大腸がん~豊富な腹腔鏡下手術実績 術前化学放射線療法も導入~

最終更新日
2021年07月19日
大腸がん~豊富な腹腔鏡下手術実績 術前化学放射線療法も導入~

京都桂病院は京都府京都市西京区に位置する病院です。消化器センター・外科の副部長を務める濱洲(はます)晋哉(しんや)先生は、消化器外科の医師として大腸がんをはじめとするさまざまな病気の治療にあたっています。今回は、濱洲先生に京都桂病院の大腸がん治療の特色や取り組みについてお話を伺いました。

*大腸がんの一般的な治療方法についてはこちら

大腸がんに対する京都桂病院の取り組み

当院では、大腸がんに対する腹腔鏡下手術や直腸がんに対するロボット支援下手術、術前化学放射線療法を熱心に行っています。

大腸がんの腹腔鏡下手術

腹腔鏡下手術とは、お腹を炭酸ガスで膨らませた後、小さな穴を複数個開け、その穴から小型カメラ(腹腔鏡)や鉗子(かんし)と呼ばれる細い医療器具を入れて行う手術方法です。当院では14~15年ほど前から大腸手術に対する腹腔鏡下手術を取り入れ、がん治療はもちろん、大腸憩室穿孔(だいちょうけいしつせんこう)などさまざまな病気に対して腹腔鏡下手術を行っています。その症例数の多さから医師の育成にも力を入れており、大腸に関しては2021年6月時点で3名の日本内視鏡外科学会 技術認定医が在籍しています。

腹腔鏡下手術のメリット・デメリット

腹腔鏡下手術のメリットは以下のとおりです。

お腹を切り開いて行う開腹手術と比較して、術後に残る傷や痛みが少なく回復が早い
カメラで近接して見ることで、細かな解剖を理解しながら手術を進めていくことができる

一方、以下の点には注意が必要です。

開腹手術よりもやや手術時間がかかりやすい

腹腔鏡下手術の適応

当院では、手術が可能な大腸がんのほぼ全例に対して腹腔鏡下手術を検討します。最初は早期がんから開始しましたが、現在では進行がんに対してもほとんどの症例で腹腔鏡下手術が可能です。

一方、手術可能でありながら腹腔鏡下手術ができない例としては、膀胱や子宮などほかの臓器に浸潤(しんじゅん)がみられる場合や、すでに複数回開腹手術を実施していてお腹の中が癒着(ゆちゃく)している場合、大腸がんによって腸の中に穿孔が生じ腹腔内がかなり汚れてしまっている場合などが挙げられます。このような場合には、開腹手術を含めて治療を検討することがあります。

腹腔鏡下手術の入院期間・費用

腹腔鏡下手術の入院期間には個人差がありますが、人工肛門の造設が不要な場合で7~10日程度となることが一般的です。人工肛門を造設する場合には、そのための処置が必要となるため14~18日間程度と考えられます。

また、費用は患者さんによって異なりますが、3割負担の方の場合にはおよそ50~60万円程度となると想定されます。ただし、高額療養費制度を利用すればさらに支払額が抑えられることもあります。

直腸がんのロボット支援下手術

ロボット支援下手術とは腹腔鏡下手術がさらに進化した手術方法で、手術用ロボットを用いて行われる手術方法です。腹腔鏡下手術で用いられる鉗子よりも操作性の高いロボットアームを用いることによって、より精緻な手術ができるといわれています。当院では2018年に保険収載されてから、実に75件(2021年5月まで)ほどの症例をロボット支援下手術で行っています。2021年6月現在、大腸がんでは3名の医師が認定を受け、ロボット支援下手術を行っています。

ロボット支援下手術のメリット・デメリット

ロボット支援下手術のメリットは以下のとおりです。

体への負担がかかりにくい

前述の腹腔鏡下手術も傷が小さく回復の早い手術ですが、私の印象としてはロボット支援下手術のほうがさらに術後の回復が早まることが多いように感じます。これにはさまざまな理由が考えられますが、たとえば手術用ロボットはロボットアームが多関節で細かい作業が行いやすく、組織と組織の剥離(はくり)がうまくいきやすいことが挙げられます。

剥離がきれいに行えると必然的に出血量も少なくなるため、痛みが少なく回復も早くなると考えられます。多関節なロボットアームには、腹腔鏡下手術の鉗子よりも体の深い部分に届きやすいというメリットもあります。

