糖尿病黄斑浮腫(とうにょうびょうおうはんふしゅ)では、糖尿病の治療と併せて目に対する治療を行うことで、症状の改善や安定・維持が期待できます。ただし病気自体が治るわけではないため、症状が落ち着いた後も継続して定期診察を受け、経過観察を行うことが大切です。糖尿病黄斑浮腫の治療中断によるリスクや、治療を継続するために知っておきたいことをご紹介します。
症状が改善したら治療は終了?
糖尿病黄斑浮腫では、糖尿病の治療に加えて、目に対する薬物療法、レーザー光凝固法、手術治療などを行うことで、症状の改善や視力の維持が期待できます。しかし、治療を受けても病気自体が治るわけではないため、症状が改善した後も、1〜数か月おきの定期的な経過観察と必要に応じた治療を受け続ける必要があります。たとえば薬物療法を選択した場合、年に数回、目に注射を打つことが一般的です。なお、治療の頻度は症状の改善に伴い減っていくことが予想されます。
また前提として、糖尿病黄斑浮腫は糖尿病によって起こる合併症"糖尿病網膜症(とうにょうびょうもうまくしょう)"の1つの型です。たとえ目の症状が改善したとしても、糖尿病治療の基本である血糖のコントロールを継続することも大切でしょう。
治療を中断することによるリスクは?
糖尿病黄斑浮腫は、症状が改善したからといって自己判断で治療を中断してしまうと、残っていた病変が悪化し再び症状が現れたり、気付かぬうちに病気が進行し、より重い症状が現れたりする恐れがあります。治療の間隔や期間は患者さんごとに異なるため、医師の指示に従って継続的に治療を受けるようにしましょう。
費用を理由にした治療中断を回避する手段
糖尿病黄斑浮腫の治療を受けるにあたって、患者さんが気にする点に“治療費用”があります。糖尿病や糖尿病黄斑浮腫の治療にかかる費用は、患者さんの病状や治療法によって大きく異なるため、一概に述べることはできません。しかし、中には通院や治療にかかる費用を減らすため、自己判断で受診を中断してしまう方もいらっしゃいます。
費用がかかることを理由に必要な治療を受けないでいると、病気が悪化し、視力の著しい低下や失明に至る恐れもあります。そうなれば、当初の予定よりもさらに高額な治療費がかかり、日常生活にも大きな負担がかかる可能性もあるでしょう。体の機能を維持し、治療費を最小限に抑えるためには、継続的に治療を受けることが大切です。
治療にかかる費用に困ったら制度の利用も検討を
糖尿病や糖尿病黄斑浮腫の治療費の負担が大きく、治療を受け続けることが不安な場合には、条件に応じて医療費助成制度の利用を検討してみるとよいでしょう。以下に、主な医療費の助成制度をご紹介します。
高額療養費制度
医療機関や薬局の窓口で支払った費用が、規定された1か月の上限額を超えた場合に、その超えた金額が国から支給される制度です。1か月の上限額は年齢や年収などによって異なります。また、入院中の食費や差額ベッド代など、費用に含まれないものもあるため、注意しましょう。
申請する際は、患者さんの加入している公的医療保険に支給申請書を提出することが一般的です。
付加給付制度
健康保険組合がそれぞれ独自に行っている給付制度です。支給の条件や限度額などは組合や加入している公的医療保険の種類によって異なり、制度自体が設けられていない場合もあります。
詳しく知りたい場合は、自身の加入している健康保険組合・共済組合などに問い合わせるようにしましょう。
医療費控除
患者さん本人と生計を共にする親族(配偶者や子どもなど)の1年間に支払った医療費(一部の交通費や薬の費用を含む)のうち、10万円を超えた部分の所得税・住民税が控除される制度です。なお、年間の所得が200万円未満の世帯は、所得合計額の5%以上医療費を支払っていれば、医療費控除の対象となります。
控除を受ける場合は、確定申告を行ったうえ、領収書を5年間自宅で保存する必要があります。
治療を継続することで視力低下のリスクを防いで
糖尿病や糖尿病黄斑浮腫は完治という概念がなく、長期間にわたって治療を継続する必要がある病気です。治療によって一時的に症状が改善したとしても、血糖コントロールが悪くなることにより再発したり、無症状のうちに病気が進行していたりすることも少なくありません。そのため自己判断で治療を中断せず、医師の指示に従って定期的に通院することが大切です。
糖尿病黄斑浮腫がみられる場合、目安としては1〜2か月に一度は医療機関を受診することが推奨されます。焦らず、気長に治療を受ける姿勢を大切にしましょう。