2014年西アフリカを中心に感染が拡大し、その致死率の高さから世界を震撼させたエボラウイルス感染症(いわゆる「エボラ出血熱」)。2015年5月15日現在、感染者は約15,000名、死者11,000名にものぼっています。アメリカやヨーロッパでも感染者が見られ、日本でも感染の疑いが出るたびに大きな騒ぎとなりました。
「エボラウイルス感染症」とはどのような病気なのか、私たちはこの病気についてどのようなことを知っておくべきなのかということを、米国感染症専門医で、現在ルワンダで日々感染症と戦っている青柳有紀先生にお伺いしました。
今回の記事では、エボラウイルス感染症の原因である「エボラウイルス」とはどのようなウイルスなのかを教えてもらいました。
エボラウイルス感染症は、「エボラウイルス」というウイルスの一種に感染することによって起こる病気です。
エボラウイルス感染症の歴史は意外と古く、1976年にザイール(現在のコンゴ民主共和国)で初めて発見されました。エボラウイルスは、学問的には「モノメガウイルス目フィロウイルス科」というように分類されていますが、この病気が初めて発見された場所の近くを流れる「エボラ川」の名をとって、エボラウイルスと名付けられました。
エボラウイルス属は、下記の5つのタイプに分類されています。
ウイルスのタイプによって、毒性や致死性が異なります。たとえば、2014年以降猛威をふるっているのは「ザイール型」です。「ザイール型」、「スーダン型」、「ブンデブギョ型」のエボラウイルスは1976年以降、何度となく「アウトブレイク(感染の流行)」を起こしてきました。
一方で、「タイフォレスト(アイボリーコースト)型」は毒性が弱いうえに、今までに大きな流行を起こしたことはありません。
また「レストン型」については、人に感染しても何の症状も示さないということが知られています。基本的に、エボラウイルスはアフリカ地域にしか見られませんが、「レストン型」はフィリピンでブタに感染しているのが見つかっています。フィリピンでは、「レストン型」のエボラウイルスに対しての抗体を持っている(つまりウイルスに感染したことがある)人たちが見つかっているので、人にも感染はしているはずなのですが、特に何の症状も見られていないのです。
エボラウイルスが人に感染した原因は、コウモリなのではないかと考えられています。
感染症の世界においては「宿主」という考え方があります。ウイルスや寄生虫は自分たちだけでは増殖していくことができないので、他の生物に寄生します。この寄生される生物のことを「宿主」と呼びます。エボラウイルスの宿主については、まだはっきりと分かっていないことが多いのですが、これまでのところコウモリが宿主なのではないかと考えられています。
エボラウイルス感染症が流行している地域では、コウモリを食べるという食習慣があります。私自身は食べたことはないのですが、特別でとても喜ばれる食材として認識されているようです。これまでに報告されているエボラウイルスの人への感染は、コウモリとの何らかの接触、例えば素手で調理したり、十分に加熱されていない肉を食べたりしたことによって生じたと考える専門家もいます。
エボラウイルス感染症の流行は、他の宿主からの感染によっても起こってきました。たとえば、西アフリカ地域ではチンパンジーやゴリラといった霊長類もブッシュミート(森にすんでいる動物の肉)として食べられています。1996年にガボンでエボラ出血熱(エボラウイルス感染症)が流行しましたが、このときの原因はエボラウイルスに感染して死んだチンパンジーの肉を食べたことによるものだと報告されています。
記事1:エボラウイルス感染症(エボラ出血熱)の原因―エボラウイルスとは
記事2:エボラ出血熱の致死率は70%?エボラウイルス感染症の高い致死率
記事3:エボラウイルス感染症(エボラ出血熱)が空気感染する可能性は?
記事4:エボラウイルス感染症(エボラ出血熱)の診断方法
記事5:エボラ出血熱の予防法と治療法
記事6:エボラウイルス感染症(エボラ出血熱)を通じて、皆さんに知ってほしいこと
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