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椎間板変性とは?椎間板の水分が減少することで起こる、初期腰痛の原因

椎間板変性とは?椎間板の水分が減少することで起こる、初期腰痛の原因
メディカルノート編集部 [医師監修]

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年齢を重ねるごとに、椎間板の水分量は減少し、固くなってきます。このことにより、椎間板の外側にある線維輪という部位に傷が入りやすくなってしまいます。ここに傷が入ると、髄核(椎間板の中央にあるゼリー状の軟骨)を保護する作用が弱まり、クッション機能が低下します。今回は、このような椎間板変性と腰痛の関係性について解説します。

椎間板に傷が入ったとき、一般的には傷が小さいと治る可能性があります。しかし、ある程度傷が深いと、自然には治らないと考えられます(椎間板の傷をMRIでは確認できないため、傷の深さをリアルタイムで診ることはできません)。

今まで酷い腰痛を起こしたことがない方であっても、椎間板を詳しく見てみると年ごとにしわや傷があり、治った跡が残っていることが分かっています。つまり椎間板に入ったその傷自体は治るものの、痛みの刺激を起こさない範囲で、傷跡として残っているということです。年とともに代謝が悪くなるため、髄核が歳を取り、それに準ずる形で椎間板も歳を取っていってしまいます。

椎間板の老化速度は人によって異なり、早く歳を取る方もいれば、そうでない方もいます。しかし、概ね椎間板変性の境界線は50~60歳といわれます。変性の程度が酷いと椎間板のクッション機能がなくなってしまい、ほとんど線維だけの状態になっている方もいます。

クッション機能がなくなった椎間板では、姿勢を維持することが困難になり、背骨が全体的に前かがみになってきます。すると胴体は、姿勢を維持するために背筋を無理に使って体を反らそうとします。これによって背筋が非常に疲労してしまい、慢性的な腰痛が起こり、長時間立っていることが困難になります。

また、椎間板変性が進行すると、骨棘という骨の堤防状の出っ張りが椎体のへりや椎間関節のへりに生じてきます。ここまでくると、脊柱管狭窄症(背骨の要素に囲まれた神経が通る管状のスペースである脊柱管が、これらの出っ張りにより狭くなり、神経が障害され、腰痛やしびれが起こる)の準備状態という段階です。

椎間板変性は中高年以降に多発していますが、遺伝的な要因も指摘されています。さらには、スポーツのし過ぎや重い荷物の運搬・喫煙外傷も関わってきます。椎間板変性があると、ちょっとしたきっかけでも椎間板の繊維輪に傷が入りやすくなり、急性腰痛の原因になると考えられます。

急性腰痛を起こしている原因が、本当に椎間板変性と繊維輪の傷のみによるものなのかを判定するのは難しいとされています。なぜなら、レントゲンやMRIでみられる画像所見は通常の加齢現象でもみられるものがほとんどであり、現在起きている腰痛と結びつく画像所見が特定できないからです。

椎骨同士をつなぐ靭帯、椎間関節や筋肉などの疲労、怪我でも腰痛は起きると考えられますが、椎間板の繊維輪の傷も含めて、これらの原因がレントゲンやMRIではなかなか捉えられません。

腰痛に関しては様々なことが判明してきましたが、まだ解決されていない領域は広く存在します。そのため、今後も腰痛という症状を診ていく際には、多面的なアプローチが大事になるといわれています。

また、腰痛の中には、腰椎にがんの転移があることで生じるもの、脊椎炎などによるもの、婦人科疾患など内臓の病気からくるものなどがあるため、安静時も痛かったり、日ごとに増強したりする腰痛は医療機関で診察を受ける必要があります。

体幹トレーニングやスクワットなど、あまり激しくないレベルの運動療法や、痛む箇所及びその周辺を温めて血行改善を図る温熱療法が有効的です。

椎間板変性は背筋が疲労することで起こりやすくなります。そのためマッサージは非常に効果的ですが、刺激が強すぎるものはかえって負担がかかるため注意が必要です。その他、肥満や偏食、喫煙などの生活習慣も原因となりうるため、減量や食生活の改善も意識するとよいでしょう。