子宮がん

70歳代ステージIIIC2期の子宮体がん

最終更新日
2022年07月08日

こちらの患者さんは診断時進行した子宮体がんで、リンパ節転移が多発している状態でした。骨盤内リンパ節に4か所、傍大動脈リンパ節に3か所の転移がありましたが、手術で無事に取り切ることができました。

このように多発リンパ節転移のみられる子宮体がんでは、手術治療の後に再発を予防するため、抗がん剤による化学療法を追加で行うことが一般的です。しかし、こちらの患者さんは住んでいるところが当院から離れていること、年齢的な理由などから「抗がん剤治療はしたくない」とおっしゃったため、私たちも無理にすすめることができず、追加の化学療法を行わないことになりました。

患者さんが化学療法を拒否したものの10年以上再発はなし

リンパ節転移がありながら術後の化学療法を行わなかったため、患者さんだけでなく私たちも再発について非常に心配していたのですが、こちらの患者さんの場合には術後10年経過しても再発することはありませんでした。こちらの患者さんの結果から、手術でしっかりがんを取りきることができれば、たとえステージIIIであっても再発しないこともあることを学びました。

北海道大学病院

〒060-8648 北海道札幌市北区北十四条西5丁目 GoogleMapで見る

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こちらの患者さんはもともとS状結腸がんでほかの病院を受診し、手術を受けていました。その後肝臓に複数の転移が見つかったものの、同院の内科の医師から切除不能と判断され、薬物治療を受けていたそうです。薬物治療は一時的には効果を示すものの、また悪化してしまい、トータルで3剤の治療薬を使用しましたが改善には至らず、最終的に緩和ケアをすすめられたといいます。「ほかに選択肢はないのか」と疑問に思った患者さんは、セカンドオピニオンを受けるために北海道からはるばる福岡の病院に足を運んだそうです。そこで出会った医師がたまたま私の知り合いで「北大病院なら手術してくれるはず」と紹介してくださり、当院を受診することになりました。 肝臓だけでなく肺にも転移があったが無事手術で切除 転移した肝臓の腫瘍を診てみると、腫瘍の数はやや多いものの切除可能と考えられたため、当院では手術を行うことに決定しました。しかし、手術の直前になって肝臓だけでなく肺にも1cm程度の転移があることが判明しました。そこで呼吸器外科の医師とも相談し、肝臓の手術を行った後に肺の手術も連続して行うことになりました。こちらの患者さんの場合、幸い肝臓も肺も手術でうまく腫瘍を取りきることができ、術後化学療法から1年以上が経過しますが、今のところ再発はなく、元気に生活されています。 肝臓に生じたがんの治療方針を決める際は、外科、内科、放射線治療科などさまざまな診療科の観点から考えることがとても大切です。時にはいくつかの治療を組み合わせることでより効果的な治療が行える可能性もあります。転移性肝がんも以前は腫瘍の個数によって切除の可否が決まっていましたが、今は個数に関係なく手術が行える可能性もあります。そのため、さまざまな診療科の連携体制のある病院で治療を受けることが大切です。


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    こちらの患者さんは診断時ステージIIB期の子宮頸(しきゅうけい)がんで、術前に化学療法を行った後、広汎子宮全摘出術を行いました。幸い手術は成功し一度は寛解となったものの、およそ7年後に再発してしまい、再び治療が必要になりました。2度目の手術はリスクも高く、体の負担も大きいため、当院では放射線治療を行うことになりました。 治療から5年以上の長期的なフォローアップが大切 こちらの患者さんの場合、幸い放射線治療が効果を示し、最初の診断から10年以上経過しますが、元気に生活されています。がん治療後のフォローアップ期間は5年で打ち切りになる医療機関も少なくありません。しかし子宮頸がんの場合、こちらの患者さんのように治療から5~10年以上経過してから再発する可能性もあるため、長期的にフォローアップすることが非常に大切です。当院は患者さんとのコミュニケーションを大切にしながら、長期的に通っていただき、経過を見ることを大切にしています。

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