糖尿病黄斑浮腫について
糖尿病黄斑浮腫とは?
発症の仕組みと自覚症状

「糖尿病にかかると目が悪くなる」「糖尿病が悪化すると失明する可能性がある」と聞いたことはありませんか。これは、糖尿病の3大合併症*の1つに“糖尿病網膜症(とうにょうびょうもうまくしょう)”が含まれているからです。糖尿病で血糖コントロールがうまくいかず糖尿病網膜症にかかると、その1つの型として“糖尿病黄斑浮腫(とうにょうびょうおうはんふしゅ)”を生じ、さらに視力の低下が進むことも少なくありません。糖尿病黄斑浮腫とは、どのような病気なのでしょうか。発症の仕組みや症状など、病気の特徴をご紹介します。

*糖尿病の3大合併症のほかの2つは、腎症と神経障害である。

糖尿病黄斑浮腫とは?

糖尿病黄斑浮腫とは、網膜の中心にある“黄斑”という部分にむくみが生じる、糖尿病網膜症*の1つの型です。糖尿病黄斑浮腫は、糖尿病網膜症の進行度合いにかかわらず発症するといわれており、糖尿病網膜症が重症の方だけでなく軽症の方にも生じる可能性があります。病気の合併・進行により視力の低下や法的失明(視力がおそよ0.1以下の状態)に至ることがある点が特徴です。

*糖尿病網膜症:糖尿病による高血糖で、網膜に広がっている細かい血管(毛細血管)が傷ついたり詰まったりして起こる病気。新生血管が生えてくる増殖糖尿病網膜症になると、失明の危険性が高くなる。

糖尿病黄斑浮腫の特徴――放置すると重大な視力障害につながる可能性も
横須賀共済病院 眼科部長
竹内 聡 先生

糖尿病黄斑浮腫が起こる仕組み

糖尿病黄斑浮腫は、網膜の血管にこぶ(血管瘤:けっかんりゅう)が生じたり、網膜の毛細血管から血液の成分が漏れ出て、網膜内に漿液成分がたまったりすることによって起こります。
網膜とは、一般的に“眼底”と呼ばれる眼球の奥の方の内側に広がる薄い膜のことです。その中にある視細胞が目に届いた光の情報を集めて電気信号へと変換し、脳へ送る役割を担っています。目をカメラに例えると“フィルム”にあたる部分が網膜です。その網膜の中心にある黄斑には、細かな物を見分ける細胞(錐体細胞)が密集していて、物の形状や大きさ、色など、目から入ってくる情報の多くを識別する役割があります。そのため黄斑は、視力において特に重要な部位であるといわれています。
黄斑が血液から染み出た成分によってむくんでしまうとフィルムがふやけた状態となり、「物がゆがんで見える」「細かい文字が読みにくい」など、視力障害を引き起こすのです。

糖尿病黄斑浮腫発症の例

糖尿病黄斑浮腫の症状

糖尿病黄斑浮腫の主な症状として、目のかすみ(比較暗点、変視症(へんししょう)、コントラスト感度の低下などを含む)が挙げられます。症状は視野の真ん中を中心に現れることが特徴で、治療せずに放置していると、視力低下が戻らなくなり日常生活に大きな支障を与える可能性があります。

比較暗点

部分的に見えづらい場所があることを指します。

変視症

物がゆがんで見えたり、つぶれて見えたりするようになります。たとえば、「真っ直ぐな線の途中がゆがんで見える」「文字がつぶれて見える」「顔の一部がひしゃげて見える」などの症状が挙げられます。

コントラスト感度の低下

色の濃淡や、明るさ・暗さが曖昧な物を見ようとすると、見えにくいという印象を受けるようになります。

糖尿病黄斑浮腫とはどのような病気? 治療の機会を逃さず健康な視力を維持するために
昭和大学江東豊洲病院 眼科 准教授・診療課長補佐
小菅 正太郎 先生

アムスラーチャートで見え方の変化を確認してみましょう

症状が現れていても、片目だけが先に進行している場合や、日々少しずつ変化している場合などは自身で気付くことが難しいかもしれません。そのような場合にも、簡単に症状が現れているか確認する方法があります。それが、以下のような“アムスラーチャート”という格子状の表を用いたセルフチェックです。

セルフチェックの方法

片目を閉じる、あるいは片目を手で隠した状態で、約30cm離れた位置から以下の表の中央にある黒い点を見てください。普段めがねやコンタクトレンズ、老眼鏡を使用している方は、着用した状態で行うようにしましょう。

上記のチェックの結果、線や点がゆがんで見える、かすんでよく見えないなど、見え方に違和感がある場合は、糖尿病黄斑浮腫の可能性を考え眼科を受診することが大切です。

糖尿病黄斑浮腫による見え方の例
症状チェックリスト

早期診断・治療で重症化を防ぐことが大切

網膜や黄斑で集めた情報を脳へ伝える“視細胞”は、一度傷つくと元に戻すことが難しいといわれており、低下した視力や物の見え方は、治療が遅くなればなるほど改善しなくなっていきます。糖尿病網膜症と糖尿病黄斑浮腫による視力の低下を防ぐためには、糖尿病の治療をしっかり行うとともに、病気の早期発見・早期治療をすることが重要であるといえます。
糖尿病網膜症は初期症状がほとんどなく、徐々に物の見え方が悪くなっていくため、発見が遅れる可能性があります。糖尿病網膜症になりやすいといわれているのは、過去や現在の血糖のコントロールがうまくいっていない方、糖尿病にかかっている期間が長い方、血圧が高い方などです。糖尿病黄斑浮腫を防ぐためにも、糖尿病の治療を継続し、視力症状の有無にかかわらず定期的に眼科を受診しておくとよいでしょう。
また、現在すでに物の見え方に違和感のある方は、できるだけ早く一度眼科を受診することをおすすめします。

糖尿病黄斑浮腫による視力低下を防ぐために――治療を受けるうえで大切なこと
信州大学医学部附属病院 信州大学医学部眼科学教室 准教授
平野 隆雄 先生
この症状は糖尿病黄斑浮腫によるものかも?と思ったら
現時点の見え方をチェックすることで、糖尿病黄斑浮腫の可能性を調べてみましょう。
すでに診断を受けている方は、最近気になる症状はないかチェックしてみませんか。
また、状態の改善を目指して、医師に相談したいことはないか自身の治療への希望を改めて確認してみましょう。
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