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狭心症とは? 胸の痛みや苦しさに注意を――症状・検査・治療について

狭心症とは? 胸の痛みや苦しさに注意を――症状・検査・治療について
武藤 光範 先生

菊名記念病院 循環器内科 部長

武藤 光範 先生

目次
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胸の痛みや息苦しさなどは、狭心症の可能性が考えられる症状です。狭心症が悪化すると、心筋梗塞(しんきんこうそく)に至り突然死することもあるため、早期発見と早期治療が非常に大切です。

今回は、狭心症の症状や検査、治療方法、狭心症になりやすい方の特徴などについて、菊名記念病院 循環器内科部長 武藤 光範(むとう みつのり)先生にお話を伺いました。

狭心症とは、心臓の筋肉への血液供給が不足し、胸の痛みや息苦しさなどの症状を引き起こす状態のことです。冠動脈の動脈硬化*によるものと、冠動脈のけいれんによるものが主に挙げられます。

冠動脈は、心臓の筋肉に酸素や栄養を送る大切な血管です。その冠動脈の動脈硬化が進行すると、冠動脈が狭くなり血流が滞る結果として心臓の筋肉が酸素や栄養の不足した状態となり、胸の痛みなどの症状が生じます。

一方、冠動脈のけいれんによる狭心症は冠攣縮性狭心症(かんれんしゅくせいきょうしんしょう)といいます。冠攣縮性狭心症は、冠動脈が一時的にけいれんして狭くなり、血流が滞ることにより症状が引き起こされます。明け方の安静時に胸の痛みや息苦しさを認めるのが典型的な症状で、急な寒さが誘因になるといわれています。

動脈硬化:血管の弾力性が失われるとともに、血管内にプラークと呼ばれる脂質の蓄積や血栓が付着することで血管が詰まりやすくなる。

狭心症は、簡単にいえば冠動脈が詰まりかけている状態です。進行すると“不安定狭心症”、さらには“心筋梗塞”に移行することがあります。

不安定狭心症とは?

不安定狭心症は、狭心症の症状が悪化してきている状態を指します。具体的には、以前と比べて症状が強くなったり、症状の持続時間が長くなったり、症状が出現する頻度が高くなったりする状態です。そして、さらに悪化すると心筋梗塞に至ることがあります。

心筋梗塞とは?

心筋梗塞は、冠動脈が完全に詰まり血液が心臓の筋肉にまったく流れなくなり、心臓の筋肉が壊死(えし)する状態です。心筋梗塞は何の前兆もなく突然発症することが多い病気です。冠動脈が動脈硬化により徐々に狭くなり最終的に完全に詰まるケースよりも、動脈硬化である程度まで狭くなった段階からある日突然血栓が血管を塞ぎ、冠動脈が完全に詰まるケースのほうが多いとされています。このため、一見健康そうに見えた人が突然死することも珍しくないため、狭心症の状態で早期に発見し治療することが大事です。

狭心症の原因となる動脈硬化が進む要素はいくつかありますが、糖尿病の方、高血圧症の方、コレステロールの数値が高い方(脂質異常症)、尿酸値が高い方、喫煙者は血管に負担がかかりやすく、動脈硬化が進みやすいとされています。

また、女性よりも男性、若い方よりも高齢の方のほうが動脈硬化は進みやすいです。そのため、40歳代になると狭心症を発症する方が増え始め、50歳代以降はさらに増加傾向がみられます。

なお、家族に狭心症に罹患した方がいる場合、狭心症そのものが直接遺伝するわけではありませんが、動脈硬化のもとになる病気が遺伝したり、生活習慣が似ていたりすることで、その結果として狭心症に罹患しやすいとも考えられます。たとえば、糖尿病は遺伝するといわれていますし、高血圧症や脂質異常症は食生活が関わっています。

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提供:PIXTA

冠攣縮性狭心症になりやすい年齢や性別といったものは特別ありません。しかし、喫煙が冠動脈のけいれんを誘発するため、喫煙者に多いです。また、ストレスによっても生じるといわれており、どんな方でも起こり得ると考えられます。

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冠攣縮性狭心症動脈硬化による狭心症も、基本的には胸の痛みや圧迫感、息苦しさを感じることが多いです。背中や肩(特に左肩)、みぞおち、顎、腕などの痛み、顎や腕のしびれといった症状が出ることもあります。

なお、冠攣縮性狭心症は明け方の安静にしているときに症状が出現することが典型的で、動脈硬化による狭心症は階段や坂道をのぼったときなど、動いたときに症状が現れ、休むと楽になることが典型的です。

