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糖尿病黄斑浮腫でも運転免許を維持できるように――仕事と両立しやすい診療を

糖尿病黄斑浮腫でも運転免許を維持できるように――仕事と両立しやすい診療を
加藤 祐司 先生

医療法人社団 彩光会 理事長、医療法人社団 彩光会 札幌かとう眼科 院長

加藤 祐司 先生

目次
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提供:ノバルティス ファーマ株式会社

私たちが日常生活を送るうえで目は大切な役割を果たしています。しかし、糖尿病から糖尿病黄斑浮腫を発症すると、大切な視力を失ってしまう可能性があります。忙しい働き盛りの方が仕事と治療を両立できるように、さまざまな工夫を凝らして診療を行っている札幌かとう眼科 院長の加藤 祐司(かとう ゆうじ)先生に、糖尿病黄斑浮腫の治療や患者さんの立場に立った診療の工夫などについて伺いました。

糖尿病の患者さんでは、血糖値が高い状態が続くと血管にダメージが生じて、合併症が起こることがあります。その1つが糖尿病網膜症です。糖尿病網膜症とは、目の網膜にある毛細血管の壁がもろくなり障害が起こる病気です。糖尿病患者さんの約1〜2割に生じ、糖尿病の発症後10〜15年ほどで発症することが多いようです。その中でも、網膜の中心に存在する “黄斑(おうはん)”にむくみが生じるのが糖尿病黄斑浮腫です。発症すると視力が低下したり目がかすんだりするようになります。

糖尿病網膜症や糖尿病黄斑浮腫を治療せずに放置すると、失明の危険があります。かつて糖尿病網膜症は中途失明原因の第1位でした。近年、治療法の発展により失明するケースは減少し2019年には中途失明原因の第3位となりましたが、注意が必要な病気であることは変わっていません。

糖尿病黄斑浮腫は、働き盛り世代の方に起こることが多いため社会問題にもなっています。特に、血糖コントロールのよくない方、高血圧脂質異常症などほかの病気もある方は発症しやすい印象があります。

当院では、なるべく少ない受診回数で、的確な治療を提供できるように心がけています。検査の結果、糖尿病黄斑浮腫の治療が必要と判断した場合、特に抗VEGF薬の注射が適応であれば、患者さんの同意を得たうえで検査当日に治療を開始しています。もし自分が患者さんの立場であったら、なるべく病院に来る回数は少なくして、1回の診療でできるだけ多くの検査や治療を済ませてほしいと思うからです。

札幌という土地柄、当院に通院されている患者さんの多くは日常的に自動車の運転をされています。そのため、“運転免許を維持できる視力を保つ”ことは、患者さんにとって大きな治療のモチベーションになります。受診するための時間を確保すること、抗VEGF薬は高額なため経済的な負担も大変かと思いますが、折に触れて「治療を始めてから最初の3~4か月が勝負だよ」とお話ししています。通院される際、運転に不安を感じる患者さんのために、病院の専用車で送迎するサービスも実施しています。

また、糖尿病の治療そのものも重要なため、内科の先生とも連携しつつ治療にあたっています。

PIXTA
写真:PIXTA

糖尿病黄斑浮腫の治療には薬物治療、レーザー治療、手術があり、当院では全ての治療を院内で完結できる体制を整えています。蛍光眼底造影検査や光干渉断層計(OCT)を用いた検査を行って総合的に診断し、複数の治療を組み合わせて実施することもあります。

現在、糖尿病黄斑浮腫の治療の第一選択は薬物治療です。薬物治療として用いられる薬は、抗VEGF薬とステロイド薬の2種類があります。

抗VEGF薬は、糖尿病黄斑浮腫の原因物質であるVEGF(血管内皮増殖因子)を抑える薬で、目の中の硝子体(しょうしたい)に注射して投与します。視力の改善に役立つというエビデンスがあるため、中心窩(黄斑の中心)を含む糖尿病黄斑浮腫に対して、現在では治療の第一選択となっています1)。基本的には、まず1か月~1か月半に1回の注射を3回ほど行います。その後は視力やむくみの状態などを見極めながら、2〜3か月に1回とするなど投与の間隔をだんだんと空けていきます。初期の段階でしっかりむくみを軽減することが重要なため、少なくとも3〜5回は継続いただけるように患者さんには「一緒に頑張りましょう」とお話ししています。また、近年では複数の抗VEGF薬が承認され使用できるようになっています。それぞれの薬の特徴を考慮しながら、患者さんの状態に合わせて使い分けや切り替えを検討していきます。硝子体注射では感染に注意が必要なため、しっかりと消毒を行い抗生物質の点眼薬を使用するなどの対策を実施しています。

ステロイド薬は炎症を抑える作用があり、硝子体や眼球の外側のテノン嚢に注射して投与します。副作用として白内障緑内障が起こるリスクがあるため注意しながら使用します。

1) 日本糖尿病眼学会診療ガイドライン委員会: 糖尿病網膜症診療ガイドライン(第 1 版), 日眼会誌124: 955-981, 2020

レーザー治療は古くから行われてきた治療法で、抗VEGF薬が発売される前は第一選択でした。

蛍光眼底造影検査を行って、毛細血管に異常が起きている部位を特定できた場合に用います。異常がある部位にレーザー光を当てて焼き固める(凝固させる)ことで、血液成分の漏れ出しを防いでむくみを軽減し、糖尿病黄斑浮腫を改善します。抗VEGF薬の治療と併用することもあります。

近年は抗VEGF薬の登場により、適応となる患者さんはだいぶ少なくなりましたが、今も硝子体手術は治療選択肢の1つです。硝子体内の出血や症状の原因となっている物質を取り除いたり、網膜が引っ張られている箇所を改善したりするために行うことがあります。

当院では日帰りで硝子体手術を行っていますので、入院が難しい患者さんをほかの病院やクリニックからご紹介いただいて対応することもあります。

私が眼科医になって30年以上が経ちましたが、その間の治療法の発展は目覚ましいものがあり、糖尿病黄斑浮腫の患者さんの視力を維持・回復することが可能になってきました。糖尿病網膜症で出血したものの、注射やレーザー治療や手術によって視力が回復して、再び仕事ができるようになった患者さんにお会いできたときなどは、本当に感慨深い思いでいっぱいになります。

眼科では生死に関わる患者さんを診ることは多くありませんが、診療するのは目という大切な器官です。それによって患者さんの大切な視力と社会的な生命を守れるのは、眼科医の醍醐味かと思っています。

糖尿病黄斑浮腫は視力の維持・改善が可能になったとはいえ、放置すると失明に至ることもある病気です。適切な治療を継続することで視力を回復できた患者さんもいれば、治療を中断したために失明してしまった患者さんもいらっしゃいます。

視力を守るためには何よりも早期診断・早期治療が大切です。目がかすむ、歪んで見えるなど気になる症状がある場合には、片目ずつ視力表や格子状の物を見るなどして視界の中心が見づらくないかをセルフチェックしてみてください。また、糖尿病と診断された場合は、特に自覚症状がなくても必ず年に1回は眼科を受診して眼底検査を受けることをおすすめします。セルフチェックと眼科受診によって、視力低下や失明を防ぎ、糖尿病をうまくコントロールしながら社会生活を楽しんでいただけることを願っています。

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