一方で、以下の点には注意が必要です。

患者さんによってはロボット支援下手術が行えない場合もある

たとえば腹部大動脈瘤(ふくぶだいどうみゃくりゅう)のある患者さんなど、患者さんがもともと抱えている病態によってはロボット支援下手術が行えない場合があり、術前にしっかりと検査をして検討します。

ロボット支援下手術が行えない医療機関もある

もともと設備のない施設や認定を受けていない施設では手術が行えませんので、設備的な問題や術者の技術の研鑽などが必要です。

ロボット支援下手術の適応

当院のロボット支援下手術は直腸がんのなかでも比較的直腸の下部にある上部直腸(Ra)、下部直腸(Rb)と呼ばれる部位にあるものに対して行われます。簡単にいうと、肛門から指を入れて腫瘍(しゅよう)が指に届くまでの範囲を適応としています。

ロボット支援下手術が行えない例としては、膀胱や子宮などほかの臓器に強く浸潤している場合や、過去に開腹手術を受けていてお腹の中が高度に癒着している場合などが挙げられ、症例に応じて慎重に判断しています。

ロボット支援下手術の入院期間・費用

ロボット支援下手術の入院期間や費用は腹腔鏡下手術とほとんど変わりません。個人差はありますが、入院期間は人工肛門を造設しない場合で7~10日間、人工肛門を造設する場合で14~18日間程度です。また費用は保険適用で、3割負担の方の場合にはおよそ50~60万円程度となると想定されます。ただし、高額療養費制度を利用すればさらに支払額が抑えられることもあります。

進行した直腸がんに対する術前化学放射線療法

当院では、進行した直腸がん(Ra・Rb)に対して術前化学放射線療法を実施しています。術前化学放射線療法とは、抗がん剤による化学療法と放射線を照射する放射線治療を組み合わせた治療を手術の前に行うことです。

直腸がんに対する術前化学放射線療法は、現在のところ日本の治療方針の指針となる『大腸癌治療ガイドライン』においては弱い推奨にとどまっており、手術で側方リンパ節を郭清(かくせい)することによって骨盤内の再発を予防することが推奨されています。

しかし、側方リンパ節郭清は排尿や性機能に関する合併症も多く報告されていることから、当院ではリンパ節に転移がない限りは側方リンパ節を郭清せず、その代わりに術前化学療法を行うようにしています。

また、側方リンパ節に転移が疑われてもそれが8mmを下回る場合には、術前化学放射線療法で対応することがあります。このあたりの治療方針に関しては、現在国内でも議論になっているところであり、国内外で行われている臨床試験の結果を参考にしながら個々の患者さんの状況に応じて治療にあたっています。

術前化学放射線療法のメリット・デメリット

術前化学放射線療法のメリットは以下のとおりです。

手術前に行うことでがんを小さくしてから手術ができる
術後の骨盤内での再発リスクを下げることができる
従来なら永久人工肛門の造設が必要な場合でも、治療の効果によっては肛門を温存して手術できる可能性がある

一方で、以下の点には注意が必要です。

治療による組織の浮腫(ふしゅ)や線維化などによって手術の難易度が高くなることがある
術前化学放射線療法による副作用として放射線性腸炎や皮膚障害などがある

術前化学放射線療法の適応

術前化学放射線療法について、当院では海外のガイドラインに沿って適応を検討しています。具体的には上部直腸(Ra)下部直腸(Rb)にがんがあり、深達度がT3以上の場合、あるいはリンパ節の転移が領域リンパ節に1~3個みられるN1以上の患者さんに対して行われることが一般的です。

その他の大腸がん治療

当院では腹腔鏡下手術、ロボット支援下手術のほか、必要に応じて開腹手術も実施しています。また早期大腸がんに対する内視鏡治療や、進行度合いに応じた放射線治療、薬物療法も行います。なお、腫瘍によって大腸が詰まってしまう“閉塞性大腸(へいそくせいだいちょう)がん”の場合には、ステントと呼ばれる金属の筒を入れて詰まりを改善する“ステント治療”を行ってから手術治療に臨むこともあります。

診療体制・医師

当院では大腸がんの患者さんによりよい治療やサポートを提供できるよう、さまざまな工夫を行っています。まず、週に数回は各診療科で集まるカンファレンスを実施し、患者さんの治療方針の決定や治療についての報告、相談を行います。また、患者さんが入院後のスケジュールを理解しやすいよう、看護師などの医療従事者と協力してクリニカルパス(入院治療計画書)を作成し、それに従って入院後の流れを分かりやすく説明しています。

