いているのですが、ファイバースコープ自体が細いために穴から出せる鉗子も通常サイズより小さく、異物を取るのには向いていません。このため、異物摘出にはあくまでも硬性気管支鏡が用いられまし。
繰り返しますがファイバースコープは観察が主体です。2.8mmのファイバースコープはチャンネルがあるため吸引処置によく用いられます。具体的には痰づまりなどに対する治療が挙げられます。
直径が細いものほど侵襲性は低くなります。しかし、そのぶん解像度が低いため、通常2~3歳くらいで、かつある程度成長している子どもには2.8mmのものを使うようにします。2.8mmのものであれば前述したチャンネルも開いているため、いろいろな操作ができることもメリットといえます。
ファイバースコープと硬性気管支鏡では用途が異なれば頻度も異なります。子どもの場合は気管支の「観察」がほとんどの目的であるため、使用頻度はファイバースコープが9割5分以上となっています。
空気の通り道は、口から始まって胸の中央のあたりで左右の気管支に分かれ、その後は木のように細かく枝分かれしていきます。気管支鏡では、区域気管支の次の分枝である亜区域気管支という直径5mm程度の範囲まで内腔を確認することができます。
のどは空気と食べ物が交通するための要所です。また、空気の通り道である気管と、食べ物の通り道である食道という、ふたつの重要な管がクロスする部分でもあります。こののどが病気になると、食道と気管の両方が侵されることになります。私たち呼吸器科は、交通の要所であるのどこそ交通の中心であり、かつ体の中心だと考えています。そのためにもしっかりと診ていくことが必要なのです。
東京都立小児総合医療センター 呼吸器科 医長
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