糖尿病の合併症である“糖尿病網膜症(とうにょうびょうもうまくしょう)”にかかると、物の見え方が悪くなったり視力が低下したりする恐れがあります。しかし、糖尿病の治療をしっかり受けながら糖尿病網膜症を早期に見つけること、継続的な治療を行うことで、視力の低下を抑えられる可能性が高まります。糖尿病網膜症の中には、増殖糖尿病網膜症に進行するものと、糖尿病黄斑浮腫に進行するものがあります。ここでは、糖尿病黄斑浮腫の検査・診断方法や具体的な治療法をご紹介します。
糖尿病黄斑浮腫の検査・診断
糖尿病黄斑浮腫の検査・診断は、眼科で行われることが一般的です。具体的な検査内容は、問診のほか、視力検査、眼底検査、光干渉断層計(Optical Coherence Tomography:OCT)検査などが挙げられ、これらの結果を踏まえて診断を行います。以下は、主な検査方法です。
糖尿病黄斑浮腫の主な検査内容
・問診……現在の症状やこれまでにかかった病気、生活習慣などについて確認します。
・視力検査……片目をふさいで片方ずつの視力を測定し、現在の視力の程度を確認します。
・眼底検査……倒像鏡やスリットランプ顕微鏡を用いて、網膜に広がっている血管の状態を観察します。診察する際に眩しさを感じますが、痛みはありません。黄斑の周辺で、血液成分が漏れ出ている状態が確認できることがあります。また、眼底カメラで眼底写真の撮影を行い記録します。
・光干渉断層計(OCT)検査……網膜の断面を撮影し、黄斑部分の状態を確認する検査です。黄斑周辺に膨らみ(むくみ)があれば、糖尿病黄斑浮腫の疑いが強くなります。検査に痛みや眩しさなどを感じることはなく、短時間で完了する検査です。
糖尿病黄斑浮腫の主な治療法
糖尿病黄斑浮腫の治療を受ける際は、原因となっている糖尿病そのものへの治療を継続することが大切です。そのうえで、目に対する治療として薬物療法、レーザー光凝固法、硝子体(しょうしたい)手術などが検討されます。
いずれの治療法も治療後すぐに視力が回復するということはありませんが、早いケースでは2週間ほどで、物の見え方や視力の回復が期待できます。ただし、病気の発見・治療開始が遅れると、治療を受けても回復しにくくなるので注意が必要です。以下に主な治療法をご紹介します。
薬物療法
薬物療法としては、目に薬剤を注射する治療が一般的です。使用される主な治療薬として、抗VEGF薬やステロイド薬が挙げられます。
抗VEGF薬は、血管から血液や血液成分が漏れてしまうことを抑える治療薬です。治療薬の種類や患者さんの病状によって異なりますが、一般的に年数回の注射が必要です。
ステロイド薬は、炎症やむくみを抑える効果が期待できる治療薬です。しかし、眼内に注入することで眼圧が上がってしまうことがあります。
レーザー光凝固法
黄斑のむくみの原因となっている異常な血管にレーザーを照射し、焼き固める治療法です。むくみが黄斑中央のくぼみ部分から外れている場合にのみ行うことができます。
硝子体手術
網膜に隣接している“硝子体”と呼ばれる部分の一部を切除することによって、網膜の引きつれを取り除いたり、酸素の供給量を高めたりする治療法です。また、血液が漏れ出ている部分など、黄斑のむくみの原因となる部分も除去します。
局所麻酔で手術することが一般的です。重症度によっては、一度改善しても再発して再び薬物療法やレーザー治療、手術が必要になる例もあります。
治療選択のポイント
糖尿病黄斑浮腫の治療法は、患者さんそれぞれの体や目の状態、黄斑のむくみの原因、視力の程度、本人の希望などを総合的にみて検討されます。また、薬物療法など複数回の治療が必要となる場合は、ほかの治療法と組み合わせることで治療回数の削減を目指すこともあります。たとえば、抗VEGF薬は、年に数回の注射が一般的ですが、レーザー光凝固法と組み合わせることによって回数を減らせる可能性があります。