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第26回 日本乳癌学会学術総会に向けて

第26回 日本乳癌学会学術総会に向けて
戸井 雅和 先生

東京都立駒込病院 院長

戸井 雅和 先生

目次
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この記事の最終更新は2018年03月12日です。

 

2018年5月16日(水)〜18日(金)の3日間、国立京都国際会館(京都府京都市)にて第26回 日本乳癌学会学術総会が開催されます。また、本学術総会に伴い2018年5月19日(土)には、市民講座および関連プログラムが開かれます。

本学術総会のテーマ「Creative Japan 新たな時代」に込められた思いやプログラムの詳細について、学会長の戸井雅和(とい まさかず)先生にお話を伺いました。

会期:2018年5月16日(水)~18日(金)・19日(土)市民講座および関連プログラム

会場:国立京都国際会館

会長:戸井雅和(京都大学大学院医学研究科 外科学講座 乳腺外科学 教授)

テーマ:Creative Japan 新たな時代

日本乳癌学会学術総会

1993年に第1回日本乳癌学会学術総会が行われてから四半世紀が経ち、このたび第26回日本乳癌学会学術総会を開催する運びとなりました。

この25年間で医療環境はダイナミックに動き、乳がんの研究、診断、治療、社会政策にはさまざまな変化がもたらされました。25年を1つの区切りと捉えるならば、本学術総会は、乳がん領域における新たな時代の始まりといえます。

日本乳癌学会は、2018年に乳癌診療ガイドラインを大幅に改訂する予定です。本学術総会には、今回のガイドライン改訂を宣言し、周知を図るといった側面もあります。

なお、プログラム中にはガイドライン改訂に関するセッションを設けています。

1993年からの25年間、日本における乳がんの治療成績は右肩上がりで改善しています。2008年には、5年生存率は90%を超えました。今後も乳がんの治療成績を右肩上がりでキープするために、新たな戦略を持たねばなりません。

さらに、社会的なニーズに応えるためには、治療の副作用を最小限に抑えて患者さんの負担を軽減する、あるいは効率的な治療を行い社会的な医療コストを削減するといった視点が必要になるでしょう。

治療によって乳がんを治癒させることは私たちが目指すべき指標であり、さらには、患者さんや社会的な側面を考慮した治療について議論していく必要があるといえます。

戸井雅和(とい まさかず)先生

本学術総会は、京都乳癌コンセンサス会議KBCCC 2018国際コンベンションと連結して開催されます。乳がん局所のマネージメントを中心にコンセンサスを形成する予定です。

学生、院生、研修医を含めた参加者の方々には、海外の関係者と会話を交え、よい国際交流の機会にしていただけたらと考えています。

Creative Japan 新たな時代

これまでのアジアにおける乳がん診療は、欧米で開発された治療法や薬を導入する傾向がありました。しかし、近年はアジア発信の治療法や薬が増えつつあります。グローバルな薬の臨床試験では、2〜3割近くがアジアからの参加という状況も珍しくはありません。

最近では、アジア各地で行われる乳がん関連の学会に毎年多くの参加者が来場しており、世界的な注目度の高さが伺えます。

このような流れのなかで、本学術総会では、世界におけるアジアのコントリビューション(貢献)という視点から、おもに乳がんの治療薬(たとえば、CDK4/6阻害剤、mTOR阻害薬、HER2阻害薬など)にフォーカスした発表を行います。

乳がんの治療として、ノンサージカル・アブレーション(非切除治療)が、新たに関心を集めています。具体的には、熱凝固療法(熱を利用して腫瘍を破壊する治療法)の1つであるラジオ波焼灼療法(RFA)や、凍結療法(凍結によってがん細胞を壊死させる治療法)などが臨床試験の段階にあります。

また、新たな診断・検査モダリティ(医用画像の撮影装置)の開発も活発です。たとえば、乳房専用PET、光超音波イメージング技術やマイクロ波イメージング技術を用いた検査など、侵襲性の低い(肉体的な負担が少ない)画像診断が開発されています。

光超音波イメージング技術:生体に安全な光を照射し、生体内にある光吸収体(ヘモグロビン)から生じる超音波を受信して画像化する技術

本学術総会では「Creative Japan新たな時代」のテーマに沿って、日本初の先端的な治療法や新規のモダリティを海外に向けて発信するプログラムを実施します。

前項で、日本における乳がんの治療成績は伸びているとお伝えしました。一方で、乳がんの数は増加し続けています。2013年には、年間に8万人近くの罹患数(新たに乳がんと診断された数)が記録されており、増加の勢いはとどまる気配をみせません。

日本における乳がん(女性)の発症は、30代で増加を始めて40代後半でピークを迎え、その後はほぼ一定に推移し、60代後半〜70代で減少します。山のような曲線(下記グラフを参照)を描く傾向は、長らく東アジア全体で同様にみられるものでした。

乳がん罹患率
出典:国立がん研究センター「年齢階級別女性乳がん罹患率(全国推計値)2013年」

一方で、欧米における乳がんの発症は年代を追うごとに増加する傾向にあり、東アジアとは異なる右上がり曲線を描きます。

しかし近年、シンガポールにおける乳がんの発症に、欧米と同様の右上がり傾向がみえています。このことから、将来的には日本における乳がんの発症傾向も欧米の形に近づいていく可能性があります。

