婦人科
子宮頸がん~質・量ともに国内トップクラスの子宮頸がん手術~
倉敷成人病センターは岡山県倉敷市に位置し、生活習慣病だけでなく、がん、リウマチ、眼疾患、不妊症など幅広い疾患を取り扱う病院です。
理事長の安藤 正明先生は、婦人科がんの治療を専門とし、日本産科婦人科内視鏡学会の常務理事も努めています。内視鏡外科に携わる医師たちにとって最高の栄誉とされる「大上賞」を婦人科でただ一人受賞*。また、日本ロボット外科学会専門医制度で婦人科でただ一人国際A級ライセンスを取得しています*。今回は安藤先生に、倉敷成人病センターの子宮頸がんに対する治療や取り組みについてお聞きしました。
*2021年4月時点の情報です。
子宮頸がんの治療方法全般についてはこちら
治療・取り組み
倉敷成人病センターでは、子宮頸がんに対する腹腔鏡下手術を重点的に行っています。特に、広汎子宮頸部摘出術をロボット支援下手術や腹腔鏡下手術で行うのは難易度が高く、ほとんど行われていません。倉敷成人病センターは、国内では圧倒的に多数の経験があります(2021年1月時点)。
腹腔鏡下での広汎子宮頸部摘出術
当院では広汎子宮頸部摘出術を行う場合、主に手術支援ロボットdaVinci Xiを用いたロボット支援下手術で治療を行っています。ロボット支援下手術は従来の腹腔鏡下手術と比較しても操作性が高く、広汎子宮頸部摘出術を行う際に特に難点となる尿管や膀胱と周囲の組織との剥離や骨盤深部の縫合に長けています。
メリットと注意点
広汎子宮頸部摘出術のメリットとしては、以下のような点が挙げられます。
- 妊孕性(妊娠する力)が保てる
特に腹腔鏡下手術やロボット支援下手術による広汎子宮頸部摘出術は、開腹手術や膣式手術よりも癒着のリスクが少ないことから、術後の妊娠率が高くなることが期待されています。当院では腹腔鏡下手術・ロボット支援下手術による広汎子宮頸部摘出術を行った患者さんのうち、妊娠を試みた患者さんのおよそ58%は術後に出産が叶っています。
- 開腹手術に比べて術後の回復が速く、翌日には歩行可能となる
- 入院期間が非常に短縮し開腹の3分の1になる
- 手術による排尿トラブルを最大限防ぐことができる
一方、手術にあたっての注意点として以下のことは頭に入れておく必要があります。
- 開腹手術ほどではないものの、手術前と比べて妊娠しづらくなる
ただし、開腹で行うより腹腔鏡下手術やロボット支援下手術で治療を行ったほうが妊娠率は高いと考えられています。開腹か腹腔鏡下手術かにかかわらず、早産・流産のリスクは上がります。
適応
広汎子宮頸部摘出術が検討されるのは、術後の妊娠を強く希望される方です。ただし、術後2年間は経過観察などのために妊娠を控えていただくので、2年後でも妊娠が可能な年齢の方に限られます。
また、がんのステージや大きさによっても、行える場合と行えない場合があります。一般的な適応としてはステージIA2~B1期であること、長径2cm未満であることなどが挙げられます。
ただし当院では過去の手術成績を踏まえ、腫瘍が2cmを超えていても低リスクで2.5cm未満であれば広汎子宮頸部摘出術を検討します。たった5mmと思われるかもしれませんが、2cmの腫瘍と2.5cmの腫瘍とでは体積は倍ほど違います。この5mm分の適応を広げることによって、広汎子宮頸部摘出術ができるようになる方はかなり多くいらっしゃいますので、ぜひ一度ご相談いただきたいと思います。
費用・入院スケジュール
腹腔鏡下手術・ロボット支援下手術による広汎子宮頸部摘出術は、当院では自費診療となっています。実際にかかる費用は165万円程度(保険点数相当)と高額ですが、ほかの医療機関では受けられない治療であることからさまざまな方が受診されます。
また、入院期間は10日程が目安*で、術後は翌日から歩いたり食事をしたりすることが可能です。開腹手術後の入院期間が3週間~1か月程度であることを考えると、入院期間がかなり短くなることが特徴です。
*費用や入院期間はあくまで目安であり、個人によって異なります。
そのほかに扱う治療法
- 化学療法を中心とした薬物治療
- 放射線治療
診療体制・医師
後進の育成にも注力
当院ではレベルの高い手術を行うことを重視し、後進を育てることにも注力しています。2020年1月現在で婦人科に在籍する20名ほどの医師のうち、特にがんの手術に関しては5名の医師を育成しており、腹腔鏡操作、ロボット操作とも基本的技術は高いレベルに達しており、良性腫瘍の治療ではすでに執刀を任せています。一方、がんの手術は彼らの協力のもと、現在私が執刀しております。
新棟に放射線治療室を新設