大腸がんに対する腹腔鏡下手術実績

  • 2018年度:135件(うち、ロボット支援下手術10件)
  • 2019年度:125件(うち、ロボット支援下手術28件)
  • 2020年度:111件(うち、ロボット支援下手術28件)

受診方法

外観

京都桂病院では、以下のように受診を受け付けています。

初診の流れ

受付

総合受付

外来は、健康保険証をお持ちになって外来診療棟1階の総合受付へお越しください。他院からの紹介状や画像データなどがある場合は、必ずご提示ください。

2回目以降は、自動再来受付機にて診察受付を行っていただけます。

当院では厚生労働省の推進する医療機関の機能分担の推進を推奨しております。まずお近くの医療機関を受診のうえ、紹介状をお持ちください。

紹介状をお持ちでない方は、診療にかかる負担金のほか、初診時に限り“初診にかかる選定療養費”として別途5,500円(税込)のお支払いが必要となります。

ただし、以下に当てはまる方はこの費用は必要ありません。

  • 救急車による来院の方
  • 国の公費負担制度の受給者・生活保護の受給者の方
  • 小学校6年生までの方
  • 当院のほかの診療科を受診中の方

など

診療の流れ

大腸がんの診断方法

大腸がんの疑いがある場合、まずは大腸内視鏡検査が行われます。大腸内視鏡検査とは肛門から内視鏡を入れ、腸の内部を観察する検査です。がんが疑われる病変があれば、組織を採取して顕微鏡で見る病理検査を実施し、確定診断を行います。内視鏡検査の前に肛門からガスを入れてCT撮影を行うCTコロノグラフィ検査が行われることもあります。

がんと診断された場合、がんの進行度合いや広がり、転移の状態などを調べるためにCT・MRI検査などの画像検査が行われます。これらの検査結果をもとに治療方針を決定します。

治療方針の決定方法

当院では消化器外科・消化器内科・腫瘍内科・放射線科などの複数の診療科が協力し、カンファレンスを行うことで治療方針を決めていきます。また、直腸がん手術の場合には患者さんが肛門温存を希望するか否かによって治療方法が異なるケースもあるため、患者さんの希望をお聞きしながら一緒に治療方法を決めていきます。

入院が必要になる場合

大腸がん治療のなかで入院が必要となるのは、基本的には手術を受けるときのみです。放射線治療や化学療法は外来でできることが一般的ですが、再発後の化学療法は入院が必要となることがあります。

患者さんのために病院が力を入れていること

当院の大きな特徴としてリハビリテーションの充実や緩和ケア病棟の配備があります。リハビリテーションでは手術の翌日から立ち上がる・歩くなどの行動をはじめていただき、日常生活に戻れるよう徐々にさまざまな動きを増やしていきます。

大腸がんの場合、リハビリテーションを積極的に行うことによって、合併症の予防や術後の回復の促進が期待できます。また緩和ケア病棟は2020年春に新設されたばかりで、20床のベッドを持ち、緩和ケアの専門の医師が診療にあたっています。京都市内を一望できる眺望のよい病室でゆっくり時間を過ごすことができます。

また、大腸がんの手術によって永久人工肛門(ストーマ)が必要になった方のためにストーマ外来も行っています。

先生からのメッセージ

大腸がんは初期には自覚症状がありませんが、進行すると血便や下血などが見られたり、便が出にくくなったりすることがあります。このような症状があるときは放置せずに、ぜひ病院を受診してほしいと思います。最近は新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、病院の受診を控えてしまう方も少なくありません。症状がひどくなるまで受診を我慢してしまう方もいるため、進行してからがんが見つかるような方もいます。より早期に治療をしたほうが根治できる可能性も高まるため、症状を我慢せず病院を受診することを検討しましょう。

また、すでに大腸がんと診断されている方へ伝えたいのは、医師に何でも相談してほしいということです。進行した状態でがんが見つかった場合でも、私達がその時できる治療を検討しますので、気を落としすぎず何でも相談してください。できる限り希望に沿った治療を検討しますし、できないときはできない理由をきちんと説明します。1人で抱え込まずに一緒に頑張りましょう。

京都桂病院

〒615-8256 京都府京都市西京区山田平尾町17 GoogleMapで見る