きゅうせきずいせいきんいしゅくしょう

球脊髄性筋萎縮症

同義語
SBMA,Kennedy病,Kennedy-Alter-Sung症候群
最終更新日:
2023年11月29日
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2023/11/29
更新しました
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概要

球脊髄性筋萎縮症(SBMA:Spinal and Bulbar Muscular Atrophy)は、男性ホルモン受容体遺伝子の異常により筋力の低下などを招く病気です。

しゃべりにくい、食べ物や飲み物が飲み込みにくい、手足がやせるといった症状がみられるほか、誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)など呼吸器の感染症を起こすこともあり、難病に指定されています。日本の患者数はおよそ2,000~3,000人で、30~60歳ごろの男性に発症することが報告されています。

異常な遺伝子がテストステロンという男性ホルモンと結びついて蓄積することが、発症の一因と考えられています。そのため、基本的に球脊髄性筋萎縮症は男性のみに発症し、テストステロンの分泌が少ない女性は発症はせず保因者*となります。

テストステロンの分泌を抑える薬を投与することで病気の進行を抑える効果が期待できますが、根本的な治療法は確立されていません(2023年11月現在)。

*保因者:発症の原因となる遺伝子の異常があるものの、病気の症状が出ない人。

原因

球脊髄性筋萎縮症は、男性ホルモン(アンドロゲン)を受け取る“アンドロゲン受容体”の遺伝子(AR遺伝子)異常によって発症すると考えられています。

AR遺伝子にはCAGという3塩基が繰り返し配列されています。通常の繰り返し回数は36以下ですが、球脊髄性筋萎縮症の場合は正常より多く38以上に増えていることが分かっています。異常なアンドロゲン受容体は別の男性ホルモン(テストステロン)と結びつき、脊髄(せきずい)や脳の一部にある神経細胞の核内に蓄積することで、神経細胞が正常にはたらかなくなると考えられています。

進行すると神経細胞は死滅して神経細胞が障害されるため、筋肉がやせて筋力が低下します。

症状

球脊髄性筋萎縮症は顔、腕、足などの筋力が衰えるため、手足に力が入りづらい、しゃべりにくい、食べ物や飲み物を飲み込みづらいといった症状が現れます。進行すると呼吸筋の筋力低下や球麻痺**を生じ、誤嚥性肺炎を発症したり呼吸機能が低下したりすることがあります。

また、筋力低下を発症する10年以上前から、前駆症状としてこむら返りや手の震えなどの症状が現れるケースが多いといわれています。

そのほか、男性ホルモンの分泌が低下するため、男性の乳房が膨らむ、精巣の萎縮(いしゅく)や不妊などにつながることもあるほか、糖尿病や心血管障害のリスクとなる“耐糖能異常”や、動脈硬化のリスクになりうる“脂質異常症”を合併するケースもみられます。

**球麻痺:脳の延髄にある脳神経が障害されて舌や咽頭などの運動機能が低下した状態。

検査・診断

球脊髄性筋萎縮症が疑われる場合は、針筋電図検査や血液検査、遺伝子検査などを行います。

針筋電図は、筋肉に針を刺した状態で患者に力を入れたり抜いたりしてもらうことで筋肉の電気活動を記録する検査です。運動神経の異常によって筋肉の萎縮や筋力低下が起こっていることを確認するために行います。

球脊髄性筋萎縮症の患者は、骨格筋などの障害の有無が分かる血清クレアチンキナーゼ(CK)や肝臓の機能を示すAST、ALTが上昇するケースが多いため、血液検査を行ってそれらの値を確認します。また診断を確定させるため、血液を採取して、AR遺伝子のCAG繰り返し回数を調べる遺伝子検査を行います。

治療

男性ホルモンのテストステロンの分泌を抑える薬を12週に1度皮下注射で投与することで、症状の進行を抑える効果が期待できます。しかし2023年11月現在、球脊髄性筋萎縮症を根本的に治す治療法は確立されていません。

運動機能の衰えを緩和させるために、適度な運動を心がけることも大切です。リハビリテーションをサポートする医療機器を使って歩行運動を行い、歩行機能の改善や筋力維持を図ることもあります。生活面で支障が生じた際には、歩行補助具や車いすなどを使用して日常生活をサポートします。

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