ライフスタイルへの介入に関する研究が盛んに行われている

乳がんの数が増え続ける一方で、予防や早期発見に関する研究が盛んに行われています。

現在(2018年3月現在)乳がんの予防研究で筆頭といえるのは、ライフスタイルへの介入です。なかでも特にエクササイズへの介入については、現在(2018年3月現在)臨床試験のデータが出始めている段階です。

ジョギングをしている女性

遺伝性(家族性)乳がんのリスク評価は重要である

乳がんの早期発見については、発症リスクの評価がまず重要です。端的な例としては、遺伝性(家族性ともいいます)乳がんのリスク評価が挙げられます。

乳がんを発症した方の10〜15%は、遺伝的に乳がんを発症しやすい体質を持っていると考えられています。この数値からわかるように、遺伝性の乳がんは全体のうち少数です。しかし、遺伝性乳がんのリスクを評価することは、患者さんやご家族(血縁者)の健康を管理するうえで有用とされています。

なぜなら、遺伝性乳がんと診断された患者さんの血縁者は、適切ながん検診を受けることで乳がんの早期発見・治療が可能になり、また、患者さん本人はより詳しい術後の検診を受けられる可能性があるからです。

近年、予防的な観点から、乳がんの外科的治療の捉え方に変化が起きています。

2012年頃、乳房温存率は6〜7割ほどでしたが、現在(2018年3月時点)では乳房温存よりも乳房切除・再建を選択するケースが多くなっています。この変化には、別な異時性乳がんの発症を抑えたいというリスク低減と、形成外科領域における乳房再建技術の進歩が大きく影響していると考えられます。

つまり、乳房再建の技術が進歩したために、再発リスクを考慮して乳房切除・再建を選択する症例が増えていると考えられます。

近年、乳がん診療における看護師の役割はどんどん大きくなっており、2006年には「乳がん看護認定看護師」が設定されました。

乳がん看護認定看護師は、日本看護協会より、乳がん治療・看護に関する専門性を認定された看護師です。具体的には、乳がん告知後の心理的サポート、治療を選択する際のアドバイス提供、治療に伴う副作用の対応などを行います。

乳がんの診療には、看護師の力が絶対に必要です。本学術総会では、看護師とともにディスカッションを行う場も設けています。

本学術総会は、幅広いテーマで数々のプログラムを開催します。

シンポジウムでは、代表的なデータや考え方を積極的に公表していただくよう推奨しています。本学術総会を通じて、医療界のみならず、市民、産業界の方々の乳がん診療への理解が深まることを期待しています。

近年の乳がん診療において、個別化医療(1人1人に応じた最適な医療を提供する)とプレシジョン・メディシン(高精度医療:がん組織などの遺伝子異常などを調べ1人1人に最適な治療薬を選ぶ)が実用化に向けて進んでいます。

本学術総会では、海外から著名な専門家をお招きして、ゲノム医療に関するシンポジウムや、遺伝性乳がんのセッションなどを行う予定です。

インターナショナル・セッションでは、人々の関心が高い乳がん検診(手法やリスク評価など)をテーマの1つに議論を展開します。

乳がん検診のクオリティを維持するには大きなマンパワーが必要であり、コストの話は避けて通れないでしょう。一方で、「J-START(乳がん検診における超音波検査の有効性を検証するための比較試験)」のように世界初・日本発の試験が出るなど、トピックスは豊富です。

乳がん・乳腺の病気について一般市民との情報を共有する場に

現在(2018年3月時点)、11人に1人は乳がんになる時代といわれており注2)、家族や友人などを含めれば、非常に多くの方々が乳がんに接する可能性があるといえます。

このような観点から、乳がんについて一般市民の理解を深めることは非常に重要であると捉え、市民公開講座を開催しています。

注2)国立がん研究センターがん情報サービス「最新がん統計 がんに罹患する確率~累積罹患リスク(2013年データに基づく)」

市民公開講座のテーマは、以下を想定しています。

  • 乳がんの予防、遺伝性乳がんについて
  • 乳がん診療における最新の動向について

まず、一般市民の方々が大きな関心を寄せる乳がんの予防や遺伝性乳がんを、メインテーマの1つに設定する予定です。より最新の動向にフォーカスします。

プログラムの1つとして、乳がん患者さんによるセミナーを行います。

本セミナーは、乳がん診療の現状と最新の治療について理解を深めることを目的としているため、乳がんの患者さんにはぜひ積極的に参加していただきたいと考えます。

本学術総会では、医師はもちろん、看護師、薬剤師、臨床検査技師など、多職種にわたる医療従事者を対象にしたセッションを設けています。

また、日本全体で乳がん診療に関して協働する傾向が強まっており、幅広い分野の産業界(たとえば製薬メーカー、医療機器、AIなど)からの参加者があると予想されます。

戸井雅和(とい まさかず)先生

本学術総会のテーマは多岐に渡りますが、各分野の第一線で活躍する方々をお呼びしています。先端的かつ重要な知見に触れる貴重な機会となるでしょう。

ぜひお誘い合わせのうえ、ご参加ください。

 

