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虚血性心疾患の治療を遠隔で行う“ロボット補助PCI”の可能性

虚血性心疾患の治療を遠隔で行う“ロボット補助PCI”の可能性
藤田 勉 先生

医療法人 札幌ハートセンター 理事長 兼 CMO

藤田 勉 先生

目次
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経皮的冠動脈インターベンション(PCI)は、心筋梗塞(しんきんこうそく)狭心症などの虚血性心疾患に対する治療法の1つです*。従来のPCIでは術者が放射線源に近い位置から手術台に面し直接カテーテル操作を行うため、医師・患者さん両方の被ばくのリスクが避けられません。そうした問題を受け、近年、PCIを遠隔操作で行うことが可能となる支援ロボットが国内で導入され始めています。このシステムを2021年10月より導入し、ロボット支援下でのPCI(以下、ロボット補助PCI)を実施している札幌ハートセンター 理事長 兼 CMO 札幌心臓血管クリニック 院長 藤田 勉(ふじた つとむ)先生に、その特長や注意点、将来の展望についてお話を伺いました。

*PCIの詳細はこちらのページをご覧ください。

当院は、日本で初めてロボット補助PCIを導入した医療機関です。ロボット補助PCIを活用すると決めた最大の理由は、これから虚血性心疾患に限らず、さまざまな心疾患の治療に対して積極的にロボットを使った治療を取り入れていきたいという考えがあったためです。ロボットを導入することにより、日々進歩する治療技術を患者さんに届けたいと思っています。

ロボット補助PCIの特長は大きく2つ、注意点が1つ挙げられます。

第一に、ロボット補助PCIは遠隔から操作するため、術者が放射線の被ばく線量を低く抑えられるという点が挙げられます。さらに、放射線防護衣(手動でPCIを実施するときに着る防護服)を着ずに座ったまま治療を行うため、長時間の立位に伴う慢性的な整形外科の障害の予防にもつながります。

術者側のみならず、患者さん側にも同様のメリットがあります。たとえば、術中は術者がカテーテル台のそばにいないので、カテーテル台をかなり高く上げてX線を照射する管から物理的な距離を取ることで被ばく線量の低減が期待できます。また、ロボット補助PCIではデバイスがしっかりと固定されるため必要以上のX線透視をせずに済み、手術時間の短縮が期待できます。手術時間が短ければ、その分被ばく線量の低減も期待できます。

先方提供
カテーテル台から離れた場所でロボット補助PCIを行う

ロボット補助PCIでは、一つひとつの手技に際して1mm単位での動作調整が可能ですので、より正確な治療が期待できます。

従来のPCIでは、X線透視下で手首の血管などから挿入したカテーテル(細い管)を介してバルーンまたはステント(網目構造の金属製の筒)を進め、狭窄(きょうさく)した血管を拡張させます。従来は一連の手技を術者が直接、手動(マニュアル)で実施していましたが、ロボット補助PCIではインターベンショナルコックピット(放射線から術者を防護するための場所)から遠隔操作で行います。

先方提供
ロボットを操作する藤田先生

基本的な手順としては、まずベッドサイドユニットと呼ばれるアームにガイドカテーテルを装着し、従来のPCIと同様に動脈穿刺(どうみゃくせんし)および血管内へのガイドカテーテルの挿入を手動で行います。次に、ロボットアームに装着したカセットにガイドワイヤーとステントもしくはバルーンを取り付けます。セットが完了したら、コックピット内の制御コンソールから術者がロボットを操作して治療を行います。一連の操作が自動化されており、ボタン操作で動作調整が可能なため、トレーニングを詰んだ医師が操作すれば従来のPCIに比べて均一な手技の実践が期待できることもメリットといえるでしょう。

CTO症例(慢性完全閉塞(まんせいかんぜんへいそく):3か月以上前に冠動脈完全閉塞が起こった症例)や病変が石灰化している症例などの複雑な症例にはロボット補助PCIの適応が難しいといえます。これは、CTO症例や石灰化病変の治療に用いるデバイスが現状のロボットには使用できず、ガイドワイヤーの操作が制限されるためです。

以前に比べると虚血性心疾患に対するカテーテル治療の在り方は進歩してきているものの、現在のロボット補助PCIはまだまだ発展途上段階であり、さらなる技術開発が求められてくるでしょう。将来的にAI(人工知能)や画像診断機能などを搭載することができれば、たとえば血管撮影したX線画像にガイドワイヤーが自動追従して進んでいくような技術も可能になるかもしれません。そのような治療が実現した際、ロボット補助PCIが国内でどのような位置づけになっているのかは未知数です。だからこそ、当院は今から将来の治療技術の可能性を得るために、ロボット補助PCIを導入したのです。

従来のPCIは術者が手動で行うため、術者に一定の技量と経験が求められるだけでなく、どうしてもmm単位での位置ずれが起こってしまうリスクが生じていました。ロボット補助PCIを用いることで、デバイス位置の固定や1mm単位での操作が可能となり、より正確な治療が期待できます。ロボット補助PCIでの治療を希望する方は、当院までご相談ください。

これから先、ロボットやテクノロジーを活用した新しい治療法が続々と生まれてくるでしょう。ですから若手の先生方にはぜひ、将来の医療を見据えて、今からロボット補助PCIの技術を学んでいただきたいと考えています。

また、ロボット補助PCIは妊娠中の女性医師が胎児被ばくのリスクを抑えながら行える治療技術の1つであり、若手の女性医師が活躍できる分野として期待されています。ですから、将来子どもを持つことを希望している女性医師には特に興味を持っていただきたいと思います。

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