院長インタビュー

「地域密着・地域完結」を掲げる伊勢原協同病院の取り組み

「地域密着・地域完結」を掲げる伊勢原協同病院の取り組み
井上 元保 先生

井上 元保 先生

この記事の最終更新は2017年05月19日です。

伊勢原協同病院は1968年(昭和43年)に伊勢原町立国保病院の移管を受け、JA神奈川県厚生連伊勢原協同病院として開院しました。2018年で開院50年の節目の年を迎える伊勢原協同病院ですが、2014年(平成26年)8月に新病院として、伊勢原市役所などの市の施設が隣接する場所に移転新設されました。

伊勢原協同病院では地域に根差し、信頼され、選ばれる病院であるために様々な取り組みを行っています。伊勢原協同病院院長の井上元保先生にお話を伺いました。

伊勢原協同病院は神奈川県伊勢原市唯一の二次救急医療機関(入院治療を必要とする重症患者さんを受け入れる医療機関)として地域医療を支えています。

当院の近隣には三次救急医療(二次救急医療では出来ない高度な医療)を担う大学病院もあり、必要な場合にはすぐに大学病院へ搬送できるよう連携をとっています。また伊勢原市には診療所の数も多く、およそ10万人の伊勢原市の人口に対して非常に充実した医療を提供できる地域です。

また伊勢原市のみならず、秦野市・平塚市・厚木市からの来院も多くあります。

当院には整形外科の常勤医師が2017年現在、10名在籍しています。診療科内のチームワークがよく、ほぼ全身にわたる整形外科疾患の治療を行うことができます。

なかでも当院は手術に力を入れていて、2016年の整形外科の手術件数は1,200件と、開院以来最も多い件数となりました。特に人工関節置換術(自分の膝または股関節の代わりに人工の関節を入れる手術)の伸びが大きく、高齢の方を中心に患者さんが増えています。

新生児

当院の産婦人科は24時間の当直体制で緊急時の対応にあたっています。また小児科にも木曜日以外は24時間体制(2017年4月現在)で当直の医師がおり、産婦人科と小児科が連携して患者さんを受け入れます。この連携があるため、万が一新生児に異常がみられた場合でも、小児科をはじめとしたその他の診療科が早急に対応できる体制が整っています。

2014年に新病院となったため、院内施設がきれいな点も当院の特徴です。産婦人科入院病棟の食事は栄養士の管理のもと、産後に適した食事を提供しており、出産後にはお祝膳をご用意しています。このように、一生の記憶に残る出産を安心・快適に過ごしていただけるような工夫を施していることも特徴です。

2014年の新病院開院の際に、回復期リハビリテーション病棟45床、緩和ケア病棟14床を新設しました。

回復期リハビリテーション病棟では、脳出血大腿骨骨折などの患者さんを対象に治療を行っています。

当院にはリハビリにあたる職員が2017年現在で約50名おり、入院患者さんを対象に、土曜・日曜・祝日も休まずリハビリを行っています。患者さんの社会・家庭への早期復帰を実現するために、休まずリハビリを行うことは非常に重要です。患者さんとともに、毎日職員一丸となってリハビリテーションにあたっています。

新病院建設の際に、神奈川県西部地域に緩和ケア病棟が不足していたことから、緩和ケア病棟を14床新設いたしました。

緩和ケア病棟では、緩和ケア内科医が中心となり、さまざまな職種が協働し、がんなどの大きな苦痛を伴う病気を抱える方のケアを行っています。

当院の緩和ケア病棟は、院内の敷地に独立して建てられており、全室個室(うち7床は差額室料なし)です。また、全ての部屋がケヤキやカエデなどの季節の木々を植えた「やすらぎの森」という中庭スペースに面していて、外から見えないように設置されており、患者さんやご家族に快適に過ごしていただけるような工夫をしています。

地産地消の取り組みとして、栄養室からの提案で、地元の農家の方から毎日配送される新鮮な野菜を病院内で活用しています。入院患者さんに提供する食事はもちろんのこと、職員食堂のメニューにも取り入れており、さらに地域住民の方を対象に地元の野菜を使用した料理教室も年に数回行っています。

また、農家の方から年に何度か野菜の寄付もしていただくなど、地元の方々の協力によって毎日美味しい食事を提供しています。

野菜

当院では毎年秋に文化祭を開催しています。文化祭では主に子どもたちを対象とした内視鏡の体験、身体測定、市民公開講座などが行われます。

市民公開講座は文化祭以外にも年5回、院内もしくは隣接する市民文化会館をお借りして開催し、毎回たくさんの方々にお越しいただいています。

またJA神奈川の100歳プロジェクトという取り組みの中で、医師、看護師、リハビリ技師などの職員が神奈川県全域で講演を行うなど、当院のことを多くの方に知っていただいて来院していただくために、積極的に院外に出て活動していくことを心掛けています。

私は救急患者さんを一人でも多く受け入れるには、医師一人ひとりの意識の持ち方が大切だと考えています。

そのために医師には当直日誌を細かく記載してもらい、「お断り(患者さんの救急受け入れを断ること)」が生じた場合は、私自らが担当医師に患者さんをお断りした理由を聞くようにしています。

院長である私がこまめに対応し病院の方針を示すことで、だんだんと「断らずに診療することが当たり前」という意識が根付いてきました。実際、お断りの件数は減少してきていて、お断りがゼロの週も増えています。

私は院長であると同時に、当院の患者サポートセンター長も努めています。

患者サポートセンターではソーシャルワーカー(医療費の支払いや社会福祉制度など生活面に関する相談に応じる担当)・アドボカシー担当看護師(病気の相談や病院への提言・苦情に応じる担当)・退院調整担当・臨床心理士が患者さんからのさまざまな相談やご意見に応じています。

患者さんの声が直接集まる部署を私の直轄にすることで、その日のうちに情報が入るようになっています。このようにして患者さんの声を直接吸い上げ、問題がある場合には迅速に解決する努力をしています。

患者さんはもちろん、働く医師にも、当院に来て良かったと思っていただけるような学びのある病院にしたいと考えています。

そのため、当院の医師では技術的に執刀できない手術がある場合でも、外部から積極的に先生をお呼びして、当院の医師立会いのもとで難易度の高い手術を実施します。当院の医師にとっては、こうした手術に立ち会うことで高い技術を習得することができますし、患者さんも遠方に行かずに難しい手術を受けることができるので、双方にメリットがあると考えます。

実際に「伊勢原協同病院に来て良かった」といってくれる医師も多くいます。

井上元保先生

当院ではスローガンとして「地域密着・地域完結」を掲げています。当院は大学病院と診療所の中間的な立場として、伊勢原市内で急性期医療から在宅までをつなげる役割を果たしていくべきだと考えています。

近隣病院との連携を強化するために、地域医療連携には特に力を入れて取り組んでおり、連携室の職員が積極的に医療機関を訪問し、私も時間が許す限り同行するようにしています。

現在の課題は当院と同じ団体であるJA神奈川県厚生連の保健福祉センターとの連携を強化することです。連携によって、同センターが運営する介護老人保健施設や訪問看護ステーションに、急性期の治療が終了した患者さんをスムーズにご紹介するという流れをしっかりと確立したいと考えています。

これからも皆さんに選んでいただけるような病院であるよう、地域から与えられた役割をしっかりと果たしていきます。

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