2021年に新棟が完成し、がんの根治治療・緩和療法に広く対応可能な高精度放射線治療装置を備えた「放射線治療室」を設置しました。また、病棟は居心地のよい空間を目指しており、全室個室(室料差額なし)となっております。このように、患者さんファーストを意識した施設拡充なども随時行っています。
手術実績
受診方法
倉敷成人病センターでは、以下のように予約受付および診療を行っています。
当日予約も受け付けておりますが、スムーズに受診していただくためにできる限り事前に予約をとってお越しください。
初診の方は、予約センター(086-422-2112)へご連絡ください。
お電話で下記の順にお申し込みください。
- お名前、生年月日、現在の予約日時と変更希望日時をお伝えください。
- 変更後の予約日時・診療科・担当医師などお伝えした内容はメモするなどお忘れにならないようにお願いいたします。
- 予約時間の30分前までに、1階受付までお越しください。
紹介状がある場合
地域連携室にてご予約を承りますので、下記連絡先までお電話ください。その際、お手元に紹介状と診察券(お持ちの場合)のご用意をお願いいたします。
- 地域連携室(直通)/TEL:086-422-2116
- 受付時間:月~金曜日の8時30分~18時30分
- 休日:土、日、祝日、年末年始(12月30日~1月3日)
当院では通常の外来診療はもちろん、セカンドオピニオンやメールでの問い合わせなどにも応じています。すぐに足を運ぶことが難しい場合でも、まずはご相談ください。
セカンドオピニオンは自由診療となり、料金は時間によって変動します。なお、完全予約制で最長60分となりますので、ご了承ください。
- 30分以内:11,000円(税込)
- 30分超~60分まで:22,000円(税込)
- メール相談窓口:http://www.dr-ando.com/fmail02/fmail.cgi
診察を担当する医師について
当院では、婦人科の医師が中心となって子宮頸がんの治療にあたっています。
診察・診断の流れ
子宮頸部の細胞診で異形成(子宮頸がんの前段階)やがんの疑いがある場合、コルポスコピー(子宮頸部を拡大して観察する検査)と病理組織検査を行って診断します。
5mmを超える浸潤がんの場合、診断後に内診やCT、MRIなどでがんの広がりや転移の有無を調べ、がんの進行期(ステージ)を決定します。また、比較的早期で小さながんの場合には頸部の円錐切除を行い、ステージを決定します。
治療方針の決め方
子宮頸がんの治療方法は日本婦人科腫瘍学会の刊行する最新版の『子宮頸癌治療ガイドライン』に従って決定されることが一般的です。ただし、当院では手術治療のバリエーションがガイドラインよりも多いことから、場合によってはガイドラインとは多少異なる治療方法を提案することもあります。
また、ほかの病院では手術ができないと言われた患者さんや、ほかの病院で手術を受けた後に再発してしまった患者さんなどに対する治療も積極的に行っていますので、遠慮せずにご相談いただきたいと思います。
入院が必要になる場合
子宮頸がん治療の場合、手術治療は必ず入院となります。化学療法は初回のみ副作用などの管理のために入院していただくことが一般的ですが、その後の治療は外来診療で行います。放射線治療は基本的に外来で行いますが、治療が後半に入り副作用などが強くなった場合には入院をすすめることもあります。
患者さんのために病院として力を入れていること
当院では、主治医になった医師が中心となりチームを作って診療を行っています。必要に応じて緩和ケアやがん相談支援センターとも連携をとり、患者さんをさまざまな方面からサポートできるようにしています。
先生からのメッセージ
子宮頸がんについて私から皆さんにお伝えしたいことは2つです。
1つは、定期的に検診を受けていただきたいということです。子宮頸がんは20歳代後半から30歳代の若い女性に生じることが多く、進行して発見された場合は大手術になります。しかし比較的進行の遅いがんなので、定期的に検診を受けていれば早期に発見できる可能性も高まります。そのため、症状がないうちに少なくとも数年に一度は検診を受けることを心がけていただきたいと思います。
もう1つは、治療方法や治療を受ける医療機関をしっかり見極めてほしいということです。近年、腹腔鏡下手術やロボット支援下手術など体に負担のかかりにくい手術が広く行われていますが、いくら痛みが少なく、早く退院できたとしても、手術でがんが取り切れずがんが再発してしまうようでは本末転倒です。どの手術を受ける場合でも、受ける医療機関の治療成績をしっかり理解して治療に臨むようにしていただきたいと思います。