第26回日本乳癌学会学術総会

テーマ:Creative Japan 新たな時代

会長:戸井雅和(京都大学大学院医学研究科 外科学講座 乳腺外科学 教授)

会期:2018年5月16日(水)~18日(金)・19日(土)市民講座および関連プログラム

会場:国立京都国際会館 http://www.icckyoto.or.jp

総会事務局:京都大学大学院医学研究科 外科学講座 乳腺外科学

〒606-8507 京都市左京区聖護院川原町54

運営事務局:日本コンベンションサービス株式会社 関西支社内

〒541-0042 大阪市中央区今橋4-4-7 京阪神淀屋橋ビル2階

TEL: 06-6221-5933 FAX: 06-6221-5938

E-mail: 26jbcs@convention.co.jp

 

5月17日(木)「最近の乳癌診療、研究について」

5月16日(水)

1.「Reengineering the tumor microenvironment to enhance cancer therapy: Bench to Bedside」

2.「細胞周期」

5月17日(木)

3.「遺伝子修復機構」

4.「Breast Cancer Care」

5月16日(水)

1.「Updates of anti-HER2 therapy for primary cancer」

2.「医療情報の活用とデジタルヘルス」

3.「Development of clompanion and complimentary assay」

4.「Trends in adjuvant hormone therapy for ER+/HER2-primary breast cancer」

5.「Radiation therapy for DCIS and early breast cancer」

6.「Immune microenvironment of breast cancer」

5月17日(木)

7.「Criguliano: Current topics and consensus of adjuvant systemic therapy」

8.「人工知能:その技術とパラダイム」

9.「Axillary management」

10.「ビッグデータ分析」

11.「Risk reduction surgery in US」

12.「Biomarker of CDK4/6 inhibitors」

13.「Consensus; treatment and management of patients under 35 years of age」

14.「Innovative photodynamic therapy」

5月18日(金)

15.「Circulating tumor DNA and biomarker」

16.「クリニカルシークエンシング」

17.「Microenvironment Determines Therapeutic Response of Primary Tumor and Metastases」

5月16日(水)

1.「HER2陽性原発性乳癌の治療最適化」

2.「ER陽性HER2陰性再発・進行乳癌の治療戦略

3.「多遺伝子アッセイの現状と展望」

4.「ER陽性HER2陰性原発性乳癌の治療最適化」

5月17日(木)

5.「ゲノム医療推進に向けた取り組みの課題と展望」

6.「Triple negative乳癌の治療戦略」

7.「乳癌の新規薬物療法」

8.「術前療法の治療計画」

9.「乳癌診療への人工知能の導入」

10.「乳癌診療におけるビッグデータの活用」

5月18日(金)

11.「リキッドバイオプシイ: ctDNA, CTC, microRNAなど」

5月16日(水)

1.「腫瘍免疫:基礎から臨床へ」

2.「高齢者乳癌患者における診療の問題点」

3.「HER2陽性再発・転移乳癌の治療戦略」

4.「病理診断の現在の課題と展望」

5月17日(木)

5.「遺伝性腫瘍の診療体制の構築に向けて」

6.「新規バイオマーカーの臨床応用, 予後予測因子・治療効果予測因子」

7.「新規画像モダリティの開発から見えてきた乳癌像」

8.「明るいサバイバーシップを目指した若年性乳癌患者の診療」

9.「オンコプラスティックサージャリー」

5月16日(水)

1.「DCIS治療の最適化」

5月17日(木)

2.「Non Surgical Ablationの臨床応用」

3.「センチネルリンパ節生検の今後に向けた取り組み」

5月16日(水)

1.「Screening; Current status and future perspectives」

2.「Innovative approaches in local treatment」

3.「Innovative approaches in systemic treatment and biomarker」

5月17日(木)

4.「Innovative approaches in imaging」

5.「Activities in Asia: Clinical trials, screening, research(Research, Biomarker, new therapy)」

5月18日(金)

6.「Radiotherapy: Consensus and future perspectives」

7.「DCIS」

 

5月16日(水)

1.「Liquid biopsy Selected」

5月18日(金)

2.「支持療法開発の最先端」

3.「臨床試験最先端」

4.「ホルモン感受性癌の制御」

5.「ゲノム、バイオマーカー」

5月18日(金)

5月16日(水)

5月16日(水)

5月16日(水)

5月18日(金)「画像診断セミナー(超音波)解説」

5月18日(金)「画像診断セミナー(マンモグラフィ)解説」

5月18日(金)

5月18日(金)

5月16日(水) 「診断・治療」

5月16日(水)

5月18日(金)「皆で考えよう、未来の乳癌医療」後援:日本対がん協会

5月18日(金)

5月16日(水)男女共同参画セミナー①

5月17日(木)男女共同参画セミナー②

5月17日(木)1.「遺伝性乳癌の診療」

5月18日(金)2.「患者市民の研究参画:新しいシステムの構築に向けて」後援:日本癌治療学会

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