また、狭心症の症状が典型的なものでなかったり、中には症状があまり出なかったりする方もいます。なんとなく胸に不快感があるだけの場合もあれば、完全に無症状という場合もあります。特に、高齢の方や糖尿病の患者さんは症状が出づらいといわれています。

診察では、まず問診で症状を聞き取り、疑う病気を絞ったうえで検査に進みます。たとえば、動いているときに胸の痛みや息苦しさ、肩のしびれなどを感じる場合は、狭心症だけでなく心不全などほかの病気も疑うことになるので、可能性が考えられる病気に合わせて検査を行います。

狭心症の検査で代表的なものは心電図検査です。しかし、症状がないときに施行した心電図検査では異常を示さないことが多く、このため心電図検査だけではなくX線検査や血液検査、心臓の超音波検査なども必要です。

狭心症であっても、心電図検査や心臓超音波検査、血液検査などで異常が見られないケースは多く、場合により冠動脈のCT検査を実施することがあります。冠動脈のCT検査では、静脈内に造影剤を注射して冠動脈の状態を画像化することで、動脈硬化による狭心症についてより詳細に調べることができます。冠動脈のCT検査から狭心症の診断に至った場合には、心臓カテーテル検査が必要となります。

冠攣縮性狭心症の場合、症状がないときは冠動脈にも異常が現れないため、CT検査を行っても診断することができません。

そのため冠攣縮性狭心症の診断には、心臓カテーテル検査が用いられます。心臓カテーテル検査では、カテーテルという細い管を冠動脈まで挿入し、カテーテルから冠動脈に造影剤を直接注入することで、冠動脈が狭くなっているか否かを診断します。冠攣縮性狭心症の検査では、“アセチルコリン”という冠動脈のけいれんを誘発する薬剤をカテーテルから冠動脈に注入し、冠動脈のけいれんが誘発されるか否かを診断します。実施できる検査は患者さん一人ひとりの状態によって異なり、例としてアセチルコリン負荷試験の場合は気管支喘息の患者さんは対象外となります。

心臓の病気を症状から自己判断することは難しく、心臓病は突然死することが比較的多い疾患であることから、自己判断は大変危険なことでもあります。そのため、胸の痛みや苦しさといった気になる症状があれば、まずは医師にご相談ください。

また、健康診断の案内が来て初めて検査を受けるという方も多いでしょう。健康診断では心電図検査を行うことがあり、心臓の病気の発見にもつながります。検査を受けて異常を指摘されたら医療機関を受診するようにしてください。心臓の病気は、発見や治療が遅れると命に関わることもあるため、早めに受診していただくことが大切です。

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狭心症の治療の選択肢には、薬物治療、カテーテル治療、冠動脈バイパス手術などがあります。

  • 薬物治療:動脈硬化の進行を遅らせるための薬や冠動脈を広げる薬などを、患者さんの状態に合わせて使用します。
  • カテーテル治療:カテーテル検査と同様にカテーテルを冠動脈に挿入し、狭くなった部位をバルーン(風船)やステント(金属の筒)で拡張する血管内治療です。
  • 冠動脈バイパス手術:冠動脈の狭くなった部分よりも先に別の血管をつなぐことで、冠動脈の血流を改善させる外科的な手術です。

そのほか、狭心症の悪化を防ぐためには生活習慣の改善も大事です。特に、塩分の取りすぎや喫煙は心臓にとってよくありません。塩分の取りすぎは高血圧を助長したり心臓に負担をかけたりし、喫煙は動脈硬化を著しく悪化させます。そのため、塩分の制限と禁煙が必要となります。

心臓の病気は突然悪化して死に至ることもあるため、少しでも気になる症状があれば検査を受けることが大事です。検査で何も異常がなければ、不安な気持ちも晴れて安心でき、生活の質の向上にもつながります。そのため、ご自身やご家族が胸の痛みや苦しさを感じている場合は、早めに受診していただければと思います。

また、狭心症は高齢の方に多い病気です。高齢の方の中には、少し具合が悪くても受診せずに我慢してしまう方もいます。ご本人が「大丈夫」と言っていても、実は狭心症を発症していたというケースもあるため、ご家族が異変に気付いて受診を促すことも大事だと思います。たとえば、歩くスピードが以前と比べて遅くなったり、階段を上るときに何度も休むことがあったりするなどの変化にご家族が気付いたときには、「一度病院に行ってみない?」と声をかけてみていただきたいです。

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