インタビュー

手の外科で扱う病気・外傷

手の外科で扱う病気・外傷
平出  周 先生

牧田総合病院 整形外科副部長

平出 周 先生

この記事の最終更新は2016年05月23日です。

手の外科は事故で切断した指の再接着など、マイクロサージャリーと呼ばれる顕微鏡を使った精密な外科手術から発展してきました。しかしそういった事故の症例は近年少なくなっています。現在、手の外科ではどのような病気やけがを診ることが多いのでしょうか。牧田総合病院副医局長・整形外科副部長であり、日本手外科学会認定手外科専門医の平出周先生に手の外科で扱う症例についてお話をうかがいました。

その中には一般の整形外科の先生が手術をされた後、経過が思わしくないというケースもあります。腱鞘炎の場合、基本的にはまず保存的治療を行いますのでいきなり手術をするということはありませんが、他の病院でステロイド注射などの治療を繰り返しても良くならないという方が来られると、状態によってはすぐ手術になるということもあります。

これらの指の変形関節症の場合は元の機能を完全に取り戻すことが難しいのですが、牧田総合病院には手の機能回復を専属でやってくれている作業療法士がいますので、他の病院よりも充実したリハビリができていると自負しています。

手根管症候群(しゅこんかんしょうこうぐん)もやはり中高年に多い病気です。手のひらの手首に近いところに横手根靭帯(おうしゅこんじんたい)というところがあり、その下に指を曲げる腱と正中神経(せいちゅうしんけい)が一緒に通っています。腱のまわりには腱鞘滑膜(けんしょうかつまく)という膜があり、そこで滑膜炎が起きると狭いところに通っている神経が圧迫されてしまうのです。

腱鞘炎になりやすい人は手根管症候群にもなりやすい傾向があります。ホルモンのバランスが崩れると滑膜炎を起こすことがあるため、患者さんの多くは更年期の女性ですが、妊婦さんが妊娠・出産に伴うホルモンバランスの変化から発症することもあります。また糖尿病も誘因のひとつとされ、男性では腱鞘炎や手根管症候群になる方は糖尿病を併発していることが多いという傾向があります。

昔ながらのやり方は、皮膚を大きく切開して靭帯を露出させ、靭帯を切って圧迫されている神経を自由にするという手術です。しかしここ数年は内視鏡手術を行うことが多くなっています。内視鏡で靭帯の裏、つまり内側から内視鏡の筒を通すような形で行います。

内視鏡で見ることである程度神経を確認しながら手術が行なえるというメリットもありますが、一番の利点は小さい傷のみで手術ができるというところです。手は細い神経があって敏感ですので、従来の方法では切ったときにやはり痛みが残るという方がいます。我々は2ヶ所を小さく切開して行っていますが、内視鏡ではそういう痛みが出ることが少ないといえます。

手は体の他の部分に比べて敏感なため、手術で手根管症候群のしびれは取れたものの、傷による痛みがなかなか取れないという人もいます。長い目で見れば良くなっては来るのですが、実際患者さんは痛みを感じるわけですし、せっかく手術をしたのに、という気持ちにもなるでしょう。それは手外科の難しいところでもあります。

腱鞘炎の手術も内視鏡で行っている施設はあります。ただし、腱鞘炎の手術ではもともと昔ほど大きく切開しないようになってきていますので、あえて内視鏡手術を行わなくてもよいのではないかと考えます。

意外に思われるかもしれませんが、手や手首だけでなく肘(ひじ)も手外科で診ています。手外科では、神経の系統でいうと鎖骨から上腕・前腕・手へとつながる腕神経叢(わんしんけいそう)と呼ばれるところは全部診るのですが、肩関節は肩の専門家が別にいるので、手外科では主に肘から先を診ていることが多くなっています。たとえば骨折ひとつでも、ご高齢の方の場合は肘がバラバラに折れてしまうという方もいます。

しかし、牧田総合病院では整形外科という枠組みの中での診療ですので、全体としてみれば手外科ならではというような特殊な症例よりも、やはり外傷全般の患者さんを診る機会のほうが多くなっています。

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