すでに診断を受けた方へ
糖尿病黄斑浮腫の治療中・
治療後に心がけたいこと

糖尿病黄斑浮腫(とうにょうびょうおうはんふしゅ)は、症状が改善した後も継続して治療を受け続けることが大切です。また、糖尿病網膜症(とうにょうびょうもうまくしょう)という糖尿病の合併症の1つの型であるため、糖尿病そのものに対する治療の継続も必要です。糖尿病を悪化させず、病気の進行を防ぐためには、どのようなことに注意したらよいのでしょうか。糖尿病黄斑浮腫の治療中から治療後までの注意点、糖尿病の患者さんが常に意識しておきたいことについてご紹介します。

定期的な眼科の受診を

糖尿病黄斑浮腫は、治療を継続することによって視力の低下や病気の進行を抑えられる可能性があります。また、一度治療が終了した場合でも再度発症する可能性があるため、定期的に眼科を受診することが大切です。
患者さんの病気の状態にもよりますが、1~2か月に1回眼科を受診し、治療を受けることが一般的です。症状が落ち着いてきたら、徐々に治療の間隔を延ばすこともできるでしょう。
しかし、たとえ症状が落ち着いたとしても、病気の原因である糖尿病および糖尿病網膜症は完治することが難しい病気です。症状の有無にかかわらず、数か月に1回は眼科の受診を継続し、経過観察や必要に応じた治療を受けるようにしましょう。また、気になる症状が現れた際は、速やかに眼科を受診することも大切です。

糖尿病黄斑浮腫の患者さんとのコミュニケーションで大切なこと――治療の必要性を理解していただくために
小沢眼科内科病院 院長
田中 裕一朗 先生

自覚症状や治療の希望は医師に伝えて

糖尿病黄斑浮腫は、病状に応じて長期間の治療が必要になる可能性もあります。医師や医療従事者との付き合いも長くなることが想定されますので、気になる症状や治療に対する希望、不安なことや分からないことは、遠慮せずに相談してみましょう。
昨今、糖尿病黄斑浮腫の治療法には選択肢が増えてきています。以前はステロイド薬による薬物療法、レーザー光凝固法、硝子体手術といった選択肢しかありませんでしたが、現在は抗VEGF薬の登場により治療の選択肢が広がっています。

より良い治療を目指し探究心を持って患者さんに向き合う――糖尿病黄斑浮腫の診療にかける思い
今井眼科医院 院長
今井 大介 先生

抗VEGF薬とは?

抗VEGF薬とは、網膜の毛細血管から血液成分が漏れ出す原因となる“血管内皮増殖因子(VEGF)”のはたらきを抑えることで、血液成分の漏れと、それに伴う黄斑のむくみを抑える薬です。薬の効果は一時的であるため、症状が落ち着くまでは数か月に1度のペースで定期的に治療を受ける必要があります。現在は複数の抗VEGF薬が存在しているため、患者さんの病状に合わせて治療薬を選択できます。
治療では、局所麻酔を行ったうえで抗VEGF薬を眼内に注射します。多少の圧痛感はありますが、麻酔をして細い針で注射をするため、一般的に痛みは感じにくいと考えられます。

抗VEGF薬による治療の様子

良好な血糖コントロールの維持が大切

糖尿病黄斑浮腫は、糖尿病の合併症である糖尿病網膜症の1つの型です。そのため治療中はもちろん、治療後も血糖のコントロールを意識した生活を送ることが重要です。なお、血糖コントロールで参考にされるHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)の目標値は患者さんごとに異なります。あらかじめ医師に目標値を聞いておくとよいでしょう。以下に、血糖をコントロールするうえで欠かせない、生活上心がけるべき点をご紹介します。

日々の生活に運動を取り入れる

血糖コントロールには、継続的な運動習慣が欠かせません。ウォーキングやジョギング、水泳などの有酸素運動をはじめ、腹筋や腕立て伏せ、スクワットといった筋力トレーニングなどを日常生活に取り入れ、習慣化していきましょう。

提供:PIXTA

禁煙を心がける

喫煙は治療効果を妨げ、糖尿病網膜症や糖尿病黄斑浮腫だけでなく、さまざまな糖尿病の合併症リスクを高めます。糖尿病と診断されたら、できる限り禁煙を心がけましょう。

食生活を見直す

血糖コントロールのためには、規則正しく偏りのない食事を取ることも大切です。食べすぎを防ぐため、自身の年齢・性別・体格などに合った適切な量の食事を取りましょう。また、栄養が偏らないよう、炭水化物・たんぱく質・脂質・ビタミン・ミネラルをバランスよく取ることも大切です。中でも、野菜などの食物繊維や魚・卵・きのこに含まれるビタミンDは、血糖コントロールによい影響を及ぼすという報告もあります*。
また、糖尿病の患者さんは高血圧を生じやすいといわれています。高血圧と高血糖が重なると動脈硬化(動脈の壁が厚くなり弾力性をなくした状態)が促進され、網膜症のほか、脳梗塞(のうこうそく)や心筋梗塞など重篤化する合併症を含むさまざまな病気を発症しやすくなります。高血圧を防ぐために、原因となる味付けの濃い料理や塩分の高い加工食品を減らすよう工夫しましょう。注意すべき点は、患者さんの病状や生活環境によって大きく異なります。医師や管理栄養士などの、医療従事者に相談することをおすすめします。

近年広がる糖尿病黄斑浮腫の治療選択肢
名古屋市立大学医学部附属東部医療センター 眼科 診療科部長
野崎 実穂 先生

*Kirii K, Mizoue T, Iso H, Takahashi Y, Kato M, Inoue M, Noda M, Tsugane S; Japan Public Health Center-based Prospective Study Group. Calcium, vitamin D and dairy intake in relation to type 2 diabetes risk in a Japanese cohort. Diabetologia. 2009;52(12):2542-50.

この症状は糖尿病黄斑浮腫によるものかも?と思ったら
現時点の見え方をチェックすることで、糖尿病黄斑浮腫の可能性を調べてみましょう。
すでに診断を受けている方は、最近気になる症状はないかチェックしてみませんか。
また、状態の改善を目指して、医師に相談したいことはないか自身の治療への希望を改めて確認してみましょう。
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